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第004話 ナンパの対処法

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 最寄りの村に戻ってきた俺とルナは、冒険者ギルドに向かった。
 ルナがクエストを受注しており、その報告をする為だ。

「お疲れ様です、ルナ様。報酬は冒険者口座にお振り込みさせていただきました。またのご利用を心よりお待ち申し上げております」

 受付嬢の言葉に「やっぱりな」と納得する。
 ルナの次元になると、報酬は口座振り込みだ。
 金額が多いから、手渡しでは渡しきれない。
 仮に渡されたとしても、多くて持ち運びが不便だ。
 ちなみに、俺の報酬は常に金貨1枚の手渡しだった。

「お付き合いくださりありがとうございます、ユウタさん。この後はどうなされますか?」
「今日のところはとりあえずご飯を食べたら宿屋で休もう。明日から、ルナが割と余裕で倒せるダンジョンに行って宝箱漁りでどうかな?」
「分かりました。ユウタさんの強運なら、とんでもないお宝をゲットできそうですね!」
「そうであってもらわないと困るよ。俺には運しか取り柄がないし」

 ルナが「あはは」と笑う。
 手を口に当てた、お淑やかで品のある笑い方だ。
 飲んだくれババア特有の身体を反らせたゲラゲラ笑いと大違い。

「やっほい嬢ちゃん」
「へいへいYOー!」

 俺達が話していると、二人組の男が近づいてきた。
 年は俺達よりも一回り上といった感じで、どちらも大柄だ。
 片方は赤色のドレッドヘアで、もう一人は緑のパンチパーマ。
 チャラそうな顔に反し、鎧は俺でも知っているAAA級の代物だ。
 それが装備出来るということは、つまり相当な実力者ということ。

「なんだお前達は」

 突然、ルナの口調が変わった。
 これには俺だけではなく、男達も驚く。

「そう邪険にしないでYOー!」
「俺達とPT組もうぜ! 見ての通り強いよ? 俺達」

 ナンパだ。
 堂々たるナンパが始まった。

「ごめんね。私、自分より弱い男には興味ないの」

 ルナがキッパリ断る。
 男達は一瞬固まった後、大笑いしながら俺を指した。

「それはつまり、この初心者装備の男が俺達よりつえーっていうのかYO?」
「さすがにそれは無理があるっしょ! それに俺達は嬢ちゃんより強いぜ?」

 ルナが「ふん」と鼻で笑う。
 そして、キッパリとした口調で言った。

「貴方達程度の雑魚なら、<魔王城>に入っても1分も耐えられずに死ぬでしょ? でもね、ユウタさんは1階の最奥部まで1人で来られたのよ。この初心者装備でね。その時点でどちらが上かは明らかでしょ」

 ルナが「それからね」と続ける。

「私が貴方達より弱いって? 面白くもない冗談はよしてくれる?」

 ここまで言われると、男達もナンパを諦めた。
 だからといって、「はいそうですか」と引き下がりはしない。
 激怒したのだ。

「1人で<魔王城>とか、そっちのほうが面白くない冗談なんだYO!」
「俺達と嬢ちゃんのどちらが上か、この場で証明してやるよ!」

 男達は後ろにステップすると、揃って抜刀した。

「ほら、早く剣を抜けYO!」
「今更ゴメンナサイしても許さないぜ?」

 ルナがまたしても鼻で笑う。

「なんで雑魚相手に剣を抜く必要があるのよ」

 そう言うと、彼女はスキルを発動させた。
 <魔王城>で敵にかました足止めスキルだ。

「いつの間にスキルを……!」
「無詠唱で発動しただと……!?」

 驚く男達。
 周辺の野次馬もポカンとしていた。

「この程度のスキル、一瞬で発動出来て当然でしょ」

 ルナは一気に間合いを詰めると、男達を殴り飛ばした。

「やべぇぞ、あの女騎士……」
「ベラッチョ兄弟が手も足もでないとか……」
「あのAAA級のベラッチョ兄弟が……」

 周辺がざわついている。
 男達はここの有名人だったようだ。

「ユウタさん、ご迷惑をおかけして申し訳ございません」

 ルナが謝ってくる。

「俺は問題ないよ。それより流石の強さだね」
「いえ、今のは相手が弱かっただけですよ」
「あれで弱いなら俺は……」

 俺の戦闘力を1とした場合、
 ベラッチョ兄弟の戦闘力は1,000くらいありそう。
 俺はガックシと肩を落とした。

「ち、違います! ユウタさんはたしかに戦闘は強くないですが、勇敢ですし運があるじゃないですか!」
「それはつまり……俺が弱いことに違わなくない!?」
「えっ、あ、いや、その、とにかく気にしないで下さい!」

 ルナは恥ずかしそうに顔を赤らめた。
 そして「お気を悪くしないで下さい」と何度も頭をペコペコ。
 ベラッチョ兄弟を殴り飛ばした女騎士とは別人のようだ。

「それにしても急に話し方が変わって驚いたよ」
「相手方が失礼だったので、ついカチンときてしまいました」
「なるほど。ルナを怒らせたら怖いってよく分かったよ」
「あはは。ユウタさんに怒ることなどなさそうですよ?」

 そうであってもらわないと困る。
 怒ったルナに殴られたら、俺は木っ端微塵に粉砕しそうだから。

「さて、酒場でメシを済ませて宿屋に行こう。お腹ペコペコだよ」
「ですよね。私もお腹が空いてまいりました」

 野次馬が唖然として見守る中、俺達は冒険者ギルドを後にした。

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