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第017話 爆殺!冒険者PT!③

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 村からの増援部隊がやってきた。
 小隊四つにゴブオとゴブ太の計三〇体。

「ゴブレスの戦い方、学ばせてもらうぜ!」
「ゴブレス、この人間は殺したら駄目なの?」
「おめぇはすげーよ、ゴブレス!」
「今回は俺達にも命令してくれよな!」

 他所の小隊長が言ってくる。
 どいつもこいつも純粋に俺を尊敬していた。
 妬みや憎悪といった感情がまるでない。
 人間よりもよほど素直で信じられる。

「こいつは計画に必要だから今は殺さない。皆の持ってきたブルーマだが、四〇瓶はこの人間を縛っている木を囲むように置いてくれ。中をはこぼさないようにな。で、残りの二〇瓶は導火線として使う」
「導火線? それはなんだ?」

 どうやら導火線を知らない様子。
 ゴブ朗でさえも、頭上に疑問符を浮かべていた。
 だから丁寧に説明してやる。

「こうやって一直線に垂らして道を作っていけば、火を付けた時に燃えていくだろう。で、最終的にはこの木の下にある大量のブルーマに引火するわけだ。導火線ってのは大量のブルーマ瓶へつなげる為に作るブルーマの道のことだ」
「なるほど! それなら安全にブルーマを大量に燃やせる!」
「すげぇなゴブレス、どうやったらそんな閃きができるんだ!」

 各小隊長にその部下、あと俺の部下も大興奮だ。
 こいつらは頭こそ悪いが、物分かりは決して悪くない。

「ん……んぐっ……」

 ゴブリン達の騒ぎ声で、女が目を覚ました。
 名前はたしかメグルだったかな。違うかもしれない。
 どうせもうじき爆殺するのでどうでもいい。

「女が起きた。時間も随分経っている。急いで導火線を作ろう」

 俺達は協力してブルーマの導火線を作った。
 道は女の後方へ伸びている為、女からは見えない。
 それでも、女は何かしらの危機感を抱いているようだ。
 んぐんぐと何やら言っている。恐怖に駆られているのだろう。

「これで最後のブルーマが終わった。よし、俺達の隊以外は村に戻ってくれ」
「おいおい、楽しいところは独り占めかよ?」

 小隊長の一人が言う。
 怒っているというより、好奇心からの発言だ。

「独り占めというか、下手を打って他の隊を犠牲にしたくないんだ」
「そんなこと気にするなよ」
「そうさ。外に出る以上、俺達は死ぬことを覚悟しているよ」
「俺の隊だってそうだ」
「俺もだ。だから見させてくれよ」

 小隊長共にそう言われると断れない。

「なら特等席に移動してくれ。近くに居られると作戦が失敗しかねないからさ」

 これには全員が承諾してくれた。
 物分かりが良くて助かる。

「お前達もだ。ここは俺だけでいいから、他の小隊長と一緒にあの山に登って、山の上から見てくれ」

 今度は部下達に指示した。
 正確にはゴブオとゴブ太にである。
 ゴブ朗にはここに残ってもらわないといけない。
 俺はゴブリン流の火起こしをまだマスターしていないからだ。

「わかりましたぁ!」

 ゴブオが右手を挙げて頷く。
 どうみてもただのゴブリンだが……。
 ゴブ朗曰く、こいつは可愛い女なんだよな。
 うーむ、ゴブリンの顔はよう分からん。

「ゴブオ、競争しようぜ!」
「いいよぉ。ぼくが勝ったらご飯の当番やってねぇ」
「おうよ」

 ゴブオとゴブ太は山に向かって走りだした。
 その後を他の小隊が続いていく。

「さてゴブ朗、火のおこし方について教えてくれ」
「お任せ下さい、ゴブレス様」

 冒険者共が来るまで暇なので、俺は火起こしについて勉強した。
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