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第009話 休日
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その後しばらくは薬草採取クエストを受け続けた。
生活費を稼ぐ傍らで、シルフィーとの連携も高めていく。
「ロウタ、見ましたです?」
「おう、見たよ」
「お見事です、ミレイさん」
1ヶ月もすると、薬草採取のクエストは役不足になった。
ミレイは1人でも大量のゴブリンを捌けるようになったのだ。
「金にも余裕が出来たし、明後日から違うクエストに行くか」
「はいです! ミレイ、強くなっている実感があるです!」
「明後日からですか。すると明日はどうするのですか?」
シルフィーの問いに「休みだよ」と答えた。
最近は3日に2回は薬草採取をしており、通常なら明日も仕事だ。
「明日はロニーウッド爺さんの孤児院に行こうと思う」
孤児達を託してから早4ヶ月。
生活も落ち着いてきたし、顔くらい見せないとな。
「皆に会えるです?」
「おう。訓練もお休みだからな」
「わぁーい♪ 楽しみです!」
ミレイは弓を掲げて無邪気に喜んだ。
◇
翌日。
俺達はロニーウッドの孤児院にやってきた。
俺とミレイは互いにバゲットの詰まった紙袋を持っている。
シルフィーは俺の右肩にちょこんと座っていた。
「わー! わー!」
「ぎゃー! ぎゃー!」
孤児院は相変わらず賑やかだ。
60人近い孤児達が元気に走り回っている。
そこには俺の託した孤児の姿もあった。
「久しぶりじゃのう、ロウタ」
「お久しぶりです、ロニーウッドさん」
ロニーウッドと言葉を交わす。
孤児達もこちらに駆け寄ってきた。
「ミレイだ!」
「ミレイ! おひさ!」
親父の孤児院に居た孤児達が言う。
ミレイが「久しぶりです、みんな」と微笑んだ。
「生活が少し安定してきたので、差し入れを持ってきました。よろしければこちらのバゲットを皆で召し上がって下さい」
俺とミレイが紙袋を渡す。
ロニーウッドは片方を地面に置き、もう一方を抱えた。
「助かるよ、ロウタ」
「こちらこそ。親父の孤児達をありがとうございます」
「ふぉっふぉっふぉ。どの子も元気にやっておるよ」
ロニーウッドが「皆でパンを分けなさい」と孤児達に言う。
孤児達は元気に返事して紙袋を持つ。
そして、嬉しそうに孤児院に駆け込んでいった。
厨房でパンをカットして分けるのだろう。
「ミレイも混ぜてもらっておいで」
俺はミレイの頭を撫でた。
ミレイは眉に皺を寄せてこちらを見る。
「ロウタ、ミレイを捨てるです?」
どうやら孤児院に託されると誤解したようだ。
俺は「違う違う」と笑いながら首を横に振った。
「帰る時になったらちゃんと呼ぶから、それまで遊んでこいって意味だよ」
「それならよかったです! 行ってくるです!」
安心したミレイは、笑顔で孤児院の中に駆け込んでいった。
その背中を見送った後、ロニーウッドが笑みを浮かべて言う。
「あの子、お主に懐いておるの」
「ずっと一緒に過ごしていますからね」
「子連れの冒険者稼業は、ワシよりも大変じゃろうに」
「ところがそうでもないんですよ」
俺は笑いながら状況を話した。
「ほへぇ、あの子に弓の才能が……」
「そうです。それにこの妖精シルフィーは魔法が上手です」
シルフィーは俺の肩から羽ばたき、「恐縮です」と頭をペコリ。
「流石は妖精じゃ。言葉遣いがワシらより大人びておる」
「あはは、本当にその通りです。俺の方がお子様ですよ」
しばらくはロニーウッドとの雑談に耽る。
主に親父の孤児達がここでどんな調子かを訊いた。
ロニーウッド曰く、すぐに馴染んだそうだ。
これといった問題もないとのことで安心する。
「ただ、経営の方は日に日に厳しくなっておってな……」
金銭面では問題を抱えているようだ。
「最近はそれを見越してか、よく奴隷商人がウチに来よる」
「孤児を売ってくれと?」
「うむ。もはや奴隷反対派を貫いている孤児院はウチだけだしな」
「反対派は他にもいくつかありましたよね」
「どこも折からの経営難でどうしてもな……」
孤児院は国からの助成金で成り立っていた。
助成金の他には、孤児達に作らせた物の販売など。
しかし、販売物の収益なんか雀の涙である。
「あまり多くないですが、よかったらこのお金を使ってもらえませんか」
俺は寄付を申し出た。
ロニーウッドは驚いてこちらを見る。
「お主、寄付をするほど余裕があるのか?」
「いえ、こちらも結構カツカツです。しかし、親父の孤児達を預かって貰っていますから、出来る限りの協力はさせてください」
「そういうことなら、有りがたく頂戴しよう……」
俺は持っていたお金の大半をロニーウッドに渡した。
これで残りは2日分の生活費しかない。
財布の中が寒すぎるけれど、なんとかなるだろう。
「孤児院の為にも、そなたが冒険者として成功することを祈っておるよ」
ロニーウッドが笑いながら言う。
俺も「任せて下さい」と笑った。
「明日からは今よりも実入りがよくなります。今後も出来る限り寄付をしますので、奴隷商人に屈することなく頑張りましょう」
孤児達を守る為にも、俺はまだまだ頑張らねばならないのだ。
生活費を稼ぐ傍らで、シルフィーとの連携も高めていく。
「ロウタ、見ましたです?」
「おう、見たよ」
「お見事です、ミレイさん」
1ヶ月もすると、薬草採取のクエストは役不足になった。
ミレイは1人でも大量のゴブリンを捌けるようになったのだ。
「金にも余裕が出来たし、明後日から違うクエストに行くか」
「はいです! ミレイ、強くなっている実感があるです!」
「明後日からですか。すると明日はどうするのですか?」
シルフィーの問いに「休みだよ」と答えた。
最近は3日に2回は薬草採取をしており、通常なら明日も仕事だ。
「明日はロニーウッド爺さんの孤児院に行こうと思う」
孤児達を託してから早4ヶ月。
生活も落ち着いてきたし、顔くらい見せないとな。
「皆に会えるです?」
「おう。訓練もお休みだからな」
「わぁーい♪ 楽しみです!」
ミレイは弓を掲げて無邪気に喜んだ。
◇
翌日。
俺達はロニーウッドの孤児院にやってきた。
俺とミレイは互いにバゲットの詰まった紙袋を持っている。
シルフィーは俺の右肩にちょこんと座っていた。
「わー! わー!」
「ぎゃー! ぎゃー!」
孤児院は相変わらず賑やかだ。
60人近い孤児達が元気に走り回っている。
そこには俺の託した孤児の姿もあった。
「久しぶりじゃのう、ロウタ」
「お久しぶりです、ロニーウッドさん」
ロニーウッドと言葉を交わす。
孤児達もこちらに駆け寄ってきた。
「ミレイだ!」
「ミレイ! おひさ!」
親父の孤児院に居た孤児達が言う。
ミレイが「久しぶりです、みんな」と微笑んだ。
「生活が少し安定してきたので、差し入れを持ってきました。よろしければこちらのバゲットを皆で召し上がって下さい」
俺とミレイが紙袋を渡す。
ロニーウッドは片方を地面に置き、もう一方を抱えた。
「助かるよ、ロウタ」
「こちらこそ。親父の孤児達をありがとうございます」
「ふぉっふぉっふぉ。どの子も元気にやっておるよ」
ロニーウッドが「皆でパンを分けなさい」と孤児達に言う。
孤児達は元気に返事して紙袋を持つ。
そして、嬉しそうに孤児院に駆け込んでいった。
厨房でパンをカットして分けるのだろう。
「ミレイも混ぜてもらっておいで」
俺はミレイの頭を撫でた。
ミレイは眉に皺を寄せてこちらを見る。
「ロウタ、ミレイを捨てるです?」
どうやら孤児院に託されると誤解したようだ。
俺は「違う違う」と笑いながら首を横に振った。
「帰る時になったらちゃんと呼ぶから、それまで遊んでこいって意味だよ」
「それならよかったです! 行ってくるです!」
安心したミレイは、笑顔で孤児院の中に駆け込んでいった。
その背中を見送った後、ロニーウッドが笑みを浮かべて言う。
「あの子、お主に懐いておるの」
「ずっと一緒に過ごしていますからね」
「子連れの冒険者稼業は、ワシよりも大変じゃろうに」
「ところがそうでもないんですよ」
俺は笑いながら状況を話した。
「ほへぇ、あの子に弓の才能が……」
「そうです。それにこの妖精シルフィーは魔法が上手です」
シルフィーは俺の肩から羽ばたき、「恐縮です」と頭をペコリ。
「流石は妖精じゃ。言葉遣いがワシらより大人びておる」
「あはは、本当にその通りです。俺の方がお子様ですよ」
しばらくはロニーウッドとの雑談に耽る。
主に親父の孤児達がここでどんな調子かを訊いた。
ロニーウッド曰く、すぐに馴染んだそうだ。
これといった問題もないとのことで安心する。
「ただ、経営の方は日に日に厳しくなっておってな……」
金銭面では問題を抱えているようだ。
「最近はそれを見越してか、よく奴隷商人がウチに来よる」
「孤児を売ってくれと?」
「うむ。もはや奴隷反対派を貫いている孤児院はウチだけだしな」
「反対派は他にもいくつかありましたよね」
「どこも折からの経営難でどうしてもな……」
孤児院は国からの助成金で成り立っていた。
助成金の他には、孤児達に作らせた物の販売など。
しかし、販売物の収益なんか雀の涙である。
「あまり多くないですが、よかったらこのお金を使ってもらえませんか」
俺は寄付を申し出た。
ロニーウッドは驚いてこちらを見る。
「お主、寄付をするほど余裕があるのか?」
「いえ、こちらも結構カツカツです。しかし、親父の孤児達を預かって貰っていますから、出来る限りの協力はさせてください」
「そういうことなら、有りがたく頂戴しよう……」
俺は持っていたお金の大半をロニーウッドに渡した。
これで残りは2日分の生活費しかない。
財布の中が寒すぎるけれど、なんとかなるだろう。
「孤児院の為にも、そなたが冒険者として成功することを祈っておるよ」
ロニーウッドが笑いながら言う。
俺も「任せて下さい」と笑った。
「明日からは今よりも実入りがよくなります。今後も出来る限り寄付をしますので、奴隷商人に屈することなく頑張りましょう」
孤児達を守る為にも、俺はまだまだ頑張らねばならないのだ。
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