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61.ルベル邸②

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私たちはお茶とお茶菓子を囲んで、すっかり寛いでいた。
ルベル家の領地内に立つこの御屋敷のインテリアは、向こうの世界でいうカントリー調に似ていて、堅苦しくなく、開放的で、およそ格式高い貴族の館の印象とはだいぶかけ離れていた。そういった雰囲気も、私がすぐ打ち解ける後押しにもなった。
なんでも、この御屋敷には客間がないらしい。
何故なら、お客を呼ぶ想定が最初からなされていないからだ。理由はもちろんアルバートにある。
『光の聖人』と呼ばれる彼。その特徴から人々から奇異や好奇の目線が寄せられる。それだけならまだ良いほうだが、中には崇め奉ろうとすり寄ってきたり、不躾な質問を浴びせかける無礼な輩もいる。そんな礼儀も遠慮もない人々からアルバートを守るため、この屋敷は家族と極一部の身内しか入れないらしい。
それを最初知った時、恐縮してしまったのだが、「カレンちゃんなら、身内も同然よ!」と言い切られてしまった。そして、何故だがいつの間に「ちゃん」呼びが定着してしまっている。まあ、イリアスと婚約している仲だから、マレインがそう思ったとしても不思議ではないんだけど。でも、将来、婚約破棄されちゃうから、そんなに身内扱いされると、ちょっと心苦しくもある。
そんなわけで、家族が寛ぐためだけに特化された空間で、――アルバートにのびのびと育ってほしいという配慮もまた、この作りなんだろうと思えた。フェリクスがこんなに飄々としているのも、何だか頷ける――私たちは学園の話やイリアスやフェリクスの子供の時の話で盛り上がった。
ちなみにフェリクスは週末は必ずここに帰るそうで、平日は王都にあるタウンハウスから学園に通っていることも教えてもらった。
一通り、話が弾んだところで、ヤンネが私とアルバートにふと視線を送る。

「それにしても、アルは本当にカレンさんに懐いているなあ」

この席に着くとき、アルバートが私の椅子に自分の椅子をぴったりと貼り付けてきて、今も私の手を握っているのを見て言ってきたのだ。

「うんっ。大好き」

アルバートが天真爛漫に笑う。アルバートが年齢的に少し幼く感じられるのは、今まで世の中の負の部分に一度も触れたことがないからだろう。穢れることもなく、大切に慈しまれ大切に育てられたなら、きっとこんな子ができるんだろうなあと微笑ましくなる。アルバートを見ていると、思わずこっちまでほっこりする。

「そういえば、カレンちゃんに会ってから、悪夢も見なくなったのよね」

「悪夢?」 

「そうなの。攫われる数日前から、アルが夜中魘されることがあって。今までそういったことがなかったから、私たちも心配だったの。でも、今はそういったことも全然起こらなくて、あれはもしかしたら、自分の身に起こることを予知していたのかしらなんて、私たちも話してるの」

「予知か……。ですが『光の聖人』にはそういった力はないと聞いていますが」

イリアスもマレインに目を向ける。

「そうよね。『光の聖人』に関して私たちも詳しく知りたいんだけど、何せ症例も少ない上に『光の聖人』に関する資料は全部神殿に保管されているのよ」

「『神殿』?」

私が首を捻ると、マレインが答えてくれる。

「聖女を祀っているところね。昔は『光の聖人』が産まれると全員神殿に引き取られていたんですって」

「そうなんですか」

「まあ、大分昔の話なんだけどね。それこそ、千年前聖女がいた頃は、『光の聖人』はもっといて神殿で役目を果たしていたらしいんだけど」

「『役目』ですか」

「そうなの。でも、詳しいことはわからないのよね。調べたくても、昔の資料や文献は関係者以外見せられないんですって」

「身内に神官がいれば良かったんだけどね。それか、大神官の知り合いか」

ヤンネがぼやくと、続いてフェリクスが。

「大方、『光の聖人』を利用して、自分たちの箔をつけてただけだと思うけど。物珍しいうえに、いかにも神から愛されてるような特徴だしさ」

「フェリ、滅多なことを言わないの」

「気ぃ使うことないだろ。今は昔と違って神殿も大分廃れてるし。平和な世が続いているから、恩恵を求める人間もいなくなって、『光の聖人』の面倒をみる余裕がなくなったんだろ、きっと」

「まあ、『光の聖人』に本当に能力があるかないかは別にして、今は普通に暮らせているんだろ?」

イリアスがアルに尋ねる。

「うん!」

「ちなみにどんな夢か訊いてもいいか?」

「えっとね、初め真っ暗闇にいるの。なんにも見えなくて、聞こえなくて。それが何日も続いたの」

「それは怖い夢ね」

「うん。でも、お姉ちゃんたちが来てくれた日の夢は違ったよ。白い光と青い光と紫の光が僕のところにやってきて、真っ暗い闇を追い払ってくれたの! そしたら、周りが全部明るい光に変わったんだ」

「へえ。不思議な夢もあるもんだな」

感心げに頷くイリアス。
あれ? つい最近もこれと似たような話、聞かなかった? 私は内心首を捻る。
確か占いの館で聞いたものと、なんかダブルわね。
あのときは白い光に六つの光って言ってたけど。それからあとひとつ足りないとも。合わせると七つね。
七つ……七人。光って人のこと? そういえば攻略対象者って全部で何人だっけ? ひい、ふう、みい……頭の中で指折り数える。メインキャラと隠れキャラ合わせると、ぴったり七人だわ。偶然?
それから、アルバートが言う青と紫の色って、イリアスとフェリクスのキャラクターカラーとぴったり合わさっているのよね。
実は『きらレイ』では、攻略対象者ごとにそれぞれの持ち色があって、決まっているのだ。
イリアスは青い瞳だから、『青』。
フェリクスは紫の髪だから、『紫』。
ユーリウスは赤い目と髪だから、『赤』。
エーリックはオレンジの髪だから、『橙』。
ラインハルトは緑の目だから、『緑』。
レコは藍色の目だから、『藍』。
そして残りのひとりは――。
そこで私の思考は、マレインの言葉によって中断された。

「それにしても、イリアス君にこんな素敵な子がいたんなら、早く紹介してもらえば良かったわね」

「そうだな。フェリクスも負けてられないぞ。早く良い子を見つけないとだな」

ヤンネが軽くははっと笑いながら、息子に目を向ける。
その言葉で、私の思考は完全にそっちに切り替わった。
え!? フェリクスにはもう既にオリビアというれっきとした婚約者がいるじゃない。
私が思わず目を点にしていると、イリアスも同じことを思ったのか、訝しげに眉を寄せる。

「フェリクスには、既にお相手がいるはずですが」

「え? お相手?」

マレインがきょとんとする。

「ええ。以前、フェリクスの婚約者として、紹介されましたが……」

「おい、イリアス、いつの頃の話してるんだよ。子供の戯れだよ、あんなの」

「だが、確かにお茶会の席で、本人から告げられたぞ。お前もあのとき、横にいただろ」

「ああ! オリビアちゃんね!」

突然マレインが胸の前で手を打った。

「懐かしいわ。まだ七つの頃だったかしら。確か庭でお茶会を開いた時よね。虫に驚いたオリビアちゃんがこけて、泣いちゃったことがあったのよね。あんまり泣き止まないから、どうしたら泣き止むの?って困り果てて訊いたら、フェリのお嫁さんにして!って頼んできたのよ」

「それで、俺もしょうがないから、その場しのぎで頷いたんだよ。断ったら、また泣き出すかと思って」

「そうそう、そのあとのお茶会で、フェリの婚約者ですってぺこりと挨拶しながら回るのが可愛くて、微笑ましかったわー。まあ、あのときは随分幼かったし、子供の時の淡い恋心なんて、すぐに忘れちゃうと思って、私たちも何も言わなかったけど。――それにしても、オリビアちゃん元気? 今は誰が好きなのかしら?」

私は話の間、あんぐりと口を開けていた。
オリビアは今でもフェリクスが好きだと思いますけど!! 声を大にして言いたい。
ついでに、オリビアの紹介文に「フェリクスの婚約者」と堂々と書いた制作陣の襟元を揺さぶりたい。こんなことで、婚約者認定したのかと。
じゃああんなに、ヒロインに意地悪してきたのは、こじらせた上の逆恨みということになる。
重い溜め息を吐きそうになったところで、イリアスをちらりと見ると、イリアスも固まっていた。
同志だ! その瞬間、ちょっとだけイリアスに仲間意識を覚える。
でも、ちょっと待てよ。子供のわがままで婚約者になり、こんなに簡単にすんなりなかったことにされるなら、私にとってもすごく都合のよい話ではないだろうか?
私の頭に別の考えが擡げ始めた。イリアスとの婚約もカレンのわがままによってなったもの。なら、私との婚約もすんなりなかったことにされたりして。
もう充分、イリアスとの親交を築いてきた。多分、印象最悪からは脱したと思う。この先、ヒロインが現れたら、婚約者の肩書きを持つ私は邪魔でしかない。そうなったら、ようやくここまで築きあげてきた信頼や友情――あればだけど――が逆に下降してしまう。なら、ここで婚約者という関係を打ち止めしておいたほうが賢いのではないだろうか。
四年間婚約者として収まったのなら、お父様の努力も報われたはず。
そうよ! 今がその時だわ!
意気揚々と決意を固めて、顔をあげてイリアスの顔を見た瞬間、私の思いは瓦解した。
ひっ!
イリアスが鋭い目線でこちらを見ていたからだ。

「なにを考えてたんだ?」

何故か、黒いオーラが見える気がする。
な、なんで、怒ってるのよ。私の考えを読んだの? それだったら、尚更怒る理由が見つからないわよね。
これはきっと、物思いに沈んだ私を見て、「この悪女、また何か悪巧みをしているな」と思ったに違いないわ。この場にいるのは全員イリアスの身内。だから余計、普段より怖さが増した気がしたのね。身内になにかしたら、容赦しないぞという圧を飛ばしたのよ。

「な、な、なにも邪なことは考えていないわよ」

汗を垂らしながら首を振る。

「わかってるならいい。変な気起こしても、俺は離す気なんてさらさらないからな」

悪巧みしたら、絶対逃してやらないってこと? 私、全然信用ないのね。
やっぱりヒロイン相手じゃなきゃ、その鉄壁のような心は崩せないのね。
あれもそれも何もかも、悪女の星の元に産まれてきてしまったカレンに憑依したのが全て悪いのよ。
私が内心悔しがっていると、マレインがフェリクスに目を向ける。

「フェリ、あなたには好きな娘いないの?」

「な、なんだよ、急に」

慌て始めるフェリクス。

「――あら、この反応。もしかしているのかしら」

「べ、別にどうだっていいだろ。俺のことなんか」

「ますます怪しいわ。こら、白状しなさい」

「嫌だね。息子のプライベートに関わってくんなよ」

「いいじゃない。ちょっとくらい教えてくれたって。どんな娘なの」

「今では絶対言わない」 

真一文字に口を結ぶフェリクス。

「ってことはいるんだな。フェリクスがこんなに意固地になるのも珍しい。ますます吐かせたくなるな」

「ようやくフェリにも春が巡って来たのね。嬉しいわ。で、同じクラスの娘? それとも、違う学年の娘かしら」

「可愛い子? それとも綺麗かな。髪の長さは? 性格は?」

腕を組んでそっぽを向いていたフェリクスだったけど、両脇から責められ流石に閉口したのか、我慢できなくなったみたいにちらっとこちらに視線を飛ばしてきた。
なに? 私に助けを求められても困るわ。あなたの両親なんだから、自力でなんとかしなさいよ。
その一瞬の動作を見逃さず、突っぱねていた息子の表情に恥ずかしさのようなものをみてとった両親が今度はこちらに視線を向けてくる。

「まあ――」

「まさか――」

あらら。フェリクスの顔が赤くなってきたわ。そりゃそうよね。年頃の男子が両親から恋バナをせがまれるなんて、恥ずかしいに決まってるわ。
もう一度目線が合うと、フェリクスの頬が真っ赤に染まった。そして、ふいと反らされる。
その間、マレインとヤンネの視線が私たちの間を往復する。

「あなたって子は……」

「よりにもよって、なんでまた――」

目を丸くしたまま、視線が忙しなく行ったり来たりしている。

「……サイアクだ。告白する前に家族の前でバラされるなんて、どんな拷問だよ」

フェリクスが顔を覆ってはあーという盛大な溜め息を吐く。
え? 今言った? 私聞いていなかったんだけど。また、どこかにトリップしてたのかしら。
尋ねようと、イリアスに視線を送ったところで、私は固まった。
見た目はなにひとつ変わっていないのに、背中から発する空気が完全に冷たくなっていたからだ。私、また何かしたのかしら。冷や汗が垂れる。
それどころではなくなってしまった私をよそに、マレインとヤンネが会話を続けている。

「もう相手が決まってるから、こればかりはね。フェリには残念だけど。私たちも残念だけどね」

「違う相手だったら、私たちも力になれたかもしれないのに。お義兄さんたちから奪ったら、恨まれそうだしな」

「そうね。お父様だったら、面白がりそうだけど――」

そこではたと、口を閉じるマレイン。続いてヤンネも、マレインの言葉を聞いてはっとしたような顔つきになる。

「むしろ、喜んで囃し立てそうだ――」

そうして、ふたりして考え込むような素振りで黙り込む。
な、なにこの空気。急に静かになっちゃったけど。フェリクスの両親、固まっちゃったわね。
一体どうしたのかしら。様子を探ろうときょろきょろとあたりを見回していると、今度はイリアスに顔に目が釘付けになる。
うわ。なにこの心底嫌そうな顔。今まで何度か見てきた冷めきった表情とか、怒りの表情とはまた違う。あまり感情を揺さぶられないイリアスにとって、あんなものは気にもとまらない些細なことのうちのひとつだったのだと悟る。でも、今は――。
私はごくりと唾を飲み込む。

「叔母上、それに叔父上」

イリアスの口から心底冷え切った低い声が漏れた。

「な、なにかしら。イリアス君」

「な、なんだい」

おお、マレインもヤンネも動揺している。
ふたりの焦りに目が離せない私。

「今、何を考えていたか伺っても?」

イリアスの目の奥がきらりと光って、二人を見据える。もし人を斬り裂ける視線があるとしたら、間違いなくイリアスの視線がいの一番に名乗りをあげるわね。

「な、なにも考えてないわよ! まさか、イリアス君とカレンちゃんの仲を引き裂こうだなんて、これっぽっちも!! ねえ、あなた!」

「そうだとも。お義父さんに話したら、もしかしたらフェリクスにもチャンスがあるかなーなんて、ちっとも考えたりしてないよ。うん、全然!」

「全部、言ってるじゃねえか」

呆れ顔のフェリクス。やれやれと肩を竦めると、両親に目を向ける。

「助けなんていらないし、余計なことしなくていいから。こういうのは、自分の力だけで戦ってこそ、男っぷりがあがるもんだろ」

そこで言葉を切り、今度はイリアスに向き直ると、肩に手を置く。

「ってことで、イリアス。今日からライバルな」

「は?」

「いや、もうバレちゃったもんはしょうがないから、お前に宣戦布告しておこうと思って」

「お前、ふざけるなよ」

イリアスの額に青筋が浮かぶ。

「お姉ちゃん、向こう行って遊ぼう」

その時、大人の会話に退屈したのか、アルバートが私の手を引っ張った。

「え、ええ、いいわよ」

アルバートに先導され、テーブルをあとにした私には、その後の会話は聞き取れなかった。
それにしても、イリアスと私の仲を引き裂くとか、フェリクスにもチャンスが、とか言ってたけど、なんだったのかしら。




「今日はありがとうございました」

馬車の前で私は頭を下げる。
私とイリアスはルベル邸を辞す時間を迎えていた。

「色々話せて楽しかったわ。また来てちょうだい」

「いつでも歓迎するよ」

「お姉ちゃんバイバイ」

「うん、バイバイ」

「また来てよ。何なら、毎週末でもかまわないけど」

「そんなに来れるわけないだろ」

「ええ? アルも喜ぶのに。な、アル」

「うん!!」

「弟をだしに使うな」

「バレたか」

フェリクスに冷たい目線を送るイリアス。

「そんな怒るなよ。俺にだって、チャンスくれたっていいだろ。何せ生まれて初めての初恋なんだから、頑張るくらいいいだろ」

「お前の事情なんかどうだっていい。お前の問題に俺たちを付き合わせるな」

「冷たいこと言うなよ。今日からライバル同士になったことだし仲良くやろうぜ」 

「誰がするか」 

取り付く島もないイリアスに溜め息をつくと、フェリクスが肩を竦めて私を見た。

「カレン。この偏屈野郎が嫌になったら、いつでも俺のところに――――痛ってッ」

フェリクスがいきなり飛び上がった。

「また踏みやがって!」

「踏まれる場所に足をおいておく奴が悪い。――こんな奴無視して、とっとと行くぞ」

イリアスが私に視線を投げかけ、馬車に乗り込む。

「あっ、はい!」

私も慌ててあとに続く。
扉が閉まり、ゴトリと馬車が動き出す。

「また学校で」 

フェリクスが手を振ったので、私も振り返す。

「うん、今日はありがとう!」

「気をつけて」 

「さようなら」

「バイバーイ」

私はみんなに手を振り返す。
屋敷が見えなくなるところで、私は最後にもう一度だけ振り返った。四人は馬車が見えなくなるまで、手を振り続け見送ってくれたのだった。
そうして、向かえの席を見れば―――。

「イ、イリアス様?」

不機嫌そうなイリアスが座っている。
途中から急に不機嫌になったのよね。どうしたのかしら。
焦りを覚えつつ、はてなマークの顔の私をしばらくじっと見つめていたイリアスがはあと重い溜め息を吐いた。

「あ、あの……」

「その自覚のなさ、問題だぞ」

呆れたような視線を向けてくる。

「俺をやきもきさせるな」

はっ。私を見張っているのに疲れたのかしら。そんな心配、取り越し苦労よと身を乗り出したところで、私の額にイリアスが手をのばしてきた。

――コツンッ。

「――この馬鹿」

「あたっ」

不意を突かれた私の口から情けない声が出た。
手が視界から外れた瞬間、私の目にイリアスの口元が微笑っているように映ったのは、きっと私の気の所為。
人差し指で小突かれた額を抑えた私が再び目を移したときには、頬杖をついたイリアスが涼しい顔で窓の景色を見ていたから。
なんだったの、今の。小突かれた額は全然痛くない。悪女への罰としては軽いものね。
よくわからないけど、イリアスが機嫌が治ったなら、まあ、いっか。
私たちを乗せた馬車が緩やかに、王都への道を走りつづけていく。



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