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42.隠れキャラ
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お昼休み、校舎と校舎をつなぐ渡り廊下を歩いていた時だった。
バシャッという水音が聞こえたと思ったら、男子生徒の叫び声があがった。
「うおっ! 冷てえっ!」
「ご、ごめんなさい!!」
声がしたほうを見れば、渡り廊下から少し離れた場所に三人の男子生徒が立っていた。
そのうちのひとりが持っているのはじょうろ。その生徒と二人組の男子が向き合っているところから、お互いぶつかりあったらしい。
じょうろの中の水がかかったのか、二人組のうちのひとりの腕がびしょぬれになっていた。
「あーあ、びしょびしょじゃねえか。何すんだよ。水がかかったじゃねえか」
「ったく。どこ見て歩いてんだよ」
二人組がじょうろの少年を威圧するように肩をそびやかす。
「ほ、本当にごめんなさい。悪気はなかったんです」
じょうろの少年は長い前髪と顔を伏せているせいで、表情は伺えない。でも、真摯な声と背を縮こませ頭を下げる姿からは誠実さと心から申し訳ないと思ってる気持ちが伝わってくる。
「悪気がなかったら、許されるのかよ。おかげでこっちは制服が台無しだよ」
水がかかった男子生徒のブレザーの中身は、白いシャツではなく、見るからに高級な生地を使った一点物だとわかった。袖から覗くシャツの釦はただの釦ではなく、エメラルドのように光り輝いて見える。もうひとりの生徒のシャツも似たりよったりでお金がかかっているのがわかった。
対して、じょうろの少年はシンプルな白いシャツ。
二人組にとって、じょうろの少年の階級を判別するにはその出で立ちだけで充分だった。つまり、自分たちのほうが金持ちで爵位が上だと判断したらしい。
馬鹿にしたように少年の格好を上から下まで眺めると鼻で笑った。
「弁償しろよ」
のしかかるように一歩前に足を踏み出す。
ちんぴらなの? あれじゃあ、ぶつかって「おめえのせいで骨が折れたじゃねえか、治療代だしてもらおうか」っていう893と変わらないわね。
「弁償ですか?」
じょうろの少年が驚いて顔をあげる。
「ああ。制服を駄目にしたんだ。当然だろ?」
何が駄目にしたよ。水がかかっただけじゃない。乾かせば済む話じゃない。心の狭い男ね。離れたところで様子を見ていた私はひとり、憤慨する。
「弁償って……。でも……」
少年が戸惑ったように呟く。表情は見えなかったけど、明らかにおろおろしているのが手にとるようにわかった。
そんな少年の気の小ささを逆手に取るように、更に男子生徒たちが追い詰める。
「この高い宝石見えないのかよ。お前が身につけてる安物とは違うんだよ。弁償するのが普通だろ」
「……そんな高いの払えません」
少年が項垂れると、二人組のひとりが悪いことを思いついたように目の奥を光らせた。
「できないなら、そうだな。じゃあ代わりに土下座しろよ」
「そんな……」
土下座ですって?! 信じられない。
貴族の子息がきいて呆れるわ。あれじゃただの性格の悪い成金と同じじゃない。
何代にも続く貴族が当然持ってるはずの品格はどこにいったのかしら。
「ほら。どうすんだよ。お前のせいで、風邪ひいたらどうすんだよ。そしたら、弁償だけじゃ済まないからな。それを土下座だけで許してやるんだ。安いもんだろ」
二人組がにやにやした顔で待っていると、少年は覚悟を決めたのか、ぐっとじょうろを握ると腰を下ろす。
ええ?! しちゃうの、土下座!? 全然悪いことしてないのにどうして!?
ちょっと誰か止めなさいよ!
私は辺りをきょろきょろと見渡すが、お昼休みの時間も時間だけに、通る人もまばらだ。
二、三人立ち止まっている人もいるにはいたが、皆遠目で見ているだけである。
ええい! こうなったら仕方ない。
「ちょっと、待ちなさいよ!」
少年が膝をついた場所に急いで、駆け寄る。
「さっきから見てれば何なの? この人、何も悪くないでしょ」
「なんだ、お前?」
私はしゃがんで、少年の両肩に手を置く。
「さあ、起きて。土下座なんてすることないわ」
少年が伏せていた顔をあげる。
「あ――」
顔を見た瞬間、私は声をあげる。この顔、見たことあるわ。正確には前髪が邪魔してわからないけど、たしかに見たことがある。
えっと、どこで見覚えがあるんだっけ。
私が内心首を捻った次の瞬間、記憶が突如として降ってきた。
あー、この人!! 隠しキャラのレコ・カッセルじゃない!?
そうよ、そうじゃない? この前髪! この内気な性格! そしてこのじょうろ! 何から何までそっくりだわ。
メインキャラがいるなら、隠しキャラもいて当然。
なんで思い浮かばなかったんだろう。ていうか、この人、入学式の時目が合った人じゃない?
私が驚愕で、目を見開いていると、二人組が口を開く。
「突然、邪魔してきてなんだよ」
はっ。今は驚いている場合じゃなかったわ。こいつらをなんとかしないと。
私は立ち上がった。
「水がかかっただけなのに、土下座なんて大袈裟よ。ちゃんと謝ったじゃない」
二人組が私の上から下まで眺めてから、また鼻で笑った。
あ、こいつらまた見た目で人を判断したわね。ゲームのカレンのようにド派手なシャツにしとけば良かったかしらと頭をよぎる。そしたら、こいつらも多少は怯んだかしら。でも、あれ趣味じゃないんだよね。
「貧乏人同士、助け合いか。お仲間かばって、優しいじゃん」
お仲間って。あなたも同じ一生徒じゃない。なんで、同じ生徒同士で上下があるなんて考えるのよ。そんなの、おかしいでしょ。
私はレコをかばうように腕を広げる。
「もういいでしょ。悪気はなかったんだから。一緒に謝って気が済むなら、私も謝るから」
私はレコを振り返ってしゃがみ、腕に手をかける。
「もう大丈夫よ。早く立って」
見上げるレコの視線が私に注がれるのをはっきり感じた。光の加減か、前髪からちらりと覗く目が涙で濡れたようにきらめいて見える。
「あ、ありがとう」
声も掠れている。レコが立ち上がろうとした瞬間、私は二人組のひとりに引っ張られた。
「きゃっ」
男子生徒が私の腕を掴んでいた。
「許してやってもいいけど」
間近に迫った男子生徒の目が私の顔をじろじろと見て、ふーんと呟く。
「代わりに俺の女になれよ。そしたら許してやるよ」
「なっ――」
空いた口が塞がらない。あまりの突拍子のなさに声を出せずにいると、レコが立ち上がった。
「やめろ! その人を離せっ」
男子生徒に飛びかかり、私との間に割って入る。
「てめえ、何すんだ」
男子生徒が怒って、レコに向かって拳を振り上げる。
危ない! 私はとっさにレコを覆って目を瞑った。けれど、次の瞬間、お腹に圧がかかってぐんと後ろに引っ張られる。
背面全体を何か硬いような柔らかいような不思議な感触で包まれる。
何が何やらわからず、恐る恐る目を開ける。
果たしてそこには、男子生徒の拳を、横向きの姿勢で、片手で受け止めるイリアスが立っていた。
「イリアス様っ?!」
私は驚いて声をあげる。
目を開けた私は自分のお腹に回された腕に気付く。じゃあこの手は?
私は恐恐と首を上向かせた。
「ユーリウス?!」
私の頭のすぐ上にユーリウスの顔があった。私に腕を回して、ぴったりとくっつくように寄り添っている。
お腹に圧がかかったのは、ユーリウスの手が置かれ引っ張られたからだったのだ。背中にぶつかったのはもちろんユーリウスの体。
ユーリウスの肩越しには尻もちをついたレコが見えた。
どうやら、左手で私を引っ張り、右手はレコの背中か襟首を掴んで後ろに倒したのだろう。
急に現れた公爵家のふたりに、さっきまで不遜な態度をとっていたふたりが慌て始める。
中でも、拳をイリアスの左手で受け止められた生徒は目に見えて真っ青になった。
「ぺ、ぺ、ペルトサーク……」
さっきまで私たち相手に自分が上だと思っていたのに、この国で一、ニを争う家門のふたりが眼の前に現れたのだ。特に人を家柄で判断するような輩にとっては、是が非でも敵にはまわしたくない存在である。
「あ、あ、あの……」
脂汗を浮かべて、突き出した自分の拳と、イリアスを見比べる。
離してほしいようだが、イリアスにその素振りは見えない。
「聞き間違いだったら悪いんだが、もう一度言ってくれないか」
申し訳ない素振りなんて一ミリも見せず、イリアスが寒気を覚えるほどの冷たい眼差しを向ける。イリアスの全身からも仄かな冷気が漂っている。
対して男子生徒の顔からは汗が吹き出した。
「な、なにをでしょう」
「『代わりに俺の女に』って部分だ。もう一回言ってくれないか」
「『俺の女になれ』って言いましたが――。それが何か?」
男子生徒が機嫌をとるように、にへらと笑う。
「そうか――」
イリアスが静かに言葉を切る。けれど、次に口を開いた時には目の奥に青い炎が勢いよく燃えた。
「その言葉、もう一度言ってみろ。次言った時にはお前に決闘を申し込むと思え」
辺りが完全に凍った。
「ひいっ!!」
「二度と姿を現すな」
イリアスがぱっと拳を放す。その拍子に男子生徒が尻もちをついた。もうひとりの男子生徒が慌てて腕を引っ張って、無理矢理立たせる。
「行くぞっ」
ふたりは顔を蒼白にさせて、その場から駆け去った。
イリアスの眼中に既にふたりはいなかったようで、見送ることもせず、こちらに顔を向けた。
私たちを見て、ちょっとだけ目が険しくなる。男子生徒を相手にしていた時は、冷たいオーラを放っていたけど、今は何だか怒っている。
「いつまでそうしてるつもりだ?」
え? どういうこと? 私、ただ立っているだけなんですけど? もしや『何、ずっと突っ立ってんだよ、俺の目の前から消えてどっか行け』ってことかしら。
私が慌てて行動する前に、真上から声が響いた。
「なに? 俺にも決闘申し込むって? なら受けてたとうかな」
私のお腹に手を回し後ろに寄り添ったまま、ユーリウスが不敵に笑う。
あ、私に言ったんじゃなくて、ユーリウスに言ったのね。私は内心ほっとする。
それにしても、なんでこのふたり、こんなに仲が悪いのかしら。ヒロインまだ現れる前よ。既に本能で将来のライバルだって察知してるのかしら。
うん、きっとそうね。攻略対象者の能力は他の人と比べるとずば抜けているもの。
改めて敵にまわさないほうが良いと肝に銘じる。
イリアスが目線を落とし、ふっと嘆息する。けれど次に顔をあげた時には、瞳の奥が好戦的に輝いていた。私たちのほうへ歩を進め、目の前で立ち止まる。私の頭上越しにふたりの視線が絡みあい、ばちばちと火花が散った。
あ、髪に静電気がおこりそう。
イリアスが私の手首を握った。
「離せ」
「そっちこそ離せよ」
ふたりが無言で睨み合う。小さかった火花は今や爆発寸前。じりじりと私の肌まで焼けそう。お互いだけしかまるで世界にいないみたいに、見つめ合う。
間に挟まれた私、忘れてません?
いつの間にか気付けば、あたりはギャラリーだらけになっていた。
私たちを遠目で囲んで、ひそひそしあったり、面白そうに眺めている。
イリアスが横目で、それをすっと眺めたあと、ユーリウスに視線を戻す。
「見世物になる趣味がないなら、今日はここでやめておいたほうが、お互い賢明なようだが」
ユーリウスも野次馬に視線をやり、ちっと舌打ちをした。
「わかったよ。この場で決闘を始めるわけにもいかないしな。あんたを倒すのは、また別の機会にとっといてやるよ」
「それはこっちの台詞だ。あとから泣き面をかいても後悔するなよ」
イリアスでもこんな挑発的な言葉を口にするのね。よっぽどユーリウスが気に入らないのね。
それを受け、ユーリウスが不敵に笑った。でも目の奥を見れば獰猛な光が瞬いている。まるで、肉食獣のよう。
「痛い目見るのは、あんただと思うけど。今から首を洗っておくことをお奨めするよ」
周りの喧騒がさっきよりもざわざわしてきた。
周りに目を向けたユーリウスが再び舌打ちをすると、私からぱっと手を離した。
「――カレン、今度は邪魔がいないときに」
軽く手を振って、立ち去っていく。同時にイリアスも私から手を離した。
ユーリウスが進む道の途中で、地面に座り込んだままのレコとすれ違う。はっと気づいた私はすっかりその存在を忘れていたことに気づく。
「大丈夫っ?」
私は慌てて、しゃがみ込んだ。レコはまだ尻もちをついていた。地面を後ろ手でつきながら、私たちをぼうっと見ていたらしい。
「あ、はい」
私が近付くと慌てて頷く。目が合ったはずなのに、ぱっと反らされる。ちょっと耳が赤い。
そうそう。レコは恥ずかしがりやなのよね。画面上に写っていても、顔を俯かせて喋るタイプ。唯一表情を覗うことができたのが耳だった。恥ずかしがってたり、照れたり、焦ってたりすると、耳が赤くなる。
前髪のせいで顔が見えないレコだけど、その素顔がイケメンなのは言わずもがなの王道パターン。
ヒロインと仲良くなって励まされ、勇気付けられていくうちに恋に落ちていくレコ。
自信を取り戻したレコが前髪をばっさり切って、初めて素顔を明かすのが告白シーンだった。清らかな端正な顔立ちに、藍色の瞳が印象的だった。
そして、忘れてはならないのが、レコルートだと隠しキャラ共通で、悪役カレンが邪魔してこないことだ。多分理由はレコが地味キャラで身分も男爵と低いからだと思う。カレンの嫉妬心が刺激されないのだ。なんて自分勝手な女。
自分のことじゃないのに、ちょっと自己嫌悪に陥りそうになる。
「怪我がなくて、良かったわ」
ゲームで一番平和で穏便なレコルートを思い返して、微笑む。
イリアスがレコに近づき、手をのばす。
「大丈夫か?」
「あ、はいっ」
レコがびっくりしながら、イリアスの手を取る。
「ありがとうございます」
恐縮しながら礼を言う。
「いや」
イリアスはいつもの落ち着き払った彼に戻っていた。
私はそばに落ちていたじょうろに気付き拾った。
「ほら、これ。大事なものでしょ」
私が差し出すと、ちょっとびっくりしたように目を大きく広げた雰囲気があった。
「あ、ありがとうございます」
大事そうにじょうろを抱える。
「助けていただいて、本当にありがとうございました。それじゃあ」
ぺこりとお辞儀をして、慌てたように走り去っていく。人見知りで恥ずかしがりやのレコらしい去り方。
ヒロインと出会ったばかりの頃も、ニ、三語話しただけで、すぐに走り去ってしまうキャラだった。
ふふと思い出し笑いしそうになったけど、隣に立つ存在をはたと思い出す。
恐る恐る隣を覗う。
「あ、あの、ありがとうございます。助けてくれて……」
学園じゃ視界にも入れたくないだろうけど、一応礼は言わなきゃ。
イリアスがそんな私を見て、盛大にため息を吐く。
な、なに、怒ったの?
「なんで、こう次から次へと……」
え? なんのこと?
「うろちょろするな。目が離せないだろ」
目が離せないって、人を危険人物みたいに言わないでくれる?
「その上俺に全然会いに来ない。お昼だって。放課後だって。――余計な連中は来るのに……」
後半はぶつぶつと独りごちる感じになる。冷静沈着なイリアスからしてみれば、ちょっと感情が高ぶっているように見えた。そのことを本人も気付いたのか、ごまかすように咳払いをする。ちょっと顔を赤くして、私を睨んだ。
「少しは俺のそばにいろ」
はい、来たー! 攻略対象者ならではの無自覚攻撃! 『俺のそばにいろ』なんて、普通の女子なら勘違いしちゃうところだろうけど、私は騙されません!
相手がヒロインなら殺し文句にふらっと来ちゃったかもしれません。でも、私は残念ながら悪女! 己の分別は心得ています。
悪女に対する言葉に変換すれば、その意味は自分のそばで監視するから離れるなってことね。私がなにか企んでても気づかないから、自分の目のつくところにいろと、そういうことでしょ。まあ、自分勝手ね。
たしかにうろちょろしてたかもしれないけど、悪事をはかるためじゃないわよ。学園内を探検してただけよ。誤解しないでくれる?
顔赤くして言うところも、ヒロイン相手にデレてる場面にそっくりね。他の女性なら勘違いしちゃうところよ。相手が私で良かったわね。
私は身の潔白を主張しようと口を開きかけたけど、イリアスに遮られてしまった。
「――じゃ、俺は行く」
顔を背けるように身を翻し、足早に去っていく。後ろ姿で表情はわからなかったけど、耳が赤いのがわかる。表情を見られるのが恥ずかしくて去っていったのかと勘違いしてしまいそうだわ。紛らわしいわね。
声をかけるタイミングを逃した私は、彼の後ろ姿を見送ることしかできなかった。
その時、鐘が鳴った。
「いけない。授業が始まっちゃう」
いつの間にか、渡り廊下は人影でいっぱいだった。
ざわつく空気を残して、私は慌ててその場をあとにしたのだった。
バシャッという水音が聞こえたと思ったら、男子生徒の叫び声があがった。
「うおっ! 冷てえっ!」
「ご、ごめんなさい!!」
声がしたほうを見れば、渡り廊下から少し離れた場所に三人の男子生徒が立っていた。
そのうちのひとりが持っているのはじょうろ。その生徒と二人組の男子が向き合っているところから、お互いぶつかりあったらしい。
じょうろの中の水がかかったのか、二人組のうちのひとりの腕がびしょぬれになっていた。
「あーあ、びしょびしょじゃねえか。何すんだよ。水がかかったじゃねえか」
「ったく。どこ見て歩いてんだよ」
二人組がじょうろの少年を威圧するように肩をそびやかす。
「ほ、本当にごめんなさい。悪気はなかったんです」
じょうろの少年は長い前髪と顔を伏せているせいで、表情は伺えない。でも、真摯な声と背を縮こませ頭を下げる姿からは誠実さと心から申し訳ないと思ってる気持ちが伝わってくる。
「悪気がなかったら、許されるのかよ。おかげでこっちは制服が台無しだよ」
水がかかった男子生徒のブレザーの中身は、白いシャツではなく、見るからに高級な生地を使った一点物だとわかった。袖から覗くシャツの釦はただの釦ではなく、エメラルドのように光り輝いて見える。もうひとりの生徒のシャツも似たりよったりでお金がかかっているのがわかった。
対して、じょうろの少年はシンプルな白いシャツ。
二人組にとって、じょうろの少年の階級を判別するにはその出で立ちだけで充分だった。つまり、自分たちのほうが金持ちで爵位が上だと判断したらしい。
馬鹿にしたように少年の格好を上から下まで眺めると鼻で笑った。
「弁償しろよ」
のしかかるように一歩前に足を踏み出す。
ちんぴらなの? あれじゃあ、ぶつかって「おめえのせいで骨が折れたじゃねえか、治療代だしてもらおうか」っていう893と変わらないわね。
「弁償ですか?」
じょうろの少年が驚いて顔をあげる。
「ああ。制服を駄目にしたんだ。当然だろ?」
何が駄目にしたよ。水がかかっただけじゃない。乾かせば済む話じゃない。心の狭い男ね。離れたところで様子を見ていた私はひとり、憤慨する。
「弁償って……。でも……」
少年が戸惑ったように呟く。表情は見えなかったけど、明らかにおろおろしているのが手にとるようにわかった。
そんな少年の気の小ささを逆手に取るように、更に男子生徒たちが追い詰める。
「この高い宝石見えないのかよ。お前が身につけてる安物とは違うんだよ。弁償するのが普通だろ」
「……そんな高いの払えません」
少年が項垂れると、二人組のひとりが悪いことを思いついたように目の奥を光らせた。
「できないなら、そうだな。じゃあ代わりに土下座しろよ」
「そんな……」
土下座ですって?! 信じられない。
貴族の子息がきいて呆れるわ。あれじゃただの性格の悪い成金と同じじゃない。
何代にも続く貴族が当然持ってるはずの品格はどこにいったのかしら。
「ほら。どうすんだよ。お前のせいで、風邪ひいたらどうすんだよ。そしたら、弁償だけじゃ済まないからな。それを土下座だけで許してやるんだ。安いもんだろ」
二人組がにやにやした顔で待っていると、少年は覚悟を決めたのか、ぐっとじょうろを握ると腰を下ろす。
ええ?! しちゃうの、土下座!? 全然悪いことしてないのにどうして!?
ちょっと誰か止めなさいよ!
私は辺りをきょろきょろと見渡すが、お昼休みの時間も時間だけに、通る人もまばらだ。
二、三人立ち止まっている人もいるにはいたが、皆遠目で見ているだけである。
ええい! こうなったら仕方ない。
「ちょっと、待ちなさいよ!」
少年が膝をついた場所に急いで、駆け寄る。
「さっきから見てれば何なの? この人、何も悪くないでしょ」
「なんだ、お前?」
私はしゃがんで、少年の両肩に手を置く。
「さあ、起きて。土下座なんてすることないわ」
少年が伏せていた顔をあげる。
「あ――」
顔を見た瞬間、私は声をあげる。この顔、見たことあるわ。正確には前髪が邪魔してわからないけど、たしかに見たことがある。
えっと、どこで見覚えがあるんだっけ。
私が内心首を捻った次の瞬間、記憶が突如として降ってきた。
あー、この人!! 隠しキャラのレコ・カッセルじゃない!?
そうよ、そうじゃない? この前髪! この内気な性格! そしてこのじょうろ! 何から何までそっくりだわ。
メインキャラがいるなら、隠しキャラもいて当然。
なんで思い浮かばなかったんだろう。ていうか、この人、入学式の時目が合った人じゃない?
私が驚愕で、目を見開いていると、二人組が口を開く。
「突然、邪魔してきてなんだよ」
はっ。今は驚いている場合じゃなかったわ。こいつらをなんとかしないと。
私は立ち上がった。
「水がかかっただけなのに、土下座なんて大袈裟よ。ちゃんと謝ったじゃない」
二人組が私の上から下まで眺めてから、また鼻で笑った。
あ、こいつらまた見た目で人を判断したわね。ゲームのカレンのようにド派手なシャツにしとけば良かったかしらと頭をよぎる。そしたら、こいつらも多少は怯んだかしら。でも、あれ趣味じゃないんだよね。
「貧乏人同士、助け合いか。お仲間かばって、優しいじゃん」
お仲間って。あなたも同じ一生徒じゃない。なんで、同じ生徒同士で上下があるなんて考えるのよ。そんなの、おかしいでしょ。
私はレコをかばうように腕を広げる。
「もういいでしょ。悪気はなかったんだから。一緒に謝って気が済むなら、私も謝るから」
私はレコを振り返ってしゃがみ、腕に手をかける。
「もう大丈夫よ。早く立って」
見上げるレコの視線が私に注がれるのをはっきり感じた。光の加減か、前髪からちらりと覗く目が涙で濡れたようにきらめいて見える。
「あ、ありがとう」
声も掠れている。レコが立ち上がろうとした瞬間、私は二人組のひとりに引っ張られた。
「きゃっ」
男子生徒が私の腕を掴んでいた。
「許してやってもいいけど」
間近に迫った男子生徒の目が私の顔をじろじろと見て、ふーんと呟く。
「代わりに俺の女になれよ。そしたら許してやるよ」
「なっ――」
空いた口が塞がらない。あまりの突拍子のなさに声を出せずにいると、レコが立ち上がった。
「やめろ! その人を離せっ」
男子生徒に飛びかかり、私との間に割って入る。
「てめえ、何すんだ」
男子生徒が怒って、レコに向かって拳を振り上げる。
危ない! 私はとっさにレコを覆って目を瞑った。けれど、次の瞬間、お腹に圧がかかってぐんと後ろに引っ張られる。
背面全体を何か硬いような柔らかいような不思議な感触で包まれる。
何が何やらわからず、恐る恐る目を開ける。
果たしてそこには、男子生徒の拳を、横向きの姿勢で、片手で受け止めるイリアスが立っていた。
「イリアス様っ?!」
私は驚いて声をあげる。
目を開けた私は自分のお腹に回された腕に気付く。じゃあこの手は?
私は恐恐と首を上向かせた。
「ユーリウス?!」
私の頭のすぐ上にユーリウスの顔があった。私に腕を回して、ぴったりとくっつくように寄り添っている。
お腹に圧がかかったのは、ユーリウスの手が置かれ引っ張られたからだったのだ。背中にぶつかったのはもちろんユーリウスの体。
ユーリウスの肩越しには尻もちをついたレコが見えた。
どうやら、左手で私を引っ張り、右手はレコの背中か襟首を掴んで後ろに倒したのだろう。
急に現れた公爵家のふたりに、さっきまで不遜な態度をとっていたふたりが慌て始める。
中でも、拳をイリアスの左手で受け止められた生徒は目に見えて真っ青になった。
「ぺ、ぺ、ペルトサーク……」
さっきまで私たち相手に自分が上だと思っていたのに、この国で一、ニを争う家門のふたりが眼の前に現れたのだ。特に人を家柄で判断するような輩にとっては、是が非でも敵にはまわしたくない存在である。
「あ、あ、あの……」
脂汗を浮かべて、突き出した自分の拳と、イリアスを見比べる。
離してほしいようだが、イリアスにその素振りは見えない。
「聞き間違いだったら悪いんだが、もう一度言ってくれないか」
申し訳ない素振りなんて一ミリも見せず、イリアスが寒気を覚えるほどの冷たい眼差しを向ける。イリアスの全身からも仄かな冷気が漂っている。
対して男子生徒の顔からは汗が吹き出した。
「な、なにをでしょう」
「『代わりに俺の女に』って部分だ。もう一回言ってくれないか」
「『俺の女になれ』って言いましたが――。それが何か?」
男子生徒が機嫌をとるように、にへらと笑う。
「そうか――」
イリアスが静かに言葉を切る。けれど、次に口を開いた時には目の奥に青い炎が勢いよく燃えた。
「その言葉、もう一度言ってみろ。次言った時にはお前に決闘を申し込むと思え」
辺りが完全に凍った。
「ひいっ!!」
「二度と姿を現すな」
イリアスがぱっと拳を放す。その拍子に男子生徒が尻もちをついた。もうひとりの男子生徒が慌てて腕を引っ張って、無理矢理立たせる。
「行くぞっ」
ふたりは顔を蒼白にさせて、その場から駆け去った。
イリアスの眼中に既にふたりはいなかったようで、見送ることもせず、こちらに顔を向けた。
私たちを見て、ちょっとだけ目が険しくなる。男子生徒を相手にしていた時は、冷たいオーラを放っていたけど、今は何だか怒っている。
「いつまでそうしてるつもりだ?」
え? どういうこと? 私、ただ立っているだけなんですけど? もしや『何、ずっと突っ立ってんだよ、俺の目の前から消えてどっか行け』ってことかしら。
私が慌てて行動する前に、真上から声が響いた。
「なに? 俺にも決闘申し込むって? なら受けてたとうかな」
私のお腹に手を回し後ろに寄り添ったまま、ユーリウスが不敵に笑う。
あ、私に言ったんじゃなくて、ユーリウスに言ったのね。私は内心ほっとする。
それにしても、なんでこのふたり、こんなに仲が悪いのかしら。ヒロインまだ現れる前よ。既に本能で将来のライバルだって察知してるのかしら。
うん、きっとそうね。攻略対象者の能力は他の人と比べるとずば抜けているもの。
改めて敵にまわさないほうが良いと肝に銘じる。
イリアスが目線を落とし、ふっと嘆息する。けれど次に顔をあげた時には、瞳の奥が好戦的に輝いていた。私たちのほうへ歩を進め、目の前で立ち止まる。私の頭上越しにふたりの視線が絡みあい、ばちばちと火花が散った。
あ、髪に静電気がおこりそう。
イリアスが私の手首を握った。
「離せ」
「そっちこそ離せよ」
ふたりが無言で睨み合う。小さかった火花は今や爆発寸前。じりじりと私の肌まで焼けそう。お互いだけしかまるで世界にいないみたいに、見つめ合う。
間に挟まれた私、忘れてません?
いつの間にか気付けば、あたりはギャラリーだらけになっていた。
私たちを遠目で囲んで、ひそひそしあったり、面白そうに眺めている。
イリアスが横目で、それをすっと眺めたあと、ユーリウスに視線を戻す。
「見世物になる趣味がないなら、今日はここでやめておいたほうが、お互い賢明なようだが」
ユーリウスも野次馬に視線をやり、ちっと舌打ちをした。
「わかったよ。この場で決闘を始めるわけにもいかないしな。あんたを倒すのは、また別の機会にとっといてやるよ」
「それはこっちの台詞だ。あとから泣き面をかいても後悔するなよ」
イリアスでもこんな挑発的な言葉を口にするのね。よっぽどユーリウスが気に入らないのね。
それを受け、ユーリウスが不敵に笑った。でも目の奥を見れば獰猛な光が瞬いている。まるで、肉食獣のよう。
「痛い目見るのは、あんただと思うけど。今から首を洗っておくことをお奨めするよ」
周りの喧騒がさっきよりもざわざわしてきた。
周りに目を向けたユーリウスが再び舌打ちをすると、私からぱっと手を離した。
「――カレン、今度は邪魔がいないときに」
軽く手を振って、立ち去っていく。同時にイリアスも私から手を離した。
ユーリウスが進む道の途中で、地面に座り込んだままのレコとすれ違う。はっと気づいた私はすっかりその存在を忘れていたことに気づく。
「大丈夫っ?」
私は慌てて、しゃがみ込んだ。レコはまだ尻もちをついていた。地面を後ろ手でつきながら、私たちをぼうっと見ていたらしい。
「あ、はい」
私が近付くと慌てて頷く。目が合ったはずなのに、ぱっと反らされる。ちょっと耳が赤い。
そうそう。レコは恥ずかしがりやなのよね。画面上に写っていても、顔を俯かせて喋るタイプ。唯一表情を覗うことができたのが耳だった。恥ずかしがってたり、照れたり、焦ってたりすると、耳が赤くなる。
前髪のせいで顔が見えないレコだけど、その素顔がイケメンなのは言わずもがなの王道パターン。
ヒロインと仲良くなって励まされ、勇気付けられていくうちに恋に落ちていくレコ。
自信を取り戻したレコが前髪をばっさり切って、初めて素顔を明かすのが告白シーンだった。清らかな端正な顔立ちに、藍色の瞳が印象的だった。
そして、忘れてはならないのが、レコルートだと隠しキャラ共通で、悪役カレンが邪魔してこないことだ。多分理由はレコが地味キャラで身分も男爵と低いからだと思う。カレンの嫉妬心が刺激されないのだ。なんて自分勝手な女。
自分のことじゃないのに、ちょっと自己嫌悪に陥りそうになる。
「怪我がなくて、良かったわ」
ゲームで一番平和で穏便なレコルートを思い返して、微笑む。
イリアスがレコに近づき、手をのばす。
「大丈夫か?」
「あ、はいっ」
レコがびっくりしながら、イリアスの手を取る。
「ありがとうございます」
恐縮しながら礼を言う。
「いや」
イリアスはいつもの落ち着き払った彼に戻っていた。
私はそばに落ちていたじょうろに気付き拾った。
「ほら、これ。大事なものでしょ」
私が差し出すと、ちょっとびっくりしたように目を大きく広げた雰囲気があった。
「あ、ありがとうございます」
大事そうにじょうろを抱える。
「助けていただいて、本当にありがとうございました。それじゃあ」
ぺこりとお辞儀をして、慌てたように走り去っていく。人見知りで恥ずかしがりやのレコらしい去り方。
ヒロインと出会ったばかりの頃も、ニ、三語話しただけで、すぐに走り去ってしまうキャラだった。
ふふと思い出し笑いしそうになったけど、隣に立つ存在をはたと思い出す。
恐る恐る隣を覗う。
「あ、あの、ありがとうございます。助けてくれて……」
学園じゃ視界にも入れたくないだろうけど、一応礼は言わなきゃ。
イリアスがそんな私を見て、盛大にため息を吐く。
な、なに、怒ったの?
「なんで、こう次から次へと……」
え? なんのこと?
「うろちょろするな。目が離せないだろ」
目が離せないって、人を危険人物みたいに言わないでくれる?
「その上俺に全然会いに来ない。お昼だって。放課後だって。――余計な連中は来るのに……」
後半はぶつぶつと独りごちる感じになる。冷静沈着なイリアスからしてみれば、ちょっと感情が高ぶっているように見えた。そのことを本人も気付いたのか、ごまかすように咳払いをする。ちょっと顔を赤くして、私を睨んだ。
「少しは俺のそばにいろ」
はい、来たー! 攻略対象者ならではの無自覚攻撃! 『俺のそばにいろ』なんて、普通の女子なら勘違いしちゃうところだろうけど、私は騙されません!
相手がヒロインなら殺し文句にふらっと来ちゃったかもしれません。でも、私は残念ながら悪女! 己の分別は心得ています。
悪女に対する言葉に変換すれば、その意味は自分のそばで監視するから離れるなってことね。私がなにか企んでても気づかないから、自分の目のつくところにいろと、そういうことでしょ。まあ、自分勝手ね。
たしかにうろちょろしてたかもしれないけど、悪事をはかるためじゃないわよ。学園内を探検してただけよ。誤解しないでくれる?
顔赤くして言うところも、ヒロイン相手にデレてる場面にそっくりね。他の女性なら勘違いしちゃうところよ。相手が私で良かったわね。
私は身の潔白を主張しようと口を開きかけたけど、イリアスに遮られてしまった。
「――じゃ、俺は行く」
顔を背けるように身を翻し、足早に去っていく。後ろ姿で表情はわからなかったけど、耳が赤いのがわかる。表情を見られるのが恥ずかしくて去っていったのかと勘違いしてしまいそうだわ。紛らわしいわね。
声をかけるタイミングを逃した私は、彼の後ろ姿を見送ることしかできなかった。
その時、鐘が鳴った。
「いけない。授業が始まっちゃう」
いつの間にか、渡り廊下は人影でいっぱいだった。
ざわつく空気を残して、私は慌ててその場をあとにしたのだった。
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