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24.令嬢ミレイア
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移動教室から帰るとき、私はイリアスを見かけた。
ちょうど外の渡り廊下を歩いているところで、建物の中にいる私の存在には気付いていないみたいだった。
「イリアス様ぁ~」
イリアスの後ろにくっつくように、女子生徒たちが追いかけている。
顔を見れば、昨日入学式で見たリーダー格の女の子。周りを牽制するようにふんぞり返っていたけど、今は媚びるみたいにイリアスに話しかけている。周りの女の子も頬を染めてイリアスを見つめるものの、その女の子以上にはイリアスに近付かない。いわゆる取り巻きという感じ。
「イリアス様、次の教室までご一緒してもよろしいかしら」
その台詞から、どうやらイリアスとリーダー格の女の子は同じクラスらしいことがわかった。
女子生徒が伺うように上目遣いで見つめるものの、イリアスはちらりと視線を送っただけで、返事を返さないまま前を向いて歩き続ける。リーダー格の女の子は構わずに口を開く。
「わたくし、マダム・パルの新作展示会のチケットを手に入れましたのよ。貴族の間ですっごく人気で、マダム・パルの常連と選ばれた人しか入れないとか。今回は男性もののデザインも手掛けたとかで、すっごく注目されておりますのよ」
周りの女子から「すご~い」とか「さすがミレイア様ですわ」とかの合いの手が入る。
半分本音、半分よいしょの感じがする。
「貴重なものですから、誰と行くか本当に迷っているのですが……」
そこでちらりと伺うようにイリアスを見る。
「イリアス様が行きたいとおっしゃるなら、このチケット譲ってあげてもかまいませんわ。ただし、ペアですから、当然わたくしも一緒に――」
イリアスがぴたりと足を止め、氷のような温度をたたえた瞳で相手を見下ろす。
「悪いが俺はそういうものに、興味がない。別のものを誘ってくれ」
「そんな。マダム・パルにはご興味ないなんて。残念ですわ。別のものですか。それでは観劇などいかがでしょう」
私にはイリアスが言う「もの」と、ミレイアという少女が言う「もの」が全く違うものに聞こえるんだけど、気のせいかしら。
周りの少女が反応していないのを見て、え? 私だけの思い込み?と、摩訶不思議になる。
イリアスはそれ以上ミレイアに構わず、表情を変えずに歩き去っていく。
「お待ちになって、イリアス様ぁ」
ミレイアたちが後を追っていく。
さすが鉄壁のイリアス。ゲームでは最初、常にあれが平常運転だった。
冷たい対応にちょっとへこむけど、その壁が徐々に崩れていくのを見るのが楽しいんだよね。
当時が懐かしくて、うんうんと頷く。
それにしても、ミレイア、メンタル強そうだったな。さすが、女子たちを引き連れているだけはある。
ゲームのままだったら、あそこにいたのは間違いなくカレンだったに違いない。
そう考えると、ミレイアを見るのは何か複雑だった。
その時、予鈴が鳴った。
「はっ、いけない! 授業が始まっちゃう」
私はばたばたと慌ただしくその場をあとにしたのだった。
ちょうど外の渡り廊下を歩いているところで、建物の中にいる私の存在には気付いていないみたいだった。
「イリアス様ぁ~」
イリアスの後ろにくっつくように、女子生徒たちが追いかけている。
顔を見れば、昨日入学式で見たリーダー格の女の子。周りを牽制するようにふんぞり返っていたけど、今は媚びるみたいにイリアスに話しかけている。周りの女の子も頬を染めてイリアスを見つめるものの、その女の子以上にはイリアスに近付かない。いわゆる取り巻きという感じ。
「イリアス様、次の教室までご一緒してもよろしいかしら」
その台詞から、どうやらイリアスとリーダー格の女の子は同じクラスらしいことがわかった。
女子生徒が伺うように上目遣いで見つめるものの、イリアスはちらりと視線を送っただけで、返事を返さないまま前を向いて歩き続ける。リーダー格の女の子は構わずに口を開く。
「わたくし、マダム・パルの新作展示会のチケットを手に入れましたのよ。貴族の間ですっごく人気で、マダム・パルの常連と選ばれた人しか入れないとか。今回は男性もののデザインも手掛けたとかで、すっごく注目されておりますのよ」
周りの女子から「すご~い」とか「さすがミレイア様ですわ」とかの合いの手が入る。
半分本音、半分よいしょの感じがする。
「貴重なものですから、誰と行くか本当に迷っているのですが……」
そこでちらりと伺うようにイリアスを見る。
「イリアス様が行きたいとおっしゃるなら、このチケット譲ってあげてもかまいませんわ。ただし、ペアですから、当然わたくしも一緒に――」
イリアスがぴたりと足を止め、氷のような温度をたたえた瞳で相手を見下ろす。
「悪いが俺はそういうものに、興味がない。別のものを誘ってくれ」
「そんな。マダム・パルにはご興味ないなんて。残念ですわ。別のものですか。それでは観劇などいかがでしょう」
私にはイリアスが言う「もの」と、ミレイアという少女が言う「もの」が全く違うものに聞こえるんだけど、気のせいかしら。
周りの少女が反応していないのを見て、え? 私だけの思い込み?と、摩訶不思議になる。
イリアスはそれ以上ミレイアに構わず、表情を変えずに歩き去っていく。
「お待ちになって、イリアス様ぁ」
ミレイアたちが後を追っていく。
さすが鉄壁のイリアス。ゲームでは最初、常にあれが平常運転だった。
冷たい対応にちょっとへこむけど、その壁が徐々に崩れていくのを見るのが楽しいんだよね。
当時が懐かしくて、うんうんと頷く。
それにしても、ミレイア、メンタル強そうだったな。さすが、女子たちを引き連れているだけはある。
ゲームのままだったら、あそこにいたのは間違いなくカレンだったに違いない。
そう考えると、ミレイアを見るのは何か複雑だった。
その時、予鈴が鳴った。
「はっ、いけない! 授業が始まっちゃう」
私はばたばたと慌ただしくその場をあとにしたのだった。
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