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アマリア・アルバートン/フローラ・エインズワース
枷 ※
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「んっ…ああっ…っ…」
自らの言葉を着実に実現するかのように体の隅々まで指先でたどり、手で触れ、唇を寄せる。まるでこの体を知り尽くしているように敏感な場所には舌を這わされた。そのたびに肌がざわめき、自分のものとは思えないような声が漏れてしまう。
心は恐怖で包まれているのに、それすらなんの障壁にもならないほどに体を暴かれていく。
「あぁ、よかったよ…アマリアを娼婦のように扱っていたようではないようだ。美しい。この体にぶたれたり縛られたりした痕でも残っていたらすぐにでも首を刎ねに行っていたよ」
妖艶に微笑んでいるのに紡がれる言葉の残酷さに体がぶるりと震えた。
「それでも…この体を好き勝手に堪能していたかと思うと怒りが収まらないけれどね…」
「どうかっ…おゆるしくだ…さい…っ」
涙がシーツにこぼれ落ちようと公爵様が止まってくれることはなかった。
黒い瞳はまっすぐに私を見つめ、その少しの変化も見逃さないかのように冷静だった。
「でも、いいよ。また私の形に変えてあげるからね。全て上書きして、これまでのことを何もかも忘れさせてあげよう。名残などあるほうが余計苦しいだろう?忘れてしまえば楽になれるからね」
「ひぅっ…」
胸の先端を口に含まれ、体がびくりと跳ねた。怖い…怖い…。
この体は公爵夫人のものであっても、私の心は夫人のものではない。公爵様の求めることは立場上当然のことであるけれど、フローラとしての記憶しかない私には受け止めきれない…
「こんなに震えて…初めての夜でもアマリアは私のために喜んで体を開いてくれたのに…この体には何も私のことが残っていないのかと思うと…悲しいね…」
その切ない声に思わずはっとする。自分の振る舞いが公爵様を傷つけているのだと思うと罪悪感が胸に押し寄せた。
「…かまわないよ…もし二度とアマリアの記憶が残らなくても、私は君だけを愛し抜くから…」
「…っ…ごめんなさいっ…」
「ああ…いいんだよ…私のかわいいアマリア…君のせいじゃない、謝らせたいわけじゃないんだ…」
頬につたう涙のせいで張り付いた髪を大きな手が払う。優しい仕草に公爵様を見上げる。そして、視線が重なった瞬間
「あああっ」
公爵様はなんの躊躇もなく最奥まで貫いた。
悲鳴に近い声を上げた後は、唇がぱくぱくと動くだけで音にすらならなかった。
「謝る必要はないよ、アマリア。もう二度と私以外の誰も、君を抱くことなんてないのだから」
シーツに投げ出された両手に指を絡められて、シーツに縫い付けられる。ぴったりと重なった下半身からじんじんとする痛みと衝撃が伝わってきた。
助けて…助けて…
ゆっくりと体が揺さぶられ、やがてその動きが激しくなる。次々と溢れる涙を唇で受け止められ、ついばむような口づけが降り注ぐ。
「アマリア…アマリア…愛している…」
その言葉の熱さを感じれば感じるほど、心が凍り付いていく。もうこのまま何も感じることのない氷へと変わってしまえればいいのに。
「言ってごらん、アマリア。私を愛していると」
非情にも公爵様は私がただの人形であることにすらお許しをくださらなかった。
「私に許しを請うていたろう…?何のために、誰のために許しがほしかったんだい…?」
その言葉で脳裏に浮かぶ私を慕ってくれた人達が浮かんだ。優しいみんな、美しい村々…私の愛しいラウル…
「それがどうなってもいいのなら、心を殺してしまうといい。でも君の言葉ひとつでそれが守れるというなら、安いもんだろう…?」
強くありたいと願うのに。心に忠実でありたいと思うのに、もうそれは許されなかった。
この体に根付いてしまった自分の心を守ることより、守らなければならないものたちがいる。
「あ…愛しています…ヘンドリック…」
「いい子だね、アマリア。私の首に手を回して。私が果てるまで、言い続けるんだ。愛していると」
天井から糸で繋がれた操り人形のように、ただ公爵様の言葉に従うだけだった。
少しの隙間もなく密着しているのに、公爵様の腕は私の背中をさらに締め付ける。
「愛しています…愛しています…」
「アマリア…アマリア…」
公爵様が体を震わせたとき、無意識に身をよじって逃げようとした。その腰を両手で捕まれ、体の奥に精が放たれたことがわかった。
涙も、声も涸れ果てていた。
「私のかわいいアマリア…やっと…やっと…私の腕に戻ってきてくれた…」
甘い声でささやき、キスを降らせる公爵様の声も涙に濡れているような気がした。
その時はもう既に瞼は重く、開き続けることはできなかった。
「愛しているよ、アマリア。おかえり…もうどこにも行かせはしない。誰にも奪わせはしないよ…」
その言葉を遠のく意識の中で聞きながら、閉じ込められた檻に鍵のかけられた音が響いた。
自らの言葉を着実に実現するかのように体の隅々まで指先でたどり、手で触れ、唇を寄せる。まるでこの体を知り尽くしているように敏感な場所には舌を這わされた。そのたびに肌がざわめき、自分のものとは思えないような声が漏れてしまう。
心は恐怖で包まれているのに、それすらなんの障壁にもならないほどに体を暴かれていく。
「あぁ、よかったよ…アマリアを娼婦のように扱っていたようではないようだ。美しい。この体にぶたれたり縛られたりした痕でも残っていたらすぐにでも首を刎ねに行っていたよ」
妖艶に微笑んでいるのに紡がれる言葉の残酷さに体がぶるりと震えた。
「それでも…この体を好き勝手に堪能していたかと思うと怒りが収まらないけれどね…」
「どうかっ…おゆるしくだ…さい…っ」
涙がシーツにこぼれ落ちようと公爵様が止まってくれることはなかった。
黒い瞳はまっすぐに私を見つめ、その少しの変化も見逃さないかのように冷静だった。
「でも、いいよ。また私の形に変えてあげるからね。全て上書きして、これまでのことを何もかも忘れさせてあげよう。名残などあるほうが余計苦しいだろう?忘れてしまえば楽になれるからね」
「ひぅっ…」
胸の先端を口に含まれ、体がびくりと跳ねた。怖い…怖い…。
この体は公爵夫人のものであっても、私の心は夫人のものではない。公爵様の求めることは立場上当然のことであるけれど、フローラとしての記憶しかない私には受け止めきれない…
「こんなに震えて…初めての夜でもアマリアは私のために喜んで体を開いてくれたのに…この体には何も私のことが残っていないのかと思うと…悲しいね…」
その切ない声に思わずはっとする。自分の振る舞いが公爵様を傷つけているのだと思うと罪悪感が胸に押し寄せた。
「…かまわないよ…もし二度とアマリアの記憶が残らなくても、私は君だけを愛し抜くから…」
「…っ…ごめんなさいっ…」
「ああ…いいんだよ…私のかわいいアマリア…君のせいじゃない、謝らせたいわけじゃないんだ…」
頬につたう涙のせいで張り付いた髪を大きな手が払う。優しい仕草に公爵様を見上げる。そして、視線が重なった瞬間
「あああっ」
公爵様はなんの躊躇もなく最奥まで貫いた。
悲鳴に近い声を上げた後は、唇がぱくぱくと動くだけで音にすらならなかった。
「謝る必要はないよ、アマリア。もう二度と私以外の誰も、君を抱くことなんてないのだから」
シーツに投げ出された両手に指を絡められて、シーツに縫い付けられる。ぴったりと重なった下半身からじんじんとする痛みと衝撃が伝わってきた。
助けて…助けて…
ゆっくりと体が揺さぶられ、やがてその動きが激しくなる。次々と溢れる涙を唇で受け止められ、ついばむような口づけが降り注ぐ。
「アマリア…アマリア…愛している…」
その言葉の熱さを感じれば感じるほど、心が凍り付いていく。もうこのまま何も感じることのない氷へと変わってしまえればいいのに。
「言ってごらん、アマリア。私を愛していると」
非情にも公爵様は私がただの人形であることにすらお許しをくださらなかった。
「私に許しを請うていたろう…?何のために、誰のために許しがほしかったんだい…?」
その言葉で脳裏に浮かぶ私を慕ってくれた人達が浮かんだ。優しいみんな、美しい村々…私の愛しいラウル…
「それがどうなってもいいのなら、心を殺してしまうといい。でも君の言葉ひとつでそれが守れるというなら、安いもんだろう…?」
強くありたいと願うのに。心に忠実でありたいと思うのに、もうそれは許されなかった。
この体に根付いてしまった自分の心を守ることより、守らなければならないものたちがいる。
「あ…愛しています…ヘンドリック…」
「いい子だね、アマリア。私の首に手を回して。私が果てるまで、言い続けるんだ。愛していると」
天井から糸で繋がれた操り人形のように、ただ公爵様の言葉に従うだけだった。
少しの隙間もなく密着しているのに、公爵様の腕は私の背中をさらに締め付ける。
「愛しています…愛しています…」
「アマリア…アマリア…」
公爵様が体を震わせたとき、無意識に身をよじって逃げようとした。その腰を両手で捕まれ、体の奥に精が放たれたことがわかった。
涙も、声も涸れ果てていた。
「私のかわいいアマリア…やっと…やっと…私の腕に戻ってきてくれた…」
甘い声でささやき、キスを降らせる公爵様の声も涙に濡れているような気がした。
その時はもう既に瞼は重く、開き続けることはできなかった。
「愛しているよ、アマリア。おかえり…もうどこにも行かせはしない。誰にも奪わせはしないよ…」
その言葉を遠のく意識の中で聞きながら、閉じ込められた檻に鍵のかけられた音が響いた。
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