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エインズワース辺境伯
ふさわしいもの
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ラウルは自身の言葉通り、フローラをただの愛妾として側に置くつもりではなく、ゆくゆくは辺境伯夫人として迎えたいという意向を家臣となる者達にも、騎士団の前でも、使用人達の前でさえ朗々と宣言した。
その事態にフローラは蒼白となったが、フローラ以外の人物で、ラウルの宣言に否定的な態度を示した者はいなかった。
そもそも絶対的な信頼を得ているラウルの意向に背こうとする考えは誰にもなかった。
加えて、城に長く仕えている者達はラウルの不遇を知っているだけに感涙するほどだった。
噂好きの女達でさえ、貴族位だけの女よりも、たとえ出自がわからなくても、ここで領民のために働くことを厭わないフローラがふさわしいと好意的に出るほどだった。
フローラが薬草師として働き始めてからは、城下の村々の医師や薬草師の見習いへも惜しみなくその知識を与えることで薬草の手配が大幅に改善されて、城下の村々でも重篤でない怪我や病気はそれらで対応できるようになってきていた。
フローラは更に家庭でも簡単にできる薬草の栽培や調合を教えようと試行錯誤を始めていたし、娼館の女達と話をしてからは、一般的には高くて購入できない避妊薬の代わりに、それに似た効果があるといわれる薬草の栽培にも手をつけ始めた。
人々はその功績を自らのものと決して言わず、これまで受けた恩を返しているだけと繰り返すフローラのことを胸に刻み続けてきた。
フローラにこの辺境の地に残り、我らが敬愛する領主の伴侶となってほしいと心から思っていた。
そう言葉にしても、フローラは困ったように笑顔を作り、ありがとうと返すだけで、具体的な変化を望まなかった。
それが数日、数週間と続き、そしてまたひと月が経とうとすると、城中の者達がやきもきとし始めた。
特に騎士団の団員達は、ラウルの訓練が日ごとに激しくなることに疲労を超えて危機感すら感じ始めていた。
ラウルとしても、日々お互い忙しくあるために多くの時間を割くことができず、最近ではフローラが城内だけではなく、近くの村まで出かけることも増えたために顔さえ見ることもできなくなる始末だった。
痺れを切らしたラウルがある晩、フローラがケヴィン医師と看護師や見習い薬草師と共に近くの村への往診から帰ってくるのを待ち伏せ、一行が城に戻ったのを確認するやいなや、迅速に動き出し、フローラだけを抱えてさっさと自分の部屋へと連れ帰った。
そこに残された者達やそれを目撃した者達は、その手速さにしばし呆気に取られた後、顔を見合わせて笑った。
「ラ、ラウル、おろしてください」
「ならん。そなたはすぐに逃げるからな。話ならゆっくり聞いてやるから、ともかく俺の部屋に来い」
「なりません、私室に招くような時間帯ではございません」
「そなたが嫌だというなら何もせん。それに、今更なことだぞ、誰もそんな目で見ている者はいないからな」
廊下ですれ違う使用人達も騎士達も皆笑顔で道を開けていく。ラウルはそれすら気にしないでどんどんと進むがフローラはいたたまれない気持ちで顔を覆って小さな抵抗を示していた。
やがで城の最上階にあるラウルの私室に着き、夜間の警護の騎士が扉を開けると、ずかずかと中へ入っていった。
後ろで扉が閉まり、ラウルはフローラをソファへと下ろした。
フローラの手に小さく切り傷ができていたり、赤くなっているのを見つけると、その手を包み込んで、フローラの前に跪いた。
「ラウル、何を」
「こんなになるまで働かずともよいと言っても、きっとそなたはやめないのだろうな」
「え?」
「俺の業とはわかっている。愛しい者を守りたい、ずっと城の中で何の不安も不自由もなく過ごしてほしいと願うことは、俺の勝手な考えなのだとわかっている。だから、フローラの自由にしてやりたい。やりたいことがあるなら、思う存分してみるといい。だが、頼むから危険なことには関わらないでくれ」
「ありがとう、ラウル。ええ、約束します」
ラウルがフローラの手に口づけた後、ゆっくりと二人は唇と重ねた。
重ねただけの口づけをすると、ラウルはフローラの横に腰をおろして、大きく息を吐いた。
フローラは、ラウルの顔色を注意深く観察して、額に手を当てた。
「ラウル?お疲れなのではないですか?このところ忙しかったのでしょう?」
「これぐらいのことはいつものことだ。しかし、今はそれどころではない心労を抱えている」
「…それは…私のせいですか?」
「ほう。自覚があったのなら、話は早いな」
意地悪く笑みを深くすると、フローラが困ったように眉を下げたのを見て、ラウルは吹き出してフローラの肩を引き寄せた。
「難しい顔をするな。フローラの考えも大事にしたい。だから、無理を言うつもりはない。だが、俺と過ごす時間が全くないというのはなんらかの解決策が必要だろう?」
「ふふふっ。どんな方法をお考えなのですか?」
フローラが体の力を抜いてラウルに寄りかかったのを、心地よく感じながら、美しい髪を手で梳いた。
「朝でも、昼でも、夜でもいい。共に時間を過ごそう。食事でも、夜食でもなんでも構わない」
「でも、ラウルは日中はお仕事でほとんど執務室で簡単にお食事を済ませてしまうでしょう?夜までそれが続くこともあると聞きました」
「そう、それでだ。朝食ならどうだ」
「ご指定の時間に食堂に行けばよいのですか?」
「…フローラ。俺も散々、色恋に疎いだの、女心を理解していないだのと罵られてきたが、そなたも大概だと思うぞ」
「え?」
「ここで朝食を取ろうと言っているのだ」
フローラは少し悩んだ顔をして、ぱっと表情を明るくした。
「わかりました。私が朝食を運んでくればよいのですね」
「いや…そうではなくてだな…夜をここで過ごせば自然と朝は一緒に過ごせるだろう」
フローラはその真意をようやく理解すると、自分の今までの勘違いに気づいて顔を赤く染めた。
「想いが通じ合ったと喜んでから、一度も夜を共にできない私の気持ちを少しは汲んでくれないか、フローラ」
「で、ですが、ここは城です。フェネルの邸宅とは違いますでしょう?」
「なんだ。フェネルに行けばよいというのか?月に何度も往復することになるか、いいのか?」
「いえ、そういうことではなく。夜に領主の私室に忍び込むようなことはできません…」
「人の目を盗む必要はない。もうフローラを妻に迎える話はほとんど通っている。それに、そなたが毎日熱心に働き、その誠実さを体現してくれるお陰で何の反対すらない」
「それは、表立って言えないだけかもしれません。それに、まだ大切な方の意見を聞いておりませんでしょう?」
「誰だ、その大切な方というのは」
フローラの口からそんな言葉を聞くと思っていなかったラウルは眉間に皺を寄せた。
「あなたのご子息です」
「…あぁ、セザールか…」
「このようなことは家族の間にも大きな亀裂を生じかねません。ご子息としっかりお話をされた後でないと」
ラウルは頭をかいて、低く唸った。
「フローラの言うことはわかる。それは一般的にはそうだろう。だが、あいつのことは…説明するのは難しいが、あまり気にしなくていい。それにまもなくあいつもこちらへ戻る予定だったから、その時にきちんと話をすることにしよう」
「わかりました」
「それで、フローラ」
ラウルはフローラを軽々と抱き上げて膝に乗せた。白い頬を両手で覆うとしっかりと目を合わせて続けた。
「そなたはもし、セザールが反対したらどうしようと思っているのだ。それこそ夜に忍んで来るつもりはないのだろう?」
「その時は…」
「フローラ。先に言っておく。もう、俺と共に生きるのだと、腹をくくってくれ。誰に何を言われようとも、俺と共にあると。俺はもう、そのつもりでいる」
「ラウル…」
「そなたのことだ。身を引いて、陰からでも想いを寄せていられたらなどと殊勝なことを考えたいたのだろう?」
ずばり言い当てられた様子で、フローラは目線を泳がせた。
「フローラはそれでよくとも、俺はそうはいかない。やっと、やっと出会えたのだ。そばにいてほしい」
「ラウル…」
そっとフローラの額や頬に口づけを降らせる。フローラは嬉しさのあまり、目に涙を浮かべていた。
「フローラの青い瞳が潤むと、海のようだな。美しい限りだ」
ラウルが目を細めると、フローラはふふっと笑った。そして、ラウルの頬を指でなぞり楽しそうに言った。
「ラウルの瞳も綺麗ですよ。初めて見た時からそう思っていました。美しい緋色だと。でも、今ならわかります。あなたの瞳は夕陽の色です。人々を最後まで照らし続ける夕陽と同じ。あなたの温かい心、そのものです」
ラウルは目を見開き、唇を震わせた。フローラがどうしたのかと首を傾げると、ラウルはフローラを抱き寄せてその肩に顔をうずめた。
「ラウル…?」
フローラの柔らかい手がラウルの背中を何度もさすり続けた。ラウルは、自分の凍りついた心がフローラの存在そのものによって溶かされていくのを感じていた。
かつては、人の血を吸った色と罵られ、恐怖の象徴とまでされた赤い瞳を。たった一人、愛しいと思った者に、大切に思われることの喜びに、胸に寄せる激流のような感覚の中で震えていた。
「フローラ、愛している。フローラだけを愛するとここに誓う」
抱きしめる力を更に強めてラウルは想いを告げた。
背中を撫でていたフローラの手が止まり、たくましい背中に両腕が回り、力が込められた。
「私も…ラウルを愛しています…」
耳に届いたその響きにラウルは身の内から溢れる衝動に突き立てられた。
フローラの華奢な体を抱き上げると、ベッドへと躊躇なく進み、二人でもつれるように倒れ込んだ。
その事態にフローラは蒼白となったが、フローラ以外の人物で、ラウルの宣言に否定的な態度を示した者はいなかった。
そもそも絶対的な信頼を得ているラウルの意向に背こうとする考えは誰にもなかった。
加えて、城に長く仕えている者達はラウルの不遇を知っているだけに感涙するほどだった。
噂好きの女達でさえ、貴族位だけの女よりも、たとえ出自がわからなくても、ここで領民のために働くことを厭わないフローラがふさわしいと好意的に出るほどだった。
フローラが薬草師として働き始めてからは、城下の村々の医師や薬草師の見習いへも惜しみなくその知識を与えることで薬草の手配が大幅に改善されて、城下の村々でも重篤でない怪我や病気はそれらで対応できるようになってきていた。
フローラは更に家庭でも簡単にできる薬草の栽培や調合を教えようと試行錯誤を始めていたし、娼館の女達と話をしてからは、一般的には高くて購入できない避妊薬の代わりに、それに似た効果があるといわれる薬草の栽培にも手をつけ始めた。
人々はその功績を自らのものと決して言わず、これまで受けた恩を返しているだけと繰り返すフローラのことを胸に刻み続けてきた。
フローラにこの辺境の地に残り、我らが敬愛する領主の伴侶となってほしいと心から思っていた。
そう言葉にしても、フローラは困ったように笑顔を作り、ありがとうと返すだけで、具体的な変化を望まなかった。
それが数日、数週間と続き、そしてまたひと月が経とうとすると、城中の者達がやきもきとし始めた。
特に騎士団の団員達は、ラウルの訓練が日ごとに激しくなることに疲労を超えて危機感すら感じ始めていた。
ラウルとしても、日々お互い忙しくあるために多くの時間を割くことができず、最近ではフローラが城内だけではなく、近くの村まで出かけることも増えたために顔さえ見ることもできなくなる始末だった。
痺れを切らしたラウルがある晩、フローラがケヴィン医師と看護師や見習い薬草師と共に近くの村への往診から帰ってくるのを待ち伏せ、一行が城に戻ったのを確認するやいなや、迅速に動き出し、フローラだけを抱えてさっさと自分の部屋へと連れ帰った。
そこに残された者達やそれを目撃した者達は、その手速さにしばし呆気に取られた後、顔を見合わせて笑った。
「ラ、ラウル、おろしてください」
「ならん。そなたはすぐに逃げるからな。話ならゆっくり聞いてやるから、ともかく俺の部屋に来い」
「なりません、私室に招くような時間帯ではございません」
「そなたが嫌だというなら何もせん。それに、今更なことだぞ、誰もそんな目で見ている者はいないからな」
廊下ですれ違う使用人達も騎士達も皆笑顔で道を開けていく。ラウルはそれすら気にしないでどんどんと進むがフローラはいたたまれない気持ちで顔を覆って小さな抵抗を示していた。
やがで城の最上階にあるラウルの私室に着き、夜間の警護の騎士が扉を開けると、ずかずかと中へ入っていった。
後ろで扉が閉まり、ラウルはフローラをソファへと下ろした。
フローラの手に小さく切り傷ができていたり、赤くなっているのを見つけると、その手を包み込んで、フローラの前に跪いた。
「ラウル、何を」
「こんなになるまで働かずともよいと言っても、きっとそなたはやめないのだろうな」
「え?」
「俺の業とはわかっている。愛しい者を守りたい、ずっと城の中で何の不安も不自由もなく過ごしてほしいと願うことは、俺の勝手な考えなのだとわかっている。だから、フローラの自由にしてやりたい。やりたいことがあるなら、思う存分してみるといい。だが、頼むから危険なことには関わらないでくれ」
「ありがとう、ラウル。ええ、約束します」
ラウルがフローラの手に口づけた後、ゆっくりと二人は唇と重ねた。
重ねただけの口づけをすると、ラウルはフローラの横に腰をおろして、大きく息を吐いた。
フローラは、ラウルの顔色を注意深く観察して、額に手を当てた。
「ラウル?お疲れなのではないですか?このところ忙しかったのでしょう?」
「これぐらいのことはいつものことだ。しかし、今はそれどころではない心労を抱えている」
「…それは…私のせいですか?」
「ほう。自覚があったのなら、話は早いな」
意地悪く笑みを深くすると、フローラが困ったように眉を下げたのを見て、ラウルは吹き出してフローラの肩を引き寄せた。
「難しい顔をするな。フローラの考えも大事にしたい。だから、無理を言うつもりはない。だが、俺と過ごす時間が全くないというのはなんらかの解決策が必要だろう?」
「ふふふっ。どんな方法をお考えなのですか?」
フローラが体の力を抜いてラウルに寄りかかったのを、心地よく感じながら、美しい髪を手で梳いた。
「朝でも、昼でも、夜でもいい。共に時間を過ごそう。食事でも、夜食でもなんでも構わない」
「でも、ラウルは日中はお仕事でほとんど執務室で簡単にお食事を済ませてしまうでしょう?夜までそれが続くこともあると聞きました」
「そう、それでだ。朝食ならどうだ」
「ご指定の時間に食堂に行けばよいのですか?」
「…フローラ。俺も散々、色恋に疎いだの、女心を理解していないだのと罵られてきたが、そなたも大概だと思うぞ」
「え?」
「ここで朝食を取ろうと言っているのだ」
フローラは少し悩んだ顔をして、ぱっと表情を明るくした。
「わかりました。私が朝食を運んでくればよいのですね」
「いや…そうではなくてだな…夜をここで過ごせば自然と朝は一緒に過ごせるだろう」
フローラはその真意をようやく理解すると、自分の今までの勘違いに気づいて顔を赤く染めた。
「想いが通じ合ったと喜んでから、一度も夜を共にできない私の気持ちを少しは汲んでくれないか、フローラ」
「で、ですが、ここは城です。フェネルの邸宅とは違いますでしょう?」
「なんだ。フェネルに行けばよいというのか?月に何度も往復することになるか、いいのか?」
「いえ、そういうことではなく。夜に領主の私室に忍び込むようなことはできません…」
「人の目を盗む必要はない。もうフローラを妻に迎える話はほとんど通っている。それに、そなたが毎日熱心に働き、その誠実さを体現してくれるお陰で何の反対すらない」
「それは、表立って言えないだけかもしれません。それに、まだ大切な方の意見を聞いておりませんでしょう?」
「誰だ、その大切な方というのは」
フローラの口からそんな言葉を聞くと思っていなかったラウルは眉間に皺を寄せた。
「あなたのご子息です」
「…あぁ、セザールか…」
「このようなことは家族の間にも大きな亀裂を生じかねません。ご子息としっかりお話をされた後でないと」
ラウルは頭をかいて、低く唸った。
「フローラの言うことはわかる。それは一般的にはそうだろう。だが、あいつのことは…説明するのは難しいが、あまり気にしなくていい。それにまもなくあいつもこちらへ戻る予定だったから、その時にきちんと話をすることにしよう」
「わかりました」
「それで、フローラ」
ラウルはフローラを軽々と抱き上げて膝に乗せた。白い頬を両手で覆うとしっかりと目を合わせて続けた。
「そなたはもし、セザールが反対したらどうしようと思っているのだ。それこそ夜に忍んで来るつもりはないのだろう?」
「その時は…」
「フローラ。先に言っておく。もう、俺と共に生きるのだと、腹をくくってくれ。誰に何を言われようとも、俺と共にあると。俺はもう、そのつもりでいる」
「ラウル…」
「そなたのことだ。身を引いて、陰からでも想いを寄せていられたらなどと殊勝なことを考えたいたのだろう?」
ずばり言い当てられた様子で、フローラは目線を泳がせた。
「フローラはそれでよくとも、俺はそうはいかない。やっと、やっと出会えたのだ。そばにいてほしい」
「ラウル…」
そっとフローラの額や頬に口づけを降らせる。フローラは嬉しさのあまり、目に涙を浮かべていた。
「フローラの青い瞳が潤むと、海のようだな。美しい限りだ」
ラウルが目を細めると、フローラはふふっと笑った。そして、ラウルの頬を指でなぞり楽しそうに言った。
「ラウルの瞳も綺麗ですよ。初めて見た時からそう思っていました。美しい緋色だと。でも、今ならわかります。あなたの瞳は夕陽の色です。人々を最後まで照らし続ける夕陽と同じ。あなたの温かい心、そのものです」
ラウルは目を見開き、唇を震わせた。フローラがどうしたのかと首を傾げると、ラウルはフローラを抱き寄せてその肩に顔をうずめた。
「ラウル…?」
フローラの柔らかい手がラウルの背中を何度もさすり続けた。ラウルは、自分の凍りついた心がフローラの存在そのものによって溶かされていくのを感じていた。
かつては、人の血を吸った色と罵られ、恐怖の象徴とまでされた赤い瞳を。たった一人、愛しいと思った者に、大切に思われることの喜びに、胸に寄せる激流のような感覚の中で震えていた。
「フローラ、愛している。フローラだけを愛するとここに誓う」
抱きしめる力を更に強めてラウルは想いを告げた。
背中を撫でていたフローラの手が止まり、たくましい背中に両腕が回り、力が込められた。
「私も…ラウルを愛しています…」
耳に届いたその響きにラウルは身の内から溢れる衝動に突き立てられた。
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