どこまでも続く執着 〜私を愛してくれたのは誰?〜

あさひれい

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エインズワース辺境伯

突き動かされるまま ※

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ラウルはフローラに少しの隙も与えなかった。どの戦場でも敵の動きを見過ごさず、次にどう動くか、どうすればその先に行けるかを読むのは得意だった。

まだ困惑の表情を浮かべたまま、それでもまっすぐにラウルを見上げるフローラの顔の横に両腕をつき、体重をかけずに覆いかぶさるとフローラの瞳に月明りが反射して揺らめいた。



「…怖いか?」



「いいえ。大公様を怖いと思ったことは一度もありません。でも…」



「なんだ」



「私は、誰ともわからない存在です。その私とこのようなことになるのは」



「俺の不名誉になると思うのか」



「はい」



ラウルはフローラの投げ出された右手をすくいとり、その指先に口づけた。

思わずフローラが手を引こうとしたのをラウルが逃がさなかった。



「フローラ…本心を言ってほしい…無理強いはしたくない」



「…っ」



口を開きかけたフローラは逡巡して、視線をそらした。顔を横にずらした瞬間、一筋の涙がこぼれた。

ラウルはその涙にぎくりと体が強張り、かつての記憶がよみがえっていた。



「お慕いしております…でも…っ」



フローラの言葉を最後まで聞くことなく、ラウルはフローラに口づけた。突然のことに反射的に逃げようとするフローラの頬を両手で包み、その口内を深く探り続けた。互いの唾液が口の端からこぼれ落ちても、それを気にする余裕すらなかった。



「フローラ、フローラ。恐れるな。失った過去の分、これからの未来を俺が共に創る。俺と一緒に生きてくれ」



「私で…よろしいのですか…?」



「そうだ。フローラでなければならない。なぜ、このように惹かれるのかはわからない。だが、俺の本能がフローラでなければ意味がないと言っている」



「大公様…」



「ラウルだ。もう誰も呼ぶことになくなった俺の名を、呼ぶ者になってほしい」



「…ラウル」



強い意志を持って発せられた言葉にラウルは突き動かされるようにフローラの華奢な体を抱きしめた。その背中に細い腕が回り、小さな力がこもったことを喜びの中で感じ取っていた。



「すまない。先に謝っておく。加減がきくかはわからない。辛ければ俺を殴っても蹴っても構わない」



フローラが何かを発する前に、ラウルはフローラの夜着に手をかけ、そのまま力任せにずり下げた。胸や腰に当たり、びりびりと破れるような音がしたがそれも構わずに素早く引き下ろしてしまうとフローラの足からそれを引き抜いて放り投げた。

突然のことに驚いて両手で胸を覆っているうちに、下着までたやすく脱がせるとあっというまにフローラを裸にしてしまった。フローラが恥ずかしさのあまりシーツをたぐりよせようとしていると、ラウルは着ていた夜着とトラウザーズを取り去ると、シーツにくるまるフローラをそのまま抱きしめた。

体温が数度も上がっているような錯覚を起こすほどに、ラウルの体が熱を持っていた。



「大公様っ…お待ちに」



「また戻っているぞ」



自身の膝にフローラを抱え込み、耳元でささやくと、フローラは息をのんだ。

ラウルはそのまま首筋に唇を這わせ、真っ白な肩に引き寄せられるように口づけては痕を残し、フローラが必死につかんでいるシーツを片手で簡単に取り去った。



「あっ」



「フローラ、隠さなくていい。誰よりも美しい。俺に、全てを見せてくれ」



空中に伸ばされた腕をラウルが引き寄せ、美しく細い腕に音を立てて口づけていく。

そのままベッドにフローラを倒し、胸の頂きを口に含むと、フローラの体がびくっと跳ねた。ラウルは優しく胸を揉みながら、舌先でその甘さを堪能した。



「ふぅっ…あっ…あっ…」



フローラから嬌声が途切れることなく溢れてくるようになると、ラウルはそっと下腹部に手を伸ばした。優しくそこを撫でて、フローラの脚を大きく開かせると、身構えられる前に自分の腰を滑り込ませて、蜜口をゆっくりと撫で上げた。



「やっ」



「よかった…濡れているな」



「そんなこと、おっしゃらないでください」



「だが、俺が入るにはきっと痛むだろうから、よくほぐしておかないとな」



「んんっ」



押し込められた指の感覚に、フローラは背中を反らせてその波をこらえた。

ラウルは自分の前に差し出されるように突き出された胸を再びついばむとフローラの中から蜜液が溢れてくる。

くちゅくちゅと音を立ててくると、指を二本に増やした。フローラの温かさに包まれながら、中が少しずつほぐれてくるのがわかった。

自分の眼下で蕩けるような表情をしたまま、時折快感に体をびくびくと震わせるフローラに衝動的に食らいつきたいのを必死に抑え、体の強張りが完全に抜けるまで、辛抱強く待った。



フローラの両手が力なくシーツの上に投げ出され、全身から緊張が抜けると、ラウルは自分のものを濡れそぼったそこに当て、ゆっくりと腰を進めた。



「あっ…」



「息を…吐け、フローラ」



少し入っただけでぐっと押し戻されるように収縮してしまう反応に、ラウルはフローラの頬を優しく撫でながら言った。

フローラは震える手でラウルの両肩をつかみ、必死に息を吐いている。

少しずつ腰を進めていくとフローラが甘い声を漏らし、それに本能的にラウルは腰を一気に突き立ててしまった。



「あああっ」



「くっ」



奥にいきなり突き当たった衝撃でフローラは全身に流れた快感の波に体を震わせた。とっさに握りしめたラウルの両肩にはひっかき傷が薄く浮かび上がっていた。



「入ったぞ、フローラ」



「…嬉しいです、ラウル」



どちらからともなく唇を重ね、お互いの思いがしっかりと溶け合ったことを感じ入った。

やがてラウルが緩く腰を前後に動かし始めると、重ねた唇からフローラの甘い声が漏れ始める。

ラウルの動きが次第に激しくなるともはや唇を重ねているのは不可能なほどに、フローラの体は大きく揺さぶられ始めた。



「あっ…ああっ…ラウル…んんっ」



これまで決して見たことのない妖艶な姿に虜にされたラウルは無心に腰を動かし続けた。

フローラが奥を突かれた瞬間に体を震わせたのを確認すると、さらに速く動き続け、その最奥に精を放った。



「フローラ…」



吐精の余韻が残る中、焦点の合わない目でどこかを見つめているフローラにのしかかるように倒れこんだ。



「愛している」



腕の中に抱きしめて、フローラの耳元でささやくと、フローラが首に腕を回した。

弱弱しい力がこめられた。なにかを言おうとフローラの口は動いたが、音にはならなかった。

それを全て理解した上でラウルはフローラを抱きしめ続けた。
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