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同じ鼓動※

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アマリアは目を覚まし、叫んでしまいそうになったが、慌てて口元を手で塞いだ。

閉められたカーテンの隙間から、朝日が差し込んでいる。

明るくなり始めた部屋は、灯りはなくともその全てを目を凝らさずとも見える。



これは…これは…なぜなの‥‥?

朝を迎えるたびにどうして、こんなに困ったことばかり起こるの…?



アマリアはまたヘンドリックの腕の中で目を覚ました。昨日の朝は向かい合って寝ていたが、今朝はヘンドリックは仰向けになっている。しかし、その右腕はアマリアの首の下から右わき腹まで回り、アマリアの細い腰をしっかりその大きな手がつかんでいた。アマリアはヘンドリックの傍らにぴったりと体を寄せているのだ。



そして、アマリアは自分の体の感覚から、とても認められないことになっていると掛布の下を見なくてもわかっていた。



やっぱり…私…裸だわ…!!



昨夜のことを懸命に思い出そうとする。

湯あみの後、ヘンドリック様をお迎えするまで休ませていただこうとベッドに横になって、またそのまま寝てしまったのね。でも、私、裸では寝ていなかったはずなのに。

そして、昨日はいつもの寝間着ではなく、恥ずかしい下着を身に着けて寝たことを思い出した。



あぁ、なんてこと。あんな頼りないリボン一つしかなかったもの。きっと寝ている間にはだけてしまったんだわ…



アマリアはごそごそと体をよじらせ、シーツに手を這わせて、脱げ落ちてしまった下着がないか探していた。



「おはよう、アマリア」



不意にヘンドリックが声をかけてきたので、アマリアは体をびくっとさせて、おそるおそるその顔を見上げる。



「お、おはようございます、ヘンドリック様…あの…少し目をつぶっていてくださいませんか…?あと、この手をお離しくださいますか?」



アマリアが恥を忍んで言ったのに、ヘンドリックは目をつぶるどころか、体をアマリアの方に起こした。アマリアの体に回っていた腕はなくなったが、ヘンドリックはそれを自分の頭を支えるように添えて、左腕をアマリアの体に回し、ぐっと抱き寄せた。



「どうしたの、アマリア」



そして、アマリアはもう一度驚愕した。



ヘンドリック様も、裸だわ…!!



アマリアの下半身に触れた感覚でわかった。ヘンドリックは昨日は上半身は裸だったが、トラウザーズは履いていたのに、何がどうして二人で裸で抱き合っているのか、アマリアには全くわからなかった。

しかも、昨日手でトラウザーズ越しに触れた熱いものが、アマリアの肌に直接触れているのだ。混乱しないはずはなかった。



「ヘンドリック様、私、今何も着ていないのです…私のものを探しますので、少しだけ目をつぶってくださいませ」



「あぁ、あのかわいらしい下着なら、アマリアの部屋だよ?必要だった?」



「???」



アマリアはぱくぱくと口を開くものの、言葉が音になって出てこなかった。



「ほら、言っただろう?アマリアは私に触れられることにも、触れることにも慣れる練習がいるって。それに、私も何も着ていないんだから、気持ちも状況も一緒だよ、恥ずかしがることはない」



と、とても気持ちが同じとは思えません…とはさすがに口にできなかった。



しかし、混乱するアマリアとは対照的に落ち着き払ったヘンドリックは、アマリアの優美な髪を撫で、その額にキスをした。そのまま頬にも愛おしげにキスをされて、少しだけ、このキスにも慣れた気がする…とその柔らかく幸せな感触に微笑みそうになって、再び固まった。

ヘンドリックがそのままアマリアの白い首筋にキスを何度も落としながら更に下へと唇を移動させていったからだった。



アマリアは慌てて、胸元の掛布をめくられないように手をおさえた。

しかし、アマリアの抵抗など全く気にも留めず、ヘンドリックは掛布を取り去ったどころか、そのままベッドの下に投げてしまった。白いシーツの上に裸身の二人が現れる。



「きゃあっ」



アマリアは恥ずかしさで思わず身をよじり、うつ伏せになりベッドをずり上がろうとした。

その背後でヘンドリックが微かに笑ったような声がして、アマリアの細い腰を捕まれた。



「アマリアは背中も美しいね。手に肌が吸い付くようだよ」



そのまま腰を引き寄せられて、背中に音を立てながら何度もキスをされる。時折、針で刺されたようなチクリとした痛みが走る。何が起きているのか、ヘンドリックが何をしているのか気になって仕方ないが、振り返ると自分の胸をさらけ出すことになってしまうと思うと恥ずかしすぎて到底できなかった。



しかし、ヘンドリックの唇が腰から更に下に移る気配がして、アマリアは慌てて体を起こした。

そんな不浄の場所をヘンドリックにさらすわけにはいかない。

身をよじったせいで、ヘンドリックの顔の前には、アマリアの滑らかな腹部があった。初心な反応を楽しんでいたヘンドリックは微笑みながら、アマリアの腰を捕まえたまま、その赤く染まった顔を見つめた。

あれほど恥ずかしくて隠していたはずのふっくらとした胸もあらわになっている。



「綺麗だよ、アマリア。何も恥ずかしがらなくていい」



「ヘンドリック様、もうおやめになって…」



怯えたようにそっと声を出すアマリアを引き寄せ、座った姿勢でぎゅっと抱きしめる。ここ数日ですっかり嗅ぎ慣れたヘンドリックの香りがアマリアを包み、体の強張りが少し解れた。

小さく息を吐くアマリアを更に強く抱きしめ、その頭にキスをする。



こんな…こんな恥ずかしいこと…裸のまま抱き合っているのに、どうしてこんなに幸せな気持ちになるのかしら…



アマリアがその頬をヘンドリックの胸にすり寄せると、ヘンドリックはアマリアの頬を両手で包み、その空のように澄んだ瞳をのぞきこんだ。



「愛しているよ、アマリア。私をこんな気持ちにしてくれるのは、君一人だけだ」



「‥‥私も、幸せです…とても…」



アマリアの吐息のような告白に、ヘンドリックの漆黒の瞳が揺れる。そっと優しく頬にキスをして、流れるようにアマリアをベッドに横たわらせ、その上に覆いかぶさる。

行き場をなくしていたアマリアの手をそっと包み、そのままヘンドリックの胸元に押しつけた。



「ほら?私の鼓動がわかるかい?アマリアと同じ気持ちなんだよ。とても、とても幸せで、こんなにも胸が高まる」



「私と…同じ…?」



「こうして、隔てるものなく触れ合えるのは、恋人同士だけ。特別な証拠だよ。何も怖いことはないから、私に身を任せて」



「はい…ヘンドリック様…」



アマリアの体の緊張が解かれると、ヘンドリックはその指先にキスをして、優しく微笑んだ。

ヘンドリックが再びアマリアの白い首筋に唇を寄せ、その砂糖菓子のような甘さを堪能した。

右手でふっくらと膨らんだアマリアの胸に触れるとアマリアがぴくりと体が跳ねさせた。笑みを深くして、そのまま躊躇なく、小さな尖りを口に含むとアマリアが小さく息を漏らした。

舌でそれを味わいながら、軽く吸い、少しずつ先端が固くなる様子をその少しも見落とすことのないようにゆっくり、ゆっくりと味わった。

アマリアの呼吸が時折乱れる。小さく細かく途切れて、こらえきれなかった甘い声が少しずつ溢れてくる。行き場を失ったアマリアの手が、すがるようにヘンドリックの腕をつかむ。その痛みにすらならないアマリアの必死に込めた力が、ヘンドリックの胸を昂ぶらせる。

左右の先端がすっかり立ち上がり、柔らかい胸がヘンドリックの唾液に濡れた。アマリアは初めて知るお酒に酔うようなふわふわとした感覚に、瞳は焦点も合わず、ゆらゆらと揺れている。

ふと脚をすり合わせ、青い瞳がはっとしたように光を持つ。



「ま、待ってください、ヘンドリック様。私、月のものがきたみたいです」



「どうした?」



「今、その、出てきてしまったみたいで…」



ヘンドリックの目には触れさせたくなくて、体を起こそうとしたが、ヘンドリックは微笑むだけで、その体を動かそうとはしてくれない。このままではシーツが汚れてしまう…と困惑していると、ヘンドリックがアマリアの脚の間に腰を割り込ませてしまった。



「あっ…だめです、汚れてしまいます」



「アマリア?落ち着いて、これは月のものではないよ」



「え、あっ」



ヘンドリックはその指をアマリアの下腹部に沿わせ、花弁の間をするっと指でなぞり溢れてきたものをすくってしまう。アマリアは突然のことに目を丸くする。



「ほら、血ではないだろう?」



確かにヘンドリックの指には血はついていないが、透明なもので濡れていた。そもそも、決して見せたくはなかった部分をいとも簡単に暴かれた上、触れられて、そのうえ自分の体から出てきたらしいものまで見せられ、アマリアの理解は限界を超えてしまっていた。



「これは、アマリアの体が私に触れられることを幸せだと感じると溢れる。嬉しいよ、アマリア」



妖艶な表情でまっすぐに見つめられ、アマリアは何も考えれれないでいたが、ヘンドリックを喜ばせたらしいことがわかって胸の奥が満たされたような気持ちになった。



「ヘンドリック様が嬉しいと、私も嬉しいです」



素直にそう口にすると、ヘンドリックは一瞬動きを止めたかと思ったが、すぐにアマリアに覆いかぶさり痛いほどに抱きしめてきた。ベッドと厚いヘンドリックの体に挟まれ、ぎゅうぎゅうに腕を体に回され、呼吸が止まりそうなほどだった。そして、今はアマリアの下半身にヘンドリックの熱いものが押しつけられ、ひとつにぴったりと重なり、お互いの体温を分け合って溶け合ってしまうのではないかと思えるほどだった。





その時、部屋の扉をノックする音が響いた。



「はぁ、夢のような時間はあっという間に終わるね。出仕などしたくないくらいだよ」



名残惜しそうに体を起こし、アマリアの顔をのぞきこんだヘンドリックは額にキスをすると優しく言った。



「でも、結婚式を挙げて、蜜月になったら、きちんと休んで二人だけの時間をたくさんとるからね」



「はい…っっ」



アマリアは言葉を続けようとしたが、体を起こしたヘンドリックの裸体を初めて見てしまい声を失った。



ヘンドリックは、ベッドサイドのテーブルに置かれていたガウンを羽織り、同じようにアマリアのものと思われる淡い真珠色のガウンを手に取ると、そっとアマリアにかけてくれた。その紐を結んでやり、アマリアの髪をガウンの外へと流した。



「今日も忙しくなるだろうから、無理はしないようにね」



アマリアの手を取り、キスをすると、部屋を出て行ってしまった。



アマリアはまだ呆然と、ベッドの上で身動き一つできずにいた。



あ、あんな大きいものを…こ、ここに…?



思わず自分の下腹部を触れようとして、そこがしっとりと濡れていることに改めて気づいて、また絶句する。





エルザが続きの扉をノックして朝の支度を促すまで、アマリアはヘンドリックの香りが強く残るベッドの上で固まり続けていた。
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