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憧れの家族になるために
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公爵邸に向かう馬車の中で、ヘンドリックがアマリアにこれからのことを少し話していい?と切り出し、アマリアは姿勢を正した。
「そんなに緊張しなくてもいいよ。うちで学ぶことも多いけれど、結婚するまでに家の者たちにも慣れていてほしいから、気軽にね」
「は、はい、ヘンドリック様。頑張ります」
膝の上で手を握りしめる。
アマリア付きの侍女もなく、たった一人で公爵家で向かうのだ。緊張しないわけはないが、スタンリール家の恥とならないよう、できることを懸命にしなければならない。
「大丈夫。私がいるから。私はいつでもアマリアの味方だよ。困ったことがあれば、なんでも言ってほしい。最初は戸惑うことも多いだろうからね、遠慮してはいけないよ?」
「はい、ありがとうございます」
ヘンドリックが微笑みかけると、やっぱりまだぽーっとその美貌に見惚れてしまう。しかも低く通る声で甘い言葉を次から次へとかけてくれるのだ。恋愛は小説でしか経験したことのないアマリアには、刺激が強すぎだといつも感じていた。
「あの…不躾かもしれませんが…どうして私だったのでしょうか…?」
アマリアはずっと胸に燻っていた疑問をヘンドリックにぶつけた。
ヘンドリックはそっとアマリアを引き寄せて、その見事な金髪を撫でる。
「一目で好きなったことが信じられない?私は人を見る目はあるんだよ?これでも公爵だからね。魑魅魍魎のすくう世界で生きなければならないから、自然とその力はついてくる。その私が、アマリアが私と生涯を共にする価値のなる女性だと見抜いただけだよ」
「私、そんな価値なんて…」
うつむくアマリアにヘンドリックは優しく続ける。
「それに、そうやって結ばれた人たちをアマリアはよく知っているだろう?」
アマリアの頭にすぐに浮かんだのは、大好きな両親だ。母がデビューの夜に父を見初めて結婚に至った。その衝動性とは対照的に、いつまでもお互いを深く愛し、尊敬しあっている。アマリアの憧れの二人だ。
「はい。私の憧れです。」
「私も侯爵と夫人の関係はとても羨ましく思うよ。貴族の社会で、あそこまでお互いを想い合える夫婦も珍しい。私も、アマリア以外には誰も愛さないと誓ったろう?お二人のようになれると思っているよ」
アマリアはぱぁっと目を輝かせて、ヘンドリックを見つめる。
「私も、両親のように愛し愛される夫婦になれるよう頑張ります」
「ありがとう。愛しいアマリア。私がたくさん愛情を注ぐから、覚悟しておくといいよ」
妖艶に微笑む姿に、またうっかり魅せられてアマリアは何も言えなくなってしまった。11歳も年上のヘンドリックには、自分はただの幼いだけのように見られているのではないか、何をどう応えればいいのかさえわからず、あたふたとしてしまう自分が恥ずかしくてならなかった。
「そう、それで、王都の我が家には、私の姉のクリスティがいる。知っているかと思うが、足を悪くしていて、誰かに嫁ぐ予定はないんだ。でも、一人で自立するだけの術は持ち合わせている強い人だよ」
「はい、存じ上げております。皇女様の教育担当にご指名されるほどのご高名とお聞きしました。お会いしたことはありませんが、お噂は両親からも常々」
「よかった。それで、アマリアの教育担当はクリスティなんだ」
「えええっ」
思ってもみなかった事実に、思わず大きな声を出してしまい、慌てて口元を押さえる。
「私の母はもう亡くなっているし、私がこれまで結婚しなかったために、公爵夫人の役はほとんど姉がやってくれていたんだ。今でもそうだけどね。だから、教えを乞うには最適なはずだよ。全てが実地だからね。姉は教師役としは厳しいところもあるが、根は優しいから、そんなに緊張しなくてもいいよ」
「でも、私が、お義姉様から直接だなんて…気に入っていただけるかどうかも…」
「はははっ。そんな心配はきっと会ってみるとすぐになくなるよ。前にレイモンドからも言われたんじゃないかな?公爵家一同、アマリアを歓迎していますって。レイモンドは私の父の執事だった男だ。今は父と共に領地にいるが、あれが来たということは、父も同じ気持ちだということだよ。先代と現当主の私が決めたことに、誰も反論なんかしないから」
アマリアにも理屈ではわかる。当主の決定は覆らない。しかし、感情的なものはどうだろう。ふさわしくない、気に入らないと思われたら、いくら公爵家の婚約者といえど、厳しい状況に置かれることはあるだろう。
不安に顔がこわばるアマリアをヘンドリックが優しく抱きしめる。
「アマリア?言っただろう?私が君の味方なんだ。いや、ちがうな。私には君が全てだ。君が婚約者を降りたいを言い出したら、私はもう立ってはいられないだろう。私のためにも、そばにいてほしい」
不安を嬉しさにゆらゆらと揺さぶられながらも、ヘンドリックを信じてついていこうとその背中をきつく抱きしめた。
「いい子だね、アマリア。もうすぐで着くよ。気持ちを楽にして」
そっと触れるだけのキスと頬に落とし、ヘンドリックは柔らかく微笑んだ。
やがて、広大な敷地にそびえたつアルバートン公爵邸に到着し、アマリアはそのあまりの違いに既に足がすくんでいた。
馬車から降りるためにヘンドリックが差し出した手を思わず握りしめるほどに緊張していた。
スタンリール家の使用人の数の倍はいるだろうか、皺ひとつない制服を身にまとった使用人たちが並び立ち、深々と頭を下げている。
馬車から離れる前に、ヘンドリックが一人の青年を呼び、アマリアに紹介した。
「アマリア、先に紹介しておく。これはアマリア専属の御者のダンカンだ。これからよく顔を合わせることになるだろう。この者がいない馬車には決して乗ってはいけないよ。我が家にはそれぞれに専属の御者がいるからね。よく覚えておいて」
「専属の御者…?」
「奥様、初めてお目にかかります、ダンカンです。どうぞお見知りおきください」
「え、あの、奥様?あっ、はい、どうぞよろしくお願いいたします」
突然、『奥様』と呼ばれ間抜けな表情を見せそうになったが、ぐっとこらえて微笑をしながら挨拶をする。
公爵家に着いてまだ数歩もしないうちに、どんどん突き付けられる家格の違いと想定以上の自分の立場に目が回りそうだった。
待ち構えていた使用人たちに軽く挨拶をして、ようやく中に入ると、車椅子に座っている長い黒髪を惜しげもなく垂らした美しい女性がいた。
ヘンドリックの姉のクリスティにちがいないと思い、アマリアは姿勢を正し、その正面に歩みを進めた。
「姉上、婚約者のアマリアです。アマリア、姉のクリスティだよ」
「初めまして、お義姉様、アマリアと申します。至らないことばかりと思いますが」
「まぁまぁまぁ、なんてかわいらしい人なの?!こんなかわいい子が私の妹に?!ちょっとこちらに来てくださる?」
カーテシーもそこそこにアマリアはクリスティにそばへ呼ばれ、驚きつつも数歩前に出た。
するとクリスティは細く白い腕を伸ばし、アマリアを抱き寄せた。
「嬉しいわ。クリスティよ。お義姉様なんて、素敵な響き。ヘンドリック、素晴らしいわ。この子は我が家の宝になるわね」
「はい、姉上」
にこにこと微笑み合うヘンドリックとクリスティだが、アマリアは何が起きているのか全くついていけなかった。
困惑しながらも、とても良い香りのするクリスティに黙って抱きしめられていた。
「私、ずっと妹がほしかったの。それなのにヘンドリックはこの年になっても結婚しないでしょう?ロビンも留学だの、仕事がいいだの、全く妹はできないし、きっとこのまま私には叶わない夢なんだと思ってたの。嬉しいわ。でも、移動で疲れたでしょう?休憩してから、晩餐のときにゆっくり話しましょう。ヘンドリック、お部屋へ」
「わかっていますよ、姉上。さあ、アマリア、君の部屋はこっちだよ」
「はいっ。クリスティ様、失礼いたします」
「ええ、また後でね」
クリスティに礼をして、先を歩くヘンドリックに急いでついていく。
「姉上は足が悪いから、一階に居室がある。私たちは二階だよ。アマリアの部屋は一番日当たりのいい部屋だ。気に入ってくれるといいけれど、まだ必要なものがあったら言ってほしい」
どこか嬉しそうにヘンドリックがアマリアを案内する。大きな扉の前で止まると、装飾の美しいドアノブを回し、扉を開くとアマリアを先に部屋へと促した。
「まあ…」
一言を発するだけでも精一杯で、アマリアはその部屋の広さと豪華さに次に続く言葉を失っていた。
一歩、一歩と踏みしめるように部屋の中へ進み、きょろきょろと見回してしまう。
淡いクリーム色の壁紙に、天蓋付きの豪華なベッド、暖炉の上には美しい燭台や花瓶もあり、その前に置かれているソファは薄いピンクでとてもかわいらしかった。
窓辺に置かれたテーブルと椅子は猫脚で、アマリアは一目でそれを気に入った。
「ヘンドリック様、こんな素敵なお部屋…ありがとうございます。言葉もありません。本当に嬉しくて…」
扉近くで止まっていたヘンドリックを振り返り、アマリアは満面の笑みでその喜びを表した。
ヘンドリックはにこにこしながら、アマリアへと歩みより、そっと抱きしめた。
「よかった。気に入ってもらえるか心配だったんだ」
「ありがとうございます、私、こんなに幸せでいいのでしょうか」
「ははっ。たったこれだけでそんなに喜んでもらえるなんて、私も手を尽くし甲斐があるね」
ヘンドリックはアマリアの腰に手を添え、バルコニーへとエスコートした。
バルコニーからは、美しい庭園が見えた。その広大さにアマリアはまた呆然としてしまう。何もかも、スケールが違い過ぎる…と内心では怖気づいてしまそうになるほどだった。
「アマリアは庭が好きだろう?いつでも庭を散歩するといい。庭師もきっと喜ぶ。私たちは何かと忙しくて邸宅にいないことも多いから」
「まぁ、なんて素敵なんでしょう。私、毎日何回もお散歩します」
「時々は庭で食事やティータイムを過ごすといい。そのうちお茶会も開くようになるだろうしね」
「お茶会…」
アマリアは社交が得意ではないため、その響きにどうしても恐縮してしまう。表情が固まったのを、ヘンドリックは見過ごさなかった。
「大丈夫。お披露目も婚約式も、私や姉上がいるから、アマリアだけでしなければならないことなんて、何もないんだよ。それに、言っただろう?姉上はもう既にアマリアの虜だよ」
アマリアの額にキスをして、優しく微笑みかけてくれ、アマリアは頬を染めながら、小さく頷いた。
すると、扉をノックする音がして、二人はバルコニーから部屋へと戻った。
「失礼いたします」の声と共に、男性と女性が二人、部屋に入ってきた。
男性は馬車を降りたときに執事長をしているソシュールだったはず…と人の名前と顔を覚えるのが苦手なアマリアは必死に記憶を呼び起こしていた。
「旦那様、奥様、改めましてご挨拶をさせてください。執事長を務めますソシュールです。こちらが、メイド長のメリンダ、そして、奥様付きの侍女となりますエルザです」
「奥様、メリンダでございます。どうぞよろしくお願いいたします」
「奥様付きの侍女を申し付けましたエルザでございます。どうぞなんなりとお申し付けください」
三人に深々と頭を下げられ、アマリアも慌てて礼をした。
「こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします、アマリアですわ」
「メリンダは私が幼少の時から仕えてくれているんだ。この邸宅のことは何でもわかっているから、何でもわからないことがあれば聞くといい。エルザはメリンダの娘で、それこそ生まれた頃からここで過ごし、侍女になり、仕えてくれている。年も近いし、頼りになると思う」
「まあ、ありがとうございます。エルザさん、どうぞよろしくお願いしますね」
「奥様、もったいないお言葉です。そして、どうぞ、私のことはエルザとお呼びくださいませ」
「えぇ、ごめんなさい、まだ慣れなくて」
恥ずかしそうにうつむくと、ヘンドリックがふふっと笑い、アマリアの肩を抱き寄せる。
「アマリア、あそこの扉の奥は衣裳部屋だ。君の衣装を収納するから、持ってきた荷物の整理を侍女にさせるね。そして、あちらの扉は」
ヘンドリックが指さす方を見ると、今いる部屋の中央から見て、左右に扉があった。左が衣裳部屋のようだ。そして、反対の扉をさしてヘンドリックが言葉を続けた。
「私たちの夫婦の寝室につながっているから、夜はそこで過ごすんだよ」
「っっ?!」
突然の衝撃と、変に働く頭のせいで、そこにある豪華なベッドは…?と思わず口にしてしまいそうになった。
「ま…まだ婚姻を結んでいないのに、その…夫婦の寝室を使うのですか…?」
おずおずと声を振り絞ってなんとか出した言葉に、メイド長のメリンダが助け舟を出した。
「旦那様、このような可憐な奥様にあまりに唐突過ぎます。奥様、夫婦の寝室と申しましても、旦那様のお部屋につながっているだけですから、そこまで深くお考えにならなくて結構です。旦那様のお部屋が主寝室となりますのでそう言っているだけでございます。例えば体調を崩された時やお昼にお休みなりたいときなどはこちらのお部屋でお休みください。もちろん、旦那様に慣れるまではこちらで夜もお休みなってくださって構いません」
「メリンダ、それではアマリアが我が家に慣れるために早くにこちらに来た意味がないではないか。私は日中は邸宅にいないのだから、夜くらい一緒に過ごしたい」
「ヘンドリック様…」
やや生温かい視線を感じつつも、ヘンドリックの率直な言葉に嬉しいやら、恥ずかしいやら複雑な気持ちだった。
でも、一緒に過ごしたいと思ってくださるのは嬉しいと素直に感じていた。
ただ、まだ、本当の夫婦になるという、男女のことはとてもできない、というよりも、男女のこと自体をよくわかっていないので、漠然と結婚前の男女がそういうことをするのはふしだらであるという貴族の教えに則って、してはいけないことなのではないかと思っているだけなのだが、実際はどうなのだろうか…。
「失礼ながら、旦那様、奥様はこちらへの移動でお疲れと思います。晩餐のための支度もございますので、一旦、奥様をお離しくださいますか?湯あみの準備もできておりますし」
エルザが淡々と話し、ヘンドリックはやや名残惜し気にアマリアから手を離し、「執務室にいるから、なにかあれば呼ぶように」と言い残し、アマリアの頬にもう一度キスをして部屋を後にした。
それに続いて、ソシュールが去り、メリンダとエルザが残った。
「奥様、お疲れでございましょう?温かい湯に入って、マッサージをいたしましょう。それが済みましたら、しばらくゆっくりされて、晩餐の支度をいたしましょうね」
メリンダはややふくよかな体形で、でもどこか温かみというかおおらかな優しさを感じる女性だった。
反対にエルザはアマリアよりも頭1つ半ほど背が高く、すらっとしていて、表情もあまり変化しない。でも、その動きや言葉には無駄を一切感じないように思えた。
既に、てきぱきと部屋に運ばれてくる荷物に指示を出しながら、アマリアを湯あみに案内する手はずを着々と整えている。
あぁ、私は公爵家で、その家族の一員になるための一歩を踏み出したのだとアマリアは実感していた。
思っていたよりもずっと歓迎されていることに感謝しながら、これからのことを考えるとまだ不安は拭い切れずにいた。
「そんなに緊張しなくてもいいよ。うちで学ぶことも多いけれど、結婚するまでに家の者たちにも慣れていてほしいから、気軽にね」
「は、はい、ヘンドリック様。頑張ります」
膝の上で手を握りしめる。
アマリア付きの侍女もなく、たった一人で公爵家で向かうのだ。緊張しないわけはないが、スタンリール家の恥とならないよう、できることを懸命にしなければならない。
「大丈夫。私がいるから。私はいつでもアマリアの味方だよ。困ったことがあれば、なんでも言ってほしい。最初は戸惑うことも多いだろうからね、遠慮してはいけないよ?」
「はい、ありがとうございます」
ヘンドリックが微笑みかけると、やっぱりまだぽーっとその美貌に見惚れてしまう。しかも低く通る声で甘い言葉を次から次へとかけてくれるのだ。恋愛は小説でしか経験したことのないアマリアには、刺激が強すぎだといつも感じていた。
「あの…不躾かもしれませんが…どうして私だったのでしょうか…?」
アマリアはずっと胸に燻っていた疑問をヘンドリックにぶつけた。
ヘンドリックはそっとアマリアを引き寄せて、その見事な金髪を撫でる。
「一目で好きなったことが信じられない?私は人を見る目はあるんだよ?これでも公爵だからね。魑魅魍魎のすくう世界で生きなければならないから、自然とその力はついてくる。その私が、アマリアが私と生涯を共にする価値のなる女性だと見抜いただけだよ」
「私、そんな価値なんて…」
うつむくアマリアにヘンドリックは優しく続ける。
「それに、そうやって結ばれた人たちをアマリアはよく知っているだろう?」
アマリアの頭にすぐに浮かんだのは、大好きな両親だ。母がデビューの夜に父を見初めて結婚に至った。その衝動性とは対照的に、いつまでもお互いを深く愛し、尊敬しあっている。アマリアの憧れの二人だ。
「はい。私の憧れです。」
「私も侯爵と夫人の関係はとても羨ましく思うよ。貴族の社会で、あそこまでお互いを想い合える夫婦も珍しい。私も、アマリア以外には誰も愛さないと誓ったろう?お二人のようになれると思っているよ」
アマリアはぱぁっと目を輝かせて、ヘンドリックを見つめる。
「私も、両親のように愛し愛される夫婦になれるよう頑張ります」
「ありがとう。愛しいアマリア。私がたくさん愛情を注ぐから、覚悟しておくといいよ」
妖艶に微笑む姿に、またうっかり魅せられてアマリアは何も言えなくなってしまった。11歳も年上のヘンドリックには、自分はただの幼いだけのように見られているのではないか、何をどう応えればいいのかさえわからず、あたふたとしてしまう自分が恥ずかしくてならなかった。
「そう、それで、王都の我が家には、私の姉のクリスティがいる。知っているかと思うが、足を悪くしていて、誰かに嫁ぐ予定はないんだ。でも、一人で自立するだけの術は持ち合わせている強い人だよ」
「はい、存じ上げております。皇女様の教育担当にご指名されるほどのご高名とお聞きしました。お会いしたことはありませんが、お噂は両親からも常々」
「よかった。それで、アマリアの教育担当はクリスティなんだ」
「えええっ」
思ってもみなかった事実に、思わず大きな声を出してしまい、慌てて口元を押さえる。
「私の母はもう亡くなっているし、私がこれまで結婚しなかったために、公爵夫人の役はほとんど姉がやってくれていたんだ。今でもそうだけどね。だから、教えを乞うには最適なはずだよ。全てが実地だからね。姉は教師役としは厳しいところもあるが、根は優しいから、そんなに緊張しなくてもいいよ」
「でも、私が、お義姉様から直接だなんて…気に入っていただけるかどうかも…」
「はははっ。そんな心配はきっと会ってみるとすぐになくなるよ。前にレイモンドからも言われたんじゃないかな?公爵家一同、アマリアを歓迎していますって。レイモンドは私の父の執事だった男だ。今は父と共に領地にいるが、あれが来たということは、父も同じ気持ちだということだよ。先代と現当主の私が決めたことに、誰も反論なんかしないから」
アマリアにも理屈ではわかる。当主の決定は覆らない。しかし、感情的なものはどうだろう。ふさわしくない、気に入らないと思われたら、いくら公爵家の婚約者といえど、厳しい状況に置かれることはあるだろう。
不安に顔がこわばるアマリアをヘンドリックが優しく抱きしめる。
「アマリア?言っただろう?私が君の味方なんだ。いや、ちがうな。私には君が全てだ。君が婚約者を降りたいを言い出したら、私はもう立ってはいられないだろう。私のためにも、そばにいてほしい」
不安を嬉しさにゆらゆらと揺さぶられながらも、ヘンドリックを信じてついていこうとその背中をきつく抱きしめた。
「いい子だね、アマリア。もうすぐで着くよ。気持ちを楽にして」
そっと触れるだけのキスと頬に落とし、ヘンドリックは柔らかく微笑んだ。
やがて、広大な敷地にそびえたつアルバートン公爵邸に到着し、アマリアはそのあまりの違いに既に足がすくんでいた。
馬車から降りるためにヘンドリックが差し出した手を思わず握りしめるほどに緊張していた。
スタンリール家の使用人の数の倍はいるだろうか、皺ひとつない制服を身にまとった使用人たちが並び立ち、深々と頭を下げている。
馬車から離れる前に、ヘンドリックが一人の青年を呼び、アマリアに紹介した。
「アマリア、先に紹介しておく。これはアマリア専属の御者のダンカンだ。これからよく顔を合わせることになるだろう。この者がいない馬車には決して乗ってはいけないよ。我が家にはそれぞれに専属の御者がいるからね。よく覚えておいて」
「専属の御者…?」
「奥様、初めてお目にかかります、ダンカンです。どうぞお見知りおきください」
「え、あの、奥様?あっ、はい、どうぞよろしくお願いいたします」
突然、『奥様』と呼ばれ間抜けな表情を見せそうになったが、ぐっとこらえて微笑をしながら挨拶をする。
公爵家に着いてまだ数歩もしないうちに、どんどん突き付けられる家格の違いと想定以上の自分の立場に目が回りそうだった。
待ち構えていた使用人たちに軽く挨拶をして、ようやく中に入ると、車椅子に座っている長い黒髪を惜しげもなく垂らした美しい女性がいた。
ヘンドリックの姉のクリスティにちがいないと思い、アマリアは姿勢を正し、その正面に歩みを進めた。
「姉上、婚約者のアマリアです。アマリア、姉のクリスティだよ」
「初めまして、お義姉様、アマリアと申します。至らないことばかりと思いますが」
「まぁまぁまぁ、なんてかわいらしい人なの?!こんなかわいい子が私の妹に?!ちょっとこちらに来てくださる?」
カーテシーもそこそこにアマリアはクリスティにそばへ呼ばれ、驚きつつも数歩前に出た。
するとクリスティは細く白い腕を伸ばし、アマリアを抱き寄せた。
「嬉しいわ。クリスティよ。お義姉様なんて、素敵な響き。ヘンドリック、素晴らしいわ。この子は我が家の宝になるわね」
「はい、姉上」
にこにこと微笑み合うヘンドリックとクリスティだが、アマリアは何が起きているのか全くついていけなかった。
困惑しながらも、とても良い香りのするクリスティに黙って抱きしめられていた。
「私、ずっと妹がほしかったの。それなのにヘンドリックはこの年になっても結婚しないでしょう?ロビンも留学だの、仕事がいいだの、全く妹はできないし、きっとこのまま私には叶わない夢なんだと思ってたの。嬉しいわ。でも、移動で疲れたでしょう?休憩してから、晩餐のときにゆっくり話しましょう。ヘンドリック、お部屋へ」
「わかっていますよ、姉上。さあ、アマリア、君の部屋はこっちだよ」
「はいっ。クリスティ様、失礼いたします」
「ええ、また後でね」
クリスティに礼をして、先を歩くヘンドリックに急いでついていく。
「姉上は足が悪いから、一階に居室がある。私たちは二階だよ。アマリアの部屋は一番日当たりのいい部屋だ。気に入ってくれるといいけれど、まだ必要なものがあったら言ってほしい」
どこか嬉しそうにヘンドリックがアマリアを案内する。大きな扉の前で止まると、装飾の美しいドアノブを回し、扉を開くとアマリアを先に部屋へと促した。
「まあ…」
一言を発するだけでも精一杯で、アマリアはその部屋の広さと豪華さに次に続く言葉を失っていた。
一歩、一歩と踏みしめるように部屋の中へ進み、きょろきょろと見回してしまう。
淡いクリーム色の壁紙に、天蓋付きの豪華なベッド、暖炉の上には美しい燭台や花瓶もあり、その前に置かれているソファは薄いピンクでとてもかわいらしかった。
窓辺に置かれたテーブルと椅子は猫脚で、アマリアは一目でそれを気に入った。
「ヘンドリック様、こんな素敵なお部屋…ありがとうございます。言葉もありません。本当に嬉しくて…」
扉近くで止まっていたヘンドリックを振り返り、アマリアは満面の笑みでその喜びを表した。
ヘンドリックはにこにこしながら、アマリアへと歩みより、そっと抱きしめた。
「よかった。気に入ってもらえるか心配だったんだ」
「ありがとうございます、私、こんなに幸せでいいのでしょうか」
「ははっ。たったこれだけでそんなに喜んでもらえるなんて、私も手を尽くし甲斐があるね」
ヘンドリックはアマリアの腰に手を添え、バルコニーへとエスコートした。
バルコニーからは、美しい庭園が見えた。その広大さにアマリアはまた呆然としてしまう。何もかも、スケールが違い過ぎる…と内心では怖気づいてしまそうになるほどだった。
「アマリアは庭が好きだろう?いつでも庭を散歩するといい。庭師もきっと喜ぶ。私たちは何かと忙しくて邸宅にいないことも多いから」
「まぁ、なんて素敵なんでしょう。私、毎日何回もお散歩します」
「時々は庭で食事やティータイムを過ごすといい。そのうちお茶会も開くようになるだろうしね」
「お茶会…」
アマリアは社交が得意ではないため、その響きにどうしても恐縮してしまう。表情が固まったのを、ヘンドリックは見過ごさなかった。
「大丈夫。お披露目も婚約式も、私や姉上がいるから、アマリアだけでしなければならないことなんて、何もないんだよ。それに、言っただろう?姉上はもう既にアマリアの虜だよ」
アマリアの額にキスをして、優しく微笑みかけてくれ、アマリアは頬を染めながら、小さく頷いた。
すると、扉をノックする音がして、二人はバルコニーから部屋へと戻った。
「失礼いたします」の声と共に、男性と女性が二人、部屋に入ってきた。
男性は馬車を降りたときに執事長をしているソシュールだったはず…と人の名前と顔を覚えるのが苦手なアマリアは必死に記憶を呼び起こしていた。
「旦那様、奥様、改めましてご挨拶をさせてください。執事長を務めますソシュールです。こちらが、メイド長のメリンダ、そして、奥様付きの侍女となりますエルザです」
「奥様、メリンダでございます。どうぞよろしくお願いいたします」
「奥様付きの侍女を申し付けましたエルザでございます。どうぞなんなりとお申し付けください」
三人に深々と頭を下げられ、アマリアも慌てて礼をした。
「こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします、アマリアですわ」
「メリンダは私が幼少の時から仕えてくれているんだ。この邸宅のことは何でもわかっているから、何でもわからないことがあれば聞くといい。エルザはメリンダの娘で、それこそ生まれた頃からここで過ごし、侍女になり、仕えてくれている。年も近いし、頼りになると思う」
「まあ、ありがとうございます。エルザさん、どうぞよろしくお願いしますね」
「奥様、もったいないお言葉です。そして、どうぞ、私のことはエルザとお呼びくださいませ」
「えぇ、ごめんなさい、まだ慣れなくて」
恥ずかしそうにうつむくと、ヘンドリックがふふっと笑い、アマリアの肩を抱き寄せる。
「アマリア、あそこの扉の奥は衣裳部屋だ。君の衣装を収納するから、持ってきた荷物の整理を侍女にさせるね。そして、あちらの扉は」
ヘンドリックが指さす方を見ると、今いる部屋の中央から見て、左右に扉があった。左が衣裳部屋のようだ。そして、反対の扉をさしてヘンドリックが言葉を続けた。
「私たちの夫婦の寝室につながっているから、夜はそこで過ごすんだよ」
「っっ?!」
突然の衝撃と、変に働く頭のせいで、そこにある豪華なベッドは…?と思わず口にしてしまいそうになった。
「ま…まだ婚姻を結んでいないのに、その…夫婦の寝室を使うのですか…?」
おずおずと声を振り絞ってなんとか出した言葉に、メイド長のメリンダが助け舟を出した。
「旦那様、このような可憐な奥様にあまりに唐突過ぎます。奥様、夫婦の寝室と申しましても、旦那様のお部屋につながっているだけですから、そこまで深くお考えにならなくて結構です。旦那様のお部屋が主寝室となりますのでそう言っているだけでございます。例えば体調を崩された時やお昼にお休みなりたいときなどはこちらのお部屋でお休みください。もちろん、旦那様に慣れるまではこちらで夜もお休みなってくださって構いません」
「メリンダ、それではアマリアが我が家に慣れるために早くにこちらに来た意味がないではないか。私は日中は邸宅にいないのだから、夜くらい一緒に過ごしたい」
「ヘンドリック様…」
やや生温かい視線を感じつつも、ヘンドリックの率直な言葉に嬉しいやら、恥ずかしいやら複雑な気持ちだった。
でも、一緒に過ごしたいと思ってくださるのは嬉しいと素直に感じていた。
ただ、まだ、本当の夫婦になるという、男女のことはとてもできない、というよりも、男女のこと自体をよくわかっていないので、漠然と結婚前の男女がそういうことをするのはふしだらであるという貴族の教えに則って、してはいけないことなのではないかと思っているだけなのだが、実際はどうなのだろうか…。
「失礼ながら、旦那様、奥様はこちらへの移動でお疲れと思います。晩餐のための支度もございますので、一旦、奥様をお離しくださいますか?湯あみの準備もできておりますし」
エルザが淡々と話し、ヘンドリックはやや名残惜し気にアマリアから手を離し、「執務室にいるから、なにかあれば呼ぶように」と言い残し、アマリアの頬にもう一度キスをして部屋を後にした。
それに続いて、ソシュールが去り、メリンダとエルザが残った。
「奥様、お疲れでございましょう?温かい湯に入って、マッサージをいたしましょう。それが済みましたら、しばらくゆっくりされて、晩餐の支度をいたしましょうね」
メリンダはややふくよかな体形で、でもどこか温かみというかおおらかな優しさを感じる女性だった。
反対にエルザはアマリアよりも頭1つ半ほど背が高く、すらっとしていて、表情もあまり変化しない。でも、その動きや言葉には無駄を一切感じないように思えた。
既に、てきぱきと部屋に運ばれてくる荷物に指示を出しながら、アマリアを湯あみに案内する手はずを着々と整えている。
あぁ、私は公爵家で、その家族の一員になるための一歩を踏み出したのだとアマリアは実感していた。
思っていたよりもずっと歓迎されていることに感謝しながら、これからのことを考えるとまだ不安は拭い切れずにいた。
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メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。
「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」
どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……?
*WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。
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