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三人寄れば老後の話
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順調に復職をしまして、体が疲れやすかったり、変に構えちゃったりして感覚を戻すのに少しかかったけど、やっぱり好きで続けてた仕事だから、お客様にご提案したり、納得してもらって購入してもらえると嬉しいし、スタッフのみんなとあれこれ話し合いながらお店を作り上げてくのも楽しい。
ここまで来るのになんやかんやとあったけど、お仕事のこともやっぱり好きだと思えるし、気づいたら婚約までしているなんて、これぞ雨降って地固まるだなと痛感中。
くまちゃんは相変わらずお仕事が忙しいのに、自宅では私を構ってくれるし、家事も率先してやってくれる。洗濯物に私の下着があるときばかりは「ちょっと…干すのを手伝ってもらえますか」って控えめにお願いしてくるのがかわいくてついついニヤニヤと変態ちっくに見つめてしまう。
そんなことを思い出しながらムフムフとしていたら、出勤してきアイリちゃんの表情がいつになく暗い。
「アイリちゃん、どうしたの?何かトラブルあった?」
「あ、サブ、おはようございます。そうなんです…私の人生で起こるはずのない事態が起きてしまって全然眠れなかったんです…。締切も近いのに…。」
え、あ、えと、情報が多すぎてどこから声をかけていいものか悩んでいたら、アイリちゃんはいきなりくわっと目を見開いて
「よしっ!出勤したからには頭を空っぽにしてとことん仕事します!ひとつのことばっかり考えてるから煮詰まるんであって、他のことを考える時間を持たないとですよね!おっしゃー」
「う、うん、がんばろー」
元々切り替えも速いし、仕事もてきぱきする子だけど、こういう思考回路のおかげなのかー…。後輩ながら尊敬する。
でも、どんなことが起きたんだろ。また退勤するころには落ち着いて聞けるかなぁ。
そして、無事に締めまで終わって退勤時間となったわけですが。どうやら女子スタッフによる緊急ミーティング、都合によりスマホでのオンライン参加も可のハイブリッドミーティングが始まるようです。時代だね。ミーティングは対面でやる時代はもう終わったんだね。
いったい、誰がこの半日の間にそんな予定を組んでお休みの人にまで連絡したのか。ほんとにうちのお店はできる子が多いなぁ。
「それでは、アイリがプロポーズされた件について緊急ミーティングを始めます」
「ええええええ」
神妙な面持ちでマキちゃんが宣言するとみんなうんうんって頷いてるんですけど、驚いてるの私だけなんですけど!
「え、ちょっとちょっと待って、アイリちゃん。プロポーズ?誰から?彼氏いたの?いつ?」
「先輩、落ち着いてください。ここは私が簡単に説明します。アイリには彼氏は過去から現在そして進行形で彼氏はいません。プロポーズをしてきたのは、小学校の同級生で昨夜慌てて連絡してくるなり付き合うをすっ飛ばして結婚しよう!と言われたそうです」
「へ、へぇ~…少女マンガみたいだね」
「アイリちゃんのことがずっと好きだったんだろうねぇ、きっと。幼馴染ポジションじゃない?」
「いえ、私的には幼馴染は幼稚園以下からの知り合い、もしくは家が近所で親同士も仲良しという定義ですので、あいつは幼馴染ではありません」
ズバッと切り捨てるアイリちゃん。
「えと、その反応ということはあんまりその男の子のこと好きじゃないのかな?」
「はい、あいつがというよりも、男子全般カップリング対象にはなっても、自分とのカップリング対象にはならないので」
「うーん、そうかぁ。…え、でもそれならお断りするってことで一件落着ということにはならなかったの?もしかして、しつこくつきまとわれてるんじゃ」
自分のこともあるし、とても心配になってアイリちゃんを見つめる。
でも、アイリちゃんはふるふると首を横に振った。
「いえ、とりあえずきっぱり『誰とも付き合うきはない。結婚もする気はない』と電話で断ったんで、そこからは連絡はきてないんです。でも、実はなんで今までなんともなかった奴がそんな行動に出たかといいますと」
うんうん。みんなが目を輝かせて次の言葉を待つ。
「腐女子仲間と老後の話をしてたんです」
…おっと、想像以上に世知辛い。
「私達、ほんとに恋愛する気もないし、まぁ途中で誰かが恋愛や結婚して抜けていっても応援し合おうねっていいながら高校、大学、社会人となりまして。あ、これは誰も抜けないなって段々みんな思い始めていて。何か月か前からサークルとかネット投稿とか販売で知り合ってた腐男子のツムギも含めてとみんなで集まったときにですね」
お、アイリちゃんの口から男の子の名前出てくるの初だ!いいよ、いいよ、恋の予感かな?
「介護施設かグループホームを運営するために資金集めと投資をしようかということになりまして」
うん。そうか。そうきたか。
「私達、もう魂から腐ってるんです。老後、おばあちゃんやおじいちゃんになったとしても、演歌は聞かないし、時代劇もドラマも観ないんです。NHKもニュースもいらないんです。アニメをひたすら流していてほしいんです。BGMだって、オルゴールもクラシックもいらないんで、アニソンだけを流していてほしいんです」
アイリちゃんの熱が徐々に高まってきちゃって興奮気味にまだまだ続く。
「どんなにボケても、動けなくなっても、アニメを見続けたいんです!だから、腐女子・腐男子限定のグループホームを作って、スタッフもそれを理解したうえで働いてくる人を募集をかけて運営したいって思って。結構本格的に投資とかグループホームを運営するための制度とか調べてたんです。みんなで、おばあちゃんになってもアニメみたいし、BL妄想したいし、死ぬまで同人誌作ろうねって、固い約束を交わしたんです」
「おおー。なんかわかんないけど、すごく夢に溢れたビジョンでいいと思う~」
ぱちぱちと拍手を送ると、他のみんなも、画面越しでもうんうんと頷いている。
「結婚してても子どもいても、最後はどうなるかわかんないものよね。家族と自宅で最後までっていうのが難しい時代だし。それなら自分の好きな施設に入りたいって思うのは正しいと思うわ~」
既婚者の小春さんがしみじみと言う。私も身近に何人も介護施設にいる親戚がいるからそうだなぁと思う。
「それで、私がいまだに結婚結婚ってうるさい母親に、つい『もう老後を一緒に過ごす約束をした人がいる』って口を滑らしちゃって。私の人生初の浮いた話に母親が暴走しちゃって言いふらしたみたいなんですよ『うちの子にもついに彼氏ができて、結婚も視野に入れてるみたい!』とかなんとか。ほんとに迷惑極まりないんですけど。そしたら、例の奴まで噂がだーっと広まったらしくて、慌てて連絡してきて、一足飛びにプロポーズという事態になったんです」
「あら~…お母さん大暴走…」
「ほんとに疲れ果てちゃって。ついグループラインで愚痴ったんです。そしたら、ツムギが唐突に『アイリがいなくなるなんて困る』って言いだして」
おっ、きたきたきたー!当て馬くんありがとう!でもおかげでここからアイリちゃんの恋が始まるみたいです。ありがとう、君の貴重な存在は忘れない!
「お互い今まで誰とも付き合ってことがないので、どう考えていいかわからないんだけどって念押ししたうえで、今後はもう少し近い存在になりたいなって」
「きゃーーー!!」
「先輩、心の叫びが漏れてます。だだ漏れしてます」
「叫ばせて、マキちゃん!だって久しぶりの恋バナだもん!」
冷静なマキちゃんに抱きつきつつ、ニヤニヤが止まらない。私、今日ずっとニヤニヤしてるな。
「今後はパートナーとしてしっかり責任を持って付き合っていこうってことになったんです」
「うんうん、同級生君のプロポーズにはぐっとこなかったけど、ツムギくんのプロポーズにはぐさっと刺さるものがあったんだね~」
「あ、いえ、パートナーというのは、共同経営者としての部分が大きくて。ツムギは家もそこそこ裕福みたいで、投資も前からしてて、資金とかハコに関してはあっちが担当で、ソフト面は私かなって。多分、私達にはこれくらいの距離間がちょうどよくて。でも、正直親のことは本当にみんな困ってて。カモフラージュのためにもシェアハウスというか、同じマンションの別室に住むくらいのことをして、ごまかす案とか昨夜夜通し討論してたんです」
「え、付き合うんじゃないの?結婚は?」
「いやー、私達推しがいるので、彼らが幸せになってくれれば恋愛に関してはもう大丈夫です。お腹いっぱいです。自分の身には起きなくていいです。という感覚が同じなんですツムギとは。そういう人に巡り合えたのはお互いありがたいから、お互いの利益になるように力を出し合おうってことになりました」
「現代的…」
「達観してるというか…相変わらず芯が強い。というか、腐女子グループホームは普通にニーズあると思う」
「恋バナのミーティングかと思ったけど、人生とか価値観について考えさせられることになったね~」
「そうね、私も自分の老後…夫や家族のことをふわふわと考えていた気がするわ…」
私も、マキちゃんも、カホちゃんも小春さんも思い思いにコメントしつつ、本日のミーティングは終わりました。
私はいまだにぽかんだし、全然ついていけなくて、迎えにきてくれたくまちゃんにむぎゅむぎゅと抱きついて。
そうか。こういう感覚を自分で味合わずとも幸せな人がたくさんいるんだと考えちゃった。
恋愛してれば幸せってことはないけど、自分の価値観のもと、いろんな幸せを持ってる人達もたくさんいるわけで、自分の狭さに気づいたような、まだ消化しきっていないような。
「推しの存在って、人生を変えちゃうんだよね」
「推しですか?」
「そう。自分の大好きな人ってこと。私の推しはくまちゃんだけど」
「ありがとうございます。じゃあ、俺の推しは玲奈さんですね」
「ふふふ。私達に子どもが生まれたら推しは子ども達になるのかな」
「いいですね。そんな日が来たら、すごく幸せですね。少し前までは、考えたこともない未来でした。一人で生きることになれば、弟達の子供達をかわいがればいいと思ってたんで」
「そうだねー。あ、でも私も検査してないけど、もしかしたら赤ちゃんができないってこともありえるのか…」
「それなら俺も同じですよ。それにもし授からなくても、そのときは俺達で周りの子供達にできることをしたらいいのかなと思いますよ。二人でも十分幸せですから」
「ほんとそうだね。二人で元気に年取っていこうね」
「はい、そうしましょう」
今ある幸せな日々に感謝感謝と思いつつ、まだまだ寒さの残る夜の風の中、二人で手をつないで家路を急いだ。
ここまで来るのになんやかんやとあったけど、お仕事のこともやっぱり好きだと思えるし、気づいたら婚約までしているなんて、これぞ雨降って地固まるだなと痛感中。
くまちゃんは相変わらずお仕事が忙しいのに、自宅では私を構ってくれるし、家事も率先してやってくれる。洗濯物に私の下着があるときばかりは「ちょっと…干すのを手伝ってもらえますか」って控えめにお願いしてくるのがかわいくてついついニヤニヤと変態ちっくに見つめてしまう。
そんなことを思い出しながらムフムフとしていたら、出勤してきアイリちゃんの表情がいつになく暗い。
「アイリちゃん、どうしたの?何かトラブルあった?」
「あ、サブ、おはようございます。そうなんです…私の人生で起こるはずのない事態が起きてしまって全然眠れなかったんです…。締切も近いのに…。」
え、あ、えと、情報が多すぎてどこから声をかけていいものか悩んでいたら、アイリちゃんはいきなりくわっと目を見開いて
「よしっ!出勤したからには頭を空っぽにしてとことん仕事します!ひとつのことばっかり考えてるから煮詰まるんであって、他のことを考える時間を持たないとですよね!おっしゃー」
「う、うん、がんばろー」
元々切り替えも速いし、仕事もてきぱきする子だけど、こういう思考回路のおかげなのかー…。後輩ながら尊敬する。
でも、どんなことが起きたんだろ。また退勤するころには落ち着いて聞けるかなぁ。
そして、無事に締めまで終わって退勤時間となったわけですが。どうやら女子スタッフによる緊急ミーティング、都合によりスマホでのオンライン参加も可のハイブリッドミーティングが始まるようです。時代だね。ミーティングは対面でやる時代はもう終わったんだね。
いったい、誰がこの半日の間にそんな予定を組んでお休みの人にまで連絡したのか。ほんとにうちのお店はできる子が多いなぁ。
「それでは、アイリがプロポーズされた件について緊急ミーティングを始めます」
「ええええええ」
神妙な面持ちでマキちゃんが宣言するとみんなうんうんって頷いてるんですけど、驚いてるの私だけなんですけど!
「え、ちょっとちょっと待って、アイリちゃん。プロポーズ?誰から?彼氏いたの?いつ?」
「先輩、落ち着いてください。ここは私が簡単に説明します。アイリには彼氏は過去から現在そして進行形で彼氏はいません。プロポーズをしてきたのは、小学校の同級生で昨夜慌てて連絡してくるなり付き合うをすっ飛ばして結婚しよう!と言われたそうです」
「へ、へぇ~…少女マンガみたいだね」
「アイリちゃんのことがずっと好きだったんだろうねぇ、きっと。幼馴染ポジションじゃない?」
「いえ、私的には幼馴染は幼稚園以下からの知り合い、もしくは家が近所で親同士も仲良しという定義ですので、あいつは幼馴染ではありません」
ズバッと切り捨てるアイリちゃん。
「えと、その反応ということはあんまりその男の子のこと好きじゃないのかな?」
「はい、あいつがというよりも、男子全般カップリング対象にはなっても、自分とのカップリング対象にはならないので」
「うーん、そうかぁ。…え、でもそれならお断りするってことで一件落着ということにはならなかったの?もしかして、しつこくつきまとわれてるんじゃ」
自分のこともあるし、とても心配になってアイリちゃんを見つめる。
でも、アイリちゃんはふるふると首を横に振った。
「いえ、とりあえずきっぱり『誰とも付き合うきはない。結婚もする気はない』と電話で断ったんで、そこからは連絡はきてないんです。でも、実はなんで今までなんともなかった奴がそんな行動に出たかといいますと」
うんうん。みんなが目を輝かせて次の言葉を待つ。
「腐女子仲間と老後の話をしてたんです」
…おっと、想像以上に世知辛い。
「私達、ほんとに恋愛する気もないし、まぁ途中で誰かが恋愛や結婚して抜けていっても応援し合おうねっていいながら高校、大学、社会人となりまして。あ、これは誰も抜けないなって段々みんな思い始めていて。何か月か前からサークルとかネット投稿とか販売で知り合ってた腐男子のツムギも含めてとみんなで集まったときにですね」
お、アイリちゃんの口から男の子の名前出てくるの初だ!いいよ、いいよ、恋の予感かな?
「介護施設かグループホームを運営するために資金集めと投資をしようかということになりまして」
うん。そうか。そうきたか。
「私達、もう魂から腐ってるんです。老後、おばあちゃんやおじいちゃんになったとしても、演歌は聞かないし、時代劇もドラマも観ないんです。NHKもニュースもいらないんです。アニメをひたすら流していてほしいんです。BGMだって、オルゴールもクラシックもいらないんで、アニソンだけを流していてほしいんです」
アイリちゃんの熱が徐々に高まってきちゃって興奮気味にまだまだ続く。
「どんなにボケても、動けなくなっても、アニメを見続けたいんです!だから、腐女子・腐男子限定のグループホームを作って、スタッフもそれを理解したうえで働いてくる人を募集をかけて運営したいって思って。結構本格的に投資とかグループホームを運営するための制度とか調べてたんです。みんなで、おばあちゃんになってもアニメみたいし、BL妄想したいし、死ぬまで同人誌作ろうねって、固い約束を交わしたんです」
「おおー。なんかわかんないけど、すごく夢に溢れたビジョンでいいと思う~」
ぱちぱちと拍手を送ると、他のみんなも、画面越しでもうんうんと頷いている。
「結婚してても子どもいても、最後はどうなるかわかんないものよね。家族と自宅で最後までっていうのが難しい時代だし。それなら自分の好きな施設に入りたいって思うのは正しいと思うわ~」
既婚者の小春さんがしみじみと言う。私も身近に何人も介護施設にいる親戚がいるからそうだなぁと思う。
「それで、私がいまだに結婚結婚ってうるさい母親に、つい『もう老後を一緒に過ごす約束をした人がいる』って口を滑らしちゃって。私の人生初の浮いた話に母親が暴走しちゃって言いふらしたみたいなんですよ『うちの子にもついに彼氏ができて、結婚も視野に入れてるみたい!』とかなんとか。ほんとに迷惑極まりないんですけど。そしたら、例の奴まで噂がだーっと広まったらしくて、慌てて連絡してきて、一足飛びにプロポーズという事態になったんです」
「あら~…お母さん大暴走…」
「ほんとに疲れ果てちゃって。ついグループラインで愚痴ったんです。そしたら、ツムギが唐突に『アイリがいなくなるなんて困る』って言いだして」
おっ、きたきたきたー!当て馬くんありがとう!でもおかげでここからアイリちゃんの恋が始まるみたいです。ありがとう、君の貴重な存在は忘れない!
「お互い今まで誰とも付き合ってことがないので、どう考えていいかわからないんだけどって念押ししたうえで、今後はもう少し近い存在になりたいなって」
「きゃーーー!!」
「先輩、心の叫びが漏れてます。だだ漏れしてます」
「叫ばせて、マキちゃん!だって久しぶりの恋バナだもん!」
冷静なマキちゃんに抱きつきつつ、ニヤニヤが止まらない。私、今日ずっとニヤニヤしてるな。
「今後はパートナーとしてしっかり責任を持って付き合っていこうってことになったんです」
「うんうん、同級生君のプロポーズにはぐっとこなかったけど、ツムギくんのプロポーズにはぐさっと刺さるものがあったんだね~」
「あ、いえ、パートナーというのは、共同経営者としての部分が大きくて。ツムギは家もそこそこ裕福みたいで、投資も前からしてて、資金とかハコに関してはあっちが担当で、ソフト面は私かなって。多分、私達にはこれくらいの距離間がちょうどよくて。でも、正直親のことは本当にみんな困ってて。カモフラージュのためにもシェアハウスというか、同じマンションの別室に住むくらいのことをして、ごまかす案とか昨夜夜通し討論してたんです」
「え、付き合うんじゃないの?結婚は?」
「いやー、私達推しがいるので、彼らが幸せになってくれれば恋愛に関してはもう大丈夫です。お腹いっぱいです。自分の身には起きなくていいです。という感覚が同じなんですツムギとは。そういう人に巡り合えたのはお互いありがたいから、お互いの利益になるように力を出し合おうってことになりました」
「現代的…」
「達観してるというか…相変わらず芯が強い。というか、腐女子グループホームは普通にニーズあると思う」
「恋バナのミーティングかと思ったけど、人生とか価値観について考えさせられることになったね~」
「そうね、私も自分の老後…夫や家族のことをふわふわと考えていた気がするわ…」
私も、マキちゃんも、カホちゃんも小春さんも思い思いにコメントしつつ、本日のミーティングは終わりました。
私はいまだにぽかんだし、全然ついていけなくて、迎えにきてくれたくまちゃんにむぎゅむぎゅと抱きついて。
そうか。こういう感覚を自分で味合わずとも幸せな人がたくさんいるんだと考えちゃった。
恋愛してれば幸せってことはないけど、自分の価値観のもと、いろんな幸せを持ってる人達もたくさんいるわけで、自分の狭さに気づいたような、まだ消化しきっていないような。
「推しの存在って、人生を変えちゃうんだよね」
「推しですか?」
「そう。自分の大好きな人ってこと。私の推しはくまちゃんだけど」
「ありがとうございます。じゃあ、俺の推しは玲奈さんですね」
「ふふふ。私達に子どもが生まれたら推しは子ども達になるのかな」
「いいですね。そんな日が来たら、すごく幸せですね。少し前までは、考えたこともない未来でした。一人で生きることになれば、弟達の子供達をかわいがればいいと思ってたんで」
「そうだねー。あ、でも私も検査してないけど、もしかしたら赤ちゃんができないってこともありえるのか…」
「それなら俺も同じですよ。それにもし授からなくても、そのときは俺達で周りの子供達にできることをしたらいいのかなと思いますよ。二人でも十分幸せですから」
「ほんとそうだね。二人で元気に年取っていこうね」
「はい、そうしましょう」
今ある幸せな日々に感謝感謝と思いつつ、まだまだ寒さの残る夜の風の中、二人で手をつないで家路を急いだ。
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