熊ちゃん配達員を食べたい腹ペコな私 清純なのは見た目だけ!とにかくおとなしく食べられなさい!

あさひれい

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勝負パンツ

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「くまちゃんはさぁ、どんな勝負パンツ持ってるの?」

夕食後の食器を洗いながら玲奈さんは言い出した。俺はすすぎ終わった皿をふきんで拭きつつ、その言葉の意味をしばらく考えた。

「柔道家はパンツを履かないという噂なら」

「え、履かないの?ノーパンで組み合ってるの?」

「いえいえ、履いてます。スポーツ用の」

「そっかーよかった。応援に行くときに心配しちゃうところだった」

「はい、安心してください」

かわいい笑顔を向ける玲奈さんに微笑み返すと、「そうじゃないよ!」と突然つっこまれた。


「そうじゃなくて!本当の勝負するときのパンツじゃなくて!私に勝負を挑むときのパンツ!」

「玲奈さんに勝負を挑む…?」

俺に勝負と言われるとどうしても組み合う姿勢しか思い浮かばないが、玲奈さんがぶつかりにきても抱きしめ返すくらいしかしないと思う。

「だからぁ、えっちしたいなぁって意思表示をするパンツだよー」

「ああ、なるほど。持ってないです」

「一枚も?」

「はい。普通のパンツしかないです」

「じゃあ、私はいつくまちゃんがえっちする気なんだなって察知すればいいの?」

「……」

言葉に窮するとはこのことだろう。俺が玲奈さんとしたいと思ったときにどう意思表示するか。そんなこと考えたこともなかった。

「…したいと言うので…」

「言える?本当に言える?私にみたいに、えっちしよー!って言える?試しに言ってみて?」

「…言えま…せん」

皿を拭く手の動きも完全に止まってうなだれた。無理だ。それはかなりハードルが高い。そう考えると、堂々と言える玲奈さんの精神力はすごい。

「ほら、私もさ、一応察知しようとはするけど、疲れてるときとか、ぼーっとしてて感知できないかもしれないじゃない?だから、わかりやすい手段を知っておくのっていいなって思って。そしたら、私も心置きなくくまちゃんに襲い掛かってもいいわけでしょ?」

「なるほど。勝負パンツというものには、そういう効果があるわけですね」

「じゃあ、後でさ、勝負パンツ見てみようよ!」

「はい、そうですね」

と軽い気持ちで返事したのはよかったが、玲奈さんと見た男の勝負パンツの数々に俺は絶句してしまい、反対に玲奈さんは大興奮だった。

「ねー!ねー!!このちんちんだけのパンツにしようよ!後ろTバックだよ!履いたら絶対セクシーだよ!」

「レース!レースだ!!色っぽい!わ、これなんてパンツと一体型のガーターベルト!私もそんなパンツほしい!」

「紐!紐パン!これ脱がしやすそう!でも私、知ってる!歩いてるうちに紐ほどけちゃわないようにどんどん結ぶのきつくなって、しまいにはほどけなくなって、普通のパンツとして履くことになるの、これ」

俺は「そうなんですか」「そうですね」「知りませんでした」をBOTのようにただ繰り返し、玲奈さんの興奮が落ち着くのをひたすらに待った。
玲奈さんがなんでもかんでもカートにつっこもうとするのを「サイズが合いません」「入り切りません」とのらりくらりとかわしまくった。

そして、一通り見終わった玲奈さんに温かい紅茶を差し出すと、それをごくごくと飲みながらつぶやいた。

「結局、あれだよね。寝てるくまちゃんの体からパンツ引き下げるの大変だから、ちんちんのとこに布がないパンツがいい」

「それはもうパンツではないと思います」

そしてなぜ寝てる俺にあれこれするのが前提なんですか、玲奈さん。

「勝負パンツに機能性を求めてはいけないんだよ。私のベビードールだって見た目重視でしょ?」

「確かにそうですね」

「でもなー、くまちゃん脱がすのほんとに苦労するからなぁ。あ、あれは?下だけ裸とか」

「それは俺が受け入れられません」

「もぉ。じゃあ、口で言うか、態度で示すかできるようになってください」

「…善処します」

こうして試行錯誤を始めるべく新生活はスタートしたわけだが。
玲奈さんは本当に意思表示が上手いんだなとつくづく思う。したいと思えば、膝に乗ってきては「今日する?」と誘ってくれるし、疲れているときは「今日はゆっくり過ごしてもいい?」と言ってくれる。
そうか。こうやって伝えてくれるから、俺はそれを受け入れるばかりで、甘えていたんだな。
玲奈さんだってきっと俺がしたいと思っているかどうか知りたいときもあるだろうに、俺が伝え方が下手なばっかりに玲奈さんにばかりそんな苦労をかけてしまっている…

申し訳ないですと謝ったことがあった。
すると、玲奈さんはぱかーと口を開けた後、あははと笑った。

「そんなの考えたことなかったー。くまちゃんは私のいいところを探す天才だねぇ。なんでもいい風に受け取ってくれてありがとー」

俺の胸に頬をすりすりしながら喜んでいた。

不器用な俺には、玲奈さんのようになんでも素直にストレートに伝えてくれる存在がどれほどありがたいことか…

感謝の気持ちを伝えると玲奈さんはいつもと同じ笑顔で返してくれた。

「え、そんなことないよ?だって、くまちゃんいつでも基本OKだから、いつ襲ってもいいってことでしょ?私としてはそれがとってもありがたい」

「ま、待ってください。寝込みはちょっと支障があるので、せめて起こしてもらえますか?」

「わかった!ワイルドに抱かれたいときに寝込みを襲うことにするね!」

だめだ。この目をした玲奈さんは絶対に折れない。俺が、俺が進化するしかない。
玲奈さんに触られたら瞬時に目覚める能力を身に着けるしかない。

そう強く決意したはずなのに、玲奈さんの隣で眠ると心地よくて、昏々と眠ってしまうため、それからも何度も夢心地で激しく玲奈さんを抱いてしまうことがあり、その度に玲奈さんは「野獣くまちゃん」と喜び、俺は恥ずかしさで顔から火が出る思いをするのだった。
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