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「ここで待っている間に何があったんですか…?」

ベッドに座っている玲奈さんの隣に腰掛け、そっとその手を握る。

「それがね…くまちゃんの学ラン姿とかブレザー姿とか想像して、そんなときに出会ってたらどうなってたのかなぁって考えてたらね」

「??」

先が見えないがとりあえず頷いた。

「私達、3歳差でしょ?だから、同じ中学にも、高校にも通えないの!小学校で出会うか、中高一貫に行くしかないんだよ?!」

「…なるほど…」

「でも、くまちゃんが中1で私が高1でしょ?くまちゃんがいくらおっきくてたくましくても、中1と高1の恋愛って想像できないじゃない?でも、私が高3になっても、くまちゃんまだ中3なんだよ~…」

「それは…そうなりますね…」

「そんないたいけな中学生の制服脱がしてあんなこととか、こんなことをする姿なんて、ただの変態だよ~~」

玲奈さんは両手で顔を覆ってしまった。

「くまちゃんの思春期の姿を想像しようとしたら、私がとんでもない変態狼になってしまったの」

「変態狼…」

なんだろう、その不思議な言葉は。
首をかしげていたら、玲奈さんが俺の体にぎゅうぎゅうと抱きついてきた。

「私達、大人になってから出会えてよかったね。きっと学生のときに知り合ってても、そのまま通り過ぎて終わっちゃうとこだったね」

そんなことを言われてはっとした。確かに、俺と玲奈さんがもし同じ中高一貫校にいたとしても、きっと住む世界は全く違ったはずだ。
そして、きっと玲奈さんは彼氏ができて、俺は柔道ばっかりやってて、たとえ俺が玲奈さんに恋心を抱いたとしても憧れの人、という認識でしかなくて、何の一歩も踏み出すことはできなかっただろう。
そして、きっと大学で出会っていたとしても、柔道しか取り柄のない自分に、玲奈さんの隣に発つ自信を持てなくて、離れることを選んだかもしれない。
今だって、女性には全く慣れていないし、恋人としてちゃんとできているかもわからない。
それでもなんとか自立して、自分の足で歩いて、玲奈さんを支えられると、支えたいと思える自分になれた今だからこそ、こうしていられるんだろう。

出会うのがもっと早ければ、もっと早く出会いたかったと何度も思ったけれど、俺達が出会ったタイミングは俺達には最善で、最良のタイミングなんだと実感した。

「はい、玲奈さん…あの日、自分の気持ちを…声にして伝えられてよかったです…」

「私も、くまちゃんをせっせと罠にかけてよかったなってつくづく思ってる!」

「罠…?」

「あれだね、妄想は現実に添わせてちゃ意味ないね!妄想なんだから、自由に想像しなくちゃね!同い年の設定とか、私が年下の設定とか、いっそくまちゃんを襲う女教師とか好きにやるほうが楽しいよね!」

俺の膝の上で拳を握りしめて熱弁している。どうやら玲奈さんのペースを取り戻したようで安心した。
ちょっと妄想のペースは落としてほしいというか、何を頭の中で考えてるかまでどーんと発表してくれなくてもいいというか、俺なら絶対に言えない…。玲奈さんらしいと言えば、玲奈さんらしいか。
苦笑しつつ、玲奈さんの小さい頭にそっと唇を寄せた。

「兄さん、下りてきていいって」

ノックの音と同時に弟の声がした。俺達は顔を合わせてそっとベッドから立ち上がった。
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