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卒アルをさらっと恋人に見せられる人にはなれない!
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「わーくまちゃんの匂いする~」
部屋に入るなり玲奈さんがそんなことを言うもんだから、入った勢いそのままに窓を開け放った。
「わーすごーい、机ちっちゃーい」
うちの母親いわく、「成長にあわせて3人分も机を買い替えるのも金がかかる!無理!少しは縮め!」という理由で小学生以来机は変わっていない。椅子だけは俺達の体重に耐えきれなくなって二度ほど壊した。
机に体がはまらなくなってからは床にテーブルを出して勉強していたから、机はもはや本棚兼物置だ。
「これ、卒アル?見てもいい?」
「だめです!!」
そんな黒歴史のつまったような遺物を玲奈さんに見せられるはずがない!
「えーそうなの?残念…」
玲奈さんがおもむろにベッドに近づき体勢を変えようとした瞬間、俺の直感が異変を察知してその体を後ろから抱え込んだ。
「くまちゃーん、ちょっとちょっと」
俺の腕の中で玲奈さんがジタジタと暴れる。
「…玲奈さん…今、何しようとしてました…?」
「ちょっとベッドの下をのぞこうかなって」
「そこには何もありません!こんな、滅多に帰ってこない部屋の、しかもいつ誰が入ってくるかもしれない場所に玲奈さんの思っているものは隠しません!」
もがいていた玲奈さんが明らかにしょぼんとして動きを止めた。
「そっかぁ…思春期くまちゃんの愛用コレクション見たかったなぁ…」
そんなに落ち込んで言うことだろうか?
腑に落ちない表情の玲奈さんをひとまずベッドの端におろした。
「ちょっとお茶取ってきますんで、ここでじっとしといてください。漁っても何も出てこないんで、とにかくじっと!動かずにいてください!」
そう言って部屋を出ると、玄関の閉まる音がした。なんだろうと考えながら一階に降りる。
そのままキッチンに向かうと、リビングをバタバタと片付ける父さんと上の弟の俊哉。
気にせずキッチンに行くと、母さんは見たこともない高級そうなカップとソーサーを出していた。
どこにそんなの隠してたんだ、一体。
「母さん、お茶を持っていくから、お茶っ葉どこ?」
いつも使っている湯呑みと急須を食器棚から出そうとしたら、ものすごい勢いで腕を掴まれた。
「あんた、そんなやっすいお茶なんか出しちゃダメよ!その湯呑みだって100均で買って、使い倒したやつじゃない!もーほんとに気が利かないんだから!!」
「えっ…と…ごめん…」
普段それを使ってるし、飲んでる身としては、それの何がまずいのかはわからないが、母さんとしては許しがたいんだろう。
こういうときはとりあえず謝るに限る。
「今、弦哉にケーキとか買いに行かせたから!まったく!うちにいつでも洒落たものがあるわけないでしょう!」
「いや…うん…それはそうだろうけど、玲奈さんはそんなこと気にしないから。ただ挨拶に来ただけなんだし、もっと気軽に」
「印象よ!せっかくあんたのこと気に入ってるんだとしても、家の雰囲気でダメになることだってあるんだから!甘いのよ、達哉は!」
びしっと断言され、そういうものなんだろうかと思う一方、早く戻らないと待ての状態で放置している玲奈さんがそわそわと動き出すんじゃないかと気になってきた。
「…じゃあ、とりあえず部屋に戻るけど、早めにしてほしい。あと、絶対に他の人には連絡しないでくれよ。面倒だから」
「わかってるわよ。息子の一生がかかってることぐらい、たるんだ腹になった私にだって充分わかってます!」
ぱしーんといい音を立てて自分の腹を叩く姿はなんというか、気合が入ってるんだろう。
何も手を持たずにもう一度部屋に戻った。
ドアを開けると、玲奈さんがとても真剣な顔で床を凝視したまま微動だにしていない。
一体、どうしたというのか…。
「くまちゃん…私、色々考えたんだけど…やっぱりだめだった…」
今にも泣きそうな表情で玲奈さんがそんなことを言うもんだから、俺は慌てて玲奈さんのそばに駆け寄った。
部屋に入るなり玲奈さんがそんなことを言うもんだから、入った勢いそのままに窓を開け放った。
「わーすごーい、机ちっちゃーい」
うちの母親いわく、「成長にあわせて3人分も机を買い替えるのも金がかかる!無理!少しは縮め!」という理由で小学生以来机は変わっていない。椅子だけは俺達の体重に耐えきれなくなって二度ほど壊した。
机に体がはまらなくなってからは床にテーブルを出して勉強していたから、机はもはや本棚兼物置だ。
「これ、卒アル?見てもいい?」
「だめです!!」
そんな黒歴史のつまったような遺物を玲奈さんに見せられるはずがない!
「えーそうなの?残念…」
玲奈さんがおもむろにベッドに近づき体勢を変えようとした瞬間、俺の直感が異変を察知してその体を後ろから抱え込んだ。
「くまちゃーん、ちょっとちょっと」
俺の腕の中で玲奈さんがジタジタと暴れる。
「…玲奈さん…今、何しようとしてました…?」
「ちょっとベッドの下をのぞこうかなって」
「そこには何もありません!こんな、滅多に帰ってこない部屋の、しかもいつ誰が入ってくるかもしれない場所に玲奈さんの思っているものは隠しません!」
もがいていた玲奈さんが明らかにしょぼんとして動きを止めた。
「そっかぁ…思春期くまちゃんの愛用コレクション見たかったなぁ…」
そんなに落ち込んで言うことだろうか?
腑に落ちない表情の玲奈さんをひとまずベッドの端におろした。
「ちょっとお茶取ってきますんで、ここでじっとしといてください。漁っても何も出てこないんで、とにかくじっと!動かずにいてください!」
そう言って部屋を出ると、玄関の閉まる音がした。なんだろうと考えながら一階に降りる。
そのままキッチンに向かうと、リビングをバタバタと片付ける父さんと上の弟の俊哉。
気にせずキッチンに行くと、母さんは見たこともない高級そうなカップとソーサーを出していた。
どこにそんなの隠してたんだ、一体。
「母さん、お茶を持っていくから、お茶っ葉どこ?」
いつも使っている湯呑みと急須を食器棚から出そうとしたら、ものすごい勢いで腕を掴まれた。
「あんた、そんなやっすいお茶なんか出しちゃダメよ!その湯呑みだって100均で買って、使い倒したやつじゃない!もーほんとに気が利かないんだから!!」
「えっ…と…ごめん…」
普段それを使ってるし、飲んでる身としては、それの何がまずいのかはわからないが、母さんとしては許しがたいんだろう。
こういうときはとりあえず謝るに限る。
「今、弦哉にケーキとか買いに行かせたから!まったく!うちにいつでも洒落たものがあるわけないでしょう!」
「いや…うん…それはそうだろうけど、玲奈さんはそんなこと気にしないから。ただ挨拶に来ただけなんだし、もっと気軽に」
「印象よ!せっかくあんたのこと気に入ってるんだとしても、家の雰囲気でダメになることだってあるんだから!甘いのよ、達哉は!」
びしっと断言され、そういうものなんだろうかと思う一方、早く戻らないと待ての状態で放置している玲奈さんがそわそわと動き出すんじゃないかと気になってきた。
「…じゃあ、とりあえず部屋に戻るけど、早めにしてほしい。あと、絶対に他の人には連絡しないでくれよ。面倒だから」
「わかってるわよ。息子の一生がかかってることぐらい、たるんだ腹になった私にだって充分わかってます!」
ぱしーんといい音を立てて自分の腹を叩く姿はなんというか、気合が入ってるんだろう。
何も手を持たずにもう一度部屋に戻った。
ドアを開けると、玲奈さんがとても真剣な顔で床を凝視したまま微動だにしていない。
一体、どうしたというのか…。
「くまちゃん…私、色々考えたんだけど…やっぱりだめだった…」
今にも泣きそうな表情で玲奈さんがそんなことを言うもんだから、俺は慌てて玲奈さんのそばに駆け寄った。
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