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バカップルで親バカップル
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今日はお兄ちゃんの家に来ています。
昼前に光さんがわざわざ車で迎えに来てくれて、そのままおうちに直行しました。
うちの両親は朝から来て、引っ越しの荷造りを手伝ってるらしく、慌ただしいだろうなぁと思いつつ久しぶりの再会を楽しみにしてた。
「今、ほんとに散らかってるからさー、部屋着いてもマスクもしといてね?埃っぽいと思うし」
「はい!了解です!最近だいぶ調子がいいので、お手伝いもちゃんとできる気がします!」
「うーん、今日はほら、お手伝い要員というより、熊野君との対面のために来てもらってるようなもんだし、ソファにでもどーんと座ってればいいよ」
「あ、くまちゃんは今日は夕方で上がれるように調整してもらったそうなんで、夕飯には間に合うように来ると思います」
「りょーかい。相変わらず律儀だよね、二人ともさ。ちゃんと両親に挨拶してから同棲したいなんて」
「そうですか?」
「私と蓮人なんてどっちにも電話だったから。引っ越したことさえ伝え忘れてたしさー」
「…それはお兄ちゃんとはあっさり別れるかもしれないから、ま、言わなくてもいっかー的な…?」
「あははは。ちがうちがう。あの頃仕事も忙しくなってたし、引っ越しも重なって全然余裕がなかっただけ。まぁ、もう大人だし、なんとなく蓮人ともこのまま続くのかなって気もしてから時期はおいおいでいいやと思ってさ」
光さんのかっこいい横顔を眺めつつ、二人が幸せそうでよかったぁとしみじみ思った。
「くまちゃんは会社に近くて安い寮暮らしなのに、わざわざそこを出るってなったら絶対なんで?ってなると思うんですよね。本当は仕事もちゃんとできてる状態でお会いするのがご家族にも心配をかけなくていいんじゃないかとわかってるんですけど…」
「いーのいーの、一緒に暮らすのも、これから先をどう過ごして感じるかも二人のことなんだから。ダメなときはまた別々の道を歩めばいいし、そこに親とか家族のことを必要以上に割り込ませないことだよ。結婚してからも、誰を最優先にするのかってことはちゃんとわかってないとさ」
「誰を最優先にするか…」
簡単なことなのに、つい見失ってしまいそうになることだなぁって思った。
そうこうしてたらお兄ちゃんと光さんの住んでるマンションに着いた。ここはお兄ちゃんのお店を贔屓にしてくれていたお客様の持ってる不動産の一つで、実はかなり破格な値段で借りられているのです。
お兄ちゃんのことを昔からすっごく気に入って、将来性を見込んでくれて、光さんとの燃え上がるラブストーリーを目の当たりにしたお客様の一人でもあって、親心?が芽生えたのかそんな打診をしてくださったそう。
契約を変更して、妹たちに住まわせたいって申し出にもさらっとOKを出してくださった。
今度菓子折り持って挨拶に行かなくちゃと思ったら、お兄ちゃんの新規オープンのお店でプレオープン期間中に貸し切りでご招待するそう。お兄ちゃんの恩返しってすごいなー。
エントランスを通ってエレベーターに乗り、10階で降りて、右手に進んで突き当たりがお部屋です。
1フロアに3世帯だけなので、結構静かと言ってた。ファミリータイプのフロアはもっとにぎやかなのかもしれないけど。
玄関の鍵はかけてなかったみたいで、光さんがドアを開けてくれた。玄関には3足の靴。どれも見覚えのあるものばかり。
「お邪魔しまーす」
「ただいまー。帰ったよー?」
私達が玄関から声をかけると、パタパタと足音がいくつも近づいてくる。
「玲奈ちゃーん」
まずはお母さんの登場。よく言えばほんわか。ぶっちゃけると天然。父のフォローなくして母は存在しえない。
母の目には私はまだ高校生?いやもしかしたら中学生くらいにしか見えていないのか、会うとぎゅーっと抱きしめてくる。ちなみにお兄ちゃんにもそれをやる。
「おかえりー。元気だったかー?」
その奥からお父さん。のんびりしてるけど、真面目で誰にでも親切に、が子どもから見た父の姿。
そして、子どもから言わせるのもなんですけど、うちの両親バカップルなんですよ。
いまだにいってきますとおかえりなさいのちゅーしてるし、誕生日やクリスマスは二人でディナーに出かけるし、結婚記念日にはたいてい一泊でどっか行くし。
お母さんが更年期入ったって聞いたから安心したけど、年の離れた弟妹ができはしないかとハラハラしてたよね、ずっと。
いや、できてもいいけどね、できたらできたで猫かわいがりして、お兄ちゃんと公園とか散歩に連れて行ったりして、「あら若いパパとママねー」なんて公園で言われたりする姿も思い浮かぶけどね。
とまぁ、ラブラブなわけです、うちの両親は。
「玲奈ちゃんが調子が悪いのにすぐに来られなくてごめんなさいねぇ」
お母さんとリビングへと進み、段ボールの山を交わしながら、窓辺に追いやられているソファに腰掛ける。
「いいよ、わざわざ新幹線乗ってくるのは大変だし、話したけど彼氏がとっても頼りになる人だから。お兄ちゃんもすぐに来てくれたし」
お母さんも隣に座って、頬を手で押さえながら、うんうんと頷いていた。
「ええ、蓮人からもとても良い人と聞いたわ。今日しっかり御礼を申し上げないとね」
「お父さんもしっかり挨拶するから。玲奈をよろしくお願いしますって」
「え?う、うーん、そうなんだと思うけど、若干早いっていうか、重いっていうか…。仕事にも戻れていない今の状態でお願いしますはちょっと私の気持ち的に、くまちゃんの負担になり過ぎる気がして…」
しどろもどろになりながら、今抱えている複雑な気持ちを伝えた。
「まぁっ、そうね。玲奈ちゃんの言う通りだわ。そういう先のことはまた今度にとっておいて、まずは一緒に暮らしてくださることに御礼を伝えるだけにしましょうね」
「そうか。そうだな。お父さんも「お嬢さんと結婚させてください!」のくだりをもっとしっかりとやりたいと思わなくもなかったんだ」
「うーん、そうね。男親の醍醐味かもしれないね…?」
お父さんは納得したのか、よーしと腕まくりをしてまた作業に戻っていった。
私達を少し離れた場所で見ていたお兄ちゃんと光さんがこそこそと話していた。
「え、光のお父さんもやりたかったかな、あのくだり」
「えー?だって蓮人連れて帰ったとき、『ひゃー、こりゃまたハンサムなあんちゃんだけど、なんか光に弱みでも握られてんのか?』って言い放ったじゃん。しかもその後『よっしゃ、バーベキューしよ。バーベキュー』とかなんとか自分がしたいだけの癖に盛り上がっちゃってさー。かしこまる要素何もなかったじゃん」
「そう…だったなぁ。結婚の挨拶に行ったはずだったんだよなぁ、あれ」
「しかも初対面なのに途中から網を挟んで焼き具合とかがーがー言い合ってたしね」
「お義父さん肉を網からあげるの早すぎて、レアっていうか、生に近いんだよなぁ」
「せっかちだからねー。あれよ、鍋奉行が二人いたらだめってやつ。網奉行はお父さんが引退するまでやらせとけばいいわけよ。お母さんがしれっと網に戻すからさ」
「今夜は焼肉にしといてよかった。なんか話してたら肉が食べたくなってきた」
「あ、今夜焼肉なの?」
私がウキウキと声をかけると二人ともとてもいい笑顔をみせてくれた。
「ガスコンロとグリルさえあればできるし、お肉は買ってきてあるし、野菜は切るだけ。らくちんでしょ?」
「やったぁ。じゃあ、私は荷造り戦力外みたいだから、野菜を切っとくね~」
私にもできることが見つかって、いそいそとキッチンへと向かった。
昼前に光さんがわざわざ車で迎えに来てくれて、そのままおうちに直行しました。
うちの両親は朝から来て、引っ越しの荷造りを手伝ってるらしく、慌ただしいだろうなぁと思いつつ久しぶりの再会を楽しみにしてた。
「今、ほんとに散らかってるからさー、部屋着いてもマスクもしといてね?埃っぽいと思うし」
「はい!了解です!最近だいぶ調子がいいので、お手伝いもちゃんとできる気がします!」
「うーん、今日はほら、お手伝い要員というより、熊野君との対面のために来てもらってるようなもんだし、ソファにでもどーんと座ってればいいよ」
「あ、くまちゃんは今日は夕方で上がれるように調整してもらったそうなんで、夕飯には間に合うように来ると思います」
「りょーかい。相変わらず律儀だよね、二人ともさ。ちゃんと両親に挨拶してから同棲したいなんて」
「そうですか?」
「私と蓮人なんてどっちにも電話だったから。引っ越したことさえ伝え忘れてたしさー」
「…それはお兄ちゃんとはあっさり別れるかもしれないから、ま、言わなくてもいっかー的な…?」
「あははは。ちがうちがう。あの頃仕事も忙しくなってたし、引っ越しも重なって全然余裕がなかっただけ。まぁ、もう大人だし、なんとなく蓮人ともこのまま続くのかなって気もしてから時期はおいおいでいいやと思ってさ」
光さんのかっこいい横顔を眺めつつ、二人が幸せそうでよかったぁとしみじみ思った。
「くまちゃんは会社に近くて安い寮暮らしなのに、わざわざそこを出るってなったら絶対なんで?ってなると思うんですよね。本当は仕事もちゃんとできてる状態でお会いするのがご家族にも心配をかけなくていいんじゃないかとわかってるんですけど…」
「いーのいーの、一緒に暮らすのも、これから先をどう過ごして感じるかも二人のことなんだから。ダメなときはまた別々の道を歩めばいいし、そこに親とか家族のことを必要以上に割り込ませないことだよ。結婚してからも、誰を最優先にするのかってことはちゃんとわかってないとさ」
「誰を最優先にするか…」
簡単なことなのに、つい見失ってしまいそうになることだなぁって思った。
そうこうしてたらお兄ちゃんと光さんの住んでるマンションに着いた。ここはお兄ちゃんのお店を贔屓にしてくれていたお客様の持ってる不動産の一つで、実はかなり破格な値段で借りられているのです。
お兄ちゃんのことを昔からすっごく気に入って、将来性を見込んでくれて、光さんとの燃え上がるラブストーリーを目の当たりにしたお客様の一人でもあって、親心?が芽生えたのかそんな打診をしてくださったそう。
契約を変更して、妹たちに住まわせたいって申し出にもさらっとOKを出してくださった。
今度菓子折り持って挨拶に行かなくちゃと思ったら、お兄ちゃんの新規オープンのお店でプレオープン期間中に貸し切りでご招待するそう。お兄ちゃんの恩返しってすごいなー。
エントランスを通ってエレベーターに乗り、10階で降りて、右手に進んで突き当たりがお部屋です。
1フロアに3世帯だけなので、結構静かと言ってた。ファミリータイプのフロアはもっとにぎやかなのかもしれないけど。
玄関の鍵はかけてなかったみたいで、光さんがドアを開けてくれた。玄関には3足の靴。どれも見覚えのあるものばかり。
「お邪魔しまーす」
「ただいまー。帰ったよー?」
私達が玄関から声をかけると、パタパタと足音がいくつも近づいてくる。
「玲奈ちゃーん」
まずはお母さんの登場。よく言えばほんわか。ぶっちゃけると天然。父のフォローなくして母は存在しえない。
母の目には私はまだ高校生?いやもしかしたら中学生くらいにしか見えていないのか、会うとぎゅーっと抱きしめてくる。ちなみにお兄ちゃんにもそれをやる。
「おかえりー。元気だったかー?」
その奥からお父さん。のんびりしてるけど、真面目で誰にでも親切に、が子どもから見た父の姿。
そして、子どもから言わせるのもなんですけど、うちの両親バカップルなんですよ。
いまだにいってきますとおかえりなさいのちゅーしてるし、誕生日やクリスマスは二人でディナーに出かけるし、結婚記念日にはたいてい一泊でどっか行くし。
お母さんが更年期入ったって聞いたから安心したけど、年の離れた弟妹ができはしないかとハラハラしてたよね、ずっと。
いや、できてもいいけどね、できたらできたで猫かわいがりして、お兄ちゃんと公園とか散歩に連れて行ったりして、「あら若いパパとママねー」なんて公園で言われたりする姿も思い浮かぶけどね。
とまぁ、ラブラブなわけです、うちの両親は。
「玲奈ちゃんが調子が悪いのにすぐに来られなくてごめんなさいねぇ」
お母さんとリビングへと進み、段ボールの山を交わしながら、窓辺に追いやられているソファに腰掛ける。
「いいよ、わざわざ新幹線乗ってくるのは大変だし、話したけど彼氏がとっても頼りになる人だから。お兄ちゃんもすぐに来てくれたし」
お母さんも隣に座って、頬を手で押さえながら、うんうんと頷いていた。
「ええ、蓮人からもとても良い人と聞いたわ。今日しっかり御礼を申し上げないとね」
「お父さんもしっかり挨拶するから。玲奈をよろしくお願いしますって」
「え?う、うーん、そうなんだと思うけど、若干早いっていうか、重いっていうか…。仕事にも戻れていない今の状態でお願いしますはちょっと私の気持ち的に、くまちゃんの負担になり過ぎる気がして…」
しどろもどろになりながら、今抱えている複雑な気持ちを伝えた。
「まぁっ、そうね。玲奈ちゃんの言う通りだわ。そういう先のことはまた今度にとっておいて、まずは一緒に暮らしてくださることに御礼を伝えるだけにしましょうね」
「そうか。そうだな。お父さんも「お嬢さんと結婚させてください!」のくだりをもっとしっかりとやりたいと思わなくもなかったんだ」
「うーん、そうね。男親の醍醐味かもしれないね…?」
お父さんは納得したのか、よーしと腕まくりをしてまた作業に戻っていった。
私達を少し離れた場所で見ていたお兄ちゃんと光さんがこそこそと話していた。
「え、光のお父さんもやりたかったかな、あのくだり」
「えー?だって蓮人連れて帰ったとき、『ひゃー、こりゃまたハンサムなあんちゃんだけど、なんか光に弱みでも握られてんのか?』って言い放ったじゃん。しかもその後『よっしゃ、バーベキューしよ。バーベキュー』とかなんとか自分がしたいだけの癖に盛り上がっちゃってさー。かしこまる要素何もなかったじゃん」
「そう…だったなぁ。結婚の挨拶に行ったはずだったんだよなぁ、あれ」
「しかも初対面なのに途中から網を挟んで焼き具合とかがーがー言い合ってたしね」
「お義父さん肉を網からあげるの早すぎて、レアっていうか、生に近いんだよなぁ」
「せっかちだからねー。あれよ、鍋奉行が二人いたらだめってやつ。網奉行はお父さんが引退するまでやらせとけばいいわけよ。お母さんがしれっと網に戻すからさ」
「今夜は焼肉にしといてよかった。なんか話してたら肉が食べたくなってきた」
「あ、今夜焼肉なの?」
私がウキウキと声をかけると二人ともとてもいい笑顔をみせてくれた。
「ガスコンロとグリルさえあればできるし、お肉は買ってきてあるし、野菜は切るだけ。らくちんでしょ?」
「やったぁ。じゃあ、私は荷造り戦力外みたいだから、野菜を切っとくね~」
私にもできることが見つかって、いそいそとキッチンへと向かった。
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