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三次元を二次元に

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光さんが二人を「どうどう」と落ち着かせてくれた。

「でもね、くまちゃん、光さん普通に断ったんだよ」

「えっ、そうだったんですか?」

「うん…断られたんだ…」

しょんぼりと肩を落とすお兄さんは当時のことを思い出しているのか悲壮感が漂っている。

「だって仕方ないでしょ?まだ2回目なんだよ?連絡は何回か取ったけど、そんな状態で付き合うって考えられないでしょ」

「まぁ、お兄ちゃんこの顔と持ち前の優しさで女の人から断られたことっていうか、惚れられたことはあっても、惚れた経験ほぼなかったもんね」

「想像つくよね、その入れ食い状態」

うんうん、と女性陣が頷くのを不服そうにお兄さんが見ているが、男の俺からしても、それだけの整った顔と玲奈さんや光さんに見せる優しさを知れば惚れない人はいないだろう。

「しかも、お兄ちゃん外面めっちゃいいからね。今は私達の前だからこんなにふにゃふにゃしてるけど、外で会った時とか『誰、この人…』って思うくらいかっこつけてるから」

「かっこつけてるというか…しっかりしないといけないだろう?大人なんだから」

「えー、でも高校生くらいからはもうできあがってたじゃん。イケメン王子が」

「どうしてなんだろうね…気づくと王子と呼ばれてた気がするけど…」

「すごいよね、天然で王子できるなんてそうそういないよ。しかもね、お兄ちゃんってば光さんと友達にはなれたけど全然進展しなくて、周りと散々ヤキモキさせた挙句やらかしたんだよ」

「やらかしたんですか?」

ふとお兄さんを見ると目が泳いでいる。光さんは聞こえていないのか食べる手が止まらない。

「友達以上恋人未満みたいな関係を3か月くらい続けて、その後2か月くらい二人が忙しくて会えなかったらしいんだけど、お兄ちゃんがその時働いてたレストランに光さんが友達と来てくれたときに…。お兄ちゃん、ちょうど人手足りなくて厨房出てホールにいたらしくて。光さん見つけるなり飛んで行って…」

「玲奈…だめ…」

「ぶちゅーっと光さんにキスしたんだって」

きゃーと言ってはしゃぐ玲奈さんの横で俺も赤くなってしまったし、お兄さんも真っ赤だ。キスされた張本人の光さんだけがけろっとしている。
お兄さんが両手で顔を覆いながら「光に会えたのが嬉しくて…つい…」と言ってるのがかわいい。

「しかもそのままの勢いで二度目の告白して、光さんからOKもらって、正式に恋人になりましたー!」

わぁ~と拍手する玲奈さんに照れるお兄さん。相変わらず食べ続ける光さん。全員がマイペースだ。

「それで光さんとお兄ちゃんは二次元デビューもしちゃったんだよね?」

「なんですか、二次元デビューって」

「どうやら、光の友達がインスタに何日か前にこの日にディナー行きますって投稿したのを光のファンが見つけて、ディナーの予約を埋めまくってたらしいんだよね。そして、そこで俺のその…告白を見た子達がね、帰りにやたら涙ぐみながら『ありがとうございます。貴重なご提供ありがとうございます。後世に必ず残します』って不思議な言葉を残していったとは思ってたんだけど…」

「お兄ちゃんと光さんの同人誌を作ったんだよ!18禁の!」

「蓮人のせいでエロ本デビューさせられたわけよ、私」

「そんな!ひどい!人生の大切なことを漫画にされちゃったんですか?」

「そうなんだよ、ひどいんだよ!BL本にされちゃったんだよ!しかも、3冊くらいもらったけど、全部俺が抱かれる側になってて!この肉のつかない体をどんだけ恨んだことか…」

「え?え?」

「まぁね~。蓮人引き締まってはいるけど、ボクサーみたいな感じだからね、体ごついのは私だから、私が攻めになるよね」

「攻め?」

「BLの中では男役は攻めで女役は受けなんだよ」

「え?光さんが男役?ってことですか?」

「まぁ、もう同人誌っていうか、ネタの提供しただけってわけ、私達。妄想が暴走したんだろうね」

「光さんのファンは基本女性だから。BLのほうが夢があってよかったのかも」

さっぱり状況は理解できないが、誰も不快に思っていないようなので胸を撫でおろした。というか、本当にこの三人はメンタル強い。懐がでかいとも言うのかもしれないが、俺も鍛えなければならないな…

「まぁ、女の子達がそれで喜んでくれるなら、別にどうとでもしてくれて構わないけどね。それに、光の本当の姿を見られるのは俺だけだから」

突然の重低音で囁かれた言葉に俺の頭がぼんっと爆発した。こっ、これが…天然王子の威力…
言えない…とてもそんな艶めいたこと俺は玲奈さんに言えない…

格の違いを見せつけられて俺はしばらく放心していた。

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