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似た者同士

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「光も来たし、ごはんの準備でもしようかな…」

と哀愁を漂わせてキッチンにお兄さんが向かったので、俺もついていった。
玲奈さんと光さんは相変わらず楽しそうに抱き合っている。
玲奈さん…俺より光さんのほうが好きな気がして焦ります…

お兄さんは持ってきていたエコバッグから食材を出したり、冷蔵庫の中を見たりして少し考えていた。

「百合子さんの料理もあるしなぁ。俺も百合子さんの料理うまいから食べたいんだよね。今日は百合子さんのを食べて、俺が作り置きしていけばいいか。俺の料理なんて光もいつでも食べられるし」

「わかりました。俺は何をすればいいですか」

「そうだねぇ。温めて皿に移して出すくらいなんだけど。4人分の皿なんてあったっけ」

「あ…どうでしょう。2人分はありましたけど」

「まぁ、店じゃないし、どの皿でも食べられたらいいと思うから適当にいこう」

お兄さんが冷蔵庫の作り置きを手際よく温め直したりしてくれている間に俺も皿を出す。

「あの、どうして玲奈さんと光さんはあんなに仲がいいんですか?」

「あー…もう何年か前になるけど、玲奈が合コンでね、嫌な男達に当たったことがあるんだよね。その居酒屋っていうか、飲んでた場所の店員と男共がグルになって、女の子達にだけリキュール強めに酒を作ったり、わざと度数の強いお酒を飲ませたりしてね。玲奈はトイレに駆け込んで吐きながら俺に電話してきたんだよ。でも、俺その当時結構離れたとこに住んでて。車で駆け付けるにも1時間かかるような場所でさ。それでも飛ばして着いたときには、光が男達一喝して女の子3人守ってくれてた」

「え、玲奈さんお酒…」

「そう、それから玲奈はお酒飲まなくなったんだよね。怖いって言って。外で飲むこともだけど、生活からも切り離しちゃったね。トイレ、外からガンガンされて、すごく怖い思いしたみたいだし…仕方ないよね」

「そんなことがあったんですか…」

「光がね、たまたま女子トイレに行って、吐いてる玲奈に気づいて、まだ俺と電話つながってたから、そこに急いで向かってるから玲奈をみていてもらえませんか!って必死お願いしてさ。任せとけ!って言われて、あれ?女子トイレだけど、男?って最初は思っちゃって、あはは」

お兄さんは一瞬手を止めて、光さんと玲奈さんをじっと見つめた。

「ほんと、タチの悪いやつらっているよね。玲奈は昔から狙われやすいっていうか、俺が守ってやれるうちはよかったけど、大人になるとどうしても過ごす場所が変わってくるしね。今は熊野さんいてくれて助かってるよ」

「そんな俺も大したことできてないですよ…」

「誰かがそばにいるっていうのは、自分が思ってるより、相手の支えになってるもんだよ。ありがとう」

優しい言葉に俺の胸が熱くなる。この人の期待を裏切るわけにはいかないと改めて思う。
温めた料理を次々と手際よく皿に盛りつけてくれる。さすが料理人。普通の食器に乗せるにも自然にうまそうにやるんだなぁと感心しつつ料理を運んでいく。玲奈さんと光さんも手伝ってくれて、ローテーブルの上はパーティのような豪華さになった。

「はぁ~百合子さんのお料理ってほんといいよね。懐かしい美味しさもあるのに、新しい味!って感じのも絶対1、2品は作ってくれるし」

「玲奈が好きだからってポトフも作ってきてくださったんだろう?また御礼に行かないとなぁ」

「お兄さん達も面識があるんですね」

「うん、玲奈のストーカーのときにね、俺が一緒に住んでやれたらよかったんだけど、その時は社員寮っていうかその時のレストランのオーナーの家族が持ってるアパートに住んでて、独身の男しか入れないようなとこでさ。ストーカーでまいってる玲奈をそんなとこに置いておくわけにもいかなくてね」

「私もまだそんなに親しくはなかったから預かるってのもね」

「そう。お兄ちゃんが告白したのだって、光さんのところに御礼に行ったときだったしね」

「そうそう、今思い出しても、なんだこいつ…くらいの感想しか当時は持ってなかったけどな」

「あの時の光さんの顔…なんていうか…すごかったもんね…」

玲奈さんと光さんが遠い目をしているのに、お兄さんは横で頬を染めながら照れくさそうにしている。本当にメンタルが強い人だ。

「だって、光を好きになっちゃったんだから仕方ないじゃないか。好きなら好きと言わないとわからないだろう?」

「そりゃね。でも、妹を助けてくれてありがとうございましたって食事をご馳走しますってホテルのレストラン予約されて、妹もそこにいるのに花束渡されて付き合ってくださいって言われたって」

「デザートの時点でいなくなったなと思ったら、花束持って帰ってきたもんね。めちゃくちゃ目立ってた、お兄ちゃん。あ、このためにスーツ?ってそこで気づいたし」

「熊野くん、見てわかると思うけど、蓮人って顔がいいでしょ?スーツ着てびしっとしたりするとほぼ王子よ。そんな人種私の周りにいたことないし、それまで付き合ってきたやつだってみんな獣みたいなのばっかりだったから、いったい何の罰ゲームをやらされてるんだろう、こいつって本気で思ってた」

「やめて。元カレの話とかしないで、光。聞きたくない」

むっとするお兄さんを置いて話はどんどん進む。俺も聞きつつ食べる手は止めていない。玲奈さんもにこにこしながら食べ進めているので、その様子に安堵して微笑んだ。

「玲奈も玲奈でさ、兄貴の暴走を妹が止めてくれるだろうと思って見てんのに、『わ~このスフレおいし~い』とか全く空気読まずに食べ続けてさ。多分、周りの人は蓮人が玲奈に告白してると思ったんだろうね。私に花束渡したとき、レストランどよめいたから」

「うん、生BL?!って声聞こえたし」

「BL?ってなんですか?」

「くまちゃん、BLはねボーイズラブだよ。男の子同士の恋愛のこと」

「なるほど。でも、光さんとお兄さんならBLちがいません?」

「光さんそこらの男の人よりかっこいいから!断然イケメンだから!ほら、見て!この端正なお顔なのにまとう雰囲気はワイルドって、たまらないでしょ!色気!これぞ、男の色気だから!」

突然何のスイッチが入ったのかわからないが、玲奈さんが力説を始めてしまった。

「しかも光さん体すっごく鍛えてて、筋肉本当に綺麗だからね!お見せできないのが残念なくらい綺麗だから!特に割れた腹筋とかずっと撫でていられるから!」

「引き締まったお尻もいいよ。見るのも触るのも許さないけど」

眼光鋭い橘兄妹にすごまれて、俺は箸を持つ手が止まった。
あぁ、この二人は本当に似たもの同士なんだな…と思いつつ、光さんにすがるような気持ちで助けを求めた。
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