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待っていてくれる人
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俺が玲奈さんの家に戻ったのはもう深夜だった。明日が休みでよかったと思いながら鍵を開けると、リビングの灯りがついていることに気づいて、急いで向かった。
「玲奈さん?」
「あ、くまちゃん、おかえりー」
ああ、玲奈さんだ。玲奈さんが笑ってる。
それが嬉しくて。これまでただ当たり前に享受してたけど、俺はこの笑顔に支えられてきたのに、もうそれが普通だと思ってしまっていて。それが今回、こんな形で失われるんじゃないかって本当に怖かったんだと痛感した。
玲奈さんがソファから立ち上がって俺のところに進むのと同時に俺も勢いよく歩み寄って抱きしめた。玲奈さんは何も言わずに背中をぽんぽんと叩いてくれる。
「玲奈さん…玲奈さん…」
「大丈夫。大丈夫だよ、くまちゃん」
自分のほうがよっぽど辛いのに、俺への優しさを決して忘れない玲奈さんに愛しさが募って目頭が熱くなった。
「ごめんね、私のせいでくまちゃんのお友達との関係が壊れたんじゃないかなって思ったりしてた」
その言葉に俺はがばっと体を離して、大きく首を振った。
「ちがいます。それはちがいます」
「うん。くまちゃんはそう言ってくれるかなって思ってた。それにね…私、くまちゃんは誰にも譲れない。私くまちゃんが大好きだから」
まっすぐに俺を見て言った言葉に、俺は一瞬固まった。我に返った途端、顔に熱がかーっと上がってきたのがわかった。
「玲奈さん…どんだけかっこいいんですか。俺が言いたかったことなのに」
「え?」
玲奈さんの手を引いてソファに腰掛け、玲奈さんを膝にのせる。上着を脱いでから玲奈さんの華奢な体をすっぽりと包み込むと、どこか俺の気持ちが落ち着いてくるのを感じていた。公園での一連の出来事で気持ちがとげとげしくなっていたのがやっと収まってくるような感覚だ。
「実は俺、佐々木さんは玲奈さんの元カレなんだと思ってたんです。ヨリを戻そうとしてるのかなってずっと不安で」
「ええー?そうだったの?あんなに上司!ってオーラ出してたのに?」
「すみません。俺のところに戻ってこないかって言われてたのを聞いてしまって」
「んー?あ、倒れた日かな?だったねー。今、マネージャーの部署とか知ってる人のところの内勤にくれば?って意味だったんだよね。そっか、心配かけてごめんね。マネージャーには一度今みたいな状態のときを見せてるから、余計心配になって言ってくれたんだよね」
「はい、百合子さんが来て、ああ俺の誤解だったんだってわかったんですけど。でも、俺、絶対に玲奈さんを誰にも譲りたくないって思ったんです」
「ひゃー照れちゃう」
「そのままお返しします」
二人でくすくす笑い合って、俺は玲奈さんの体を抱きしめた。
「玲奈さん。俺と一緒に暮らしませんか」
「ん?」
「まだ付き合い始めて数か月しか経ってないことはよくわかってます。でも、俺玲奈さんがいないと不安なんです。家に帰っても、玲奈さんどうしてるか考えるし、毎日でもこっちに帰ってきたくなる。それに前みたいにストーカーが出たら俺は心配でならない。今回の斎藤のこともあるし、一緒に住むこと考えてくれませんか」
「ありがとう。そんなに一生懸命考えてくれて嬉しい。私も家に帰ってくまちゃんがいたり、くまちゃんを待ってたりするのすごく幸せだよ。でも、くまちゃん私が初めての彼女でしょ?…なんか、いいのかなって思っちゃうところも正直ある」
「どういうことですか?」
「私もくまちゃんとずっと一緒にいたいし、これからのことも一緒に考えたい。くまちゃんはまじめだし、優しいし、絶対浮気もしないのはわかってる。でも、くまちゃんは私一人しか知らないことを後になってどう思うのかなって…そんなこと考えたりしてた」
「そんな!俺にとっては、玲奈さんが現れてくれたことが奇跡なのに、そんなこと考えるはずもないですよ!もし俺がそんなばかなこと言い出したら、玲奈さんもさっさと見切りつけていいですから」
「あははっ。くまちゃんってば自分にもちゃんと厳しいんだねー」
玲奈さんがくすくす笑った後、俺の目をまっすぐ見た。
「うん、私もね、くまちゃんと一緒に住みたいな」
俺はその言葉に感動して、思いっきり抱きしめた。顔には出さなかったけど、鼓動はずっと速くなってたほどだ。
「くまちゃんの胸かったいねぇ。たくましいねぇ」
なんかしみじみ俺の胸を堪能してるちょっととぼけたところも本当にかわいくて。この気持ちをどう表現すればいいかわからないもどかしさが胸の中で暴れてるのに。
玲奈さん、俺、絶対これからも玲奈さん一人を愛し続けます。
「玲奈さん?」
「あ、くまちゃん、おかえりー」
ああ、玲奈さんだ。玲奈さんが笑ってる。
それが嬉しくて。これまでただ当たり前に享受してたけど、俺はこの笑顔に支えられてきたのに、もうそれが普通だと思ってしまっていて。それが今回、こんな形で失われるんじゃないかって本当に怖かったんだと痛感した。
玲奈さんがソファから立ち上がって俺のところに進むのと同時に俺も勢いよく歩み寄って抱きしめた。玲奈さんは何も言わずに背中をぽんぽんと叩いてくれる。
「玲奈さん…玲奈さん…」
「大丈夫。大丈夫だよ、くまちゃん」
自分のほうがよっぽど辛いのに、俺への優しさを決して忘れない玲奈さんに愛しさが募って目頭が熱くなった。
「ごめんね、私のせいでくまちゃんのお友達との関係が壊れたんじゃないかなって思ったりしてた」
その言葉に俺はがばっと体を離して、大きく首を振った。
「ちがいます。それはちがいます」
「うん。くまちゃんはそう言ってくれるかなって思ってた。それにね…私、くまちゃんは誰にも譲れない。私くまちゃんが大好きだから」
まっすぐに俺を見て言った言葉に、俺は一瞬固まった。我に返った途端、顔に熱がかーっと上がってきたのがわかった。
「玲奈さん…どんだけかっこいいんですか。俺が言いたかったことなのに」
「え?」
玲奈さんの手を引いてソファに腰掛け、玲奈さんを膝にのせる。上着を脱いでから玲奈さんの華奢な体をすっぽりと包み込むと、どこか俺の気持ちが落ち着いてくるのを感じていた。公園での一連の出来事で気持ちがとげとげしくなっていたのがやっと収まってくるような感覚だ。
「実は俺、佐々木さんは玲奈さんの元カレなんだと思ってたんです。ヨリを戻そうとしてるのかなってずっと不安で」
「ええー?そうだったの?あんなに上司!ってオーラ出してたのに?」
「すみません。俺のところに戻ってこないかって言われてたのを聞いてしまって」
「んー?あ、倒れた日かな?だったねー。今、マネージャーの部署とか知ってる人のところの内勤にくれば?って意味だったんだよね。そっか、心配かけてごめんね。マネージャーには一度今みたいな状態のときを見せてるから、余計心配になって言ってくれたんだよね」
「はい、百合子さんが来て、ああ俺の誤解だったんだってわかったんですけど。でも、俺、絶対に玲奈さんを誰にも譲りたくないって思ったんです」
「ひゃー照れちゃう」
「そのままお返しします」
二人でくすくす笑い合って、俺は玲奈さんの体を抱きしめた。
「玲奈さん。俺と一緒に暮らしませんか」
「ん?」
「まだ付き合い始めて数か月しか経ってないことはよくわかってます。でも、俺玲奈さんがいないと不安なんです。家に帰っても、玲奈さんどうしてるか考えるし、毎日でもこっちに帰ってきたくなる。それに前みたいにストーカーが出たら俺は心配でならない。今回の斎藤のこともあるし、一緒に住むこと考えてくれませんか」
「ありがとう。そんなに一生懸命考えてくれて嬉しい。私も家に帰ってくまちゃんがいたり、くまちゃんを待ってたりするのすごく幸せだよ。でも、くまちゃん私が初めての彼女でしょ?…なんか、いいのかなって思っちゃうところも正直ある」
「どういうことですか?」
「私もくまちゃんとずっと一緒にいたいし、これからのことも一緒に考えたい。くまちゃんはまじめだし、優しいし、絶対浮気もしないのはわかってる。でも、くまちゃんは私一人しか知らないことを後になってどう思うのかなって…そんなこと考えたりしてた」
「そんな!俺にとっては、玲奈さんが現れてくれたことが奇跡なのに、そんなこと考えるはずもないですよ!もし俺がそんなばかなこと言い出したら、玲奈さんもさっさと見切りつけていいですから」
「あははっ。くまちゃんってば自分にもちゃんと厳しいんだねー」
玲奈さんがくすくす笑った後、俺の目をまっすぐ見た。
「うん、私もね、くまちゃんと一緒に住みたいな」
俺はその言葉に感動して、思いっきり抱きしめた。顔には出さなかったけど、鼓動はずっと速くなってたほどだ。
「くまちゃんの胸かったいねぇ。たくましいねぇ」
なんかしみじみ俺の胸を堪能してるちょっととぼけたところも本当にかわいくて。この気持ちをどう表現すればいいかわからないもどかしさが胸の中で暴れてるのに。
玲奈さん、俺、絶対これからも玲奈さん一人を愛し続けます。
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