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どうしてこんなことに
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席に急いで戻ったはずなのに、なぜ私は氷室さんと北川さんに挟まれて三人仲良く試合を観戦しているのかな?
いや、北川さんはわかる。さっきまで一緒に見てたし、松葉杖ついてるから一番後ろの一番端で動きやすいところにいるのはわかる。
でも、氷室さん、私の横に来る必要あった?席変わりますって言ったのに、なぜ北川さんの隣ではなく、私の隣に?
頭の中では盛大にはてなマークが飛んでるんだけど、くまちゃんのお友達と思うとあれこれ言うわけにもいかず、おとなしく宇宙人役を引き続きこなしているわけですが。
「あー、見てる。絶対、こっち見てるな、タツ。試合に集中しろっての」
「おまえよく言うよ、絶対確信犯のくせに」
私の頭1個半ほど上で二人で会話をしてるけど、どういうことかな?
くまちゃんの試合だーって心の中での声援を送ろうと意気込んでたんだけど、くまちゃんってはさっきの試合とは比べ物にならない速さで一本勝ち?というものをしてしまって、え?あら?って私は軽く放心してた。
しかも、その後会場から出て行っちゃって、何かあったのかな…って心配になった。
「くまちゃん…大丈夫かな…」
小さくつぶやいただけなのに、両側でぶはって噴き出したかと思うと、二人とも身をよじって静かに笑ってる。
声出さずに笑うとか、器用な方々…
「玲奈さんっ!!」
くまちゃんに会いた過ぎてくまちゃんの幻聴まで聞こえてくるし。なんか、前の前には汗だくの道着姿のくまちゃんいるし。
「えっ?へっ?!」
間抜けな声が出たのには訳があります。
ここにいるはずのないくまちゃんが目の前に現れて、脇に手を差し込まれて軽々と持ち上げられてしまったのです。
2階席の最上段で更にくまちゃんの高さまで持ち上げられて、怖くなった私は思いっきりくまちゃんの首に抱き着いた。
「おぉー、いきなり見せつけてくれんじゃん」
「なんで、おまえ達が玲奈さんと一緒にいるんだよ」
「別にたまたま知り合ったから、一緒におまえの応援してただけだろ」
「玲奈さん、何もされてないですか?」
「え?うん、大丈夫だよ?」
「遠いと心配になるんで、もう少し見えるとこにいてください」
くまちゃんは私の返事を聞くよりも先に歩き出してしまった。えっと、下ろしてほしいなぁ。さすがに恥ずかしい。
「くまちゃん、おろしてください…」
「あっ、すみません。びっくりしたもので」
「うん、私もびっくりした…」
くまちゃんはすぐにおろしてくれて、手をつないで2階席から移動した。
「ここに来て大丈夫だったの?」
「はい、次の試合まで少し時間があるので。玲奈さんは俺の道場の人たちがいるとこにいてください。そこなら危険はないので」
「え、でも北川さんと氷室さんはくまちゃんのお友達でしょ?」
「はい、かなり仲がいい分、タチが悪いんで。さっきもあんなことして俺の反応見て楽しんでたでしょう?」
「あ、あれってそういうことだったの?」
なるほど。くまちゃんをからかうために二人で私を挟んで座ってたわけか。男の子がやりそうなことだよね…
男の人っていくつになってもこういう悪さをするところ変わらないよねぇ…
くまちゃんは会場の中を勝手知ったる感じでどんどん進んでいく。なんていうか、だんだん応援している人の割合より、試合出てます!って感じの人ばかりのゾーンになっていくんですけど、私はそこに入っていっていいものなんでしょうか。彼女という職権を濫用していませんでしょうか。
「く、熊野…もしかして…」
ね、ねぇ、くまちゃん、話しかけられてるけど、そんなに華麗にスルーしていいの?
黙々と歩き続けるくまちゃんの横でとりあえず愛想笑いだけを浮かべて私もついていく。
なんていうか、私と二人のときには見せない表情とか色々見れて楽しいけど、私やっぱりここだと浮いてるよね。
「ここの階段上がったとこにいるグループはうちの道場の家族とか関係者ばっかりなんで、そこにいてください。俺からもよく見えるんで」
「でも、見えないほうが邪魔にならないんじゃない?」
「玲奈さんが男に囲まれてるところとか絶対見たくないんで、ここにいてください」
「あ、はい」
くまちゃんに先導されて階段を上ると、きゃーきゃー応援しているというより、試合をじっと見ている熟練の方々がいらっしゃいました。
「おう、熊野、次は準々決勝か」
「はい、いってきます。俺の彼女の橘さんです。ここに座ってもらいたいんですけど、いいですか」
「はっ?あっ…おう」
「玲奈さん、うちの道場の最古参の掛布さんです。俺が小さいころから教わってた方なんで、安心です」
壮年の男性に引き合わされたけど、くまちゃんって普段ほんわかさんだし恥ずかしがりやなのに、俺の彼女ですとか平気で言えちゃうんですね。びっくりです。
いや、嬉しいんですよ。かなり胸がときめいてます。ただ、衝撃が大きかったから固まっただけで。
「突然お邪魔してすみません。よ、よろしくお願いします」
「あ、はいはい。えーと、これはまたべっぴんさんを連れてきたもんだな…」
「掛布さん、セクハラです」
くまちゃん、怖いよ!
落ち着いて、その警戒した獣モードを解いて!
「玲奈さん、いってくるんで、ここにいてくださいね」
「あ、はい、がんばってください」
思わず敬語が出ちゃったじゃん。
手を振りつつくまちゃんの背中を見送る。
紹介された掛布さんの隣にちょこんと座って、ぺこりと頭を下げた。
「突然押しかけてすみません。お邪魔でしたらいつでも移動しますので」
「あーいやいや、全然大丈夫だから。熊野が彼女連れてきたことなかったから、驚いただけで」
掛布さんという男性は、もう50代くらいの人なんだけど、柔道現役じゃなくなっても体の大きさってそこまで変わらないんだね。お腹は出るけど、肩幅とかあるから全体的に大きくなった感じ?くまちゃんもこんな風に年を取るのかしら…もし、ぽよんぽよんのお腹になるのなら、トトロのようにお腹に乗って寝てみたい…と妄想を膨らませていた。
「な、なんであなたがここにっ?!」
私に声をかけられた気がして、振り返ったら、さっき自動販売機の前で出会った、確か智美さんがそこに立っていた。
いや、北川さんはわかる。さっきまで一緒に見てたし、松葉杖ついてるから一番後ろの一番端で動きやすいところにいるのはわかる。
でも、氷室さん、私の横に来る必要あった?席変わりますって言ったのに、なぜ北川さんの隣ではなく、私の隣に?
頭の中では盛大にはてなマークが飛んでるんだけど、くまちゃんのお友達と思うとあれこれ言うわけにもいかず、おとなしく宇宙人役を引き続きこなしているわけですが。
「あー、見てる。絶対、こっち見てるな、タツ。試合に集中しろっての」
「おまえよく言うよ、絶対確信犯のくせに」
私の頭1個半ほど上で二人で会話をしてるけど、どういうことかな?
くまちゃんの試合だーって心の中での声援を送ろうと意気込んでたんだけど、くまちゃんってはさっきの試合とは比べ物にならない速さで一本勝ち?というものをしてしまって、え?あら?って私は軽く放心してた。
しかも、その後会場から出て行っちゃって、何かあったのかな…って心配になった。
「くまちゃん…大丈夫かな…」
小さくつぶやいただけなのに、両側でぶはって噴き出したかと思うと、二人とも身をよじって静かに笑ってる。
声出さずに笑うとか、器用な方々…
「玲奈さんっ!!」
くまちゃんに会いた過ぎてくまちゃんの幻聴まで聞こえてくるし。なんか、前の前には汗だくの道着姿のくまちゃんいるし。
「えっ?へっ?!」
間抜けな声が出たのには訳があります。
ここにいるはずのないくまちゃんが目の前に現れて、脇に手を差し込まれて軽々と持ち上げられてしまったのです。
2階席の最上段で更にくまちゃんの高さまで持ち上げられて、怖くなった私は思いっきりくまちゃんの首に抱き着いた。
「おぉー、いきなり見せつけてくれんじゃん」
「なんで、おまえ達が玲奈さんと一緒にいるんだよ」
「別にたまたま知り合ったから、一緒におまえの応援してただけだろ」
「玲奈さん、何もされてないですか?」
「え?うん、大丈夫だよ?」
「遠いと心配になるんで、もう少し見えるとこにいてください」
くまちゃんは私の返事を聞くよりも先に歩き出してしまった。えっと、下ろしてほしいなぁ。さすがに恥ずかしい。
「くまちゃん、おろしてください…」
「あっ、すみません。びっくりしたもので」
「うん、私もびっくりした…」
くまちゃんはすぐにおろしてくれて、手をつないで2階席から移動した。
「ここに来て大丈夫だったの?」
「はい、次の試合まで少し時間があるので。玲奈さんは俺の道場の人たちがいるとこにいてください。そこなら危険はないので」
「え、でも北川さんと氷室さんはくまちゃんのお友達でしょ?」
「はい、かなり仲がいい分、タチが悪いんで。さっきもあんなことして俺の反応見て楽しんでたでしょう?」
「あ、あれってそういうことだったの?」
なるほど。くまちゃんをからかうために二人で私を挟んで座ってたわけか。男の子がやりそうなことだよね…
男の人っていくつになってもこういう悪さをするところ変わらないよねぇ…
くまちゃんは会場の中を勝手知ったる感じでどんどん進んでいく。なんていうか、だんだん応援している人の割合より、試合出てます!って感じの人ばかりのゾーンになっていくんですけど、私はそこに入っていっていいものなんでしょうか。彼女という職権を濫用していませんでしょうか。
「く、熊野…もしかして…」
ね、ねぇ、くまちゃん、話しかけられてるけど、そんなに華麗にスルーしていいの?
黙々と歩き続けるくまちゃんの横でとりあえず愛想笑いだけを浮かべて私もついていく。
なんていうか、私と二人のときには見せない表情とか色々見れて楽しいけど、私やっぱりここだと浮いてるよね。
「ここの階段上がったとこにいるグループはうちの道場の家族とか関係者ばっかりなんで、そこにいてください。俺からもよく見えるんで」
「でも、見えないほうが邪魔にならないんじゃない?」
「玲奈さんが男に囲まれてるところとか絶対見たくないんで、ここにいてください」
「あ、はい」
くまちゃんに先導されて階段を上ると、きゃーきゃー応援しているというより、試合をじっと見ている熟練の方々がいらっしゃいました。
「おう、熊野、次は準々決勝か」
「はい、いってきます。俺の彼女の橘さんです。ここに座ってもらいたいんですけど、いいですか」
「はっ?あっ…おう」
「玲奈さん、うちの道場の最古参の掛布さんです。俺が小さいころから教わってた方なんで、安心です」
壮年の男性に引き合わされたけど、くまちゃんって普段ほんわかさんだし恥ずかしがりやなのに、俺の彼女ですとか平気で言えちゃうんですね。びっくりです。
いや、嬉しいんですよ。かなり胸がときめいてます。ただ、衝撃が大きかったから固まっただけで。
「突然お邪魔してすみません。よ、よろしくお願いします」
「あ、はいはい。えーと、これはまたべっぴんさんを連れてきたもんだな…」
「掛布さん、セクハラです」
くまちゃん、怖いよ!
落ち着いて、その警戒した獣モードを解いて!
「玲奈さん、いってくるんで、ここにいてくださいね」
「あ、はい、がんばってください」
思わず敬語が出ちゃったじゃん。
手を振りつつくまちゃんの背中を見送る。
紹介された掛布さんの隣にちょこんと座って、ぺこりと頭を下げた。
「突然押しかけてすみません。お邪魔でしたらいつでも移動しますので」
「あーいやいや、全然大丈夫だから。熊野が彼女連れてきたことなかったから、驚いただけで」
掛布さんという男性は、もう50代くらいの人なんだけど、柔道現役じゃなくなっても体の大きさってそこまで変わらないんだね。お腹は出るけど、肩幅とかあるから全体的に大きくなった感じ?くまちゃんもこんな風に年を取るのかしら…もし、ぽよんぽよんのお腹になるのなら、トトロのようにお腹に乗って寝てみたい…と妄想を膨らませていた。
「な、なんであなたがここにっ?!」
私に声をかけられた気がして、振り返ったら、さっき自動販売機の前で出会った、確か智美さんがそこに立っていた。
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