52 / 142
私は壁になりたい
しおりを挟む
くまちゃんを見送って、急いで支度して、外見だけ清純派モードになった私はいつも通りに出勤しました。
明日の夜くまちゃんが来るのは決まったけど、さすがにさっき注文したコンドームが届くことはないだろうなと思って、お店の近くで買えるのはどこだろうと考えつつも、出勤中の電車の中で検索すると、背後の方を驚かせちゃいそうなので我慢しました。
で、結局、お店の休憩室に至ります。
あ、仕事はちゃんとやってますよ!商品の入荷チェックも、棚出しも、掃除もやってます!
ノルマこなすための売り込みは苦手だけど、お客様がいらしたら想像してるコーディネートになるようお話しながら組み合わせたりしてます。馴染みのお客様になると、この服と合わせたいとおっしゃって、実際に着て来たり、持って来たりしてくださるので、納得のいくまで試着にお付き合い致します!
という1日を慌ただしく過ごして、もうすぐ閉店というときになって、ようやく休憩時間をもらえた私です。
へっとへと…
休憩室でスマホをいじっていたら、アイリちゃんがやってきた。
「お疲れさま~」
「お疲れさまです、橘サブ。今から休憩だと、閉店の時間に休憩終わりますね」
「ほんと、そうなの」
お互い苦笑しつつ、アイリちゃんは帰り支度を始めてた。
「今日は女子会ないの?」
「はい、今日はこのまま帰る予定です。サブはどうされるんですか?」
「んー、今、調べてるんだけど、ちょっと買い物に行こうかなって」
「あ、そうなんですか?今日、雨でお客様もう来ないかもってマキさん言ってたんで、残業超過を消化しちゃったらどうですか?まだまだ相当ありますよね、今年のうちに消化しないといけない分」
「そうなのー。残業代出してくれればいいのにね、こんな消化方法じゃなくて…」
そうこうしていたら、マキちゃんが休憩室に何かを取りに来た。
「お疲れさまです」
「ねぇねぇ、マキちゃん、今日私早く上がっても平気?」
「あ、全然いいですよ。カホもいるんで」
「やったー!助かるなー」
「橘先輩予定あったんですか?言ってくださればもっと早くに帰ってもらったのに」
「あ、ちがうの、誰かと予定があるわけじゃなくて、コンドーム探しに行こうと思って」
「「え……?」」
マキちゃとアイリちゃんの返事が見事に被りました。目が点です。
「あ、そうだ、この辺でコンドームの種類がいっぱいあるとこ知らない?」
若い子たちに聞くのが早いなと思っただけなんだけど、2人とも顔を見合わせている…
どうしたのかな?と思ってたら、マキちゃんが少し考えて、手を顎に当てつつ答えてくれた。
「普通のドラッグストアじゃなければ、ラブホ近くのお店はたぶん種類も多いと思いますけど、橘先輩1人じゃ危ないんで、あのコンドームショップ行ったらいいんじゃないですか?駅から少し歩いたとこにある…あそこならまだ気軽に入れるような気がします」
「ふんふん」
早速スマホでコンドームショップを現在地から検索してみる。あ、割と近く。
「じゃあ、ここに行ってみる!ありがとう、マキちゃん」
「いえいえー、お疲れさまでーす」
マキちゃんはファイルを取ってお店に戻った。
アイリちゃんはまだ何やら考えているポーズのまま。
「私も行きます!」
「え、アイリちゃんも?買うの?」
「いえ、後学のために」
「そうなの…?まぁ、準備しとくのは悪いことじゃないよね」
「あ、違いますよ、私のためじゃないですよ」
アイリちゃんは、なにを言ってるんですかと言わんばかりに手を振っている。その手を握りしめて高らかに宣言した。
「もちろん、推し達がどんなグッズをどんな風に使ってるのか実際に見るためですよ!ゴムとか、アナルのおもちゃとか」
「待って待って、声が大きいから」
職場、一応ここは職場。
てか、コンドームショップにはそういうの置いてるの…?
「私は全然いいけど、アイリちゃんは推しがしてる行為の再現するための準備をするの?」
ふと沸いた疑問を言ったまでなんだけど、アイリちゃんは驚いたように周り丸くして首を振った。
「違います!そんな、おこがましいことできません!推しは推しであって、好きな人じゃないんです!むしろ、推しカップルの邪魔はしたくないんです!私もその場にいたら、声をかけてほしいとか、好きになってほしいとか全く考えてないです。私は、二人が盛り上がってるところを余すところなく見たいだけなんです!壁になりたいんです!天井でもいいです!」
「ふーん…?」
「でも、私の場合、二次元なので、推し達がどんなのを実際使ってるのかとか想像するだけだし、経験もないのでうまく想像もできないときもあるんですよね。だから、せっかくなんで見に行ってみようと思ったんです!それに、橘サブの男除けします!」
「男除け…?」
「橘サブの男らしさは認めますけど、ああいうお店に一人で入れちゃう度胸とかすごいなとも思いますけど、さすがにその可愛らしい格好では…。私も一緒に行けば、友達同士できたのかーとか、百合かーとか思ってもらえると思うんです」
「あぁ、そういうことね。ありがとう、わざわざ。全然気づいてなかった」
相変わらずうちのお店の子達は周りによく気を配れるいい子達だわ。心強い戦友をゲットしたので、二人でお店を出ました。
コンドームショップってどんなの?と思ったけど、案外普通の外観で、中にはその名に恥じない品揃えでしたわ。
でも、コンドームを黒とか赤にする必要性はなんだろう。気分転換なのかな?
チョコの匂いがするちんちんってどうなんだろうとかアイリちゃんとあけすけにしゃべりまくりました。
アイリちゃんがおもちゃ系の前で固まって動かなくなったので、その隙に大きいサイズのところに行って至極普通のものを買いました。
ふふふ。これで明日の夜には必ず…
いけない、いけない。ここでよだれはいけない。
でも、こんなにえっちするまでに苦労したこと、未だかつてないから!普通に何にも考えずにできるものだと思ってたから、なんか呪われてる?と思わないこともないけど、呪われてたって関係ない!やるっきゃない!
「サブ!サブ!見てください!!」
だめだめ、アイリちゃん!おもちゃ持って、そんな興奮気味に叫んじゃだめ!
思い出して、あなたの役割を。壁は、壁はそんなことしないからね!
明日の夜くまちゃんが来るのは決まったけど、さすがにさっき注文したコンドームが届くことはないだろうなと思って、お店の近くで買えるのはどこだろうと考えつつも、出勤中の電車の中で検索すると、背後の方を驚かせちゃいそうなので我慢しました。
で、結局、お店の休憩室に至ります。
あ、仕事はちゃんとやってますよ!商品の入荷チェックも、棚出しも、掃除もやってます!
ノルマこなすための売り込みは苦手だけど、お客様がいらしたら想像してるコーディネートになるようお話しながら組み合わせたりしてます。馴染みのお客様になると、この服と合わせたいとおっしゃって、実際に着て来たり、持って来たりしてくださるので、納得のいくまで試着にお付き合い致します!
という1日を慌ただしく過ごして、もうすぐ閉店というときになって、ようやく休憩時間をもらえた私です。
へっとへと…
休憩室でスマホをいじっていたら、アイリちゃんがやってきた。
「お疲れさま~」
「お疲れさまです、橘サブ。今から休憩だと、閉店の時間に休憩終わりますね」
「ほんと、そうなの」
お互い苦笑しつつ、アイリちゃんは帰り支度を始めてた。
「今日は女子会ないの?」
「はい、今日はこのまま帰る予定です。サブはどうされるんですか?」
「んー、今、調べてるんだけど、ちょっと買い物に行こうかなって」
「あ、そうなんですか?今日、雨でお客様もう来ないかもってマキさん言ってたんで、残業超過を消化しちゃったらどうですか?まだまだ相当ありますよね、今年のうちに消化しないといけない分」
「そうなのー。残業代出してくれればいいのにね、こんな消化方法じゃなくて…」
そうこうしていたら、マキちゃんが休憩室に何かを取りに来た。
「お疲れさまです」
「ねぇねぇ、マキちゃん、今日私早く上がっても平気?」
「あ、全然いいですよ。カホもいるんで」
「やったー!助かるなー」
「橘先輩予定あったんですか?言ってくださればもっと早くに帰ってもらったのに」
「あ、ちがうの、誰かと予定があるわけじゃなくて、コンドーム探しに行こうと思って」
「「え……?」」
マキちゃとアイリちゃんの返事が見事に被りました。目が点です。
「あ、そうだ、この辺でコンドームの種類がいっぱいあるとこ知らない?」
若い子たちに聞くのが早いなと思っただけなんだけど、2人とも顔を見合わせている…
どうしたのかな?と思ってたら、マキちゃんが少し考えて、手を顎に当てつつ答えてくれた。
「普通のドラッグストアじゃなければ、ラブホ近くのお店はたぶん種類も多いと思いますけど、橘先輩1人じゃ危ないんで、あのコンドームショップ行ったらいいんじゃないですか?駅から少し歩いたとこにある…あそこならまだ気軽に入れるような気がします」
「ふんふん」
早速スマホでコンドームショップを現在地から検索してみる。あ、割と近く。
「じゃあ、ここに行ってみる!ありがとう、マキちゃん」
「いえいえー、お疲れさまでーす」
マキちゃんはファイルを取ってお店に戻った。
アイリちゃんはまだ何やら考えているポーズのまま。
「私も行きます!」
「え、アイリちゃんも?買うの?」
「いえ、後学のために」
「そうなの…?まぁ、準備しとくのは悪いことじゃないよね」
「あ、違いますよ、私のためじゃないですよ」
アイリちゃんは、なにを言ってるんですかと言わんばかりに手を振っている。その手を握りしめて高らかに宣言した。
「もちろん、推し達がどんなグッズをどんな風に使ってるのか実際に見るためですよ!ゴムとか、アナルのおもちゃとか」
「待って待って、声が大きいから」
職場、一応ここは職場。
てか、コンドームショップにはそういうの置いてるの…?
「私は全然いいけど、アイリちゃんは推しがしてる行為の再現するための準備をするの?」
ふと沸いた疑問を言ったまでなんだけど、アイリちゃんは驚いたように周り丸くして首を振った。
「違います!そんな、おこがましいことできません!推しは推しであって、好きな人じゃないんです!むしろ、推しカップルの邪魔はしたくないんです!私もその場にいたら、声をかけてほしいとか、好きになってほしいとか全く考えてないです。私は、二人が盛り上がってるところを余すところなく見たいだけなんです!壁になりたいんです!天井でもいいです!」
「ふーん…?」
「でも、私の場合、二次元なので、推し達がどんなのを実際使ってるのかとか想像するだけだし、経験もないのでうまく想像もできないときもあるんですよね。だから、せっかくなんで見に行ってみようと思ったんです!それに、橘サブの男除けします!」
「男除け…?」
「橘サブの男らしさは認めますけど、ああいうお店に一人で入れちゃう度胸とかすごいなとも思いますけど、さすがにその可愛らしい格好では…。私も一緒に行けば、友達同士できたのかーとか、百合かーとか思ってもらえると思うんです」
「あぁ、そういうことね。ありがとう、わざわざ。全然気づいてなかった」
相変わらずうちのお店の子達は周りによく気を配れるいい子達だわ。心強い戦友をゲットしたので、二人でお店を出ました。
コンドームショップってどんなの?と思ったけど、案外普通の外観で、中にはその名に恥じない品揃えでしたわ。
でも、コンドームを黒とか赤にする必要性はなんだろう。気分転換なのかな?
チョコの匂いがするちんちんってどうなんだろうとかアイリちゃんとあけすけにしゃべりまくりました。
アイリちゃんがおもちゃ系の前で固まって動かなくなったので、その隙に大きいサイズのところに行って至極普通のものを買いました。
ふふふ。これで明日の夜には必ず…
いけない、いけない。ここでよだれはいけない。
でも、こんなにえっちするまでに苦労したこと、未だかつてないから!普通に何にも考えずにできるものだと思ってたから、なんか呪われてる?と思わないこともないけど、呪われてたって関係ない!やるっきゃない!
「サブ!サブ!見てください!!」
だめだめ、アイリちゃん!おもちゃ持って、そんな興奮気味に叫んじゃだめ!
思い出して、あなたの役割を。壁は、壁はそんなことしないからね!
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
103
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる