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いつでもどうぞ

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先にシャワーを浴びさせてもらって、出てきたら、玲奈さんがコーヒーを淹れくれていた。

「ありがとうございます」

「いえいえ。もうすぐ出るでしょ?私、支度に時間がかかるから、見送った後にシャワーするね」

そう言って、自分の分のコーヒーを持ってソファに掛けた。
俺もその横におずおずと座る。本当は膝に座ってほしいけど、たぶん、膝に乗せるだけではすまない気がするから今朝は耐える。

「あの…俺が壊したベッドですけど、明後日が俺の休みなんで、その時にバラして粗大ゴミに持っていきます。玲奈さんの帰りは何時くらいですか?」

「えー、いいのに、そんな気にしなくて。私、帰ってくるの夜だから、車に乗せっぱなしになっちゃうよ?」

「いいんです、家具の組み立てとか解体は引っ越しのとこにいた時によくやってたんで、慣れてますから」

「わぁ、お引越しのところにもいたの?」

「はい、色々所属が変わって、今はこうしてますけど」

「異動になってよかったねぇ」

一口コーヒーを飲みながら深く頷く。
異動になってなかったら、決して玲奈さんと出会うことはなかっただろう。

「あ、そうだ!いい考えがあるよ。ちょっと待ってね」

玲奈さんがコーヒーをテーブルに置いて、キッチンのカウンターに置いてあったかばんから何か取り出して戻ってきた。

「はい、これ」

にこにこと手渡されたのは、キーホルダーについた鍵だった。
テディベアがアルファベットのTの上に座っている。
まさかと思って、玲奈さんを見ると

「ここの鍵。いつでも来ていいからね。明後日も日中、ここで作業してくれていいよ。夜まで待っててくれたら私がご飯作るし」

信じられない気持ちで手のひらの上に乗っている鍵を見つめる。

「合鍵早めに作っておいてよかった。役に立ちそうだね。そのキーホルダーはね、私とおそろいだよ。お店の子がくれたの」

玲奈さんがRの丸の中から顔を出しているテディベアのキーホルダーを見せてくれた。

「お店の……?その人は俺のイニシャル知ってるんですか?」

「ごほっごほっ」

コーヒーが喉に引っかかったのか、玲奈さんがむせたので、慌てて背中をさする。

「う…うん、まぁ、あの、お祝いに…ね」

涙目になりながら玲奈さんが答えてくれた。

「あぁ、お祝い…」

「くまちゃんもあったの?」

「俺は、同期のヤツにしか話してないんですけど、酒盛りしました」

「あははは、くまちゃんらしいねー」

玲奈さんが俺とのことを誰かに話しても気にしていない様子だったので、安心した。
付き合い始めたことを玲奈さんも気軽に話してるんだなぁと思うとくすぐったい気持ちになった。前もお店に連れて行ってくれたし、本当にオープンに付き合おうとしてくれてるんだなぁと思って、じんと胸が熱くなる気がした。

「わかりました。じゃあ、明後日に」

「あ、でも、待って!」

俺が言い終わる前に玲奈さんがぽんっと手を叩いて俺を見た。

「明後日がお休みなら、明日の夜からうちに来たらいいじゃない?私が出勤した後好きにしてていいし」

「…もし、それでよければ、そうします」


こんな頻繁に来ていいんだろうかと思わなくもないが、あのベッドをそのままにするわけにもいかないと思い、了承した。

「私、明日は遅いと思うから、ご飯作るの難しいかも。お弁当か外食でもいい?」

「もちろんです。俺も遅いと思うんで、俺が買ってきますよ。玲奈さん歩きだと荷物になりますから」

「ほんとにー?助かるー」

「俺の方が終わるの早ければ迎えに行くので、また連絡します」

「ありがとう」

隣にいた玲奈さんがぎゅうぎゅうと抱きついてきて、無意識のうちに抱き上げて膝に乗せてしまった。

きょとん、とした顔の玲奈さんが俺を見ていた。

あ…

固まった俺を見て、ふふっと笑う。

「くまちゃんの膝の上が私の指定席だねー」

「……はい」


照れくさくて頭をかいていると、玲奈さんが体を伸ばすようにしてキスをしてくれた。

「誰にもあげない」

ほんの少し、その言葉と玲奈さんのまとう雰囲気が艶っぽくなった気がした。

他の誰にもここを明け渡す気はないし、玲奈さんを誰かに譲る気も毛頭ない。

玲奈さんの頬を両手で包み込んで、深く唇を重ねた。
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