熊ちゃん配達員を食べたい腹ペコな私 清純なのは見た目だけ！とにかくおとなしく食べられなさい！

ヘルプです！

週末です！セールです！ショッピングモールにヘルプに来てます！
なに、この人の多さ。昨日からの呼び込みで喉がめちゃくちゃ痛い。
ここの店舗のスタッフもいい人ばっかりなんだけど、やっぱりレジもちがうし、在庫の置き方もちがうから、慣れなくて一人てんやわんやしてました。
この店舗にしかない商品とかあって、更に混乱しましたよ。疲労困憊です。

山岡店長(女性)は外見ふんわりだけど、めっちゃ厳しいから。ひとを育てるのうまいと評判で、山岡店長の元で働くとすぐに出世するというジンクスがある程です。
いや、山岡店長についていって、見出されるほどの人だったら出世しますよ、そりゃ。ヘルプにも容赦なくノルマ課すんだもん、この人。

そんなこんなで、二日間を乗り切ったら何が待っているかというと！

文字通り、熊野さんが駐車場で待ってるんです！
熊なのに、忠犬のようです！かわいいです！

『終わりましたー。どこにいますか？』

『一階のBエリアって書いてある看板のところの近くです。俺、外に立ってるんで。もし見つからなかったら電話ください』

なんか、やりとりが自然になってきたでしょ？
この数日で、恋人っぽく会話できるようになった気がするんだよね。
時間空けずにやり取りできてる感じ。
まぁ、まだお互い敬語が抜けないんだけど。

私はレジ締めしなくてよかったから、閉店するちょっと前に上がらせてもらえて、滑り込んだコーヒーショップでフラペチーノとコーヒーを買って、車を探してたら、わーでっかいなぁって人がいました。
熊野さんでした。
すごい、自分を待ち合わせの目印ににできる人ってそうそういないよね。便利だね、これは。特技に書いたらいいと思う。

「お待たせしましたー」

「いえ、お疲れさまでした。大変でしたね、ここまで通勤するのも」

「迎えに来てくれてありがとうございます。これ、どうぞ」

「すいません、わざわざ」

熊野さんにコーヒーを手渡しつつ、そんな会話をしながら、車に乗り込む。２回目なのに、なんか落ち着く。
にこにこしながら、熊野さんを見たら、熊野さんも笑顔でした。かわいい～。

「お腹空いたんじゃないですか？こんな時間まで働くって大変ですね」

「レジ閉める作業をしてたらあと30分は帰れないから、この店舗の人はもっと大変と思う…。うちのお店よりも1時間も長く開けてるから、昨日も帰り着いたの12時近くて」

「昨日も迎えに来れたらよかったんですけど、俺も夜までの配達だったんで…」

「全然、気にしないでください！今日、こうして来てくれただけでもすっごく嬉しいです！」

「そう言ってもらえると、よかったです」

相変わらず静かに車は動き出しました。
夜ごはんを食べようかって話になったんだけど、もう時間的に空いてるのは居酒屋とかファーストフードですねぇってのんびり話してたんです。
私、フラペチーノの山みたいな蓋を外して、残った氷と生クリームをガサゴソしてたんです。

キキッ。

突然、割り込んできた車のせいで急ブレーキ。


ばしゃっ。

見事に自分の洋服にぶちまけました。
バニラだったせいでネイビーのワンピースがえらいことになりました。冷たい…

「すみません！大丈夫ですか？」

「今のは熊野さんのせいじゃないんで。でも、ちょっとこのままだと…」

とりあえず、カップに戻せそうな氷とかは戻して、蓋してホルダーに置いて、バッグからハンカチ取り出して拭いたものの、どうにもならない。


「俺の家の方が近いんで、服貸します！」


と、大々的にお持ち帰り宣言されました！


え、あれ？今日、私の家に連れて帰ろうと思ってたんですけど…
替えの下着ないけど…お風呂上がりノーパンでも引かれないかな…

いや、そんな悩んでる場合じゃないですね。即座に対応しましょう！
お客様のニーズにすぐに対応できなくては一人前とは言えません！

「すみません。じゃあ、お言葉に甘えて…」

いざ、熊野さんの洞穴へー！