上 下
23 / 142

仕切り直しさせてください!

しおりを挟む
秋晴れです!まだそこまで風も強くなくて、寒くも暑くもないという完璧な日です!

そう、私のテンションは既に最高潮!
熊野さんとのドライブデートの日です!
今日は私は非番なので、お店でセットしてもらえない、というか普通誰もがお店でセットしないよね、うちのスタッフ達の愛を感じる…いかん、話がそれました。
朝から早起きして、シャワー浴びて、お化粧して、髪をセットして、着替えて、歯を磨いて、リップを塗って、私はいつでも出発できます!
お昼のために朝は抜きました。
少しでもお腹が出ないように…という魂胆もあります。

熊野さんが家の前まで迎えにきてくれるそうです。途中まで行きますって言ったけど、車だと距離感じないからということで、甘えさせてもらいました。

そうそう、今日はこの前のお返しでもあるから、私が払うつもりで、お財布の中のお金のチェックを…とバッグをごそごそして、前にマキちゃん達から、人に渡しても恥ずかしくないハンカチを用意するという助言を思い出して、引き出しから取り出して、バッグに入れた。
車の中で香りが充満するといけないから、今日は洋服も香りの強い柔軟剤は使ってないし、香水もしてない。
汗かいて、汗臭くならないようにお手入れだけはしたけど…
どれだけ準備をしても、何が足りないんじゃないかって思ってしまう。
まぁ、あとはなるようにしかならないんだけど…

そろそろ約束の11時なので、玄関に鍵をかけて、マンションのエントランスまで降りる。
自動ドアを出たら、ちょうど熊野さんが目の前に車を停めたところだった。

わー、熊野さんだぁ♪

ついにこにこしてしまう。熊野さんが窓を開けてくれた。

「おはようございます」

「おはようございます。ここまで来てくださってありがとうございます。お邪魔しますね」

ドアを開けて、よいしょーと乗り込む。
私、車のこと全然わかんないんだけど、車高が低くないから、乗りやすい。
視界が高くなると、広く見える気がするー。
なんか、このシートとても座りやすい…
かなり久しぶりに車に乗るから、しげしげといろんなところを見てしまう。
でも、やっぱりなんといっても


熊野さんの匂いがする…!!


くぅ~早速私を興奮させやがってぇ


にやけながら、シートベルトを閉めると熊野さんがとても静かに車を走り出させた。

「やっぱり運転慣れてますね。私はペーパーだから、いつまでも上手くならなくて」

「そうですね。元々、車も運転も好きだったので、配達の仕事がない日でも、一日中車で動いてるときがありますよ」

「へぇ~そうなんですねぇ」


なんて、普通に会話しているように見せかけて、私はずっと熊野さんの横顔、ハンドルに伸びる腕、たくましい腰から脚まで舐め回すように見てますよ!
私の目には透視カメラが搭載されているのか、やや透けて見えるんですけど、これはきっと願望が見せる幻覚ですね。
あ、大丈夫です。股間は透視しないことにしてます。お楽しみは後にとっておくタイプなんで!

ちなみに、今日の熊野さんは白いTシャツの上に薄手の長袖のネルシャツを着ていて、ボタン全開…
私がボタンを外す練習をした成果はどうやらお見せできないみたいです…
いいです。くどいようですけど、お楽しみは後にとっておくものです!


「あ、道わかりますか?私スマホのナビ設定するんだったのに」

慌ててスマホをバッグから取り出そうとすると、熊野さんが「だいたいの道、頭に入れてきましたんで、大丈夫です」ってさらっと言った。
運転しない私としては、ここから1時間かかる行ったこともない場所を頭に入れるとはどんな…?とはてなマークが浮かんだけど、きっと熊野さんにとっては普通のことなんだろう。

「また近くなって、わからなくなったらナビしてもらえますか?」

「はい、もちろんです!」

とりあえず、スマホはしまって、熊野さんを横目でチラチラ見つつ、流れていく景色を眺めていた。

「いつも、お休みは何してるんですか?」

「俺は、溜まった洗濯物をまとめてやったり、掃除したり、必要な物を買ったりが多いですね。夕方からは練習しに行きます。俺が通う道場は、いつ行っても開いてるんで助かります。最近は、チビ達の指導も時間があったらやるので、自分の練習に割く時間はだいぶ減りましたけど、楽しいですよ」

「わ~充実してますねぇ。私も溜まった家事をするだけで1日終わっちゃって、あー今日もただ何かをこなすだけのお休みだったなぁって思うことが多くて。だから、今日はとっても楽しみにしてました!」

「俺もです。こうして出かけるの初めてなので…その…はい、楽しみしてました…」

熊野さんが言葉を濁したから、ん…?と思って、熊野さんを見た。

「初めて…?」

「あ、いえ、その…」

熊野さんは片手で頭をかいて、口元を覆った。なんとなく耳が赤い気がする。

「正直に言いますと…女の人と出かけるのが初めて…なん…です…」


終わりのほう、ほとんど音になってませんでしたけど、今、確かに「初めて」って言いましたよね!

「あ、いや、でも、この前橘さんとごはん食べに行ったので、初めてじゃなかったです!」

呆然とする私に、熊野さんの追い打ちがかかりました。


そんな…この前の焼き鳥デートが初めてだったなんて…
私…私…


待ち合わせのとき、やっぱり隠し撮りしておけばよかった…!!!!

あーー、なんて、馬鹿なの、私!

盗撮だなんだなんて気にしてる場合じゃなかった!
食事も写真撮ってないし、2人の写真も当然ない。
熊野さんの、一生に一度の、初めてのデートを何の記録にも残してなかったなんて!!
ありえない!そんな、そんなことって…


私は、わなわなと自分の失態を酷く恥じ、口元を両手で覆って堪えきれなかったため息をついた。
でも、落ち込んでいる暇はない!
私、立ち直り早いですから!


仕切り直しです!もう、仕切り直しするしかありません!!
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

毎週金曜日、午後9時にホテルで

恋愛 / 完結 24h.ポイント:170pt お気に入り:228

【R18】恋を知らない聖剣の乙女は勇者の口づけに甘くほどける。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:1,350pt お気に入り:13

異世界じゃスローライフはままならない~聖獣の主人は島育ち~

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:32,219pt お気に入り:8,860

処理中です...