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「触るなっ…っ、…」

ベルトに手を掛けられ、必死に出来る限りの抵抗は続けるが時間が掛かりながらも外されてしまう。わざとこちらに見せつけてくるように手を動かす先輩をぶん殴りたくて仕方がない。

「アルフ、可愛い。ほら、俺の名前も呼んで。」

チクリと痛みがする。微かな痛みが走った場所に目を向けるとそこは紅い印が出来ていた。先輩は嬉しそうに内腿を撫でると、再び唇を合わせてくる。

「まじで、やめろ…」

大の字に無理矢理開かされた足の間で先輩は不服そうに口を尖らせる。

「もー、俺の名前呼んでって。」

「だから知らねえよ!」

怒鳴って言うと、ずっと動いていた手がようやく止まった。

「はあ"?」

低い声が耳に届く。思わず身体が震えたが、アルフは相手に負けぬように睨み返す。理不尽なことを受け入れるつもりはない。

「はっきり言ってやる…っ、俺はアンタが、大嫌いだっ…」

媚薬がはっきりと効いてきたせいか布が擦れる刺激が快楽として身体が拾い始める。気持ち良い、でももどかしい…そんな想いが芽生える。

「アルフ、良い加減にしなよ。」

顎を掴まれ顔が近付けられる。反射的に顔を逸らすと頬に柔らかな感触がする。腕には再び鳥肌が立ち、アルフは必死に肩に唇を隠した。

頬から感触が離れたと思ったら舌打ちをする音が聞こえ、同時に嫌な場所に手を擦り込ませられた。

「っ、やめろ!」

「やっぱり、柔らかいね。」

直にお尻を揉むとそのまま後孔に指先が触れられる。アルフの身体はかつてないほどの拒否反応を示す。

「ここに俺のを挿れた「アルフっ!!」ハア?!」

先輩の言葉を遮るように扉が開くと、そこには赤い容姿をした人物が自分の名前を叫んでいた。そして、自分の上に跨る男をすぐさま殴り飛ばした。声にならない呻き声と共に壁に叩きつけられた男は口から血を吐いたが、ブラッドの攻撃は止まなかった。顔の原型が分からないほどに殴り付けても拳を止めなかったのだ。

アルフは流石に不味いと思ったので彼の名前を叫んだ。正直、身体が熱く疼いて話すのもしんどいくらいだった。

「っ…ブラッド!…」

振り上げていた手を止めるとブラッドは男を放り投げて、こちらに駆け寄ってきた。そして、悔しそうに顔を歪めながら剣を取り出すと鎖の先に繋がれた拘束具を断ち切った。肌に触れる部分は布であったため、何なく破壊することが出来た。

アルフはようやく解放された身体を丸めて身体の熱を少しでも逃がそうとした。どうしたらこの熱から解放されるのか分からなかったのだ。でも、そんな行動が効くはずもなく身体はどんどん熱くなっていく。

「っ、ふっ…ぁ、…くそっ……」

勝手に涙が溢れてくると自分を抱き締めるように手が回される。力強く優しい温もりに身体を擦り寄せると、更に抱き寄せられる。

「ごめんっ、アルフ。」

ブラッドは苦しそうに言うとアルフの性器に触れ快楽を与えてきた。アルフはようやく求めていた刺激が与えられて、身体を震わせた。そして何度か精を吐き出すとようやく身体の熱は引き始めた。

「ごめんっ…」

珍しくも弱々しい声が耳に届いて、何故だかこっちまで胸が痛んだ。いつも反省しろ、謝れって思ってたのに、これは違う…求めていたことじゃない。

「泣くな…」

「…泣いてないよ、泣いてるのはアルフだよ。」

頬に伸ばした手の上に涙を拭き取ってきたブラッドの手と重なる。確かにブラッドは泣いていなかったが、アルフからしたら泣いているようにしか見えなかった。

…そんな顔は見たくない。もっといつもみたいに屈託ない笑顔を向けて欲しい。これは嫌だ…見たくない…。

アルフは両手をブラッドの頭の後ろに回すと彼の頭を胸に引き寄せた。大好きな匂いが鼻に届く。

「ブラッド、助けてくれてありがとう。」

次にアルフの緑色の瞳が映し出したのは紅い瞳から一つの涙が溢れる姿だった。アルフはそれを掬うように舐めてやると、ブラッドはアルフの頭を引き寄せた。そして、2人は初めて唇を合わせたのだ。

喰われるようにキスをされてアルフも彼を求めるように首に手を回した。
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