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我ながら何してるんだろうとふっと思った。
馬車には2人の青年が自分を囲むように乗っている。もう、皆んなを引き離そうとしていた自分が懐かしく思えてくる。
アルフは高校に到着すると周囲の視線を感じながら教室に向かった。そこでもチラチラと視線を向けられるが、以前よりはマシになっていると思う。さすがに入学して2ヶ月を超えたのだから落ち着き始めるのは当たり前か。
それに今は皆んな数日後に開催される体育祭に向けて必死に練習をしている。優勝者には、「可能な限り願いを一つ叶える」という権利が与えられるからだ。
自分は全員参加の種目以外は出るつもりはなかったが、いつの間にか4×100mRにエントリーされていた。そのため、今はバトンの練習をするために運動場に出ている。運動場といってもブルータータンがひかれているので陸上競技場といった方が正しいだろう。
バトン練習は学年関係なく各クラスの代表が集まって合同で行われる。すでにかなりの人数が中央に集まっているので、ブラッドとイニス、そしてクラス代表である室長と共に駆け足で向かった。
説明を受けるとそれぞれ走順に分かれて、移動を行うことになった。自分はアンカーであるため、300m地点に移動しようとすると急に誰かが腕を引いてきた。
後ろによろけながら驚いて顔を上げると、そこには見たこともない人物がいた。ほどよく焼けた肌が特徴的で漆黒の髪に暗い瞳を持ち合わせていた。
「…なんですか?」
腕を振り払って目の前の青年を見ると、彼は驚いたように目を見開く。
「へぇー。思ってたよりも力強いんだな。」
これまで何度も言われてきた言葉であったため、特に何とも思わなかった。アルフは彼が自分に用があるわけではなさようだと判断すると、身体を翻して足を進めた。だが、それに付いてくるように青年は隣を歩いてくる。
「なあ、俺カラン・ベレンソンって言うんだ。」
「自己紹介する気はありません。俺に関わらないで下さい。」
アルフは冷たく言葉を発したがカランは気にすることなく話しかけてくる。
「俺、一つ年上なんだけど?まあ、良いや。とりあえず、俺のこと覚えとけよ。」
「嫌です。…ちょっと!」
カランが急に肩に腕を回してきたので、アルフは抗議をしようと視線を向けた。だが、彼の瞳と視線があった瞬間、身体に寒気が走った。人を見下す冷めた視線だったからだ。
「おい、これはお願いじゃないからな。」
アルフの視線と絡むとカランは表情を和らげる。
「俺の親もさ、もうすぐ爵位が上がんだよ。俺もアルフと同じ位になるんだぜ。」
「はあ?」
アルフは空いた口が塞がらなかった。自分の名前を知っていたことではない。彼が自分と同じ位になるということにだ。それは彼も伯爵令息になるということを意味している。つまり、この街から最高爵位である伯爵の称号をもう家系が一つ増えるということになるのだ。
「言っとくが嘘じゃねえからな。だから、仲良くしようぜ。この街で唯一、同じ待遇になるんだから。」
カランはアルフの肩から手を退かすと止まっていたアルフを置いてスタスタと歩いて行ってしまう。だが、ふと立ち止まるとアルフに向かって突拍子もないことを言ってくる。
「アルフ、俺お前のこと気に入ったわ。てかっ、惚れた。」
「…俺はお前が嫌いだ。」
そう拒否してもカランは楽しそうに笑って、先にスタート地点へと歩いて行った。
馬車には2人の青年が自分を囲むように乗っている。もう、皆んなを引き離そうとしていた自分が懐かしく思えてくる。
アルフは高校に到着すると周囲の視線を感じながら教室に向かった。そこでもチラチラと視線を向けられるが、以前よりはマシになっていると思う。さすがに入学して2ヶ月を超えたのだから落ち着き始めるのは当たり前か。
それに今は皆んな数日後に開催される体育祭に向けて必死に練習をしている。優勝者には、「可能な限り願いを一つ叶える」という権利が与えられるからだ。
自分は全員参加の種目以外は出るつもりはなかったが、いつの間にか4×100mRにエントリーされていた。そのため、今はバトンの練習をするために運動場に出ている。運動場といってもブルータータンがひかれているので陸上競技場といった方が正しいだろう。
バトン練習は学年関係なく各クラスの代表が集まって合同で行われる。すでにかなりの人数が中央に集まっているので、ブラッドとイニス、そしてクラス代表である室長と共に駆け足で向かった。
説明を受けるとそれぞれ走順に分かれて、移動を行うことになった。自分はアンカーであるため、300m地点に移動しようとすると急に誰かが腕を引いてきた。
後ろによろけながら驚いて顔を上げると、そこには見たこともない人物がいた。ほどよく焼けた肌が特徴的で漆黒の髪に暗い瞳を持ち合わせていた。
「…なんですか?」
腕を振り払って目の前の青年を見ると、彼は驚いたように目を見開く。
「へぇー。思ってたよりも力強いんだな。」
これまで何度も言われてきた言葉であったため、特に何とも思わなかった。アルフは彼が自分に用があるわけではなさようだと判断すると、身体を翻して足を進めた。だが、それに付いてくるように青年は隣を歩いてくる。
「なあ、俺カラン・ベレンソンって言うんだ。」
「自己紹介する気はありません。俺に関わらないで下さい。」
アルフは冷たく言葉を発したがカランは気にすることなく話しかけてくる。
「俺、一つ年上なんだけど?まあ、良いや。とりあえず、俺のこと覚えとけよ。」
「嫌です。…ちょっと!」
カランが急に肩に腕を回してきたので、アルフは抗議をしようと視線を向けた。だが、彼の瞳と視線があった瞬間、身体に寒気が走った。人を見下す冷めた視線だったからだ。
「おい、これはお願いじゃないからな。」
アルフの視線と絡むとカランは表情を和らげる。
「俺の親もさ、もうすぐ爵位が上がんだよ。俺もアルフと同じ位になるんだぜ。」
「はあ?」
アルフは空いた口が塞がらなかった。自分の名前を知っていたことではない。彼が自分と同じ位になるということにだ。それは彼も伯爵令息になるということを意味している。つまり、この街から最高爵位である伯爵の称号をもう家系が一つ増えるということになるのだ。
「言っとくが嘘じゃねえからな。だから、仲良くしようぜ。この街で唯一、同じ待遇になるんだから。」
カランはアルフの肩から手を退かすと止まっていたアルフを置いてスタスタと歩いて行ってしまう。だが、ふと立ち止まるとアルフに向かって突拍子もないことを言ってくる。
「アルフ、俺お前のこと気に入ったわ。てかっ、惚れた。」
「…俺はお前が嫌いだ。」
そう拒否してもカランは楽しそうに笑って、先にスタート地点へと歩いて行った。
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