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厭人の王と人間の僕
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「んっ……」
なにやら暑くて目が覚めると、汗で体がベタベタした。それが気持ち悪くて、襟元をばたつかせるために体を起こすと、僕はあれ……?と首を傾げた。
なんで僕は寝てたんだろ?それにこんなところで……。
おかしなことに僕がいるのはベッドの上ではなく、地面の上だ。しかも森の中。
確か昨夜は小説を読みながら寝落ちしたはずなのに……。
とりあえず地面に寝転んでたせいで汚れた手を払う。次に肩の汚れを払おうと手を伸ばした。
でも、ふと後ろを振り向いた途端に僕は「えっ……」という声をこぼして硬まってしまった。
だって、僕の視界の先には濃いオレンジと白と黒で染まった光景が広がっていたから。
「燃、えてる?」
突然の出来事に当惑してしまう。普段の僕なら早くここから立ち去るべきだと分かるはずなのに。
初めて目の当たりにする森林火災に立ち尽くしてしまった……。
どれくらいそうしていただろうか。炎の燃え具合からしてあまり時間は経過していない気がする。
だって、僕と炎の隔たりはまだ先で、発見した時とそう変わりないから。距離が離れていたことが幸いだった。
とはいえ、いい加減逃げないと。でなければ、僕まで森の木々のように丸こげになってしまう。
ようやく命の危機を感じ始めた僕は立ちあがろうとした。けれども、起き上がることができなかった。足に力が入らないのだ。
「えっ……嘘だろ?」
何度も立ちあがろうと挑戦してみる。
だが、やはり無理だった。腰から下の力が一向に入らないのだ。
「えっ…えっ?!」
何で?!まさか、まさかの、腰が抜けた?このタイミングで?!ど、どうしようっ……
我ながら自分のポンコツ具合にショックを隠せないし、じわじわと空が濃いオレンジ色に染まる姿を見て焦燥感が募り出す。
……ただ、いつも通り趣味の読書をして、寝てただけなのに、何で起きたらこんな目に合わないといけないの?しかも、自分家じゃなくて、見知らぬ場所にいるし。近くに誰もいないし……。
自分じゃどうしようもできない状況に追いやられて、じわじわと涙が溜まっていく。
知らずのうちに現実逃避をしていたが、流石にこれ以上この現実を避けることはできないみたいだった。
「助けて……」
思わず呟いた言葉。
その声を聞いてくれる人は誰もいないけれど、言わずにはいられなかった。本当に助けて欲しいなら叫ぶべきなんだろうけれど、どうせ大声を出しても助けてくれる人なんかいない。
もしいたとしても何で逃げてないんだと、逆に問いたいレベルで危機感がないと思う。まあ、僕が言うなという話だろうけれど……。
でも、口に出さなければもうストレスや不安から心が押し潰れてしまいそうで発さずにはいられなかった。
だから、僕の呟きに返答があるとは思わなかったのだ。
「どうした?」
「ぴゃっ!」
背後から僕以外の声が聞こえてきたことについ驚きの声をあげてしまった。
なにやら暑くて目が覚めると、汗で体がベタベタした。それが気持ち悪くて、襟元をばたつかせるために体を起こすと、僕はあれ……?と首を傾げた。
なんで僕は寝てたんだろ?それにこんなところで……。
おかしなことに僕がいるのはベッドの上ではなく、地面の上だ。しかも森の中。
確か昨夜は小説を読みながら寝落ちしたはずなのに……。
とりあえず地面に寝転んでたせいで汚れた手を払う。次に肩の汚れを払おうと手を伸ばした。
でも、ふと後ろを振り向いた途端に僕は「えっ……」という声をこぼして硬まってしまった。
だって、僕の視界の先には濃いオレンジと白と黒で染まった光景が広がっていたから。
「燃、えてる?」
突然の出来事に当惑してしまう。普段の僕なら早くここから立ち去るべきだと分かるはずなのに。
初めて目の当たりにする森林火災に立ち尽くしてしまった……。
どれくらいそうしていただろうか。炎の燃え具合からしてあまり時間は経過していない気がする。
だって、僕と炎の隔たりはまだ先で、発見した時とそう変わりないから。距離が離れていたことが幸いだった。
とはいえ、いい加減逃げないと。でなければ、僕まで森の木々のように丸こげになってしまう。
ようやく命の危機を感じ始めた僕は立ちあがろうとした。けれども、起き上がることができなかった。足に力が入らないのだ。
「えっ……嘘だろ?」
何度も立ちあがろうと挑戦してみる。
だが、やはり無理だった。腰から下の力が一向に入らないのだ。
「えっ…えっ?!」
何で?!まさか、まさかの、腰が抜けた?このタイミングで?!ど、どうしようっ……
我ながら自分のポンコツ具合にショックを隠せないし、じわじわと空が濃いオレンジ色に染まる姿を見て焦燥感が募り出す。
……ただ、いつも通り趣味の読書をして、寝てただけなのに、何で起きたらこんな目に合わないといけないの?しかも、自分家じゃなくて、見知らぬ場所にいるし。近くに誰もいないし……。
自分じゃどうしようもできない状況に追いやられて、じわじわと涙が溜まっていく。
知らずのうちに現実逃避をしていたが、流石にこれ以上この現実を避けることはできないみたいだった。
「助けて……」
思わず呟いた言葉。
その声を聞いてくれる人は誰もいないけれど、言わずにはいられなかった。本当に助けて欲しいなら叫ぶべきなんだろうけれど、どうせ大声を出しても助けてくれる人なんかいない。
もしいたとしても何で逃げてないんだと、逆に問いたいレベルで危機感がないと思う。まあ、僕が言うなという話だろうけれど……。
でも、口に出さなければもうストレスや不安から心が押し潰れてしまいそうで発さずにはいられなかった。
だから、僕の呟きに返答があるとは思わなかったのだ。
「どうした?」
「ぴゃっ!」
背後から僕以外の声が聞こえてきたことについ驚きの声をあげてしまった。
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