現役DKアイドルと契約恋人〜超人気イケメンアイドルの正体は執着ストーカー?!

べーこ

文字の大きさ
上 下
32 / 38

紫苑の独白

しおりを挟む
「紫苑は本当にアイドル辞めてよかったの?」

 桃さんはケーキ用のフルーツをカットしながら俺に問いかけてきた。
 彼女は結婚してから時々俺にこう投げかけてくる。

「俺はアイドルCieloの『シオン』を守り切って、1人の男の紫苑として桃さんと一緒になれた。これは俺にとっての理想なんだよ」

 この言葉に嘘一つない。俺のまず第一目標は桃さんと結ばれる事だ。なぜなら彼女のいる東京へ行くためにアイドルになったようなものだ。
 しかしアイドル活動というのは思っているよりも大変で楽しかったのだ。

 俺はアイドルという職業を気に入っていた。俺の考えるアイドルは理想の体現だ。アンテナを常に張りファンが求めるものを読み取って、その偶像を演じるのが俺流のアイドルだ。
 もちろんアイドルの『シオン』は恋人なんかいない。『シオン』は理想の偶像だからだ。
 だけど人間である紫苑は恋を諦めきれなかった。俺は恋を諦めたくなかったし、アイドルの『シオン』も守りたかったのだ。

 だから桃さんと結ばれた時点でアイドルを卒業する事へ決めていたのだ。

 そして無事に桃さんと結ばれた俺は芸能界を引退し、現在では総合商社に勤める普通のサラリーマンだ。

「まさか紫苑が会社勤めでしかも海外赴任するなんて思ってなかった。ヨーロッパの街は綺麗だけど言葉が通じなくてやっぱり不安かな」
「大丈夫だよ。俺がいるでしょ。マドリードの街は嫌い?」

 俺はケーキに生クリームを塗りながら桃さんに聞き返す。
 現在、海外赴任で俺たちはスペインで暮らしている。桃さんには内緒だがこれは俺が希望したものだ。
 桃さんを独占したい俺は日本から離れて知らない地で頼れるのは俺だけにするためだ。
 
 実際に桃さんは俺の根回しのせいで英語もスペイン語もロクに喋れるようにはなってない。
 そんな桃さんが俺なしでこの街で生きていくのは難しいだろう。彼女は1人で買い物にすら行けないのだ。

 でも俺は不安なのだ。
 桃さんは移り気な人だ。再会した時にはコウくんに惹かれていた。それに会社の同僚である眼鏡をかけた男とも仲良くしていた。
 そして男の方は間違いなく桃さんに恋していただろう。


 俺たちは紆余曲折あって結婚して夫婦になった。だけどこの関係もずっと続くとは保証されない。
 桃さんが違う男に恋する可能性もあるのだ。だから俺は言葉の通じない海外勤務を選択したのだ。
 
 結婚という契約も現代では簡単に破棄できてしまう。だから桃さんを俺に依存させ、離婚など考えつかないようにするために海外赴任という選択をとった。

 そもそも桃さんがいい人過ぎて不安になる。   
 本来ならば俺は許されない事をしたのだ。自分の想いが叶わないからって監禁した男を普通許せるはずがない。
 それなのに桃さんは俺を許してくれたのだ。
 桃さんと両想いなのがわかったのはラッキーだったが、警戒心がなさ過ぎる。
 それに桃さんの優しさは俺はだけに向けられるわけではないのだ。

「嫌いじゃないよ。でも紫苑に迷惑かけてばかりだなって。私、未だにスペイン語どころか英語も喋れないから働けないし紫苑の負担になっているんじゃなかって」
「俺は頼られる方が好きですよ。こうやって俺の誕生日を祝ってくれるだけですごく嬉しいです。桃さんが俺の側にいてくれるのが1番俺にとっては幸せなんです」
「でもやっぱり悪いよ」

 スポンジケーキが白いクリームで覆われて雪山のように見える。
 我ながら完璧なナッペだ。まあ本職には敵わないだろうが。

「じゃあ桃さん、ケーキにフルーツ飾ってくれますか? こうやって桃さんと2人で誕生日を祝えるのが最高の幸せなんですよ」
「わかった」

 俺は愛おしい彼女を手に入れた。桃さんは俺だけのものになったのだ。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら

夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。  それは極度の面食いということ。  そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。 「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ! だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」  朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい? 「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」  あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?  それをわたしにつける??  じょ、冗談ですよね──!?!?

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

彼氏に別れを告げたらヤンデレ化した

Fio
恋愛
彼女が彼氏に別れを切り出すことでヤンデレ・メンヘラ化する短編ストーリー。様々な組み合わせで書いていく予定です。良ければ感想、お気に入り登録お願いします。

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~

吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。 結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。 何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。 そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。 相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。 トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。 あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。 ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。 そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが… 追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。 今更ですが、閲覧の際はご注意ください。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

処理中です...