現役DKアイドルと契約恋人〜超人気イケメンアイドルの正体は執着ストーカー?!

べーこ

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スーパーアイドルには裏の顔がある(シオン視点)

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「シオンどしたん? ずいぶんと機嫌ええな」

 少しだけ耳障りな関西弁でコウが話しかけてきた。
 今日はCieloの新曲リリースに向けてプロモーションビデオをメンバー全員で撮影していた。新曲は俺が出演するドラマの主題歌である。

 今はソウマとスイが撮影しており、俺とコウはつかの間の休憩だった。
 だからコウは俺に話しかけてきたのだろう。

「そう見える? 欲しいものが見つかったんだ。ずっとずーっと欲しかったものがね」

 俺はずっと恋焦がれていた彼女との再会、そして偽りとはいえ恋人のポジションを手に入れた事で舞い上がっていた。
 それは俺のパフォーマンスや表情に出ていたらしい。
 鈍感なことに定評のあるコウですら気がつくほど俺はあからさまに浮かれていたみたいだ。

「そうなんか。珍しいな。物欲あんまりなさそうやから欲しいもんがあるって聞いて驚きやわ。シオンの欲しかったもん気になるわ。俺だけに教えてくれへん?」
「秘密。これは俺だけの心に秘めておきたいから」

 本当に大切なものは宝箱に鍵をかけてしまっておきたい。そしてずっと大事に大事にするのだ。

「つれないわー。じゃあせめてどれくらい大事が聞いてもいいか?」
「うーん……世界を滅ぼしてもいいと思っているよ。それを奪おうとする人間は絶対に許せない」
 
 たとえCieloのメンバーでも容赦しない。でもその本音は心に秘める。まあ、Cieloのメンバーは人がいいのでそうなって欲しくはない。

 俺が口元に笑みを浮かべて言うとコウはあからさまに眉を顰めドン引きした表情を浮かべる。コウは最年長なのに表情豊かで喜怒哀楽がはっきりしているから実年齢よりも少し子供っぽく見える。

「怖っ! お前でもそんなこと思うんやな。でも大丈夫やで。うちのエースの才色兼備のスーパーアイドルのシオンから奪おうって度胸のあるやつおらんおらん」
 
 コウはハハハと声をあげて笑う。能天気な笑い声が耳につく。俺の好きな人はあんたに夢中なんですけどと嫌味の一つを言ってやりたい。

 だけどこのリーダーは俺の想っている人が自分に夢中なんて思いもしないんだろうな。

「コウくんは俺をなんだと思ってるのさ」
「なんでもできる自慢の仲間や。シオン、ほんまにお前はすごいで」

 コウはおそらく本音で言っている。このリーダーはおそらく誰よりもCieloを愛している。Cieloに全てを捧げている。
 コウは入所して15年間研修生のポジションだった。それでもコウはアイドルとしてメジャーデビューすることを夢見てずっと努力してきた。
 そしてついにCieloのメンバーに選ばれた。
 そのせいかコウはアイドル活動に、Cieloの活動に誰よりも情熱を注いでいる。 

 しかしそれでもコウのパフォーマンスの技術は飛び抜けたものではない。アイドルとしての技能は総合的にいえば平均以上ではある。
 だが特化した分野がないせいかいまいちパッとしないというのが世間でのコウの評価だ。


 一方で俺はダンスも歌もコウよりは絶対上手いという自信があるし、人気もCieloの中では1番だ。
 最近では比較的高い身長を活かしてモデルの仕事、さらには演技の仕事もやらせてもらっている。
 何よりも俺は入所1年でCieloのメンバーに選ばれたのだ。
 正直、コウよりもずっとアイドルとしての才能はあると思っている。
 だから時間ときっかけがあれば桃さんの心をコウから奪えると考えている。

「ありがとうございます」
 
 俺はコウの言葉に作り笑いで返す。

 俺の課題は契約恋人から本当の恋人に昇格することだ。

 恋愛する気持ちがわからないから桃さんに恋人になって欲しいというのはただの口実でしかない。
 それどころかこっちは7年間ずっと一途に彼女を思い続けてきたのだ。
 恋する人間の気持ちは手に取るようにわかる。

 今回のドラマのオファーが来て、あらすじを聞いた瞬間に俺はその話を受ける事を即決した。俺はこのドラマの役作りを利用して桃さんとお近づきになることを考えた。

 そのためにドラマの台本読みではワザとひどい演技をした。堅物で保守的な間宮マネージャーが少しは恋愛に興味を持ってくれよと頭を抱えるくらいほど酷い演技だった。

 そして役作りで偽りの恋人を作る許可を間宮さんにもらったのだ。間宮さんに桃さんがいかに誠実で優しくて真面目な性格である事を延々とプレゼンし、俺の契約恋人に相応しいとアピールした。
 その結果、こないだの取材から契約恋人の座まで話を進める事ができた。

 せっかく桃さんにお近づきになれたのだ。しかし、彼女の性格からしておそらく自分からは最低限の連絡して来ないはず。最初は俺が動くしかないだろう。
 どうやって違和感を抱かれずに彼女に近づくか俺は思考を巡らせた。

「次コウとシオンの撮影だって。スタッフさん待ってるよ」

 スイの声が聞こえて、声の方向に顔を向けるといつの間にか撮影を終えたスイとソウマがそばにいた。
 俺は今行くと言って撮影のために衣装を整えた。
 

 

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