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スーパーアイドルに別れを告げます!
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ついにドラマの放映が始まった。
シオンが主演のドラマは第1話では大いにバズり、毎週放送される度にトレンド入りするほどに話題になった。
今期のドラマでは視聴率はトップで、さらにドラマを通じてシオンを知る人が増えた。
その影響でCieloの人気は急上昇しているそうだ。
「すごいなあ。シオンは。もう演技も完璧じゃん。さすが天才アイドル」
私も家で録画したシオンのドラマを見ていた。仕事の都合上リアルタイムでの視聴は難しいのでこうしていつも録画している。
衣装であるブレザーの制服を着たシオンは誰もが見惚れるくらいに素敵だった。
今では日本中がシオンに注目している。そのせいか様々な噂や憶測が週刊誌やネットニュースで流れる。メディアもシオンの情報を仕入れようと常に目を光らせているだろう。
今のシオンは金のなる木のようなものだ。
だけどいいニュースだけが耳に飛び込んでくるわけではない。
Cieloの先輩グループである『BLUE COMET』のメンバーに熱愛が発覚した。
彼らはCieloって同等の人気を誇るアイドルグループで王道キラキラのCieloとは逆にダークでワイルドな雰囲気を売りにしているグループだ。
そのメンバーが週刊誌に恋人であるモデルの家へ出入りするという決定的瞬間の写真を撮られたのだ。
しかもそのメンバーはカメラが回っているところでは悪ぶっているがプロ意識の高い仕事が評価されていた。彼だけなら大丈夫と言われるくらいにはファンから信頼されていたのだ。
SNSは彼の名前がトレンドに上がって炎上していた。
SNSには応援の言葉も少しはあったがほとんどは批判のメッセージだった。ファンを辞める、見損なった、担降りしますと様々な悪意に満ちた言葉に埋もれている。
見ているだけで気持ちが重たくなる。それでも画面をスクロールする指が止まらない。
これを見てシオンと私の関係性がいかに危ういものかに気がついた。
今までは運良く撮られずに済んでいた。しかし今後こういったように撮られるかわからない。
そうすればシオンの人気はもちろん、ノースキャンダルを貫いてきたCieloの信用も地に堕ち、どこまでも火は広がっていく。
私はCieloにこのままトップアイドルとして活躍してほしい。それにシオンの足枷にはなりたくない。
私はずっとコウ君を推していた。今でもその気持ちは変わらない。
だけど気がつけばシオンに惹かれて、恋していた。このままだと年下の男の子に本気になってしまう。きっと自分だけの男の子にしてしまいたくなる。
私の身勝手な気持ちでシオンとCieloがスターダムにのしあがれなくなるのだけは避けなくてはいけないのだ。
潮時だと思った。だから私はそばにあったスマートフォンに手を伸ばす。
そして、シオンへLIMEを送る。
『話したいことがあるの。時間がある時教えて。連絡するから』
スタンプも何もない文章だけのシンプルなLIMEだ。
送った瞬間にすぐに既読がついた。
そしてシオンから電話がかかってくる。
「桃さん、話ってなんですか? 桃さんから連絡くれるの初めてですね。嬉しいです」
シオンの明るい声が聞こえてくる。演技でも私からの連絡を嬉しそうにしてくれるとこの後の言葉を紡ぐのに心が傷む。
シオンに別れを告げるのに罪悪感を感じてしまう。だけど伝えなくては。私とシオンの関係は今ではあまりにもリスキーだ。
「シオン、私たち終わりにしよう」
震える声で私は告げる。自分から別れ話をするのは初めてで、シオンの反応が怖くて声が上擦る。あっさりそうですねと言われたらそれでおしまいだが気持ちとしては複雑だ。
どうして人間の心は矛盾に満ちているのだろうかと思う。理屈で割り切れたら楽なのに。
「はっ? 桃さん、終わりって何をですか?」
シオンの息を飲む音が聞こえ、その後ゆっくりと確かめるような声でシオンが問いかけてくる。
「恋人ごっこ終わりにしよう。シオンのドラマは絶好調で上手くいっている。もうすぐクランクアップするよね。だから私たち付き合う理由はもうないよね?」
落ち着かないせいか少し早口になってしまう。
「どうしてそんなことを言うんですか? 俺の何が不満だったんですか? 俺と一緒にいるのつまらなかったの? 桃さんどこにいますか? 家ですか? 今から桃さんの所に行きますから。会って1回話しましょう⁉︎」
シオンの声がワントーン低くなる。そしてとめどなくシオンは私を問い詰める。
「ダメ! ダメだってば! とにかく私とシオンはこれで終わり! 芸能人と一般人が付き合うってこと自体がおかしいし、いつスキャンダルになるかわからないから! だからこれ以上関係を続けるのは無理」
そう言ってシオンからの通話を一方的に切った。
そして、LIMEをブロックし、他の連絡先も全て消去した。
明日は間宮さんにシオンと契約恋人を解消した事を連絡したほうがいいだろう。
一方的に別れを告げたのは罪悪感はある。でもこれでいいのだ。私がシオンから離れられなくなる前に、独占欲で変な道を走る前に、離れるべきだったのだから。
ピンポーンとインターホンが鳴る。カメラにはシオンが映っていた。いつも完璧に整えられている髪の毛は乱れている。
服もいつものオシャレなものではなく、部屋着と思われる黒い上下のジャージを着ていた。
その姿は完璧なアイドルと名高いシオンとは思えなかった。
必死な表情で何か訴えかけているけど通話ボタンを押してないので彼の声は聞こえてない。
無視していると電話が鳴り始める。スマートフォンの画面には見慣れない番号が表示されている。だけどこの番号はシオンのものだとわかる。
彼の必死な様子は見ているこちらが辛くなってくる。
結局私は居た堪れなさに耐えきれなかった。何よりもこのままシオンを放っておいて週刊誌の記者に目撃されたらそれこそ最悪の展開だ。
仕方なく部屋のドアを開ける。
「とりあえず入って」
俯いたシオンが部屋に入ってくる。
「お邪魔します」
カメラを通さずに肉眼で見たシオンの姿はアイドルとは程遠いものだった。
ヨレヨレのジャージにボサボサの髪の毛。そして真っ青な顔は美白というよりも蝋を思わせる。
そして憔悴しきった表情はこれから世界が滅ぶかのような暗いものだ。
偽りの恋人のはずなのに縋るような瞳でこちらを見つめてくる。
「シオン、座ったら」
「……桃さん。ちょっと、ゆっくりお話ししたいです」
シオンの声色はあまりにも平坦でいつもの明るい雰囲気は感じない。
「桃さん、俺の家にきてください。そこでお話しましょう。それまでは諦めきれないです。ちゃんと話を聞かないと納得できません」
そして私はシオンに流されて、彼の提案を飲むことにしたのだ。
話せばシオンはわかってくれるはずだ。だって、シオンは賢い男の子だ。
私みたいなただの社会人と一緒にいるとアイドル生命を脅かすリスクだってわかってくれる。シオンはこれからも芸能活動を続けて素敵な出会いをしてほしい。
冴えない社会人の私のせいで人生を棒に振って欲しくないのだ。
何よりもシオンの家は事務所所有の宿舎だ。おそらく間宮さんが援護射撃してくれるだろう。間宮さんの説得もあればシオンは諦めてくれるはず。
「わかった。話ししよう」
シオンが手配したタクシーに乗る。
しかし、ついたのはサンディアプロモーションの宿舎ではなく、見上げるようなタワーマンションだった。
明らかに富裕層が住むであろうそこは私とは一生縁が無さそうだ。
「シオン、ここは?」
「ここは俺の家です。この間宿舎を出て、ここの最上階を買ったんです。ここならじっくりとお話しできますよね」
シオンの瞳が妖しく輝いたように見えた。
シオンが主演のドラマは第1話では大いにバズり、毎週放送される度にトレンド入りするほどに話題になった。
今期のドラマでは視聴率はトップで、さらにドラマを通じてシオンを知る人が増えた。
その影響でCieloの人気は急上昇しているそうだ。
「すごいなあ。シオンは。もう演技も完璧じゃん。さすが天才アイドル」
私も家で録画したシオンのドラマを見ていた。仕事の都合上リアルタイムでの視聴は難しいのでこうしていつも録画している。
衣装であるブレザーの制服を着たシオンは誰もが見惚れるくらいに素敵だった。
今では日本中がシオンに注目している。そのせいか様々な噂や憶測が週刊誌やネットニュースで流れる。メディアもシオンの情報を仕入れようと常に目を光らせているだろう。
今のシオンは金のなる木のようなものだ。
だけどいいニュースだけが耳に飛び込んでくるわけではない。
Cieloの先輩グループである『BLUE COMET』のメンバーに熱愛が発覚した。
彼らはCieloって同等の人気を誇るアイドルグループで王道キラキラのCieloとは逆にダークでワイルドな雰囲気を売りにしているグループだ。
そのメンバーが週刊誌に恋人であるモデルの家へ出入りするという決定的瞬間の写真を撮られたのだ。
しかもそのメンバーはカメラが回っているところでは悪ぶっているがプロ意識の高い仕事が評価されていた。彼だけなら大丈夫と言われるくらいにはファンから信頼されていたのだ。
SNSは彼の名前がトレンドに上がって炎上していた。
SNSには応援の言葉も少しはあったがほとんどは批判のメッセージだった。ファンを辞める、見損なった、担降りしますと様々な悪意に満ちた言葉に埋もれている。
見ているだけで気持ちが重たくなる。それでも画面をスクロールする指が止まらない。
これを見てシオンと私の関係性がいかに危ういものかに気がついた。
今までは運良く撮られずに済んでいた。しかし今後こういったように撮られるかわからない。
そうすればシオンの人気はもちろん、ノースキャンダルを貫いてきたCieloの信用も地に堕ち、どこまでも火は広がっていく。
私はCieloにこのままトップアイドルとして活躍してほしい。それにシオンの足枷にはなりたくない。
私はずっとコウ君を推していた。今でもその気持ちは変わらない。
だけど気がつけばシオンに惹かれて、恋していた。このままだと年下の男の子に本気になってしまう。きっと自分だけの男の子にしてしまいたくなる。
私の身勝手な気持ちでシオンとCieloがスターダムにのしあがれなくなるのだけは避けなくてはいけないのだ。
潮時だと思った。だから私はそばにあったスマートフォンに手を伸ばす。
そして、シオンへLIMEを送る。
『話したいことがあるの。時間がある時教えて。連絡するから』
スタンプも何もない文章だけのシンプルなLIMEだ。
送った瞬間にすぐに既読がついた。
そしてシオンから電話がかかってくる。
「桃さん、話ってなんですか? 桃さんから連絡くれるの初めてですね。嬉しいです」
シオンの明るい声が聞こえてくる。演技でも私からの連絡を嬉しそうにしてくれるとこの後の言葉を紡ぐのに心が傷む。
シオンに別れを告げるのに罪悪感を感じてしまう。だけど伝えなくては。私とシオンの関係は今ではあまりにもリスキーだ。
「シオン、私たち終わりにしよう」
震える声で私は告げる。自分から別れ話をするのは初めてで、シオンの反応が怖くて声が上擦る。あっさりそうですねと言われたらそれでおしまいだが気持ちとしては複雑だ。
どうして人間の心は矛盾に満ちているのだろうかと思う。理屈で割り切れたら楽なのに。
「はっ? 桃さん、終わりって何をですか?」
シオンの息を飲む音が聞こえ、その後ゆっくりと確かめるような声でシオンが問いかけてくる。
「恋人ごっこ終わりにしよう。シオンのドラマは絶好調で上手くいっている。もうすぐクランクアップするよね。だから私たち付き合う理由はもうないよね?」
落ち着かないせいか少し早口になってしまう。
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シオンの声がワントーン低くなる。そしてとめどなくシオンは私を問い詰める。
「ダメ! ダメだってば! とにかく私とシオンはこれで終わり! 芸能人と一般人が付き合うってこと自体がおかしいし、いつスキャンダルになるかわからないから! だからこれ以上関係を続けるのは無理」
そう言ってシオンからの通話を一方的に切った。
そして、LIMEをブロックし、他の連絡先も全て消去した。
明日は間宮さんにシオンと契約恋人を解消した事を連絡したほうがいいだろう。
一方的に別れを告げたのは罪悪感はある。でもこれでいいのだ。私がシオンから離れられなくなる前に、独占欲で変な道を走る前に、離れるべきだったのだから。
ピンポーンとインターホンが鳴る。カメラにはシオンが映っていた。いつも完璧に整えられている髪の毛は乱れている。
服もいつものオシャレなものではなく、部屋着と思われる黒い上下のジャージを着ていた。
その姿は完璧なアイドルと名高いシオンとは思えなかった。
必死な表情で何か訴えかけているけど通話ボタンを押してないので彼の声は聞こえてない。
無視していると電話が鳴り始める。スマートフォンの画面には見慣れない番号が表示されている。だけどこの番号はシオンのものだとわかる。
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「お邪魔します」
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ヨレヨレのジャージにボサボサの髪の毛。そして真っ青な顔は美白というよりも蝋を思わせる。
そして憔悴しきった表情はこれから世界が滅ぶかのような暗いものだ。
偽りの恋人のはずなのに縋るような瞳でこちらを見つめてくる。
「シオン、座ったら」
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シオンの声色はあまりにも平坦でいつもの明るい雰囲気は感じない。
「桃さん、俺の家にきてください。そこでお話しましょう。それまでは諦めきれないです。ちゃんと話を聞かないと納得できません」
そして私はシオンに流されて、彼の提案を飲むことにしたのだ。
話せばシオンはわかってくれるはずだ。だって、シオンは賢い男の子だ。
私みたいなただの社会人と一緒にいるとアイドル生命を脅かすリスクだってわかってくれる。シオンはこれからも芸能活動を続けて素敵な出会いをしてほしい。
冴えない社会人の私のせいで人生を棒に振って欲しくないのだ。
何よりもシオンの家は事務所所有の宿舎だ。おそらく間宮さんが援護射撃してくれるだろう。間宮さんの説得もあればシオンは諦めてくれるはず。
「わかった。話ししよう」
シオンが手配したタクシーに乗る。
しかし、ついたのはサンディアプロモーションの宿舎ではなく、見上げるようなタワーマンションだった。
明らかに富裕層が住むであろうそこは私とは一生縁が無さそうだ。
「シオン、ここは?」
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