現役DKアイドルと契約恋人〜超人気イケメンアイドルの正体は執着ストーカー?!

べーこ

文字の大きさ
上 下
10 / 38

スーパーアイドルは大胆!

しおりを挟む
「好きだよ。歳の差なんて愛があれば関係なんかないだろ? 俺本気なんだよ。ずっと絢音の事想ってたんだ」

 シオンは私の身体をギュッと抱きしめる。愛を求める切ない表情はとても美しい。
 私はセリフを言うために台本のページをめくる。

「駄目よ。だって貴方は子どもじゃない。こんなの犯罪よ」
「じゃあ俺が大人になるまで待ってて。迎えに行くから。絶対に絢音の事幸せにしてみせるから……。ちゃんと台詞言えていた?」

 シオンの頼み事とは台本の読み合わせだった。

 このドラマは社会人アラサーOLと高校生男子の恋愛を主軸としたストーリーだ。

 就活に失敗し、疲れ切ったOLの絢音が突如現れた美貌の少年の拓海と出会い再び再起する物語だ。
 原作の拓海は非常に容姿の整った美青年であり、高校生とは思えない大人っぽさと年相応の振る舞いのギャップで絢音を誘惑するのだ。

 恋愛ドラマの役作りのための契約恋人なのだからこういう読み合わせも役目のうちなのだろう。
 シオンはセリフを既に全て頭に入れてきており、演技しながらセリフを紡いでいく。

 間宮さんからシオンの演技はあまりにも酷いと言われていたが今見ている感じだと全然そんな事はない。
 むしろ上手な部類に入る気がする。

「大丈夫だよ。思ってたより上手でびっくりしちゃった。間宮さんが酷いっていうから心配してたけど全然そんな事ないじゃん」

 恋愛を知るための偽装恋人なんてする必要はなさそうだ。

「桃さんに褒めてもらえて嬉しいです。でも監督は厳しいので求めてるものが高いんですよね。だからもっともっと頑張らないと」

 この向上心の高さがシオンのパフォーマンスの高さに繋がっているのだろう。高校2年とは思えないほどにしっかりしている。
 私が高校2年の時なんて何も考えずに遊び歩いていたのに。

「シオンはすごいね。私が高校生の時なんて部活と勉強と遊びで精一杯だったよ」
「ありがとうございます。ところで桃さんはもし自分が絢音の立場だったらどうしますか? 拓海の事受け入れられますか?」
「私が絢音だったら……? ありえないっしょ。私みたいな女に迫ってくれる男の子なんてないない」

 私は笑ってしまう。ずっと仕事と推し活ばかりで恋愛らしい恋愛は大学生の時に一度しただけだ。
 それに私みたいな要領が悪くて取り柄のない女に振り向いてくれる男の子なんていない。

「俺は桃さんの事すごく魅力的に見えますよ。頑張っている姿とか笑っている姿、美味しそうにご飯食べているのすっごく可愛いって思う」

 優しい微笑みを浮かべながらさらりと歯の浮く様なセリフを言うシオンはとてもかっこいい。さすがアイドル様だ。恥ずかしがる事なくキザな言葉を言える。

「あ、ありがとう。お世辞でも嬉しい」
「お世辞じゃないんですけどね。それで自分が絢音だったらどうしますか?」
「答えなきゃダメな感じ?」
「はい」

 シオンの有無を言わさない笑顔の圧に負けて、私は自分の意見を言う。

「私も絢音と同じで、拓海を受けいれられないと思う。だって、高校生ってまだまだ色んな事起こるし、きっと新しい出会いもあるはず。そんな未来ある男の子だから心変わりもあると思う。何よりも未成年に手を出すのは犯罪だからね!」
「そうですか。桃さんは優しいですね。それと同時に臆病なんですね。未成年と付き合ってバッシングされるのは桃さんの方ですからね」

 シオンはおかしそうに笑う。そして今まで優しかったシオンから初めて聞いた意地悪な言葉だった。

「シオンが拓海ならどうするの?」
「俺ですか? 待っててなんて甘っちょろい事言いませんよ。明らかに絢音ははぐらかそうとしてますし、拓海が大人になる前に彼女は結婚するかもしれないじゃないですか? ドラマでは待っててというけどあまりにも非現実的すぎる。俺は本当に欲しいものは迅速に、だけど確実に手に入れます。だから俺が拓海なら絶対絢音に逃げ道なんて与えない」

 シオンは私に近寄り、私の顎に手を添えてクイっと持ち上げる。
 強制的にシオンと目を合わせられる。シオンの瞳はギラギラしていた。美しい少年の放つ圧に私は身震いしてしまう。

「シ、シオン?」

 先ほどまでの和やかな雰囲気から剣呑な空気が漂う。
 シオンの瞳はとても綺麗だ。吸い込まれそうな不思議な深い色合いの虹彩だ。また白目が綺麗だから虹彩が尚更映えて見える。
 だけど綺麗すぎて怖いのだ。黒曜石のようなそれに吸い込まれて2度と戻ってこられない。そんな闇に誘われるような不思議な目だ。

 怖くて後退りそうになった時だった。
 部屋にスマホの着信が響き渡った。私のスマホからではない。

「俺です。間宮さんからだ。すみません。ちょっと電話に出ますね」

 シオンはあからさまに嫌そうな顔をして、電話に出る。そしてそのまま話し始める。
 先ほどまでの剣呑な雰囲気は消え去った。

「はい。ええ。わかりました」

 そう言ってシオンは電話を切った。

「すみません。間宮さんからまだ宿舎に帰ってないのかって電話きました。夜遅いから今から迎えに来るそうです」

 シオンに言われて時間を見ると22:30分だった。これは間宮さんが心配するのも当然だ。

「ごめん! もうこんな時間だったんだ。気づかなくてごめんね」
「大丈夫ですよ。遅くなったのって俺が台本読み付き合ってくださいって頼んだせいですし。間宮さんに怒られちゃうな」

 それから少しするとピンポーンとインターホンが鳴った。おそらく間宮さんだろう。
 インターホンについているカメラで確認するとカメラには予想通りな人物が映っていた。

「シオン、間宮さん来たよ」
「はい。桃さん、今日は楽しかったです」

 シオンは私に近寄ってくる。綺麗な顔が目の前に迫ってきて、胸がドキドキする。そして、おでこに触れる柔らかい感覚と同時に聞こえるリップ音。

「えっ」

 私が放心しているのを見てシオンはクスッと笑う。

「今度もデートしましょうね。お邪魔しました」

 そう言ってシオンはドアの向こうへと姿を消した
 
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら

夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。  それは極度の面食いということ。  そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。 「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ! だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」  朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい? 「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」  あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?  それをわたしにつける??  じょ、冗談ですよね──!?!?

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

彼氏に別れを告げたらヤンデレ化した

Fio
恋愛
彼女が彼氏に別れを切り出すことでヤンデレ・メンヘラ化する短編ストーリー。様々な組み合わせで書いていく予定です。良ければ感想、お気に入り登録お願いします。

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~

吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。 結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。 何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。 そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。 相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。 トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。 あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。 ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。 そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが… 追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。 今更ですが、閲覧の際はご注意ください。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

処理中です...