現役DKアイドルと契約恋人〜超人気イケメンアイドルの正体は執着ストーカー?!

べーこ

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シオンと恋人契約

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 編集長と別れた後、私は間宮さんとCieloのメンバーであるシオンと応接室に残った。
 他のメンバーは仕事があるそうなので先に解散してしまった。

「熊野さん、これから話す事は極秘事項です。会社の人間はもちろん、友人、家族にすら話すことは厳禁です。よろしいですね」

 間宮さんは険しい表情でこちらを見据え、ゆっくりと言い聞かせるように話し出した。
 静かな語り口調だが絶対に逆らわせないという強い圧がある。

 そのプレッシャーに逆らえない私は首を縦に振るしかなかった。

「間宮さん、ここからは僕が話しますよ。僕が無理を言っているんですから」
「そ、そうか。シオン、熊野さんに失礼ないようにな」
「はい。熊野桃さん。僕の恋人になってください」

 シオンの突然の発言に私は開いた口が塞がらず、あまりの驚きで声が出なかった。ふざけているのかと思いきや至って真剣そのものでふざけている様子はない。

「シオン。言葉が足りないだろ。熊野さん見るからに困ってるいる」

 私の様子を見かねたのか間宮さんが話し入ってくる。

「そうですよね。実はですね……。これはまだ発表されていないんですが、僕、今度主演のドラマが決まったんです。でも初めての恋愛ドラマで、恋をする気持ちがわからなくて。それで役作りのために一時的でいいので僕の恋人になってもらえませんか」
「でも彼のような器用な方なら演技も難なくこなすのでは?」

 シオンは前に脇役で出たドラマでなかなかいい演技をしていた。実際にシオンの演技を見たファンは彼の演技力に惹かれて、主演の映画やドラマを待ち望んでいた。

「それが上手く行く話しではないんです。恋愛未経験でしかも男子校であるシオンは恋するとどう行動をするか、どんな気持ちになるかがいまいち掴めていないようなんです」

 間宮さんが困ったように頭を抱える。そして一呼吸おいて続ける。

「そのせいか恋愛に関する演技が苦手みたいで、監督からはふざけているのかと怒号が飛ぶ始末でした。このままだとシオンは降板させられる可能性もあります」
「他のメンバーからも僕の演技が酷すぎるって笑われる始末なんです。お願いします。僕を助けると思ってください! 当然お礼は弾みます」

 シオンの恋愛の演技はメンバー全員にこっぴどく貶されるほど酷いらしい。
 多くの女の子を虜にするのが仕事のアイドルがそれでいいのかと思う。でも完璧スーパーアイドルで1000年に一度の逸材と言われるシオンにも苦手な事はあるんだなとちょっと親近感が湧いた。

「シオンは見ての通り我が事務所の期待なルーキーです。しかもこれからはさらに売り出そうと事務所が力を入れている。つまり今やっているアイドルとモデルの仕事以外にも俳優業にも仕事を広げたいと思っている。だから今回のドラマの主演を降ろされるわけにはいかないんだ」

 捲し立てるように間宮さんが話す。その口ぶりからシオンの演技が酷いのは冗談ではないようだ。

「そうなんです! お願いします! 僕を助けると思って」

 シオンが手を合わせて私に頼み込む。
 でも不思議なのは私にそれを頼むことだ。シオンならば引くて数多だろう。だって今をときめくスーパーアイドルなのだ。

「でもどうして私なんですか?」
「それは今回のドラマのテーマが年下男子と年上女性のカップルである事、後はモデルやタレントだと売名行為で匂わせとかする人がいるので一般人で尚且つ誠実な桃さんにお願いしたいと僕が思ったからです」

 シオンが真剣な目で私に頼み込む。

 確かにアイドルやモデルの匂わせはよく見る光景だ。
 実際にそれで炎上してネットやメディアで大騒ぎになっているのを私は何度もみてきた。だけど一般人でも変わらないのではと思う。それどころか一般人の方が承認欲求でお漏らししちゃう可能性が高そうだ。

「でも私もボロを出すかもしれないですよ。調子に乗って友達に喋ったりSNSに投稿するかも」
「大丈夫。僕は桃さんの事を信じていますから。限定品のコスメ諦めてわざわざお財布を届けてくれた桃さんの善良さをね」

 いつの間にかシオンは私の側にいて、顔を近づけてくる。めちゃくちゃ爽やかないい匂いがする。
 つけている香水はユニセックスのものだろうか。石鹸の香りが鼻腔をくすぐる。私の知っている男子高校生とは全然違う。

 さらにシオンの綺麗すぎる顔がドアップで近づいてくる。
 顔が良すぎるって凶器じゃん! 最強の武器じゃん!あまりにも綺麗に整った顔に見惚れそうになる。
 正直、シオンに揺らぎそうになる。桃ダメよ。桃にはコウ君がいるじゃない。

「それに僕と付き合えば大好きなコウ君とお近づきになれますよ」

 シオンはそっと私に囁く。私がコウ君推しなのすっかりバレてるうう!

 コウ君とお近づきになれるという甘い誘惑は私の常識や良心を溶かしてしまう。

「よ、よろしくお願いします」

 シオンの甘いお菓子のような誘いに私は首を縦に振ったのだ。
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