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拾ったお財布はスーパーアイドルのものでした!
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私は街を軽やかな気分で歩いていた。
なぜなら今日は死ぬ気で取得した有給休暇であり、私に取っては一大イベントが待ち構えていたのだ。
今日はCieloと化粧品メーカーのコラボ商品であるアイシャドウが発売する日なのだ。
コラボアイシャドウはメンバーカラーを参考に作られている。
4種類のアイシャドウが販売されている。
私の狙いはもちろんコウ君コラボのレッドのアイシャドウだ。
このアイシャドウはなんとそれぞれのアイドルが色名まで考えているのだ。
コウくんのシャドウの色名はシャインレッドだ。
当然超人気アイドルグループとのコラボ商品だから争奪戦になるに決まっている。
なのに限定商法だかなんだか知らないが圧倒的に供給は少ない。
だから私は周りから白い目で見られる事を覚悟で有給をもぎ取り、店の開店時間よりも大分早めに家を出てショップへと向かった。購入整理券をもらうためだ。
そして早歩きで歩いていると何かを蹴飛ばした。黒いそれは地面を転がっていく。
「何か蹴った?」
目をやると高そうな長財布が落ちていた。
落とし物だろうかと思いそれを拾う。
革でできた黒い長財布は手触りがよく、小さくブランド名が書かれている。そのブランド名は誰もが知る高級ブランドだった。おそらく数十万はするシロモノだ。
そんな財布を蹴り飛ばしたという事実に顔が真っ青になる。どうしよう。慌てて汚れを手で払う。
同時にお財布を拾った事に後悔した。だってこんな高そうで立派なお財布絶対に大切なものでしょ。
正直見て見ぬふりしたいが拾ったからには警察に届ける必要があるだろう。落とし主だって困っているだろう。
でも警察に落とし物を届けて必要な書類を記入していたら整理券の配布には絶対に間に合わない。
実際に書類の記入だけではなく色々と手続きがありかなり時間がかかると聞いたことがある。
心の中の悪魔が整理券もらってアイシャドウ買ってからで良いじゃないかと囁いてくる。
しかし、コウ君ならば迷わずに警察に行くだろう。それに私は自分の欲を優先した行動を後悔するだろう。
私はアイシャドウを販売する予定のドラッグストアに背を向けて交番へと歩き出した。
「すみません。お財布の落とし物があったんですけど」
近くの交番に入ると警官は椅子に座った青年と話していた。
「それはもしかして黒の革財布では⁉︎」
警察の人が食い気味に聞いてくる。
「はい。これですけど」
「最上さん、もしかしてこの財布では無いですか⁉︎」
「そうです。これです」
椅子に座っていた青年が立ち上がりこちらに顔を向ける。
その顔はあまりにも見知った顔だった。
涼やかな顔立ちは間違いなくアイドルグループCieloのシオンだった。
一般の高校生とは全然違うオーラを纏っている。流石芸能人だなと思う。
私服姿でもキラキラしていている。高校生とは思えない輝きだ。
「貴女が見つけてくださったんですね! ありがとうございます。助かりました!」
シオンはありがとうございますと深々と頭を下げる。
「お礼させてください。まずはこちらを受け取ってください」
シオンはおもむろに財布を開き、数枚の諭吉を渡してくる。
「受け取れないです! 本当たまたま拾っただけなので」
私は首を横に振って腕をバッテンにするジェスチャーで断る。
相手は超人気アイドルとはいえ現役高校生から数万円の現金を受け取るのは憚られたのだ。
「いえ受けとってください。本当に大切なものだったので見つからないと思ってヒヤヒヤしていたので」
そう言ってしばらくシオンと私は現金を受け取る受け取らないの押し問答をしていた。
そして折れた私はある提案をした。
「流石に現金は貰えないです。でももしお礼をしてもらえるというならCieloのコラボアイシャドウを買えるように便宜とか図ってもらえないですかね? 実はそれを買いに行く途中で……」
私がそう言うとシオンはきょとんとした顔をする。
「僕たちのコラボアイシャドウですか? 買う必要ありませんよ。差し上げます。僕たちサンプルとかで腐るほど持っているんで」
そしてシオンは誰のアイシャドウが欲しいんですかと訊いてくる。
シオン本人の前でコウくん推しでコウくんのアイシャドウが欲しいですとは言いづらい。
「実はグループそのもののファンなので全員分のアイシャドウいただけたら嬉しいです。お金はちゃんと出しますので」
「いえいえ、恩人の貴女からお金なんていただけません。後日全員分のアイシャドウを郵送します。なのでお名前と住所教えてもらえませんか!」
シオンは頭を下げる。高校生とは思えないほどにしっかりしている子だ。
若い頃から芸能界で大人と仕事をしているからなのだろうか?
押しの強さに負けて、私は交番にあったメモ帳を1枚もらって電話番号と住所、氏名を書く。
「ありがとうございます。熊野桃さんですか。とても可愛らしいお名前ですね」
そう微笑んだシオンはとてもカッコよくて私は直視できなかった。こういう事をサラリと言えるのだからアイドルはすごい。
顔が熱っていたからきっと赤くなっていたに違いない。
恥ずかしくなった私は失礼しますと逃げるように交番を出て行った。
後日、Cieloの所属する芸能事務所からコラボアイシャドウとシオン直筆の御礼の手紙、そしてなんと今度の握手会のチケットまで同封されていた。
そして手紙には『桃さん、お待ちしております。シオン』と書かれていた。
私は誰になんと言われようと有給を再びもぎ取ると決意した。
なぜなら今日は死ぬ気で取得した有給休暇であり、私に取っては一大イベントが待ち構えていたのだ。
今日はCieloと化粧品メーカーのコラボ商品であるアイシャドウが発売する日なのだ。
コラボアイシャドウはメンバーカラーを参考に作られている。
4種類のアイシャドウが販売されている。
私の狙いはもちろんコウ君コラボのレッドのアイシャドウだ。
このアイシャドウはなんとそれぞれのアイドルが色名まで考えているのだ。
コウくんのシャドウの色名はシャインレッドだ。
当然超人気アイドルグループとのコラボ商品だから争奪戦になるに決まっている。
なのに限定商法だかなんだか知らないが圧倒的に供給は少ない。
だから私は周りから白い目で見られる事を覚悟で有給をもぎ取り、店の開店時間よりも大分早めに家を出てショップへと向かった。購入整理券をもらうためだ。
そして早歩きで歩いていると何かを蹴飛ばした。黒いそれは地面を転がっていく。
「何か蹴った?」
目をやると高そうな長財布が落ちていた。
落とし物だろうかと思いそれを拾う。
革でできた黒い長財布は手触りがよく、小さくブランド名が書かれている。そのブランド名は誰もが知る高級ブランドだった。おそらく数十万はするシロモノだ。
そんな財布を蹴り飛ばしたという事実に顔が真っ青になる。どうしよう。慌てて汚れを手で払う。
同時にお財布を拾った事に後悔した。だってこんな高そうで立派なお財布絶対に大切なものでしょ。
正直見て見ぬふりしたいが拾ったからには警察に届ける必要があるだろう。落とし主だって困っているだろう。
でも警察に落とし物を届けて必要な書類を記入していたら整理券の配布には絶対に間に合わない。
実際に書類の記入だけではなく色々と手続きがありかなり時間がかかると聞いたことがある。
心の中の悪魔が整理券もらってアイシャドウ買ってからで良いじゃないかと囁いてくる。
しかし、コウ君ならば迷わずに警察に行くだろう。それに私は自分の欲を優先した行動を後悔するだろう。
私はアイシャドウを販売する予定のドラッグストアに背を向けて交番へと歩き出した。
「すみません。お財布の落とし物があったんですけど」
近くの交番に入ると警官は椅子に座った青年と話していた。
「それはもしかして黒の革財布では⁉︎」
警察の人が食い気味に聞いてくる。
「はい。これですけど」
「最上さん、もしかしてこの財布では無いですか⁉︎」
「そうです。これです」
椅子に座っていた青年が立ち上がりこちらに顔を向ける。
その顔はあまりにも見知った顔だった。
涼やかな顔立ちは間違いなくアイドルグループCieloのシオンだった。
一般の高校生とは全然違うオーラを纏っている。流石芸能人だなと思う。
私服姿でもキラキラしていている。高校生とは思えない輝きだ。
「貴女が見つけてくださったんですね! ありがとうございます。助かりました!」
シオンはありがとうございますと深々と頭を下げる。
「お礼させてください。まずはこちらを受け取ってください」
シオンはおもむろに財布を開き、数枚の諭吉を渡してくる。
「受け取れないです! 本当たまたま拾っただけなので」
私は首を横に振って腕をバッテンにするジェスチャーで断る。
相手は超人気アイドルとはいえ現役高校生から数万円の現金を受け取るのは憚られたのだ。
「いえ受けとってください。本当に大切なものだったので見つからないと思ってヒヤヒヤしていたので」
そう言ってしばらくシオンと私は現金を受け取る受け取らないの押し問答をしていた。
そして折れた私はある提案をした。
「流石に現金は貰えないです。でももしお礼をしてもらえるというならCieloのコラボアイシャドウを買えるように便宜とか図ってもらえないですかね? 実はそれを買いに行く途中で……」
私がそう言うとシオンはきょとんとした顔をする。
「僕たちのコラボアイシャドウですか? 買う必要ありませんよ。差し上げます。僕たちサンプルとかで腐るほど持っているんで」
そしてシオンは誰のアイシャドウが欲しいんですかと訊いてくる。
シオン本人の前でコウくん推しでコウくんのアイシャドウが欲しいですとは言いづらい。
「実はグループそのもののファンなので全員分のアイシャドウいただけたら嬉しいです。お金はちゃんと出しますので」
「いえいえ、恩人の貴女からお金なんていただけません。後日全員分のアイシャドウを郵送します。なのでお名前と住所教えてもらえませんか!」
シオンは頭を下げる。高校生とは思えないほどにしっかりしている子だ。
若い頃から芸能界で大人と仕事をしているからなのだろうか?
押しの強さに負けて、私は交番にあったメモ帳を1枚もらって電話番号と住所、氏名を書く。
「ありがとうございます。熊野桃さんですか。とても可愛らしいお名前ですね」
そう微笑んだシオンはとてもカッコよくて私は直視できなかった。こういう事をサラリと言えるのだからアイドルはすごい。
顔が熱っていたからきっと赤くなっていたに違いない。
恥ずかしくなった私は失礼しますと逃げるように交番を出て行った。
後日、Cieloの所属する芸能事務所からコラボアイシャドウとシオン直筆の御礼の手紙、そしてなんと今度の握手会のチケットまで同封されていた。
そして手紙には『桃さん、お待ちしております。シオン』と書かれていた。
私は誰になんと言われようと有給を再びもぎ取ると決意した。
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