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ドキドキ出会い編
11.あったかごはんでぽかぽか
しおりを挟む家に到着してひと息ついた駿は料理を作り始めた。
市場で買い物をしながら何を作るか迷っていたんだけど、日本で誰でも好きといえば唐揚げかなと思い今日は唐揚げを作ることにした。
アーヴィングが手伝ってくれると言うので唐揚げは醤油味と蜂蜜で甘辛ダレの2種類を作ってアーヴィングにはサラダを任せることにした。
昼間にエドワードとご飯を食べた時はすごく沢山食べていたので駿だったら5、6食分になりそうな位の唐揚げをそれぞれの味で山盛りに作っていく。
もちろん醤油と蜂蜜とか、食材は日本と全く同じものは無いのでもどきになる。しかし味も見た目もほとんど同じなので駿はすぐに覚えられそうである。
さらに駿がびっくりしたのはマヨネーズもどきがあったこと。転生系漫画で駿が見ていたのはマヨネーズがない異世界でマヨネーズを作って料理チート!とかだったけど元からあるからそんなことは必要ないみたいだった。駿は作り方も知らないからラッキーって思ってマヨネーズもどきも買ってきた。
マヨネーズがあるということは、アーヴィングに頼むサラダはポテトサラダ一択だ!と駿は作り方を教えた。この世界では食材を潰すということを料理ではしないらしくすごく驚かれたが
「調薬みたいですね」と笑っていた。
そんなこんなで料理はできて、米もどきも炊いて暖かい食卓をみんなで囲む。
エドワードもアーヴィングも美味しい美味しいと唐揚げを食べてくれ、駿は温かい気持ちになる。
日本にいた時に家の食卓でここまで温かい気持ちになったことは無かった。もう泣かないとギルドで決めたはずが駿の目からは涙がぽろぽろとこぼれ落ちる。
「おい、駿どうしたんだ?なんか怪我でもしたか?火傷か?
お、おいアーヴィングどうやったら泣き止むんだ?」
「私もわかりませんよ。
駿、どうしたのですか?私たちがなにかしてしまいましたか?
もしそうなら無礼をお詫びします。
なんでも話してくれていいのですよ?」
そう心配してくれる2人の声にさらにぽろぽろ、ぽろぽろと涙がこぼれ落ちるが必死に笑顔を作って首を横に振る。
「エドさんもアーヴィングさんも違うんです。僕ただ嬉しくて。こんなに幸せなご飯の時間があるんだなって、これは夢じゃないかってくらい幸せなんです。
僕この世界に来て、おふたりに出会えて幸せです。また僕と一緒にご飯を食べてください。好きな物も教えてください。僕が頑張って作ります。」
そう言った駿の目にはもう悲しそうな涙はなく、この世界で生きる決心がやっと出来たようだった。
「駿、毎日一緒にご飯を食べよう。俺はご飯作れないが駿の手伝いができるように頑張るから作るのも一緒にやろう。
駿がしてみたいこと何でもしよう。俺が付き合ってやるからな。」
エドワードはそういい駿の頭をくしゃっと撫でる。
「駿、私も毎日駿と一緒にご飯を食べたいです。
あなたと出会えて私も嬉しいと思っています。あなたの作るご飯も今まで食べたことないくらい美味しくて、あなたの笑顔を見れるのも私は嬉しいのですよ。
エドワードも言っていましたが、駿がしたいことは一緒にやります。
元の世界で何があったかは分かりません。でも私たちはあなたの事を信頼しています。
どうかこの世界では私たちに気を許してくれると嬉しいです。」
といいアーヴィングも駿の方へ向き優しく微笑んでくれた。
2人の優しい笑顔に駿はまたぽかぽかと温かい気持ちになり、さらに涙がこぼれる。しかし、その涙は悲しい涙ではなく幸せに溢れた笑顔の上に落ちる嬉しい涙であった。
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