変態エルフ学園

竹丈岳

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 刹那君は無言でベッドを出て行きました。

「ごめんね! でも、君はこのままでは道を踏み外してしまうと思ったんだ! もうこんな話はしないから、どんな時でも少しでも嫌なことがあったらまた来てね! お菓子とか飲み物とかあるからさ!」

 立花先生は、保健室を飛び出して追いかけてまで刹那にそう言葉を投げかけました。
 が、その日から刹那君は学校を休んでしまいました。

 今でも立花先生は、刹那に悪いことを言ったとは思っていますが、それが、間違いだとは思っていませんでした。でなければ、刹那は本当に人を見下すような道徳の無い人間に育ってしまうと考えたからなのです。周りを蔑ろにした先には、破滅しかありません。


―――


 与一とシーア君が寮へと帰宅する途中、電気屋に飾ってあるテレビを見かけて、たまたま聖遺物から、真実が流れてきました。

 テレビでは、千葉総理が夜桜コーポレーションを名指しして過去最高の売り上げであるという発表をして、みんなで夜桜コーポレーションに投資をしてお金を稼ぎましょうといった話をしていました。

 そこに聖遺物であるPCMレコーダーから真実が流れてきたのです。

『千葉総理。分かっているな。夜桜財閥の存在を徹底的に肯定するのだ』
『分かっています。夜桜様。ですから、息子のことはどうか隠し通してください』
『それは、お前の態度次第だ』
『分かっています。ところで、警察組織の方は……』
『無論、根回し済みだ』
『ありがとうございます』
『例の大使館のことだが、どうなっている?』
『大丈夫です。議会は掌握していますし、立ち退きを否決されることなどありえません』
『それなら良い。あと、父のことだが、昨日、死んだよ。生き返らせるためにも、エルドラドに似たものを必ず手に入れろ』
『分かっております』
『学園が掌握できれば、聖遺物だって自由に収穫ができる。そうすれば、お前のミスの隠蔽だっていくらでもしてやれる』
『ありがとうございます』

 PCMレコーダーの再生がそこで止まり、与一が先に行こうとするシーア君を引き留めました。

「シーア聞いてくれ。学園の取り壊しのことだが、刹那のおじいさんは死んで刹那の父さんが席を引き継いだようだ。でも、この学園の取り壊しはまだ続いている。刹那の父さんもエルドラドがあれば生き返らせられると思っているんだ」
「ここまでやって、本当に後には退けないんだね……」
「ああ……」
「ねえ、でも、この学校って大使館の意味もあるし、さすがに学校を取り壊すってことは、エルフの国に喧嘩を売るようなものだし。日本は黙ってそれを見ているの?」
「いや、総理ですら何かで脅迫されて操り人形になっている」
「……。ボクはそんな横暴なこと許せないよ……」

 与一とシーア君が重苦しい空気を漂わせながら寮に帰っていると、廊下でお喋りをしているアイリス君とモンド君と偶然出会いました。

「シーアさん! どうしたんですか? 浮かない顔をして?」
「いや、本当にこの学園が取り壊されるかもしれないって分かったんだ……」
「なんですかそれ!?」
「この聖遺物を使って真実を探ったら、この学園を取り壊そうとしている話が入って来てな」
「まじですか!?」

 与一は携帯電話を使って先ほどのニュースの記事を探し出し、聖遺物をつかって、アイリス君たちに聞かせました。
 真実が分かるとモンド君は、悔しそうな顔をしました。

「許せねーな。国のトップまで取り壊そうとする気でいるなんて……。黙ってやられてるなんて性にあわねーよ! 生き物はいつか死ぬのに、高齢で死んだからって、いつまでも生にしがみつこうとするなんて!」

「ぼくも許せませんと」と、アイリス君が。

「でも、相手は総理大臣も傀儡にしている大企業だしな……。もし、反撃でも食らったら……」
「ボクらが敵う相手じゃないね……」

 今までの威勢はどこへ行ったのやら、みんな途端に意気を消沈させてしまいました。
 そんな中、シーア君は、強い気持ちで切り出します。

「いや、ボクらは小さいけれど、相手はもっと大きな大企業だ。こっちの信用は社会から見れば無いに等しいけれど、相手は信用商売で物やサービスを売ってる。なら、信用を奪ってしまえば相手は勝手に崩れるはずなんだ。そうなれば、相手だってボクらに迂闊に手を出せなくなるよ」
「シーア君。どういうこと?」
「与一と話してたんだけどね。ボクらが聖遺物を使って真実を暴いて世間に公表するんだ。悪いことが暴かれれば、それ以上の悪だくみをするには、マスコミとかが邪魔で動きにくくなるでしょ? そうつまり、相手の大きさを逆に利用するんだ。ボクらは報道部。ジャーナリストさ」
「でも、ぼく、復讐されたら怖いよ……」
「いや、たぶん、大丈夫だと思う。聖遺物には色々種類があるんだから対策もできる。対人に使えそうなものは沢山あるからね。それに、なにか暴力を振るわれれば、ボクらの召喚獣で倒してしまえば良いしさ」

 シーア君はやる気満々です。
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