ヤクザ警察アーシャちゃん 異世界に転生したらやりたい放題

竹丈岳

文字の大きさ
上 下
72 / 76

反撃計画

しおりを挟む
 拘束されていたことで、無理な姿勢でショットガンを使ったぶん、反動が制御できず、私の指や腕は、あらぬ方向に折れ曲がった。さらには、アーサーの血をもろに顔に被ったせいで、視界が奪われた。

 血を拭ってみると、やはり、アーサーはかすり傷を負ったものの、致命傷に至ったわけではなく、私の横でニヤニヤしながら立っていた。


「そんな長いものが、この狭い空間で使えると思っているんですか?」


 アーサーは、ショットガンの銃身を掴み上げて、明らかに人でない怪力で、ねじまげていく。

 確かに、両手持ちの武器である分、扱いは難しいが、威力を上げるには、長大な銃身が必要となる。
 エネルギーを加える時間が長いほど、運動エネルギーが上がる。そういう物理法則なのだ。


 回復魔法で自身の腕を治すと、アーサーに向けて今度は数発のマグナムを放つ。
 が、腕ごとへし折られ、私が悲鳴を上げることになった。

 そして、ボロボロになりながら、ようやく武者が助けに来てくれたが、いとも簡単にアーサーに切り伏せられて絶命してしまった。


「酷いですよ抵抗するなんて。僕はこんなにあなたのことが好きなのに。純愛ですよ?」

「お前マジでヤバいって……」


 すると、突然、床に呪いが走った。アデ先生がスクロールを発動していたようだ。

 アーサーの動きが少し鈍ったものの、足が少し爆発した。そんな程度だった。そんな傷では、すぐに治されてしまう。

 でも、隙を作ってもらうには十分な威力だった。マグナムを向け、アーサーに呪いをかける。

 呪いの込められた弾丸は、アーサーに着弾した瞬間に、動物の姿に変成させた。

 小鳥の姿になったアーサーが、私の周りを飛び回る。


 キャンピングカーを止めると私は、アデ先生や子供たちの安否確認をして、ぎゅっと抱きしめた。
 子どもたちがわんわん泣き出し、私も恐ろしくて泣いた。

 アデ先生は、全く動じた様子はない。それどころか、笑顔まで作って見せている。本当に強い人だ。


 ひとしきり子供たちを慰めた後、私とアデ先生は、アーサーの体を調べ上げた。


 やはり、武者の言っていたことは本当で、開頭したアーサーの頭の中には、脳みそが半分ほどしか入っていなかった。それと、奥の方に機械のような装置が見える。


 呪いで手足の動きを変成で封じられ、同時に魔力を使い切らすように刻まれたアーサーが、恐怖におびえた表情で、やめて、やめてと懇願している。


「うるさい。黙れ。でないと、この脳みそを握りつぶすぞ」

「あがっ! オエっ!」


 意識のあるまま脳を弄られていることで、アーサーは猛烈に吐き気を催す。
 聞いたことがあるが、脳というものは、意識のあるうちに弄られていると、強烈な吐き気を感じるらしいが、どうやら本当だったようだ。


 どうやら、脳の中にある機械は、術式によって動かされており、アーサーに電気信号を送っている。


「これは、見たこともない術式だけど、これで、もし、人間を操っているのだとしたら相当な技術ね。そんなことが成功した話、一度も聞いたことがないもの」

「じゃあ、あれだな。神の知恵ってやつだな」

「おそらく、これが脳幹ね。もし、無理に外すと、たぶん死ぬ」

「なら、回復魔法をかけるが、とっかえの効く体のパーツと違って、脳は治せるのか?」

「ええ治せる。でも、完全に元通りってわけにはいかない。記憶障害がおきて、取り除かれた記憶が取り戻すことはできないの。体の不調に関しては時期に治るけど、時間はかかるわかね。三年か、四年か」

「分かった。なら、一先ず、アーサーの脳は修復して、私は単身サドを倒しに城に乗り込む。アデ先生はここにいてくれ」

「だめよ。逃げるのが先」

「いや、逃げてもまた狙われるかもしれない。それだったら先に奇襲をかけた方が良い」

「だから、もし、死んだりしたら!」

「いや、いずれ決戦を仕掛けねばならない。でないと、また身に危険が及ぶ。だからこそ、今が決戦の時なのだ。それに、姿を隠すから簡単には見つからん」

「……」


 アデ先生は、泣きそうな、それでいて何かを言いたげな顔でくしゃくしゃをするが、私はそんなことを思考の片隅に追いやって戦いの方法を考える。

 大量の武者を送って攻撃を行うか、それとも、気づかれないようにサドだけを攻撃するか……。

 いや、それなら両方を組み合わせるか。武者は要道で、サドを攻撃する。

 そのためには、綿密に連携が取れるように情報の伝達が不可欠である。無線機があれば良かったが、無いのであれば仕方がない。

 第二次世界大戦でも、フランスは、情報伝達においても伝書鳩を使っていた始末。動きの少ない無い戦線であれば、それでも良かっただろうが、この作戦においても果たしてうまくいくかどうか……。


 いや、だからこそ、数を増やすか。


 ソ連式大量突撃ドクトリン。唯一の正解ドクトリン。あの、アメリカを含んだイギリス連合国でさえもソ連の攻撃に耐えることは不可能だとされていた戦闘教範。


 さらにそこに、現代式の装備を与える。こちらの数は大勢。敵は、私ばかりに構う余裕はなく、いざとなれば、私は単身、混戦の中に身を隠して逃げられる。これがもっとも成功率の戦い方法だ。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生しても山あり谷あり!

tukisirokou
ファンタジー
「転生前も山あり谷ありの人生だったのに転生しても山あり谷ありの人生なんて!!」 兎にも角にも今世は “おばあちゃんになったら縁側で日向ぼっこしながら猫とたわむる!” を最終目標に主人公が行く先々の困難を負けずに頑張る物語・・・?

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシャリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました

市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。 私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?! しかも婚約者達との関係も最悪で…… まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!

スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。 2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。 異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。 唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。

城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?

甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。 友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。 マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に…… そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり…… 武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語

処理中です...