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反撃計画
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拘束されていたことで、無理な姿勢でショットガンを使ったぶん、反動が制御できず、私の指や腕は、あらぬ方向に折れ曲がった。さらには、アーサーの血をもろに顔に被ったせいで、視界が奪われた。
血を拭ってみると、やはり、アーサーはかすり傷を負ったものの、致命傷に至ったわけではなく、私の横でニヤニヤしながら立っていた。
「そんな長いものが、この狭い空間で使えると思っているんですか?」
アーサーは、ショットガンの銃身を掴み上げて、明らかに人でない怪力で、ねじまげていく。
確かに、両手持ちの武器である分、扱いは難しいが、威力を上げるには、長大な銃身が必要となる。
エネルギーを加える時間が長いほど、運動エネルギーが上がる。そういう物理法則なのだ。
回復魔法で自身の腕を治すと、アーサーに向けて今度は数発のマグナムを放つ。
が、腕ごとへし折られ、私が悲鳴を上げることになった。
そして、ボロボロになりながら、ようやく武者が助けに来てくれたが、いとも簡単にアーサーに切り伏せられて絶命してしまった。
「酷いですよ抵抗するなんて。僕はこんなにあなたのことが好きなのに。純愛ですよ?」
「お前マジでヤバいって……」
すると、突然、床に呪いが走った。アデ先生がスクロールを発動していたようだ。
アーサーの動きが少し鈍ったものの、足が少し爆発した。そんな程度だった。そんな傷では、すぐに治されてしまう。
でも、隙を作ってもらうには十分な威力だった。マグナムを向け、アーサーに呪いをかける。
呪いの込められた弾丸は、アーサーに着弾した瞬間に、動物の姿に変成させた。
小鳥の姿になったアーサーが、私の周りを飛び回る。
キャンピングカーを止めると私は、アデ先生や子供たちの安否確認をして、ぎゅっと抱きしめた。
子どもたちがわんわん泣き出し、私も恐ろしくて泣いた。
アデ先生は、全く動じた様子はない。それどころか、笑顔まで作って見せている。本当に強い人だ。
ひとしきり子供たちを慰めた後、私とアデ先生は、アーサーの体を調べ上げた。
やはり、武者の言っていたことは本当で、開頭したアーサーの頭の中には、脳みそが半分ほどしか入っていなかった。それと、奥の方に機械のような装置が見える。
呪いで手足の動きを変成で封じられ、同時に魔力を使い切らすように刻まれたアーサーが、恐怖におびえた表情で、やめて、やめてと懇願している。
「うるさい。黙れ。でないと、この脳みそを握りつぶすぞ」
「あがっ! オエっ!」
意識のあるまま脳を弄られていることで、アーサーは猛烈に吐き気を催す。
聞いたことがあるが、脳というものは、意識のあるうちに弄られていると、強烈な吐き気を感じるらしいが、どうやら本当だったようだ。
どうやら、脳の中にある機械は、術式によって動かされており、アーサーに電気信号を送っている。
「これは、見たこともない術式だけど、これで、もし、人間を操っているのだとしたら相当な技術ね。そんなことが成功した話、一度も聞いたことがないもの」
「じゃあ、あれだな。神の知恵ってやつだな」
「おそらく、これが脳幹ね。もし、無理に外すと、たぶん死ぬ」
「なら、回復魔法をかけるが、とっかえの効く体のパーツと違って、脳は治せるのか?」
「ええ治せる。でも、完全に元通りってわけにはいかない。記憶障害がおきて、取り除かれた記憶が取り戻すことはできないの。体の不調に関しては時期に治るけど、時間はかかるわかね。三年か、四年か」
「分かった。なら、一先ず、アーサーの脳は修復して、私は単身サドを倒しに城に乗り込む。アデ先生はここにいてくれ」
「だめよ。逃げるのが先」
「いや、逃げてもまた狙われるかもしれない。それだったら先に奇襲をかけた方が良い」
「だから、もし、死んだりしたら!」
「いや、いずれ決戦を仕掛けねばならない。でないと、また身に危険が及ぶ。だからこそ、今が決戦の時なのだ。それに、姿を隠すから簡単には見つからん」
「……」
アデ先生は、泣きそうな、それでいて何かを言いたげな顔でくしゃくしゃをするが、私はそんなことを思考の片隅に追いやって戦いの方法を考える。
大量の武者を送って攻撃を行うか、それとも、気づかれないようにサドだけを攻撃するか……。
いや、それなら両方を組み合わせるか。武者は要道で、サドを攻撃する。
そのためには、綿密に連携が取れるように情報の伝達が不可欠である。無線機があれば良かったが、無いのであれば仕方がない。
第二次世界大戦でも、フランスは、情報伝達においても伝書鳩を使っていた始末。動きの少ない無い戦線であれば、それでも良かっただろうが、この作戦においても果たしてうまくいくかどうか……。
いや、だからこそ、数を増やすか。
ソ連式大量突撃ドクトリン。唯一の正解ドクトリン。あの、アメリカを含んだイギリス連合国でさえもソ連の攻撃に耐えることは不可能だとされていた戦闘教範。
さらにそこに、現代式の装備を与える。こちらの数は大勢。敵は、私ばかりに構う余裕はなく、いざとなれば、私は単身、混戦の中に身を隠して逃げられる。これがもっとも成功率の戦い方法だ。
血を拭ってみると、やはり、アーサーはかすり傷を負ったものの、致命傷に至ったわけではなく、私の横でニヤニヤしながら立っていた。
「そんな長いものが、この狭い空間で使えると思っているんですか?」
アーサーは、ショットガンの銃身を掴み上げて、明らかに人でない怪力で、ねじまげていく。
確かに、両手持ちの武器である分、扱いは難しいが、威力を上げるには、長大な銃身が必要となる。
エネルギーを加える時間が長いほど、運動エネルギーが上がる。そういう物理法則なのだ。
回復魔法で自身の腕を治すと、アーサーに向けて今度は数発のマグナムを放つ。
が、腕ごとへし折られ、私が悲鳴を上げることになった。
そして、ボロボロになりながら、ようやく武者が助けに来てくれたが、いとも簡単にアーサーに切り伏せられて絶命してしまった。
「酷いですよ抵抗するなんて。僕はこんなにあなたのことが好きなのに。純愛ですよ?」
「お前マジでヤバいって……」
すると、突然、床に呪いが走った。アデ先生がスクロールを発動していたようだ。
アーサーの動きが少し鈍ったものの、足が少し爆発した。そんな程度だった。そんな傷では、すぐに治されてしまう。
でも、隙を作ってもらうには十分な威力だった。マグナムを向け、アーサーに呪いをかける。
呪いの込められた弾丸は、アーサーに着弾した瞬間に、動物の姿に変成させた。
小鳥の姿になったアーサーが、私の周りを飛び回る。
キャンピングカーを止めると私は、アデ先生や子供たちの安否確認をして、ぎゅっと抱きしめた。
子どもたちがわんわん泣き出し、私も恐ろしくて泣いた。
アデ先生は、全く動じた様子はない。それどころか、笑顔まで作って見せている。本当に強い人だ。
ひとしきり子供たちを慰めた後、私とアデ先生は、アーサーの体を調べ上げた。
やはり、武者の言っていたことは本当で、開頭したアーサーの頭の中には、脳みそが半分ほどしか入っていなかった。それと、奥の方に機械のような装置が見える。
呪いで手足の動きを変成で封じられ、同時に魔力を使い切らすように刻まれたアーサーが、恐怖におびえた表情で、やめて、やめてと懇願している。
「うるさい。黙れ。でないと、この脳みそを握りつぶすぞ」
「あがっ! オエっ!」
意識のあるまま脳を弄られていることで、アーサーは猛烈に吐き気を催す。
聞いたことがあるが、脳というものは、意識のあるうちに弄られていると、強烈な吐き気を感じるらしいが、どうやら本当だったようだ。
どうやら、脳の中にある機械は、術式によって動かされており、アーサーに電気信号を送っている。
「これは、見たこともない術式だけど、これで、もし、人間を操っているのだとしたら相当な技術ね。そんなことが成功した話、一度も聞いたことがないもの」
「じゃあ、あれだな。神の知恵ってやつだな」
「おそらく、これが脳幹ね。もし、無理に外すと、たぶん死ぬ」
「なら、回復魔法をかけるが、とっかえの効く体のパーツと違って、脳は治せるのか?」
「ええ治せる。でも、完全に元通りってわけにはいかない。記憶障害がおきて、取り除かれた記憶が取り戻すことはできないの。体の不調に関しては時期に治るけど、時間はかかるわかね。三年か、四年か」
「分かった。なら、一先ず、アーサーの脳は修復して、私は単身サドを倒しに城に乗り込む。アデ先生はここにいてくれ」
「だめよ。逃げるのが先」
「いや、逃げてもまた狙われるかもしれない。それだったら先に奇襲をかけた方が良い」
「だから、もし、死んだりしたら!」
「いや、いずれ決戦を仕掛けねばならない。でないと、また身に危険が及ぶ。だからこそ、今が決戦の時なのだ。それに、姿を隠すから簡単には見つからん」
「……」
アデ先生は、泣きそうな、それでいて何かを言いたげな顔でくしゃくしゃをするが、私はそんなことを思考の片隅に追いやって戦いの方法を考える。
大量の武者を送って攻撃を行うか、それとも、気づかれないようにサドだけを攻撃するか……。
いや、それなら両方を組み合わせるか。武者は要道で、サドを攻撃する。
そのためには、綿密に連携が取れるように情報の伝達が不可欠である。無線機があれば良かったが、無いのであれば仕方がない。
第二次世界大戦でも、フランスは、情報伝達においても伝書鳩を使っていた始末。動きの少ない無い戦線であれば、それでも良かっただろうが、この作戦においても果たしてうまくいくかどうか……。
いや、だからこそ、数を増やすか。
ソ連式大量突撃ドクトリン。唯一の正解ドクトリン。あの、アメリカを含んだイギリス連合国でさえもソ連の攻撃に耐えることは不可能だとされていた戦闘教範。
さらにそこに、現代式の装備を与える。こちらの数は大勢。敵は、私ばかりに構う余裕はなく、いざとなれば、私は単身、混戦の中に身を隠して逃げられる。これがもっとも成功率の戦い方法だ。
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