ヤクザ警察アーシャちゃん 異世界に転生したらやりたい放題

竹丈岳

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魔女狩り大戦の真実

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 食事を終えると、アデ先生に子供たちを頼んで部屋を出てもらうことにした。

 取引の続きだが、戦争への関与を極力減らすことを念頭に、二種類の武器を提供することで補給品を買わせてもらうことにした。

 まあ、いわゆる売買という名のレンドリースである。
 あくまでこの国から解放してもらうための取引であり、それ以上の干渉は全く行わないという条件も付けているので、かの場所から、敵として見なされることはおそらく無いだろう。

 それに、こちらの身の安全を確保するためであれば敵国にだって武器を渡すつもりだ。
 今の私は、守るべき家族がいるため、横暴な正義感だけでは動けなくなってしまっている。


「しかし、さっきからサド侯爵。随分と様子が違うようですが、何かありましたか?」

「いっ、いえ、何もありませんよ」


 サドの慌てたような口ぶりが、あまりにも怪しすぎて、一周回ってただの癖なんじゃないかと思い始めてきた。


「そうですか。私はどことも敵対することもありませんが、味方になるというつもりもありませんよ」

「なぜ、それを私に言う?」

「だって、あからさまに怪しい動きばかりしてますし、敵国のスパイなんじゃないかと思って」


 私の言葉に、サドが顔を強張らせた。
 どうやらサドは、大したスパイではないようだ。
 全身から秘密を漏らすような男にスパイなんかが務まるわけがない。


「……、今日は体調が悪いのだ」

「それは大変ですね。今日はもう席を外されてはいかがでしょうか?」

「そうさせてもらうよ」


 サドが退出していく姿を、私はこっそり目で追っていく。
 家族に危険が及ばないように、こっそりと武者を召喚して後を付けさせる。無論、透明化の魔法はかけておいた。


「さて、アーサー。あのサドについて聞きたいのだが、どこで知り合った?」

「サドは、昔にここへ訪れて、永住をした貴族の家系のようで、僕が産まれる前からこの国で働いていたようです。僕が知り合ったのもこの国へ来た時ですので、大体五年は前でしょうか?」

「なるほど。あのサドは、ここでどんなことをしている?」

「サドには、事務的な仕事をしてもらっています。会計であったりと、ほぼ雑用だったりと。色々とそういうことが得意なようで、大変助かっています」

「であれば、それだけの長い付き合い、あの態度は、妙だとは思わないか」

「確かに言われると妙な気がしました。でも、これまでに問題を起こしたわけでもないので、何か、あったのだとは思いますが」


 アーサーの危機意識の無い態度に驚いて、私は自分だけでサドの調査をすることにした。
 今すぐにでも問いただすべきだし、監視を付けるべきだというのに、アーサーは何もしなかったのだ。そこに私は驚いたので、アーサーに見切りをつけた。


「何か調査に使えるスキルは持っていないのか?」

「うーん、ありませんね……」

「じゃあ、もう少し注意深く見てくれ、それで、サドが少しでも尻尾を出せば気付くことができる。あのサドに、私の家族がやられたらたまったものじゃない」

「僕の方でも監視は付けます。と言っても、僕もあの態度は気になるので、自分が動きますが」

「手遅れにならないと良いがな」


 私が、アーサーに援助を行う武器は、ガトリングと野戦砲の二種類の設計図に絞った。
 敵に攻められて犠牲者が出るのも好ましい出来事ではないが、攻撃にうって出るというのも、それはそれで目覚めが悪い。
 なので、第一次世界大戦と同じように、防衛に特化した兵器を教えることにしたのだ。

 情報の足りない今の私では、どのような状況に陥っているのかは理解が足りない。
 アーサーだけの話を一方的に信じることは、あまりにも客観性が足りない。主観の意識の問題が起きる。

 なので、私も、ここで情報をできるだけ集めておくことにした。特に、神という存在についてだ。
 敵の戦力が未知数ではこちらの行動も制限されてしまうからだ。


「ところで、敵の神という存在は、当然強いのだろう? 一対一で戦った時に勝てる見込みはあるのか?」

「一度は、敵の中枢の奥深くまで攻撃を仕掛けて壊滅的な状態にまで追い込むことはできましたが、多くの神をとり逃してしまいました。僕がこれまで倒せたのは、水神だけです。日神ともあれば、今の僕では歯が立たないでしょうから一対一では、まず勝てません。それに、水神という存在は、『すいしん』という読み方と『みずがみ』という読み方の二つがあり、それぞれ、別の神のことなのですが、僕が倒したのは『すいしん』の方だけです。日神ともなれば、僕が戦ってかなう相手ではありません」

「では、日神とどう戦うつもりだ?」

「そのために味方を集めているのです」

「この国には刈り入れがおきるのだろう? どうやって今まで生き延びてきた?」

「僕らに味方してくれている神様がいまして、『すいしん』の妹である『みずがみ』様が、僕らを守ってくれています。その『みずがみ』様も、魂をとっていないので、死にかけてしまってはいますが……」

「そうか。その刈り入れというのは、この国だけで起きているのか?」


 私の言葉に、アーサーが首を横に振った。深刻そうな顔で次に口を開く。


「いえ、大抵は、秘密裏に各地で行われているようです。以前は、それを防ごうとして魔女が立ち上がりました。魔女狩り大戦というのは、国同士の争いでもありましたが、その実、魔女と神の戦いだったのです。魔女たちは、神から自分の家族や友人を守るために立ち上がった組織なのです」


 そう言ったアーサーの言葉に、私は少し驚いていた。悪いことばかりの魔女だとは思っていたが、魔女狩り大戦における魔女が、正当性を持った動機だとは、思ってもみなかったのだ。


「それは驚いたな。だが、魔女が自分の欲望をコントールして、神だけと戦うことなんてできるのか?」

「確かにコントロールができずに、各地で、暴れたこともありますし、悪魔を呼ぶための儀式の性質上、悪いことが起きるのは確かですが、ここは、魔都です。魔族や悪魔も暮らしています。有力なコネクションさえあれば、儀式も無しに、悪魔と直接会って契約することは可能です。魔女はここで立ち上がったのです」

「ふむ……。であれば、私の家族も常に危険に晒されているというわけか。勝てる見込みが出てきたら、私に教えてくれ。その時には、兵器でもなんでも、提供をしよう」

「本当ですか!?」


 私がそう言うと、アーサーがテーブルを叩いて、思いっきり立ち上がった。
 私は、それに驚いて、体を仰け反らせるが、キラキラとした視線を向けてくるアーサーに、私は、悪い印象を抱かなくなっていた。


「ああ。その話が本当であればな」

 
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