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アーシャちゃん。警察官に就任。

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 朝日が差し込み、私はうんと背伸びをする。

 朝の7時。カーテン開けると、気持ちのいい青空が目に入った。

 早速、私は着替えて家を出て、路上に立つ新聞売りの少年から新聞を買う。

 新聞の見出しに思わず私はニヤリとしてしまう。

 政治家や、警察庁の長官の悪魔崇拝が市民の間で噂として広がっているそうだ。

 さっそく、私はアデ先生の研究室に部下たちを呼び集め、招待客リストの写しをさせる。

 ペンに自動筆記を行わせたり、原本からインクを焼き写したりと、部下たちはそれぞれ思い思いにやっているが、思った以上に正確だ。

 リストに書いてある人名を民衆に知らせるだけで良かったのだが、これほどとなると、印刷機も要らないだろう。

 人目が少なくなる夜になると、一斉に書き写した紙を張ってまわる。

 朝になると、張り紙を目にした市民たちが不満の声を上げた。警察や政府に対しての不信感が高まり、どこもかしこも、あの夜のパーティーに関する噂で持ちきりだ。

 長官の辞任もなければ、政府からの釈明もない。反政府に関する不満は刻々と増えていっている。

 そんな中、私は飛び入りで警察官に成った。マーラの能力を使い、周りの警官たちを次々に懐柔していったのだ。

 黒色の、なんともお洒落な制服に身を包んでいるだけで、自分が権力者であるかのように錯覚する。

 私の現在の目標は警察の長官の座に立つことだ。そうしていると、必ず邪魔な奴が出てくる。私より上にいる奴のせいで、私の昇進が阻まれてしまっている。

 そんな彼にはマーラの能力で席を空けてもらうことになる。

 女性が昇進するということは、同時に奇異な目で見られるということだ。多くの私に対する不信感を耳にする。けれども、そんなことで私の信念は揺らぎはしない。

 かけ上がるように昇進していく中、放っておいた召喚獣がようやく長官の場所を掴んでくれた。

 長官の場所は国防省。軍隊に守られているようだ。

 私とマーラは姿を消し、悠々と国防省に浸入する。ライフリング銃を携えた軍人たちが警備をしているが、私たちに気付く気配もない。

 長官のいる執務室に入ると透明化を解く。

「お! お前は!」

「さあ報いを受ける時が来ましたよ」

 今日の長官はちゃんと服を着ているようだ。椅子からずり落ちて、助けを呼び始める。

「誰か!! 誰か!!」

「マーラ、やりなさい」

「はーい!」

 三人の美女が現れ、長官が必死に助けを呼ぶ。

 トップがいなければ代わりの人間が必要だ。そうなれば次席の私が長官になるだろう。

 長官の椅子にふんぞり返り、セラーの中からボトル取り出してそのままワインを飲む。




ーーーーーー



 国会に呼び出されたのは、それから三日後だった。

 国会で、私は尋問を受けていた。議員共は私が女性であることが不満らしく、長官の座から引きずり下ろそうと言うのだ。女性は能力が無く、長官に相応しくない。そういう声が多く上がる。

 そのため、私は議員たちの前で長官として相応しい成果を上げて見せましょうと言った。

 今、この国は内乱状態に近く、国営にも支障をきたすほどで、私がその内乱を止めて見せると言ってやった。

 そんな私の言葉を、議員たちは笑うばかり。女の私にできるものかと言うのだ。

 私は1週間で成果を上げて見せると言った。

 大臣たちは3日と言った。

 私は構わないと言った。

 私は帰るとすぐに警察内部に広報担当の部署を組織した。民衆に対して、悪魔崇拝に関与していた警察官は全て逮捕したことを発表し、これから、他の参加者たちも順次逮捕していくとした。

 次に国内の安定度を高めるため、プロパガンダを広めていく。
 悪魔崇拝を行う巨悪に立ち向かうため、国民に団結を求めようとした。

 国外に悪魔崇拝を行う組織がいるとし、国民に協力して立ち向かうように演説をする。
 そこに、自作自演の爆発テロを私たちの手で起こして処理をし、暗に悪魔崇拝者の存在を国民に示していく。

 そうしたことで、いとも簡単に国内のヘイトは、存在しない敵へと移った。
 さらに国民の不満を国政から逸らすため、経済の問題点を挙げていく。
 いつまでも働いても生活が豊かにならないのは、経済に問題があると言うと、国民の多くが賛同してくれた。貧民を無くし、経済を安定させ、確実に収入を上げる方法があると、私は演説台で説く。

 私が初の女性長官であることを逆手に取り、珍しさを理由に大勢の記者たちを招いた。私が男性様の生活を考え、食費を切り詰めた菜食主義者であることを広報し、これから国民たちに積極的な食糧支援を行うと言う。
 自分の生い立ちが孤児院からであると言うと、国民の心が少しずつ動いた。

 権力に比べて初心を忘れない質素な生活。男性様を愛する私の姿は、男性国民にとって受け入れやすい英雄像なのだ。

 かの有名な戦争好きな殺人鬼にもこうした宣伝が得意な腹心がいた。
 私はそれを真似しただけなのだ。

 そうしたことで、二日目には内乱は減少し三日目には消え去った。

 早々に私は国会に立ち、大臣たちの気に喰わない顔を見て回る。

「さて、どうでしょうか? 私の実力は? 治安を維持するのに十分な実力でしょう?」

「しかし、君は女だ。女に権力は与えられん」

 議員たちの唇を噛む様子が分かる

「しかし、他に人材がいない。となれば、私がやるほかないでしょう? そんなに邪険な顔をしないでください。何か困ったことがあれば、全てを解決してみせましょう」

「そういえば、君は経済を向上させる計画があると言っていたね? どうやってするつもりだ? たかだか警察の長官がそんなことができるのかね?」

「聞いてどうするおつもりでしょうか? 私が言ったところで鼻で笑われるのがオチでしょう。ここはひとつ、私に委ねてみませんか?」

 私の言葉に議員たちは無表情な様子を見せるが、すぐに言葉が出てこず、内心の動揺が手に取るように分かる。

「相当な自信だな。その長い鼻が折れないことを祈るよ」

「しかし、私がやるにしても、支援はいただきたいものです。私1人でやるものではありませんからね」

「さっきまでの自信はどうした? すぐに折れたな」

「それぞれに領分があるのですから、そこに手を出しても良いと言う許可が欲しいだけですよ。そうでなければ、何も言わずに邪魔をすることになってしまうかもしれませんからね」

「何が望みだ?」

「全ての空いている土地を使います」

「土地を何に使うつもりだ?」

「べつに変なことには使いませんよ。ただ、巨大な畑を作るだけですから」


 
 
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