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ヤクザ警察24時①

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 日も沈み始め、閉店を始めている店もいくつかでてきている。
 
 行方不明となった生徒たちの調査を終え、私たちは帰路についている途中だ。
 人が捌け始めている中、露天を見つけてマーラがおおはしゃぎを始めた。

「ママ! 見て! これ綺麗!」

「似合ってるね。どれか欲しいのある?」
 
 私がそう聞くと、銀色の紅葉のような形の髪飾りを指差して、マーラはこれが欲しいとねだる。

 買ってあげると、マーラは顔を綻ばせて喜んでくれた。

 季節は夏に近づきつつあり、マーラの額にもじっと汗が滲んでいる。
 ハンカチで汗を拭ってあげると、「ママ大好き」と言ってくれた。
 私も「大好きだよ」と言って髪飾りをつけてあげると、マーラが私の目をじっと見つめてきた。
 どうやら、言葉を待っているらしく、「可愛いね」と言ってあげると、マーラは地面から何度も弾んでみせた。

 家に帰り着くと、既にアデ先生が料理を始めていた。

 油の匂いと、パチパチとする揚げ物の音で、私の腹も空いていく。
 というより、空腹であったのは、昼食を食べていないことにある。

「おかえりなさーい。アーシャちゃん何か分かったの?」

「ただいま。それほどは分からなかったよ」

「残念ね」

「一つ聞きたいんだが、行方不明の事件の起こる日があると轟く音がするそうだが何か知っていることはあるか?」

「うーん、たぶん、雷だとはおもうんだけどね。たしかに、事件の前後かは分からないけど、行方不明があると必ずあの音がするのよね」

「そうか。アデ先生でも分からないか」

 髪飾りを見せるために、マーラがアデ先生のそばでじっと見つめて立つ。
 腕を後ろに組んで、褒めてもらえるのを今か今かと待ち望んでいるようだ。

 そのマーラの様子に気づいたアデ先生は、目を細めて腰を落とし、マーラの視線に合わせて頭を撫でながら髪飾りを褒める。

 アデ先生から「可愛い」と言ってもらえたことで、またしても大はしゃぎするマーラに、埃が立つからと私が注意をする。
 私から叱られたことで、少しばかりしょんぼりとした様子を見せるが、すぐにマーラは私の注意を忘れてはしゃぎだす。

「すまないな。召喚が切れるまでの辛抱だ。本当は公園とかでもっと遊ばせてあげたかったんだがここら辺には無くてな」

「子供ってそういうものよ。私は子供が大好きだもの。気にしないわ」

 アデ先生が揚げ物を取り出すたびにマーラがつまみ食いをするものだから、私はそのたびに手を叩いて止める。

「なあ、思ったんだが、監視がいるときは行方不明者はでないんだろ? じゃあ、なんで監視は行方不明にならないんだ?」

「たしかにおかしいわね」

「となると、その監視者が怪しいな。いつも、誰が監視しているんだ?」

「アレクサンダー先生ね」

「あいつか。いや待て。通常の学校の業務があるのにあいつは2時まで起きているのか?」

「そうみたい。でも、ときどき学校を休んでいるみたいよ。それに、先生のことをあいつなんて言っちゃだめよアーシャちゃん」

「そうだな……。じゃあ、アレクサンダー先生がいないときは誰が監視しているんだ?」

「監視はいないわね」

「どう考えてもその先生が怪しくないか? というかなぜ2時なんだ? 誰も目撃していないのに、なぜ2時に行方不明になると分かる?」

「そう言われれば確かに」

「誰が2時だと言っていた?」

「うーん。もう昔だから誰が言い始めたのかは分からないわね。でも、自然に広まっていったの」

「そうか。だが、そのアレクサンダーが怪しい。家の場所とかも分かるだろ?」

「そう言われてもね……」

「仕方ないな。私が尾行して家の場所を調べるしかないか。ところで今日はありがとうな、おかげで変装も上手くいったよ」

 そう言って今日のご褒美に、アデ先生の唇にキスをすると、あっちからも腕を回してきた。

「アーシャちゃん……。上手すぎ……」

「これで許せ」

「分かった……」

 全く。愛もなにもない、こんな痛々しいキスも、顔が良ければ全て通るのだなと痛感する。
 私の顔が不細工な時だったら、こんなこと、一度も起きることはなかっただろう。
 
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