人殺しのあなたへ

６

　それに、俺には今日予定があるから迂闊には動けなかったんだ。

　時期をずらそうかとも考えたが、そろそろ金が無くなってきた。
　それにカンナに襲われても俺には逃げきれる自信もあったから、ここに今までふんぞり返っていただけのことだ。
　
　別にカンナと仲良くなりたかったわけでもなかった。

　ようやく夜になり、家を出ようとすると、カンナが寂しそうに見送ってきた。

「これで、お別れは寂しいけど、それでも、初めて色々話せて楽しかった。また、いつでも来て良いよ」
「……」

　カンナは男のくせにダラダラと涙を流しやがる。まるで、俺が悪いみたいに、いや、俺は悪人なんだが、そんなこと関係なしに面倒くさい。

　俺は勢いよく民家を駆けのぼると、易々と銀行に忍び込む。窓も外壁をハンマーで殴れば簡単に外れるから何も難しいことは無い。
　それに、四階から忍び込まれるとは誰も思わないのだろう。

　銀行内でも、持ち前の身体能力を活かし、偉そうに吊るされたシャンデリアを足場に、どんどんと奥へと進んでいく。

「こんな夜中でも仕事だなんてご苦労なこったな」

　警備兵が離れた隙に、見つけた金庫の鍵穴を、金属を削り出して作ったピンで開け、２０分ほどの時間をかけて選別し、中身の宝石をバックパックに入れ込む。

　華麗に金庫の中身を盗み出した俺だったが、当然、一人だから全ての宝石を盗み出すことはできなかった。
　こんな時、相棒の一人でもいてくれれば収穫が増えるのにと、ふと、カンナの顔が頭に思い浮かんでしまった。。

　自分の住んでいた場所には既に警察が見張っており、仕方なくカンナの家に戻ることにした。
　そうして、再びカンナの家の扉を開けて中に入るが、おかしなことにカンナの気配がどこにもなかった。これは何かあったのだと思い、再び警戒しようとするが、首元にひやりと冷たいものが走った。