十番目の愛

夜宮 咲

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舞台の裏側(1)

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華やかな庭園を赤い血が染めていた。

庭園には長男が仰向けの状態で倒れていた。その胸には銀色のナイフが刺さっている。

長男が倒れている側に九都は立っていた。

九都は兄の死体を見ても怖がらなかった。何故なら、兄を殺した犯人を知っているからだ。


「……兄さん」


ポツリと言葉を洩らす。


「あの時、十和と何を話していたんですか?」


そう、僕は見たんだ。

十和がそのナイフで一兄さんを刺したところを。その後、屋敷に戻っていく姿も、手が赤く染まっていたことも。

あの時、友人から電話があって遊びに出かけようと屋敷を出たところだった。庭園に視線を向けると十和と一兄さんの姿があったから気になって近くまで行ってみた。

何だか、いつもと雰囲気が違う十和を見て嫌な予感がした。

その予感は的中した。

僕は側にあった壁に身を隠した。

そして、今の状況に至る。

以前、十和は隠し事はないと言っていた。今まで起きた事に関係していないと言っていた。

あの時、十和が嘘を吐いていることぐらいわかっていた。でも、その言葉を信じるふりをした。


「十和は、昔から自分のことを話さないんです」


長い付き合いで、親友で、仲良しで。

なのに、僕は十和のことを何も知らない。教えてくれない。


「僕もあなたと同じように、十和に殺されるのでしょうか……」


もし、そうなるなら。


「その時は、ちゃんと十和の話しを聞きたいな」


きっと、何か目的があってこうしたのだ。それなら、友達として十和の思いを聞いてあげたい。死ぬなら、友達らしいことをしてからがいい。そうじゃないと、心残りしそうだから。

僕はポケットから携帯を取り出し、友人に断りのメールを送った。

とりあえず、まずは十和を探そう。

そう思い、後ろを振り返る。


「えっ…」


その瞬間、強い衝撃が走った。

硬い何かが僕の頭に当たったのだ。

僕はその場に倒れ込む。

激しい頭痛が僕を苦しめる。

視界もぼやける。

はっきりとはわからないが、ぼやけた視界に誰かの足が映る。


「だ、れ……」












庭園に倒れている男が二人。

そして、鉄製の手持ちハンマー。

その場に立つ怪しげな人物は、庭園に咲く花を一輪取り、その花を倒れる男の胸のあたりにそっと置いた。

それは、真っ白な薔薇だった。







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