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オマケ
それから
しおりを挟む「駄目だ。絶対駄目だ。」
淡い色に包まれた、広々とした部屋。その中心に置かれたベビーベットの前で、魔王は眉間に皺を寄せいていた。
「何でですか!私が産むんですから、私が名付けをしても良いでしょう。」
ベビーベットの中は、暖かく心地良さそうに整えられているが、まだそのベットで眠る主人はいない。
ベットの主人は、魔王の前にあるベビーベットを挟んだ反対側に立っている、聖女のお腹の中。
「はっきり言わせてもらうが、聖女の名付けセンスは皆無だ。」
「そんなわけがないでしょう。私は、両親に付けられた名前でとっても苦労したんですから。私は、この子の事を考えて、最高の名前をプレゼントするんです。」
「苦労とセンスは関係無いと思うぞ。だいたい、元の世界で改名しようとしていた名前も、かなり酷いかった。」
「どこがですか!千条 才女《せんじょう さいじょ》の何処が酷い名前なんですか!素晴らしい名前でしょう。」
「・・・本気か?才女だぞ。」
「勿論です。聖女は職業名みたいなものでしょう。才女は、私の目指す目標なんです。目標を名前にするなんて素晴らしいでしょう。」
「それなら、何で俺の名前は重歯目なんだ?」
「ずっと、只の兎だと思っていたんですから仕方がないでしょう。愛玩動物と自分の子供の名前は別問題です。」
「しかし、それにしても子供名前が『すっごい可愛い子』って何だ!目標でも何でもないだろう。」
「私の子が可愛くないと!」
「確かに可愛いだろうが、子供が成長した時にどうする気だ、子供の外見が筋肉の塊の様な屈強な子に育っても『すっごい可愛い子』と、呼ぶ気か?」
「当然です。それでも私の子はすっごい可愛いんです!」
「ならば、子供の子供・・つまり、孫が産まれた時はどうする気だ?子供が親に向かって『すっごい可愛い子』なんて言うのか?」
「それは・・・ややこしいですね。」
ようやく、『すっごい可愛い子』という名が変だと気づいた聖女は、小さく唸ると、新しい名前を口にしようとする。
「なら・・・。」
「ヴェルグエルだ。」
「は?」
「遠い異国で『すっごい可愛い子』はヴェルグエルと言う。遠い異国だから、知る者も少ないし、変に思われる事はないだろう。」
「ヴェルグエル、ヴェルグエル、ヴェルグエル・・・すっごく可愛い子・・・ヴェルグエル。良い!!!その名前にします!!」
ちなみにヴェルグエルは、どこの国の言葉でもなく、単なる名前である。
その事に聖女が気付くのは、何年も先の事。
そして、その話を聞いた息子は、涙を流して父であるデルギルデに感謝した。
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嬉しいお言葉、ありがとうございます❤️
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