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本は大事です!!
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「お断りします。」
「何故だ!!」
「1年間も、ただの兎だと思っていた相手が突然人の姿になったからって、好きになる訳ないでしょう。それに、そもそも価値観が合わなそうなので、無理です。」
「価値観など、ゆっくりとこれから擦り合わせていけば良いだろう。それに、俺の顔は聖女の好みだろう?この腹筋を見てくれ!聖女好みの肉体美だろう。」
「ック・・・。」
確かに、今の重歯目さんの顔と体型・・・好き。
しかし、騙されてはいけない。大切なのは、外見より中身です。
それに、何故かここで受け入れてはいけない気がするんです。
「あの、重歯目さん。」
「デルギルデだ。」
「は?」
「俺の名前。」
上から読んでも、下から呼んでも、デルギルデ~
読みませんよ。呼びませんよ。
「そうですか、重歯目さん。」
「俺の名前を呼んでくれ・・・聖女。」
「デル・・・嫌です。」
「何故だ!!!今、言いかけただろう。」
私は、もう一度拳を強く握り込むと、その顔面に向けて拳を叩き込みました。
まあ、当たらないんですけどね。
「今、私の名前を呼ぶ前に、すっごい小声で呪文、唱えましたよね。それ、魔族が使う婚姻の呪文ですよね?相手の魂を縛る呪文ですよね?」
「なっ何故知っている。」
「何故って、重歯目さんが持って来た『人と魔族、文化の違い。』って本に書いてありましたよ。魔族は、婚姻の時、呪文を唱え、相手の名を呼び、相手が名前を呼んでくれれば婚姻が成立する。その為、魔族の名前を不用意に呼ぶと、うっかり騙されて結婚させられる事があるので注意しましょう。って!」
「何故だ!この世界の文字は、読めないはずだろう。」
「・・・ええ、この世界の言葉は読めません。ですが!!あの本には、私が元いた世界の文字で訳が書かれていましたからね!」
全部の本ではないですが、半分以上の本に訳が書かれていましたよ。
お陰で、この世界の文字も少しは読める様になりました。
しかし、今はそんな事、どうでも良いんですよ。
勝手に結婚させようとする重歯目さん・・・どうしてくれようか?
「ッチ、先代魔王め、余計な事を。」
え?もしかして、訳を書いてくれてたの先代魔王様ですか?
ありがとう、先代魔王様。本当に、ありがとう。
「しかし、何が不満だと言うんだ。顔良し、肉体良し、魔力も金もあって、性格も良い。寂しいと涙している時はそっと寄り添い、愚痴を言いたい時には静かに話を聞き、欲しいものは何でも用意してくれる。聖女の理想の男そのままだろう。それによく、重歯目さんが恋人だったら良かったのにって、言ってくれていただろう。」
「ソウデスネ、ですが私が知っている重歯目さんは、男性ではなく雄でしたけどね!」
「どちらも俺なのだから問題無いだろう?」
「大ありですよ。それでは、もしも私の本当の姿が、強烈な異臭を放つ巨大な怪物だったとしても、同じ私だから問題無いと言えますか?」
「そうだったのか。しかし、何も心配する必要はない。大きさなど俺がいくらでも変えてやる。まあ、一先ず一緒に風呂だな!!異臭など、我が国の石鹸を使えば消えるはずだ。さあ行こう、俺が隅々まで洗ってやる。」
そう言いながら、私の手を掴み、目をキラキラと輝かせている半裸の男。
「ちがあああぁぁぁうぅぅぅ!!!例えば話です!例えばの話です。」
「違うのか?俺としてはどちらでも良いのだが?」
キョトンとした顔をしている重歯目さんからは、嘘を言っている雰囲気は微塵も無い。多分本気で言っているのだろう事は分かるけれど。よく考えたら、そもそも何故自分の姿を偽ってまで私に近づき、騙してまで結婚しようとするのだろう。
この1年間、重歯目さんと長い時間を過ごしたけれど、今日まで重歯目さんは一言も話さなかった。
私が一方的に話しかけ、自己完結し、抱きしめていただけだ。何処に私を好きになる要素があったのか分からない。
もしかしたら、何か勘違いをしているのかもしれない。
そう思い至って、落ち着く為に、大きく溜息を吐き出した。
「はぁ・・・・何故そこまで、私の事を気に入ってくださっているのですか?」
今の私の表情は、眉間に皺を寄せ、明らかに不機嫌に見える事だろう。
それなのに・・・それなのに・・・何で赤い顔して、モジモジしてるんですか?
何なんですか?変態さんなんですか?
いや、途中から変態さんかな?とは思っていたけれど、本当に変態さんだったんですか?
「・・・・ボソボソ・・・・」
「は?」
「・・・ボソボソボソボソ・・・」
「聞こえないんで、はっきり言ってください!」
すっごい小声で、全く聞き取れないんです。思わず大きな声で言ったら、重歯目さん、真っ赤な顔をして恥ずかしそうにしながら全力で
「初めて会った時に、俺の事を食べようとしたからだ!!」
と、叫んでくれましたよ。
「何故だ!!」
「1年間も、ただの兎だと思っていた相手が突然人の姿になったからって、好きになる訳ないでしょう。それに、そもそも価値観が合わなそうなので、無理です。」
「価値観など、ゆっくりとこれから擦り合わせていけば良いだろう。それに、俺の顔は聖女の好みだろう?この腹筋を見てくれ!聖女好みの肉体美だろう。」
「ック・・・。」
確かに、今の重歯目さんの顔と体型・・・好き。
しかし、騙されてはいけない。大切なのは、外見より中身です。
それに、何故かここで受け入れてはいけない気がするんです。
「あの、重歯目さん。」
「デルギルデだ。」
「は?」
「俺の名前。」
上から読んでも、下から呼んでも、デルギルデ~
読みませんよ。呼びませんよ。
「そうですか、重歯目さん。」
「俺の名前を呼んでくれ・・・聖女。」
「デル・・・嫌です。」
「何故だ!!!今、言いかけただろう。」
私は、もう一度拳を強く握り込むと、その顔面に向けて拳を叩き込みました。
まあ、当たらないんですけどね。
「今、私の名前を呼ぶ前に、すっごい小声で呪文、唱えましたよね。それ、魔族が使う婚姻の呪文ですよね?相手の魂を縛る呪文ですよね?」
「なっ何故知っている。」
「何故って、重歯目さんが持って来た『人と魔族、文化の違い。』って本に書いてありましたよ。魔族は、婚姻の時、呪文を唱え、相手の名を呼び、相手が名前を呼んでくれれば婚姻が成立する。その為、魔族の名前を不用意に呼ぶと、うっかり騙されて結婚させられる事があるので注意しましょう。って!」
「何故だ!この世界の文字は、読めないはずだろう。」
「・・・ええ、この世界の言葉は読めません。ですが!!あの本には、私が元いた世界の文字で訳が書かれていましたからね!」
全部の本ではないですが、半分以上の本に訳が書かれていましたよ。
お陰で、この世界の文字も少しは読める様になりました。
しかし、今はそんな事、どうでも良いんですよ。
勝手に結婚させようとする重歯目さん・・・どうしてくれようか?
「ッチ、先代魔王め、余計な事を。」
え?もしかして、訳を書いてくれてたの先代魔王様ですか?
ありがとう、先代魔王様。本当に、ありがとう。
「しかし、何が不満だと言うんだ。顔良し、肉体良し、魔力も金もあって、性格も良い。寂しいと涙している時はそっと寄り添い、愚痴を言いたい時には静かに話を聞き、欲しいものは何でも用意してくれる。聖女の理想の男そのままだろう。それによく、重歯目さんが恋人だったら良かったのにって、言ってくれていただろう。」
「ソウデスネ、ですが私が知っている重歯目さんは、男性ではなく雄でしたけどね!」
「どちらも俺なのだから問題無いだろう?」
「大ありですよ。それでは、もしも私の本当の姿が、強烈な異臭を放つ巨大な怪物だったとしても、同じ私だから問題無いと言えますか?」
「そうだったのか。しかし、何も心配する必要はない。大きさなど俺がいくらでも変えてやる。まあ、一先ず一緒に風呂だな!!異臭など、我が国の石鹸を使えば消えるはずだ。さあ行こう、俺が隅々まで洗ってやる。」
そう言いながら、私の手を掴み、目をキラキラと輝かせている半裸の男。
「ちがあああぁぁぁうぅぅぅ!!!例えば話です!例えばの話です。」
「違うのか?俺としてはどちらでも良いのだが?」
キョトンとした顔をしている重歯目さんからは、嘘を言っている雰囲気は微塵も無い。多分本気で言っているのだろう事は分かるけれど。よく考えたら、そもそも何故自分の姿を偽ってまで私に近づき、騙してまで結婚しようとするのだろう。
この1年間、重歯目さんと長い時間を過ごしたけれど、今日まで重歯目さんは一言も話さなかった。
私が一方的に話しかけ、自己完結し、抱きしめていただけだ。何処に私を好きになる要素があったのか分からない。
もしかしたら、何か勘違いをしているのかもしれない。
そう思い至って、落ち着く為に、大きく溜息を吐き出した。
「はぁ・・・・何故そこまで、私の事を気に入ってくださっているのですか?」
今の私の表情は、眉間に皺を寄せ、明らかに不機嫌に見える事だろう。
それなのに・・・それなのに・・・何で赤い顔して、モジモジしてるんですか?
何なんですか?変態さんなんですか?
いや、途中から変態さんかな?とは思っていたけれど、本当に変態さんだったんですか?
「・・・・ボソボソ・・・・」
「は?」
「・・・ボソボソボソボソ・・・」
「聞こえないんで、はっきり言ってください!」
すっごい小声で、全く聞き取れないんです。思わず大きな声で言ったら、重歯目さん、真っ赤な顔をして恥ずかしそうにしながら全力で
「初めて会った時に、俺の事を食べようとしたからだ!!」
と、叫んでくれましたよ。
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