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愛しい人
しおりを挟む「「「「「はぁ????」」」」」
「ちなみに、代金はこの国の人々の安全と、各国との貿易基盤作り、その他、細かな事が色々って感じ、魔王国にとってはこんな国、面倒なだけなんだけど、野放しにも出来ないしって事で、引き取ってくれる事になったんだよ。だから、この国の事は何も心配しなくて良いからね。勿論、今まで好き勝手にやってきた王族や貴族さん達は、今まで好き勝手にやってきた分、これからはしっかりと働いてもらうからね。大丈夫、初めての仕事ばかりだけど、単純作業の肉体労働だから、初めての君達でも安心して始められるよ。」
「何を言っておるんだ?」
うん、今だけは、王様の言葉に賛同します。
何を言っているんですか、この人。
「何って、事実を伝えているだけだよ。君達は気付いてないみたいだけど、この国は他国から随分と恨みを買っていてね。本当は、各国が力を合わせて連合軍で一気に攻め込んで、各国でこの国を分けようって話になってたんだけど、魔王様が『攻め込んだ後の戦後処理をどうする気だ?連合国だと揉める事になる。』と言って、宥め、脅し、金で頰を叩いて、各国に手出ししない約束をさせてくれたんだよ。しかも、『民達は、どうせ王族や貴族達に良い印象を持っていないのなら、民達を傷つけないように、事を進めた方がいいだろう。』と言われて、なら王族や貴族達を捕まえるだけで済まそうって事になったんだよ。優しいよね。」
「そっ、そんな事が許されるわけないだろう。」
「君達に許してもらう必要は無いんだよ。ほらもう。」
バフォと言う音と共に、おっさん達の背後に、魔族の人達が現れた。
頭に角が生えた者や、肌が青色の者、耳があるべき場所にヒレが生えている者など、一目で魔族と呼ばれる者達に、おっさん達は悲鳴を上げ、震え、粗相をしながら失神していく。
「顔を見ただけで失神とか、失礼。」
「こんな軟弱者達が国を動かしていて、よく今まで潰れなかったな。」
「いや、今潰されてるじゃん。」
その言葉に、魔族達は大声で笑いながら、おっさん達を拘束していく。
どう見ても魔族が悪に見えるんだけど、大丈夫??
「グハハハどう料理してやろうか?」
「煮るのと、焼くのどっちが良い?」
「そのまま頭からっていうのも良いよね。」
ニヤニヤと笑いながら、涎をすすっている魔族達。
震え上がり、更に失神していくおっさん達。
えっと、本当に大丈夫??
勇者さん、信じて良いんですよね??
大丈夫なんですよね??ね??
そんな事を思いながらオロオロとしていると、一通りおっさん達が拘束されたのを確認した勇者さんが、突然私の方を向きました。そして、なんという事でしょう、蕩けそうな笑みを浮かべ、私の方へと歩き始めたのです。
のです・・・のです・・・のです・・・はぁ、私の方が蕩けてしまいそう。
「あぁ、俺の愛しい人、怪我は無かったかい?」
え?え?
愛しい人??
私?私の事??私の事なの??
・・・・
私の事・・・では、無かったあああぁぁぁ
私の横を颯爽と通り過ぎて行く勇者さん。
ええ、分かってましたよ。分かってました!!
勇者さんに会ったのは、今日が初めてですもんね、そんな相手に、愛しい人なんて普通言いませんよね!!
でもね、ちょっとだけ思ってしまったんです。もしかしたらって!!
幸い表情には出ていないはず。ただ、嬉しそうに向かって来る勇者さんに、つい腕を広げようと、腕を少し上げてしまいましたよ。
少し、ほんの少しだから、分からないはず。
万が一、私の恥ずかしい勘違いに気付いていたなら、どうかそっとしておいて下さい。
本当にお願いします!!
そして、私の心とは裏腹に、私の背後で繰り広げられる会話。
「もう、心配し過ぎよ。人間の、しかもあんな人達に、私が傷付けられるはずがないじゃない。」
「分かっているよ。それでも君が傷付けられていいないか、確認しないと落ち着かないんだ。」
「まあ、心配性なんだから。」
「君は俺の半身なのだから当然の事だろう。」
他でやってほしいんですけど。砂糖菓子の様な甘い雰囲気が、私の精神をゴリゴリと音を立てながら削っているのですが!
「二人ともそろそろ落ち着け、勝手に勘違いをした聖女が、胃をキリキリさせながら、どうして良いか分からず、立ち尽くしているぞ。」
いやああああぁぁぁぁ
誰ですか、誰なんですか余計な事をいったのはあああぁぁぁぁ
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