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ジャンジャケイ
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はいはーい。
名前負けの私は、最初の数日間は聖女として扱われ、大切に大切に、転けたら死ぬくらいの勢いで大切にされましたよ。ですが、この国の神殿で行われた、聖女の審査式と呼ばれる儀式により、見事一般人と証明された私は、そこからの凄まじい落差を味わわせられました!!
本当に、目玉が飛び出るかと思いましたよ。王都から神殿に来た時には、キラキラの豪華な馬車だったのに、帰りは置いて行かれました。哀れんだ教会の人が馬車を出してくれましたが、それが今にも壊れそうな馬車・・・ではなく、ロバが引く荷馬車。ええ、教会にとっても要らない者となった私は、善意で馬車に乗せられた訳ではなく、単に教会に置いておかれるのも邪魔だから、適当に馬車に押し込めて、返してしまおうって事だったのだと思います。
そこから何とかお城に戻れば、『何で帰って来たの?』って目で見られ、部屋から追い出され、城の端の高い木に囲まれ、周りから全く見えない場所に建てられた、掘っ建て小屋へ押し込まれました。
この世界の事を何も知らない私は、彼等に従うしかありません。
聖女が呼ばれた理由も知りませんでしたから、もしかしたら外の世界が恐ろしい場所の可能性もありますし、なにより現金を持っていない。持っていたとしても価値が分からない。ドレスだけ豪華な世間知らずなんて、どんな目に合うか・・・
と、いうわけで、大人しく掘っ建て小屋で暮らしました。
その間の扱いは、先程おっさんに向かって嫌味ったらしく言った通りですよ。
「うっ、嘘を言うな。お前用の予算は毎月きっちり全額使われているんだぞ。」
「私が知るわけないでしょう。」
ああ・・・ダメだこのおっさん。
自分の部下の行動を全く把握してないとか、駄目でしょう。
そもそも、予算が毎月きっちり使われてるって、裏を返せば、予算内で済ませているって事ですよね?
私は、殆ど使ってないと思うけど、全部使ったとしても、贅沢三昧とは言えないと思うんですが。
「騙されんぞ。ならば、城下町で広がっている噂は何だと言うんだ。」
そんなの知りませんよ。
「何の事を言っているのか分かりません。」
「私の事を、操り人形の様な王だとか、豚に宝石を飾った方がましだとか、色狂いで目が合った女性を攫って行くとか。」
ん?
それ、全部事実ですよね?
完全に操られてますよね?私に充てられるべき予算を横流しされても、気付かないくらいだし。
それから、豚に宝石を飾った方がまし。でしたっけ?
それは普段、首に着けているネックレスが、首に食い込んでて殆ど見えないからですよ。着けている意味がないから、それならいっそ豚にでも着けてしまえって言われてるんです。
それから、色狂いで目が合った女性を攫っていくのは、完全に事実ですよね。
先日、街で見つけた女性に一目惚れし、連れ去ろうとして、全力で逃げられてましたよね?しかも、その人既婚者で、いくら王様でも既婚者は駄目だろうって、抗議の声が上がってましたよね。
「私は知りません。そもそも、お城の敷地内から出ていない私が、どうやってそんな噂を流すんですか?」
なんたって、警備が厳重なお城ですから、抜け出すなんて出来ませんよねぇ。
そんな事が出来たら、このお城の警備は穴だらけって事になりますからね。そんなわけないですよね?
って、気持ちを込めて言ったはずなんですが・・・
「こっそり抜け出して、広めたんだろう。」
ああ、私の言葉の意図は、全く理解されなかった様ですよ。
流石!王と書いて操り人形と読んでしまいたくなる、おっさんです。
あぁあぁ、城の警備の指揮をしている近衛騎士団の団長が、ピクピクと引き攣った表情をしていますね。
まあ、賊が城に侵入したら彼の責任になりますし、王自ら『この城は、何の訓練もしていない女性が出入り出来るくらい、警備がゆっるゆるなんだよ。』って言っている様なものですからね。
ま、私には、関係ないですけど。
「仮に私が抜け出したとしても、こんな身なりの者がそんな話をして、誰が信じると?」
「信じるか信じないかの問題ではない! 信じた者がいるから、噂になっているのだろう。」
「それでは、噂の出所が私だったと、きっちり調査したんですよね?」
「そんなものしなくても、我が国民がそんな事を言うはずがない。となると、お前以外いないだろう。」
なにそれ、なんなのその言い分。
ふざけんなぁぁぁぁ
「そもそも噂じゃなくて、全部事実でしょう。」
・・・
あ、言っちゃった。
イラッとして言っちゃった。
でも、誰も何も言わない。言われた王様は顔を真っ赤にして、プルプル震えているんだけど、側近の方々は、一瞬顎を上げ、そのまま頷きそうになって、慌てて視線を逸らしている。
いやいや、さっさとフォローしてあげなよ、そこの赤豚、今にも泡吹きそうになってるわよ。
「こっ・・・この・・・この・・・この無礼者おおおおぉぉぉぉぉ!!!絞首刑など、ナマムルイ今すぐジャンジャケイだああああぁぁぁぁ。」
大事な所で噛んだあああぁぁぁぁ!!!
ナマムルイ・・・ジャンジャケイ・・・ププププププ
笑っている場合ではない。私は今、多分プププッ斬首刑を言い渡されたのだから、ここは神妙に・・・
「ブフッ」
今、笑ったの誰よ!こっちは必死に我慢してるのに。
「クッ・・・フフフ・・・。」
ほらほら、釣られて他の人も我慢出来なくなって来たでしょうが。
「ダハアハハハハハハハハハハハ。」
あぁあぁ、全力で笑ってる人がいるよ。
誤魔化す気なんて微塵もない、大笑いですね。
あれ? でも・・・
名前負けの私は、最初の数日間は聖女として扱われ、大切に大切に、転けたら死ぬくらいの勢いで大切にされましたよ。ですが、この国の神殿で行われた、聖女の審査式と呼ばれる儀式により、見事一般人と証明された私は、そこからの凄まじい落差を味わわせられました!!
本当に、目玉が飛び出るかと思いましたよ。王都から神殿に来た時には、キラキラの豪華な馬車だったのに、帰りは置いて行かれました。哀れんだ教会の人が馬車を出してくれましたが、それが今にも壊れそうな馬車・・・ではなく、ロバが引く荷馬車。ええ、教会にとっても要らない者となった私は、善意で馬車に乗せられた訳ではなく、単に教会に置いておかれるのも邪魔だから、適当に馬車に押し込めて、返してしまおうって事だったのだと思います。
そこから何とかお城に戻れば、『何で帰って来たの?』って目で見られ、部屋から追い出され、城の端の高い木に囲まれ、周りから全く見えない場所に建てられた、掘っ建て小屋へ押し込まれました。
この世界の事を何も知らない私は、彼等に従うしかありません。
聖女が呼ばれた理由も知りませんでしたから、もしかしたら外の世界が恐ろしい場所の可能性もありますし、なにより現金を持っていない。持っていたとしても価値が分からない。ドレスだけ豪華な世間知らずなんて、どんな目に合うか・・・
と、いうわけで、大人しく掘っ建て小屋で暮らしました。
その間の扱いは、先程おっさんに向かって嫌味ったらしく言った通りですよ。
「うっ、嘘を言うな。お前用の予算は毎月きっちり全額使われているんだぞ。」
「私が知るわけないでしょう。」
ああ・・・ダメだこのおっさん。
自分の部下の行動を全く把握してないとか、駄目でしょう。
そもそも、予算が毎月きっちり使われてるって、裏を返せば、予算内で済ませているって事ですよね?
私は、殆ど使ってないと思うけど、全部使ったとしても、贅沢三昧とは言えないと思うんですが。
「騙されんぞ。ならば、城下町で広がっている噂は何だと言うんだ。」
そんなの知りませんよ。
「何の事を言っているのか分かりません。」
「私の事を、操り人形の様な王だとか、豚に宝石を飾った方がましだとか、色狂いで目が合った女性を攫って行くとか。」
ん?
それ、全部事実ですよね?
完全に操られてますよね?私に充てられるべき予算を横流しされても、気付かないくらいだし。
それから、豚に宝石を飾った方がまし。でしたっけ?
それは普段、首に着けているネックレスが、首に食い込んでて殆ど見えないからですよ。着けている意味がないから、それならいっそ豚にでも着けてしまえって言われてるんです。
それから、色狂いで目が合った女性を攫っていくのは、完全に事実ですよね。
先日、街で見つけた女性に一目惚れし、連れ去ろうとして、全力で逃げられてましたよね?しかも、その人既婚者で、いくら王様でも既婚者は駄目だろうって、抗議の声が上がってましたよね。
「私は知りません。そもそも、お城の敷地内から出ていない私が、どうやってそんな噂を流すんですか?」
なんたって、警備が厳重なお城ですから、抜け出すなんて出来ませんよねぇ。
そんな事が出来たら、このお城の警備は穴だらけって事になりますからね。そんなわけないですよね?
って、気持ちを込めて言ったはずなんですが・・・
「こっそり抜け出して、広めたんだろう。」
ああ、私の言葉の意図は、全く理解されなかった様ですよ。
流石!王と書いて操り人形と読んでしまいたくなる、おっさんです。
あぁあぁ、城の警備の指揮をしている近衛騎士団の団長が、ピクピクと引き攣った表情をしていますね。
まあ、賊が城に侵入したら彼の責任になりますし、王自ら『この城は、何の訓練もしていない女性が出入り出来るくらい、警備がゆっるゆるなんだよ。』って言っている様なものですからね。
ま、私には、関係ないですけど。
「仮に私が抜け出したとしても、こんな身なりの者がそんな話をして、誰が信じると?」
「信じるか信じないかの問題ではない! 信じた者がいるから、噂になっているのだろう。」
「それでは、噂の出所が私だったと、きっちり調査したんですよね?」
「そんなものしなくても、我が国民がそんな事を言うはずがない。となると、お前以外いないだろう。」
なにそれ、なんなのその言い分。
ふざけんなぁぁぁぁ
「そもそも噂じゃなくて、全部事実でしょう。」
・・・
あ、言っちゃった。
イラッとして言っちゃった。
でも、誰も何も言わない。言われた王様は顔を真っ赤にして、プルプル震えているんだけど、側近の方々は、一瞬顎を上げ、そのまま頷きそうになって、慌てて視線を逸らしている。
いやいや、さっさとフォローしてあげなよ、そこの赤豚、今にも泡吹きそうになってるわよ。
「こっ・・・この・・・この・・・この無礼者おおおおぉぉぉぉぉ!!!絞首刑など、ナマムルイ今すぐジャンジャケイだああああぁぁぁぁ。」
大事な所で噛んだあああぁぁぁぁ!!!
ナマムルイ・・・ジャンジャケイ・・・ププププププ
笑っている場合ではない。私は今、多分プププッ斬首刑を言い渡されたのだから、ここは神妙に・・・
「ブフッ」
今、笑ったの誰よ!こっちは必死に我慢してるのに。
「クッ・・・フフフ・・・。」
ほらほら、釣られて他の人も我慢出来なくなって来たでしょうが。
「ダハアハハハハハハハハハハハ。」
あぁあぁ、全力で笑ってる人がいるよ。
誤魔化す気なんて微塵もない、大笑いですね。
あれ? でも・・・
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