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彼女の話

夢見る未来

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その後、テレサと彼と私でお茶を飲み、テレサは笑顔で帰って行った。
お茶の最中、テレサのお茶をミルクに変え、お菓子をフルーツに変えさせると、テレサが大きな溜息と共に

「8人目ですか・・・。」

と声を漏らしていたけれど・・・
どうやら私の気づかいで、お腹の子に気付いてしまった様だ。
そういえば、いままでの子達を妊娠した時にも同じ気遣いをしていた気がする。
だって仕方がないじゃない、お茶の成分によっては赤ちゃんに良くない事もあるし、砂糖いっぱいのお菓子よりフルーツの方が赤ちゃんにも良いと思ったの。
テレサは自分のお腹に新たな命が宿った事に、最初こそ溜息を漏らしていたけれど、帰る頃には嬉しそうな顔をしながらそっとお腹を撫でていた。



「ララベル。」

テレサを乗せた馬車が、ゆっくりと走り去る姿を眺めていると。
声変わりには程遠い軽やかな声が、甘さを含み私を呼ぶ。

「来世は、沢山家族を作ろうな。」

彼と私は幾度も出会い、幾度も恋に落ちてきたけれど、彼との間に子を成す事は無かった。
私と彼が出会えば、恋に落ちてしまえば、そんな場合ではなくなってしまう。
それに今世は問題外だ。
けれど来世は・・・彼が教えてくれた来世の話が本当ならば、もしかしたら家族が出来るかもしれない。
テレサの様に幸せを感じながら、自分の腹部を撫でる事が出来るかもしれない。

「・・・。」

少しの気恥ずかしさを感じ、そっと目を伏せると、私の手に暖かく小さな手が触れる。
私の知っている彼の手は、いつも少し冷たくて、私の手をすっぽりと包み込んでくれていた。
全く違うはずの小さな手。けれど同じ様に私の心を温めてくれる優しい手。

「ララベル、愛しているよ。」

「・・・。」

言葉は返さない。
来世がどうなるかなんて分からない。
老い先短い老婆である私が、少年に愛を囁いて良いはずなんてない。
だけど私の気持ちは、きっと彼に届いている。
だって、小さな手がしっかりと私の手を掴み、輝く様な瞳が愛おしそうに私を見つめているのだから。

私は心の中で呟く。

これまでも、これからも、どんな姿の貴方でも、私は貴方を愛している。
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