【完結】間違いでしたと言われたい!!〜その傲慢な根性、叩き直してあげましょう〜

のんびり歩く

文字の大きさ
上 下
6 / 22
青年期

【過去】兄様は、風邪らしい

しおりを挟む
エレノアがプロポーズを受けるよりも更に半年前・・・


その頃、エレノアは焦っていた。
貴族女性の結婚適齢期は16歳から20歳、エレノアは現在16歳になったばかり・・・しかし、両親から結婚どころか、婚約の話すら聞いたことが無い。しかも、本来16歳で社交界デビューするはずなのに、両親から『今年は見送るように』と、言われてしまい、出会いすら無い状態だ。

出会いすらない・・・出会いすら与えられていない・・。

つまり、両親が政略結婚させようとしている、という事ではないだろうか。
と、エレノアは考えていた。

貴族の令嬢である以上、政略結婚は仕方がないと頭では分かっているけれど、素直に受け入れるつもりは無い。それに、政略結婚といっても両親の事だ、ある程度決まった時点でエレノアに話をしてくれるはず。まだ何も聞いていないという事は、まだ確実な事は決まってはおらず、候補が何人かに絞られたという段階だろう。
ならば正式に決まる前に、自身で相手を見つけ『この人と結婚したいのです。』と言って強引にでも自分が選んだ相手と婚約したい。

勿論 勝算はある。
エレノアの家系は恋愛結婚が多く、権力にあまり興味が無い、そして幼い頃に父はエレノアに『この家はお前のお兄ちゃんが継ぐからな、エレノアは好きな者と結婚しなさい。騎士でも、平民でも好きな相手とな。お父様が全力で応援するからな。エレノアは強い男が好きだろう?騎士なんてどうだ?』
と、しきりに騎士を薦めていたからだ。

騎士様ならいける気がする!!

そこでエレノアは、真っ先に兄であるエバンに相談する事にした。

それは、兄を信頼しているからでは無い。
兄が、現在風邪をひいている・・・らしい、からだ。

現在兄は、風邪を他の者にうつさないようにと、客室のベッドの上で生活をしている。エレノアが部屋を訪ねた時も、ベッドの上で眉間に深い皺を寄せ、手紙を片手に紅茶を飲んでいた。

「兄様、お話があるのですが。」

よほど重要な手紙なのか、兄は視線をエレノアに向ける事無く返事をする。

「何だ?」

こちらを向かなくとも、兄が話を聞いているのは知っているし、目を見て言う勇気が無かったから丁度いい。そう思いエレノアは、手紙に視線を向けたままの兄に話しかける。

「兄様、私の嫁ぎ先の事ですが・・・」

「グハッ・・ブホッ・・・グホゴホグホッ・・・。」

兄は飲んでいた紅茶を盛大に撒き散らし・・・咽せた。
咽せるという事は、動揺しているのだろう。という事は・・・

「やはり、お父様とお母様が既に、私の嫁ぎ先の目星をつけているのですね。」

「ゲホッ・・・ゲーッホ・・ま・・・ゴボボ・・・まて・・。」

「分かっております。貴族の娘である以上、政略結婚は当たり前、相手を選ぶ事は出来ないと分かっております。ですが私は、きん・・・愛の無い相手とは結婚したくないのです。」

「ヒーヒー・・待て・・・待てと・・。」

咽せ続けながらも、必死に言葉を絞り出す兄に向かって、力強く宣言する。

「大丈夫です。お兄様の迷惑になる様な相手を選ぶつもりはありません。ですが、私は自分の相手は自分で決めさせていただきます。」

そう言い切ると同時に、兄の枕元にあったクッションが勢いよく飛んできてきた。

バフッ

「待てと言っているだろう。馬鹿者!!!ゲホッ・・・ゲホッ・・・。」

勿論、クッションはエレノアにぶつかる事無く、壁にぶつかり床へと落ちる。

「お兄様、そんなに叫ばれると、お身体にさわりますよ。」

「お前が、叫ばせているのだろう!!」

兄は、2日前から風邪を拗らせている・・・・らしい。
しかし、現在紅茶に咽せているのは別として、寝込んでから一度も咳をしているのを見ておらず、顔色もとても良さそうだ。
しかし、一応風邪をひいているらしい。

「私は思った事を言っただけです。」

「そもそも何故、俺に言う。父と母に言えばいいだろう。」

苛立ち混じりの声で言う兄に、エレノアは急にスッと目を細め、ニヤリとした笑みを浮べながら、その視線を兄の足へと向けた。

「ところでお兄様、風邪のわりに随分と元気ですね。脚の調子はどうですか?」

「なっ!!かっ風邪なのに、脚の調子なんて関係無いだろう。どうしたんだ急に。」

「友人からの情報では3日前、騎士団の練習場で死闘を繰り広げたあげく、ギリギリの所で負け、足を負傷されたと伺ったのですが?」

「なっ何故それを!!」

「騎士団の事に詳しい友人が居ますから。」

「そうだった・・・お前の友人には、騎士団長の娘さんがいたんだったな。しかし、アリアには・・・。」

「言いませんよ、お義姉様は今大事な時期ですから。」

アリアと言うのはエレノアの義姉・・・兄の妻で現在妊娠中、来月にでも産まれるのではないかと言われている。それなのに決闘をするなど、どうかしているとは思うが、義姉に言いつけて、余計な心配をかけるつもりは無い。
つもりは無いのだが、利用はさせてもらう。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

働かなくていいなんて最高!貴族夫人の自由気ままな生活

ゆる
恋愛
前世では、仕事に追われる日々を送り、恋愛とは無縁のまま亡くなった私。 「今度こそ、のんびり優雅に暮らしたい!」 そう願って転生した先は、なんと貴族令嬢! そして迎えた結婚式――そこで前世の記憶が蘇る。 「ちょっと待って、前世で恋人もできなかった私が結婚!?!??」 しかも相手は名門貴族の旦那様。 「君は何もしなくていい。すべて自由に過ごせばいい」と言われ、夢の“働かなくていい貴族夫人ライフ”を満喫するつもりだったのに――。 ◆メイドの待遇改善を提案したら、旦那様が即採用! ◆夫の仕事を手伝ったら、持ち前の簿記と珠算スキルで屋敷の経理が超効率化! ◆商人たちに簿記を教えていたら、商業界で話題になりギルドの顧問に!? 「あれ? なんで私、働いてるの!?!??」 そんな中、旦那様から突然の告白―― 「実は、君を妻にしたのは政略結婚のためではない。ずっと、君を想い続けていた」 えっ、旦那様、まさかの溺愛系でした!? 「自由を与えることでそばにいてもらう」つもりだった旦那様と、 「働かない貴族夫人」になりたかったはずの私。 お互いの本当の気持ちに気づいたとき、 気づけば 最強夫婦 になっていました――! のんびり暮らすつもりが、商業界のキーパーソンになってしまった貴族夫人の、成長と溺愛の物語!

悪役令嬢はデブ専だった

嶋紀之/サークル「黒薔薇。」
恋愛
少女漫画の悪役令嬢に転生したちょっとおバカな女のコ、ヴァネッサ。前世の記憶を思い出し、デブ専であった自分を思い出した彼女は、ヤケになって婚約者である王子殿下にデブ専性癖のことを打ち明ける。 絶対ドン引きされて早めに婚約破棄されるだろう、と思っていたのに、なぜか殿下に気に入られてしまい……。 ※男の肥満化要素あり ※ムチムチ体型のデブはいいぞ、という話です ※真面目に恋愛してるか怪しいコメディ寄りの作品です

【完結】真実の愛だと称賛され、二人は別れられなくなりました

紫崎 藍華
恋愛
ヘレンは婚約者のティルソンから、面白みのない女だと言われて婚約解消を告げられた。 ティルソンは幼馴染のカトリーナが本命だったのだ。 ティルソンとカトリーナの愛は真実の愛だと貴族たちは賞賛した。 貴族たちにとって二人が真実の愛を貫くのか、それとも破滅へ向かうのか、面白ければどちらでも良かった。

【完結】旦那様、わたくし家出します。

さくらもち
恋愛
とある王国のとある上級貴族家の新妻は政略結婚をして早半年。 溜まりに溜まった不満がついに爆破し、家出を決行するお話です。 名前無し設定で書いて完結させましたが、続き希望を沢山頂きましたので名前を付けて文章を少し治してあります。 名前無しの時に読まれた方は良かったら最初から読んで見てください。 登場人物のサイドストーリー集を描きましたのでそちらも良かったら読んでみてください( ˊᵕˋ*) 第二王子が10年後王弟殿下になってからのストーリーも別で公開中

憧れの騎士さまと、お見合いなんです

絹乃
恋愛
年の差で体格差の溺愛話。大好きな騎士、ヴィレムさまとお見合いが決まった令嬢フランカ。その前後の甘い日々のお話です。

【完結】傷跡に咲く薔薇の令嬢は、辺境伯の優しい手に救われる。

朝日みらい
恋愛
セリーヌ・アルヴィスは完璧な貴婦人として社交界で輝いていたが、ある晩、馬車で帰宅途中に盗賊に襲われ、顔に深い傷を負う。 傷が癒えた後、婚約者アルトゥールに再会するも、彼は彼女の外見の変化を理由に婚約を破棄する。 家族も彼女を冷遇し、かつての華やかな生活は一転し、孤独と疎外感に包まれる。 最終的に、家族に決められた新たな婚約相手は、社交界で「醜い」と噂されるラウル・ヴァレールだった―――。

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

処理中です...