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全ては神の導きのままに
エピローグ
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その後王都の民衆は他国に亡命していた先代国王の甥を呼び寄せ新しい国王として即位させる。
こうして再スタートを切った王都だが、新国王は教会の政治への介入は一切認めなかったものの平民の議会参加の約束を果たそうとせず、再び反乱を起こされ退位させられてしまう。
王に就ける者が居なくなった事で共和制に移行した王都は、没落を免れた貴族達が統治する地域とは全く別の体制を持って瘴気に立ち向かう事になるのである。
そして各土地は各々努力して瘴気との付き合い方を模索していくのだが、人間とは逞しい生き物である。特に彼女の研究の全貌を知る地域は自分達で改良を加えたりして皆力を合わせて自分達の生活圏を着実に取り戻していった。
時が流れて当時王都と呼ばれた場所の革命が歴史書に載るようになった頃、突然巨大な地震がタラスティナ全土を襲った。その影響で一部の地域は地盤沈下や隆起を起こし、町や人々に大きな被害を齎したのである。
しかし地震は同時に光明も与えており、長い間謎とされてた瘴気の原因がついに判明したのだ。地形が変わった事でタラスティナの様々な土地で瘴気と全く同じ靄を噴出し続ける巨大な機構が姿を現したのである。それを見た人々は慌てて壊さなければと家から斧や鍬など身近な武器を持ち出して滅多打ちを始めた。大人も子どもも、男も女も、自分が持てる物を使って噴出が完全に止まるまで一心不乱に武器を振り下ろし続けた。
機構は丈夫だったが寄ってたかって叩いた効果があったのか、パチパチと火花を散らし小さな爆発が起きるとそれきり靄の噴出が止まった。その頃には村人全員汗だくで肩で息を切らしていたが気分はとても晴れやかだった。やった!とうとう諸悪の根源を壊せたんだ!これからもう瘴気に怯えなくて済むんだ!お祝いだ!
その日から何日も何日も機構があった土地はお祭り騒ぎであった。劇的に生活が豊かになる訳ではないがこれ以上悪くもならない。その悪くならないが分かっただけでも彼等の気持ちを急激に軽くさせた。
お祭り騒ぎから少し経って好奇心旺盛な若者達が機構と一緒に出来た洞窟の探検に繰り出した。若者はどの時代でも危険な事をやりがちだが今回は思わぬ利益に繋がった。洞窟だと思っていた場所は巨大な地下都市であったのだ。
奇妙な図形に触れるだけで空間全体に蝋燭とは比べ物にならない程に明るい照明が点き、道はとてもなだらかだ。背の高い建造物があちこちで建てられていて見続けていると目が眩みそうである。打ち捨てられている物もどれも見た事がなく、ちょっとした冒険のつもりがとんでもない事になったと若者達の心臓が早鐘を打った。
直ぐに村の皆に知らせようと彼等は持って帰れそうな物を1つ選んで持ち帰って村の大人達に見せた。それは斧と同じ性質を持つ物だが、魔術の素養を持たない平民でも丸い出っ張りを押せば刃が素早く回転し、力を入れなくても簡単に太い樹が切れてしまうのだ。
地下にとんでもない道具が無造作に放置されていた事を知った村人達はこぞって地下都市に潜り様々な物を漁り始めた。各家庭ごとに野良仕事と並行したり家族と日替わりで手分けしたりなど、皆夢中になって発掘作業に勤しみ使い方を調べては他の村人と欲しい道具を物々交換していった。
地下都市が齎す道具類のお陰で村は飛躍的に発展していった。それまで浄化の手段を持たなかった土地も遺物の活用で農地を取り戻し、生活が豊かになった事で人口も急激に右肩上がりとなった。
より良い暮らしを得る為に発掘作業を進めていった人々だが、ある日を境に別々の土地の人間同士が地下都市の同じ場所で鉢合わせする事態が起きるようになった。地下都市は巨大と言えど無限に広がっている訳ではない。日々の採掘の繰り返しにより近隣の土地同士で発掘場所が重なりだしたのだ。
出身が違う者達が宝が眠っていると知っている場所で出会うとどうなるか。そう、お互い縄張りの主張を始めるのである。
土地が瘴気で分断されて久しい今、相手を同じタラスティナの人間だと認識する者は誰も居ない。この時代の人間にとってタラスティナは既に過去の国であり、彼等の世界は生まれ育った土地で完結してしまっているのだ。
土地の利益の為の縄張り争いは互いに譲れないからこそ、それまでに発掘した道具を用いた紛争へと発展していく。やがて紛争は相手の持つ遺産を奪う為という目的にすり替わり、命の奪い合いにより更に相手への憎悪も伴うようになり、欲望渦巻く地下都市の遺産を巡った争いは激化の一途を辿る。
こうしてかつて栄華を極めた国は街単位間での争いが絶えない暗黒時代へと突入していくのであった。
こうして再スタートを切った王都だが、新国王は教会の政治への介入は一切認めなかったものの平民の議会参加の約束を果たそうとせず、再び反乱を起こされ退位させられてしまう。
王に就ける者が居なくなった事で共和制に移行した王都は、没落を免れた貴族達が統治する地域とは全く別の体制を持って瘴気に立ち向かう事になるのである。
そして各土地は各々努力して瘴気との付き合い方を模索していくのだが、人間とは逞しい生き物である。特に彼女の研究の全貌を知る地域は自分達で改良を加えたりして皆力を合わせて自分達の生活圏を着実に取り戻していった。
時が流れて当時王都と呼ばれた場所の革命が歴史書に載るようになった頃、突然巨大な地震がタラスティナ全土を襲った。その影響で一部の地域は地盤沈下や隆起を起こし、町や人々に大きな被害を齎したのである。
しかし地震は同時に光明も与えており、長い間謎とされてた瘴気の原因がついに判明したのだ。地形が変わった事でタラスティナの様々な土地で瘴気と全く同じ靄を噴出し続ける巨大な機構が姿を現したのである。それを見た人々は慌てて壊さなければと家から斧や鍬など身近な武器を持ち出して滅多打ちを始めた。大人も子どもも、男も女も、自分が持てる物を使って噴出が完全に止まるまで一心不乱に武器を振り下ろし続けた。
機構は丈夫だったが寄ってたかって叩いた効果があったのか、パチパチと火花を散らし小さな爆発が起きるとそれきり靄の噴出が止まった。その頃には村人全員汗だくで肩で息を切らしていたが気分はとても晴れやかだった。やった!とうとう諸悪の根源を壊せたんだ!これからもう瘴気に怯えなくて済むんだ!お祝いだ!
その日から何日も何日も機構があった土地はお祭り騒ぎであった。劇的に生活が豊かになる訳ではないがこれ以上悪くもならない。その悪くならないが分かっただけでも彼等の気持ちを急激に軽くさせた。
お祭り騒ぎから少し経って好奇心旺盛な若者達が機構と一緒に出来た洞窟の探検に繰り出した。若者はどの時代でも危険な事をやりがちだが今回は思わぬ利益に繋がった。洞窟だと思っていた場所は巨大な地下都市であったのだ。
奇妙な図形に触れるだけで空間全体に蝋燭とは比べ物にならない程に明るい照明が点き、道はとてもなだらかだ。背の高い建造物があちこちで建てられていて見続けていると目が眩みそうである。打ち捨てられている物もどれも見た事がなく、ちょっとした冒険のつもりがとんでもない事になったと若者達の心臓が早鐘を打った。
直ぐに村の皆に知らせようと彼等は持って帰れそうな物を1つ選んで持ち帰って村の大人達に見せた。それは斧と同じ性質を持つ物だが、魔術の素養を持たない平民でも丸い出っ張りを押せば刃が素早く回転し、力を入れなくても簡単に太い樹が切れてしまうのだ。
地下にとんでもない道具が無造作に放置されていた事を知った村人達はこぞって地下都市に潜り様々な物を漁り始めた。各家庭ごとに野良仕事と並行したり家族と日替わりで手分けしたりなど、皆夢中になって発掘作業に勤しみ使い方を調べては他の村人と欲しい道具を物々交換していった。
地下都市が齎す道具類のお陰で村は飛躍的に発展していった。それまで浄化の手段を持たなかった土地も遺物の活用で農地を取り戻し、生活が豊かになった事で人口も急激に右肩上がりとなった。
より良い暮らしを得る為に発掘作業を進めていった人々だが、ある日を境に別々の土地の人間同士が地下都市の同じ場所で鉢合わせする事態が起きるようになった。地下都市は巨大と言えど無限に広がっている訳ではない。日々の採掘の繰り返しにより近隣の土地同士で発掘場所が重なりだしたのだ。
出身が違う者達が宝が眠っていると知っている場所で出会うとどうなるか。そう、お互い縄張りの主張を始めるのである。
土地が瘴気で分断されて久しい今、相手を同じタラスティナの人間だと認識する者は誰も居ない。この時代の人間にとってタラスティナは既に過去の国であり、彼等の世界は生まれ育った土地で完結してしまっているのだ。
土地の利益の為の縄張り争いは互いに譲れないからこそ、それまでに発掘した道具を用いた紛争へと発展していく。やがて紛争は相手の持つ遺産を奪う為という目的にすり替わり、命の奪い合いにより更に相手への憎悪も伴うようになり、欲望渦巻く地下都市の遺産を巡った争いは激化の一途を辿る。
こうしてかつて栄華を極めた国は街単位間での争いが絶えない暗黒時代へと突入していくのであった。
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