37 / 70
第36話
しおりを挟む
「聞いた?クラークさんって『自分は光属性の筈だ』って先生に詰め寄ったらしいわよ?」
「知ってる。杖や的を不良品だって言いがかりつけたんですって?」
テンセイシャが自分の属性について抗議をした出来事は翌日には学校中に知れ渡っていた。
普段はモブの言動など眼中に無いテンセイシャでも、昨日の今日で赤っ恥をかいたばかりでは流石に気になってしまう。
「なんだかクラークさんって、自分が見たいものしか見えてないというか……」
「そこまでいくともう痛々しいわね……」
周りからの憐れみや嘲笑の視線が突き刺さる。
嫉妬や僻みならいくら受けても屁でもない。だってそれは羨ましいという裏返しだからだ。でも憐れみの視線だけは屈辱だ。
(見てんじゃねぇよ!私はヒロインなんだよ!光属性以外あり得ないのに!絶対なんかあったんだ!)
魂が違うからだと知らないテンセイシャは「あのクソ教師、王太子妃になったら絶対クビにしてやるんだから」と憎悪を募らせる。
とうとう教室に居られなくなって昼休みは逃げるように飛び出すと屋上でふてくされる。今はキャラとのランチなんて気分にもなれなかった。
「やっぱりここに居た」
「あっち行って」
キャラ達が追いかけて来てくれたけど今は正直邪魔だ。視線を一回向けたが直ぐに背けて校舎の外の景色を見る。
しかし彼等は全く引こうとしない。空気読めよと舌打ちしそうになった時、セオドアが「アマーリエ、よく聞いてねぇ」と膝を着き目線を合わせた。
「知ってる?実は極稀にだけどぉ、数種類の属性を持っている人もいるんだよぉ?」
「数種類?」
そんなのゲームには無かった設定でテンセイシャは気になって顔を上げる。やっと目が合ったぁ、とセオドアは少女のように可愛らしい顔をニッコリとさせた。
「数種類の属性を持ってるとねぇ、今一番強い属性の魔力を的は感じ取るんだぁ。だからアマーリエは火と光の最低二属性は持ってるのかもねぇ」
「そんなことがあるんだ……」
初めて知った。確かにアマーリエはこのゲームの主人公なんだから、複数の属性を持ってても何らおかしくはない。
そう考えると、光属性を持っているのに的は火属性の赤色に光ったのは辻褄が合う。
「特に火と光は密接な関係にあるからさぁ、その両方を持ってても別におかしくはないんだよぉ。訓練を積んでいったら光属性も強化されるんじゃなぁい?」
そっか、火属性の方が強く出ただけなのか。なんだ。理由が分かったらスッキリした。
じゃああの教師はクビにはしないであげよう。でもセオドアは丁寧に説明してくれたのに、あの教師は何も言ってくれなかったな。
もしかして知らなかったとか?教師のくせに知識不足なんじゃないの?知識不足で王太子妃に恥をかかせた罪として減給と降格処分にしてやろう。
「やっといつものアマーリエに戻ったな」
ベンジャミンのホッとした声でいつの間にか笑っていたことに気付く。顔だけだと思ってたのにこいつらも案外役に立つじゃん。
「スッキリしたところでカフェテリアに行こうか!腹減っただろ?」
確かに疑問も消えたし、屈辱感も晴れた今では腹の虫が鳴き出している。現金なものだ。
勿論セオドアの説明はテンセイシャへの盲信でも、元気付ける為の方便でも無かった。魔法師の家系から得た知識は正しいし、推測も問題ないものである。
魔法師には己の持つ魔力や魔法に関する、ある種の勘を持っている場合が多い。例えば自分は何となくこの属性や、この魔法が得意かもしれない、などである。
だからセオドアはテンセイシャの「自分の属性は光である」という言葉を魔法師としての勘として受け取った。ゲームでの主人公の設定をそのまま自分にも適用されると思い込んでいるとは知らなかったから。
両者の間の決定的な認識のズレには気付かないまま、テンセイシャは上機嫌でカフェテリアへと移動した。
さっきまで肩身狭そうに俯いていたのに、もういつものふてぶてしさを取り戻したと周囲は忌々しそうに彼女の方を見ているのだった。
そしてテンセイシャとは対照的に周囲も祝福する祝い事として、アマーリエとナタリアがソル・マッセで読み聞かせた絵本の評判が伝わり、製本の注文をもらったのだ。それも複数から。
なんでも絵本の噂が他の孤児院から孤児院へと伝わり、運営している貴族から同じ絵本を贈りたいと相談があったらしいのだ。
「凄いわナタリア!私達の作った本がこんなに認められるなんて!」
「フフ、モニカったら子どもみたいにはしゃいじゃって」
そう言っているナタリアも平静を保とうとしているが、頬が喜びを表すかのように紅潮している。
手芸部の部員達が「おめでとう!」「頑張ってましたもんね!」と祝いの言葉を述べる。
初めての本作りで右も左もわからない分、それはそれは苦労した。絵本作家から絵本作りについての話を聞いたり、ストーリーに詰まったらエリザベスに何度もアイデアを請うた。
写真を撮る際の構図にも悩んだし、スケジュールの前倒しで連日ヘロヘロになったこともある。
それでもこうして作品が認められると頑張って良かったと思う。苦労が報われた瞬間だ。
「このまま人気になれば第二弾の制作の可能性もありそうね!」
「まだまだこれからなのにもう?気が早いわねぇ」
目を輝かせるアマーリエにナタリアが呆れるような、しょうがない子だと言うような顔を向ける。
探偵ジャックはシリーズ物の構成になっている。これは最初から決まっていたことではなく、ストーリーを作っていく上でこんなキャラを出せたら良いなとか、こんな出来事があるかもしれないねなど、双方アイデアが降って来た結果である。
第二弾、第三弾と続けば温めていたアイデアを放出できるし、単純に成功者の夢を見てしまうのは誰しもある。
ナタリアも、上手くいかなかった場合に深く落ち込まない為の予防線でそう言っているのであって、実は期待してしまっているのだ。
「でも、きっとエリザベス様も知ったら喜ぶわね」
「明日にでも話してみたら?」
巷で評判になるかもしれない絵本の、三人目の功労者であるエリザベスはこの場には居ない。
どうしているのかというと、ボードゲーム部にて温かい拍手をもらっていた。正月のマインドゲーム大会のポーカー部門で見事優勝したお祝いである。
「おめでとうございます!賞金の使い道は考えてあるんですか?」
「ありがとうございます。まだ迷っていまして……」
幸い家の経済事情は良くもなければ悪くもない。両親へのプレゼントや使用人への労いにも使いたいし、ドレスの一着でも作って上手く着回せば何年か持つかもしれない。
一人では決められないので家族と話し合って決める予定である。
それよりも自分の努力が報われたあの瞬間は、何よりも代えがたい幸福だった。思えば彼の婚約者となってから今まで努力してきたがそれが叶うことは無かった。
ボードゲームに没頭したのはその虚しさからの逃避だったからかもしれない。しかし途中でこう思うようになったのだ。「自分の為に頑張るのって何て楽しいんだ」と。
自分自身がこうしたいこうなりたいからと努力し、仲間やライバルと切磋琢磨し、目標に到達する工程は今までに無かった快感だった。
こういう種類の努力もあるのだと初めて知った。それが一番の収穫である。
エリザベスは幸せな気持ちに浸りながら帰宅すると、侍女から預かった一通の手紙を手渡される。
差出人の欄には自国の貴族の家の名前が記されていたが、封を開けて見るとこんなことが書かれていた。
『またあの時の大会の続きをしましょう。
─貴女を負かした人間より─』
「知ってる。杖や的を不良品だって言いがかりつけたんですって?」
テンセイシャが自分の属性について抗議をした出来事は翌日には学校中に知れ渡っていた。
普段はモブの言動など眼中に無いテンセイシャでも、昨日の今日で赤っ恥をかいたばかりでは流石に気になってしまう。
「なんだかクラークさんって、自分が見たいものしか見えてないというか……」
「そこまでいくともう痛々しいわね……」
周りからの憐れみや嘲笑の視線が突き刺さる。
嫉妬や僻みならいくら受けても屁でもない。だってそれは羨ましいという裏返しだからだ。でも憐れみの視線だけは屈辱だ。
(見てんじゃねぇよ!私はヒロインなんだよ!光属性以外あり得ないのに!絶対なんかあったんだ!)
魂が違うからだと知らないテンセイシャは「あのクソ教師、王太子妃になったら絶対クビにしてやるんだから」と憎悪を募らせる。
とうとう教室に居られなくなって昼休みは逃げるように飛び出すと屋上でふてくされる。今はキャラとのランチなんて気分にもなれなかった。
「やっぱりここに居た」
「あっち行って」
キャラ達が追いかけて来てくれたけど今は正直邪魔だ。視線を一回向けたが直ぐに背けて校舎の外の景色を見る。
しかし彼等は全く引こうとしない。空気読めよと舌打ちしそうになった時、セオドアが「アマーリエ、よく聞いてねぇ」と膝を着き目線を合わせた。
「知ってる?実は極稀にだけどぉ、数種類の属性を持っている人もいるんだよぉ?」
「数種類?」
そんなのゲームには無かった設定でテンセイシャは気になって顔を上げる。やっと目が合ったぁ、とセオドアは少女のように可愛らしい顔をニッコリとさせた。
「数種類の属性を持ってるとねぇ、今一番強い属性の魔力を的は感じ取るんだぁ。だからアマーリエは火と光の最低二属性は持ってるのかもねぇ」
「そんなことがあるんだ……」
初めて知った。確かにアマーリエはこのゲームの主人公なんだから、複数の属性を持ってても何らおかしくはない。
そう考えると、光属性を持っているのに的は火属性の赤色に光ったのは辻褄が合う。
「特に火と光は密接な関係にあるからさぁ、その両方を持ってても別におかしくはないんだよぉ。訓練を積んでいったら光属性も強化されるんじゃなぁい?」
そっか、火属性の方が強く出ただけなのか。なんだ。理由が分かったらスッキリした。
じゃああの教師はクビにはしないであげよう。でもセオドアは丁寧に説明してくれたのに、あの教師は何も言ってくれなかったな。
もしかして知らなかったとか?教師のくせに知識不足なんじゃないの?知識不足で王太子妃に恥をかかせた罪として減給と降格処分にしてやろう。
「やっといつものアマーリエに戻ったな」
ベンジャミンのホッとした声でいつの間にか笑っていたことに気付く。顔だけだと思ってたのにこいつらも案外役に立つじゃん。
「スッキリしたところでカフェテリアに行こうか!腹減っただろ?」
確かに疑問も消えたし、屈辱感も晴れた今では腹の虫が鳴き出している。現金なものだ。
勿論セオドアの説明はテンセイシャへの盲信でも、元気付ける為の方便でも無かった。魔法師の家系から得た知識は正しいし、推測も問題ないものである。
魔法師には己の持つ魔力や魔法に関する、ある種の勘を持っている場合が多い。例えば自分は何となくこの属性や、この魔法が得意かもしれない、などである。
だからセオドアはテンセイシャの「自分の属性は光である」という言葉を魔法師としての勘として受け取った。ゲームでの主人公の設定をそのまま自分にも適用されると思い込んでいるとは知らなかったから。
両者の間の決定的な認識のズレには気付かないまま、テンセイシャは上機嫌でカフェテリアへと移動した。
さっきまで肩身狭そうに俯いていたのに、もういつものふてぶてしさを取り戻したと周囲は忌々しそうに彼女の方を見ているのだった。
そしてテンセイシャとは対照的に周囲も祝福する祝い事として、アマーリエとナタリアがソル・マッセで読み聞かせた絵本の評判が伝わり、製本の注文をもらったのだ。それも複数から。
なんでも絵本の噂が他の孤児院から孤児院へと伝わり、運営している貴族から同じ絵本を贈りたいと相談があったらしいのだ。
「凄いわナタリア!私達の作った本がこんなに認められるなんて!」
「フフ、モニカったら子どもみたいにはしゃいじゃって」
そう言っているナタリアも平静を保とうとしているが、頬が喜びを表すかのように紅潮している。
手芸部の部員達が「おめでとう!」「頑張ってましたもんね!」と祝いの言葉を述べる。
初めての本作りで右も左もわからない分、それはそれは苦労した。絵本作家から絵本作りについての話を聞いたり、ストーリーに詰まったらエリザベスに何度もアイデアを請うた。
写真を撮る際の構図にも悩んだし、スケジュールの前倒しで連日ヘロヘロになったこともある。
それでもこうして作品が認められると頑張って良かったと思う。苦労が報われた瞬間だ。
「このまま人気になれば第二弾の制作の可能性もありそうね!」
「まだまだこれからなのにもう?気が早いわねぇ」
目を輝かせるアマーリエにナタリアが呆れるような、しょうがない子だと言うような顔を向ける。
探偵ジャックはシリーズ物の構成になっている。これは最初から決まっていたことではなく、ストーリーを作っていく上でこんなキャラを出せたら良いなとか、こんな出来事があるかもしれないねなど、双方アイデアが降って来た結果である。
第二弾、第三弾と続けば温めていたアイデアを放出できるし、単純に成功者の夢を見てしまうのは誰しもある。
ナタリアも、上手くいかなかった場合に深く落ち込まない為の予防線でそう言っているのであって、実は期待してしまっているのだ。
「でも、きっとエリザベス様も知ったら喜ぶわね」
「明日にでも話してみたら?」
巷で評判になるかもしれない絵本の、三人目の功労者であるエリザベスはこの場には居ない。
どうしているのかというと、ボードゲーム部にて温かい拍手をもらっていた。正月のマインドゲーム大会のポーカー部門で見事優勝したお祝いである。
「おめでとうございます!賞金の使い道は考えてあるんですか?」
「ありがとうございます。まだ迷っていまして……」
幸い家の経済事情は良くもなければ悪くもない。両親へのプレゼントや使用人への労いにも使いたいし、ドレスの一着でも作って上手く着回せば何年か持つかもしれない。
一人では決められないので家族と話し合って決める予定である。
それよりも自分の努力が報われたあの瞬間は、何よりも代えがたい幸福だった。思えば彼の婚約者となってから今まで努力してきたがそれが叶うことは無かった。
ボードゲームに没頭したのはその虚しさからの逃避だったからかもしれない。しかし途中でこう思うようになったのだ。「自分の為に頑張るのって何て楽しいんだ」と。
自分自身がこうしたいこうなりたいからと努力し、仲間やライバルと切磋琢磨し、目標に到達する工程は今までに無かった快感だった。
こういう種類の努力もあるのだと初めて知った。それが一番の収穫である。
エリザベスは幸せな気持ちに浸りながら帰宅すると、侍女から預かった一通の手紙を手渡される。
差出人の欄には自国の貴族の家の名前が記されていたが、封を開けて見るとこんなことが書かれていた。
『またあの時の大会の続きをしましょう。
─貴女を負かした人間より─』
2
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。

悪役令嬢に転生したので、剣を執って戦い抜く
秋鷺 照
ファンタジー
断罪イベント(?)のあった夜、シャルロッテは前世の記憶を取り戻し、自分が乙女ゲームの悪役令嬢だと知った。
ゲームシナリオは絶賛進行中。自分の死まで残り約1か月。
シャルロッテは1つの結論を出す。それすなわち、「私が強くなれば良い」。
目指すのは、誰も死なないハッピーエンド。そのために、剣を執って戦い抜く。
※なろうにも投稿しています
婚約破棄からの断罪カウンター
F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。
理論ではなく力押しのカウンター攻撃
効果は抜群か…?
(すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

悪役令嬢の独壇場
あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。
彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。
自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。
正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。
ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。
そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。
あら?これは、何かがおかしいですね。

悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる