実は私、転生者です。 ~俺と霖とキネセンと

ねぎ(塩ダレ)

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本編

ゴーストレーダー

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次の日、登校すると学校では七不思議の幽霊の話がまことしやかに囁かれていた。
家に帰る頃にはすっかり忘れていた俺は、キネセンの後ろに見た男子生徒を思い返す。
いや、見間違いだろう。
そんな事より、傘だ、傘。
俺はホームルームと1時限目の短い間に、下駄箱に行った。
傘立てをざっと見渡し、自分の傘を探す。
ちらほら遅刻の生徒もいたが、気にしなかった。
いくつか見ていたら見つかったので、それを持って教室に向かう。
見つかって良かった。
無くすと母親がうるさいからな。
なくしたんじゃなくて、盗られたと言ってもそれは変わらない。
それなら盗まれるくらいならロッカーに入れておきたい。

「柘植?何で傘を教室に持ってくんだ?」

いきなり声を掛けられ、振り向く。
キネセンが登校口当番だったようで、不思議そうに見ている。

「昨日、盗まれたんだよ。」

「だからって濡れた傘を持っていかれてもな~。」

確かに傘は朝も使われたのか濡れていた。
だが傘立てに戻す気はない。
キネセンは面倒そうに顔をしかめ、ポケットから何かを取り出して小声で言った。

「使え。後、次はないぞ?ロッカーにしまえよ?」

渡されたのは、店なんかにある長いビニールだった。
それとなく渡して、キネセンは素知らぬ顔で職員室の方に歩いていく。

「!?」

何の気なしにぼんやり見ていたら、一瞬、キネセンの横に昨日見た男子生徒が見えた気がした。
二度見すると、それはもういなくて、見間違いだったのかと思える。

いやでも俺は見たと確信した。
同じ生徒だった。絶対。
え?何あれ??
やっぱ噂の七不思議の幽霊なのか??
キネセンは全く気づいてないようだった。
え?何??キネセンとりつかれてんの??
ヤバくね??
ちょっと他人事のように思う。
だが、ヤバいと思いながらも俺はあまり危機感は感じなかった。

そいつは、とりつく、と言うには優しい顔をしていた。
俺に何だかんだで親切にしたキネセンを、にこにこと見つめていたように思える。
え?なら守護霊か何か??
いや、それも違うだろう。
俺は別に霊感とかないし、今までの数ヶ月、キネセンの側にあの生徒を見たことはない。
いきなり見え始めたのだ。
傘をロッカーにしまい、席につく。
前の席の田所が振り返った。

「柘植ちんどこ行ってたん?便所?」

「おう。」

「幽霊見た!?」

「は?」

「何かさ~、昨日から目撃者出てるんだよ~、七不思議の梅雨の幽霊~。」

「お前、見たのか?」

「うんや?ただ、見たって話だと、何か優しそうに笑った普通の生徒っぽく見えるらしいよ?あれ、あんな奴いたかな~て思ってると、ふっと消えるんだって!!凄くない!?」

あ、うん。
俺も見たわ、多分。
その話から、キネセンの側で見た男子生徒が、例の幽霊なのだと確信する。
言うと面倒になりそうだったので、俺は黙っていることにした。
でも何でキネセンにくっついてるんだろう?
生きてた時の知り合いなのか??
よくわからない。
でももし、生きてた時の知り合いで、側にいるのにキネセンが気づいていないのなら、少し可哀想な気がした。
優しそうに笑っていた。
それが例の幽霊に対する、俺の最初の感想だった。








放課後、スマホ片手にうろつく生徒が数人いた。
その中に田所も混ざっていたので、何をしているか聞いてみたら、幽霊探知機のアプリで例の幽霊を探しているそうだ。
皆、暇だな。
と言うか、こう言うことには積極的だよな。
見つけたらラインする、と言って田所達は散っていった。
俺は気にはなったが、闇雲に探す必要はないとわかっていたので、黙っていた。

幽霊探知機か……。
俺はアプリを検索して、良さそうなのをひとつダウンロードした。
そしてそれを持って、科学準備室に向かった。





「今日はどうした?」

科学準備室のドアをノックすると、かったるそうなキネセンがそう言った。
俺は顔色を変えずに聞いた。

「昨日、誰と話していたんですか?」

「は??」

「俺がノート持ってきた時、誰と話していたんですか?」

「だから電話だって。」

「誰と?」

「お前は俺の彼女か……?何でそこまで言わないといけないんだ??プライベートだ。」

「先生、うちの学校七不思議があるの知ってる??」

「どこの学校にもあるだろ?それがどうした?」

「梅雨になると出てくる男子生徒の幽霊の事は??」

「いや、知らんけど?……あっ!!それでか!!何か生徒が校舎内を何人もうろうろしてるのはっ!!」

「うん。そうだよ。」

「……で?お前は何の用なんだ??お前も幽霊探してるのか??」

「うん。ここにいると思って。」

「は??」

「先生、気づいてる??梅雨の幽霊、キネセンにくっついて歩いてるよ??」

「は…??何だそれは??お前、大丈夫か?柘植??」

「平気。でも俺、もう2回見たよ?先生の側で?」

「見間違いだろ??」

「キネセンにくっついてるんだよ。多分、気づいて欲しいんだろ?にこにこ見てたよ、キネセンの事。」

「あのな~。」

「だってほら、反応あるし。」

俺はそう言って、アプリを見せた。
キネセンは怪訝そうな顔でそれを覗き込んだ。

「お前……こんなオモチャに騙されるなよ……。」

キネセンは呆れたようにそう言った。
なので、俺も同じ調子で言ってやった。

「まぁ、俺も別にこれは信じてませんけど。でも…………先生の肩越しからスマホ覗き込んでるのは誰ですか?」

まるでおんぶされているように、キネセンの後ろから興味津々と言った感じで顔を出している男子生徒を俺は見ていた。
うん。
こんな簡単に出てくるとか、チョロすぎだろ?
何日かはかかると思ってたのに、即終了だよ。
キネセンははっとして顔を横に向ける。
男子生徒はあわあわした顔をして消えていった。

「……ね?いたでしょ?」

「柘植…お前……。とりあえず、科学室のドアを開けるから、ちょっと入れ……。」

キネセンははぁとため息をつき、頭を押さえながらそう言った。
やはり、科学準備室には入れないようだ。
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